ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ACTの使い魔-7

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匿名ユーザー

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ギーシュとの決闘から数日過ぎた日、朝の眩しい光によって康一は目を覚ました。
ふと見ると、体中に包帯が巻かれている。不思議なことに、痛みは殆どなかった。
康一はギーシュとの決闘の出来事を思い返した。
決闘の日、ワルキューレというゴーレムに囲まれ、ボロボロに叩きのめされ……。
やられそうになったところに、シエスタが自分の盾となるように立ちふさがり、攻撃された。
怒りで頭がいっぱいになり、訳が分からない内に、ゴーレムたちを全滅させた。
そして、ギーシュに鉄拳制裁を食らわせた後、気絶したのだ。

康一は、自分が置かれている状況を把握するため、辺りを見回した。
もっとも、見慣れた光景であったため、ここがどこであるかはすぐに把握できた。
ここはルイズの部屋で、康一はルイズのベッドで寝ていたのだ。
ちなみにルイズは、椅子に座り机に突っ伏して寝ていた。
状況を把握した康一は、ふと左手の甲に刻まれたルーンを見る。
このルーンが光りだした途端、エコーズACT2の能力が劇的に上昇した。
スピードが通常時のACT3を上回り、物理的ダメージを与えないはずの『文字』は、凄まじい破壊力を持っていた。
今はあの時の輝きを失い、ルーンは光ってはいない。
あれは一体、なんだったんだろう。
そんな風に思いながらルーンを見つめていると、ノックの音が鳴り響き、ドアが開いた。

中に入ってきたのはシエスタだった。
相変わらずのメイド姿で、カチューシャが似合っていてなんとも可愛らしかった。
シエスタは康一の姿を見るなり、瞳に涙を浮かべながら抱きついた。

「コーイチさん……! よかった……」
「わぁっ! あ、あの、シエスタさん……!」

康一は顔を真っ赤にさせながら、バタバタと手を振る。
シエスタはしばらくの間、康一に抱きつきながら体を震わせていた。
やがて落ち着いたのか、ハッとして体を離した。

「す、すみません! わ、私ったら……」
「あ、あははは……」

由花子さんが居たら、『ラブ・デラックス』で絞め殺されていたかもしれない……。
そんな風に思いながら、康一は乾いた笑いで場をごまかした。

「ところでシエスタさん、元気そうで良かったです」

康一は、元気そうなシエスタの姿を見て一安心した。
しかし、笑顔でシエスタを見る康一とは対照的に、シエスタの表情は曇っていた。

「私なんかより、コーイチさんの方が……」
「え? 僕は平気だよ。もう痛みも殆どないし……」
「でも……でも……」

シエスタは、両手で顔を覆いながら俯いた。

「ど、どうしたの?」
「五日間、ずっと寝続けていたんです……。もしかしたら目を覚まさないんじゃないかって……」


そう言って、シエスタはついに泣き出した。
突然のことに、康一はついうろたえてしまう。

「でも、本当に良かったですわ……。もしあのまま……コーイチさんの目が……覚めなかったら……私……」

涙をポロポロと流しながら泣きじゃくるシエスタの姿を見て、康一はスッと立ち上がる。

「ぼ、僕はもう大丈夫です! 『ホーレンソウを食べたポパイ』みたいに元気100%ですよ!」

康一は両手をブラブラと動かし、自分の体が元に戻ったことをアピールする。
その様子を、涙で濡れた顔でシエスタは見ている。

「だから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい。シエスタさんに涙は似合いませんよ」
「……はい」

シエスタは落ち着きを取り戻し、流れていた涙を拭いた。
康一の優しさというものを、改めて感じ取りながら、シエスタはニコリと笑った。
その様子を見てホッとしながら、康一は質問をした。

「ところで、僕をここに運んでくれたのは……」
「ミス・ヴァリエールです。ここまでコーイチさんを運んで寝かせたんですよ」

康一は、ルイズをチラリと見た。
相変わらず、幸せそうな顔でスースーと寝息を立てていた。
案外優しいところもあるんだなと思いながら、視線を戻す。

「『治癒』の呪文のための秘薬の代金を払ってくれたのも、ミス・ヴァリエールなんです」
「『治癒』の呪文?」
「はい。怪我や病気を治す魔法ですわ。先生を呼んで、『治癒』の呪文をコーイチさんにかけてもらったんです」


よくよく考えれば、五日ぐらいであんな大怪我が治るわけがない。
いくつかの骨は折れ、奥歯は抜け落ち、顔面だって傷だらけであった。
体中に包帯が巻かれているにもかかわらず、痛みが殆どないのは『治癒』の呪文のおかげであった。

「後で、礼をいわなくちゃあいけないな……」
「そうですね……。それに、秘薬の代金を出してくれたのも、ミス・ヴァリエールなんですよ」
「ええと……その秘薬の代金って高いのかな?」
「平民に出せる金額でないことは確かですね」

そう言って、意地悪そうにシエスタは笑った。

「そして、ずっと看病をしていてくれたのも、ミス・ヴァリエールなんです」
「そうなの?」

シエスタは、ルイズを見ながら小さく頷いた。

「包帯を取り替えたり、顔を拭いたり……。ずっと寝ないでやってたから、今はお疲れになったみたいですけどね」

ルイズの顔を良く見ると、長い睫の下に大きな隈ができている。

「そっか……」

生意気で、ワガママで、傲慢な女だと思っていたけど、
イザと言う時は、僕のことを大切に扱ってくれるんだな……。
そんな風に思っていると、突如腹の音が唸りを上げた。

「あ……」
「あ、ごめんなさい……。五日間も眠っていたら、お腹も空きますよね。今すぐ食事をお持ちしますわ」

そう言って、シエスタは食事を取りに部屋を出た。
それと入れ替わるようにノックの音が鳴り、再びドアが開いた。
次に中に入ってきたのはギーシュであった。


ギーシュは康一を見るなり、薔薇の花束を差し出した。
康一は思わず身構えるが、ギーシュは身振り手振りで敵意がないことを必死に伝える。

「僕のせいで、キミに大怪我をさせてしまったからね……。これは見舞いの品だよ。受け取って貰えないかい?」
「はぁ……」

正直、薔薇の花束を貰っても嬉しくはないが、せっかくの好意なので康一は貰っておくことにした。
そばにあったテーブルに花束を置き、再びベッドに座る。

「ところで、シエスタさんにはちゃんと謝ったの?」
「勿論だとも。約束を破ったりなどしないさ。寛大な彼女は僕のことを許してくれたよ」

そう言ってポケットの薔薇を持ち、唇の前に立てる。
横暴な態度は減ったようだが、キザなのは変わらないな……。と康一は思った。

「ところでコーイチ君」
「何ですか?」

ギーシュは康一の隣に座り、馴れ馴れしく肩に手を置いた。

「この前の決闘はあのような醜態を晒してしまったけど、実のところ僕は君の事を尊敬しているのだよ」
「はぁ……」

康一は、馴れ馴れしくしてくるギーシュに困惑しながらも話を聞く。


「平民でありながら、貴族である僕の決闘を堂々と受けた勇気、
 僕の自慢のゴーレムをあっという間に倒した圧倒的な力、そして女性を大事にしようとする心意気。本当、心から尊敬するよ」

目を輝かせながら語るギーシュを、半分醒めた目で康一は見ている。

「僕はルイズのことは好かないが、キミとは素晴らしい友達……いや、親友になれそうな気がするんだ!」
「そ……そうですか?」

ギーシュは、ポケットにあった薔薇を康一に差し出す。
どうやらこれが、ギーシュの交友を結ぶという証らしい。
康一は、あまり薔薇を受け取りたくはなかったが、
気持ち悪い程輝いてる笑顔を見せられ、薔薇を受け取らないと申し訳ない気持ちになり、つい薔薇を受け取ってしまう。
そこへ丁度、シエスタが銀のトレイを持って戻ってきた。

「コーイチさん、食事を……」

シエスタは固まった。
康一も、ギーシュに薔薇を受け取ったまま固まった。
若い男が二人、ベッドの上で薔薇の花を受け渡ししているところは、なんとも危険な光景であった。
シエスタは銀のトレイを床に落とし、上に乗っていたパンとスープを床にぶちまける。

「ご、ごめんなさい……!」

シエスタは両手で顔を覆いながら、廊下を駆け出していった。
何か、完璧に誤解しているようだった。

「……」

康一は、ショックと絶望が入り混じった表情で口をポカーンと空けていた。

「あのレディは、男同士の美しい友情というものを理解していないようだ」


ギーシュはやれやれといった感じで、髪の毛を弄くる。
そんなやり取りが行われている中、ルイズは目を覚ました。

「ふぁぁぁあああ、何よ……騒がしいわね……」

大きなあくびをして、伸びをする。
それから、ベッドの上で男二人が寄り添いあうように座っているのを目の当たりにする。

「……何してるの、あんた達」
「これかい? 男同士のスキンシップというやつさ」
「ちょっと待ってェー――ッ! ギーシュ・ド・グラモンンー――ッ!!」

康一がギーシュの両手を掴み、その弾みでベッドに転がった。
そんなことはおかまいなしに、言葉を続ける康一。

「もう、余計なことを言ったりやったりするのは止めてくれッ! 僕だって、変な目で見られたくないんだぞッ!!」

一歩間違えれば、明らかに康一がギーシュを押し倒している光景であった。
そんな様子を、ルイズは気味悪そうに眺めている。
そして、さっきのは何かの勘違いだろうと思って戻ってきたシエスタがその光景を見て固まっていた。

「いやぁあああああああー―――ッ!」
「しまったぁぁぁあああッ! ち、違うんだァァァアー――! シエスタさんー――ッ!」
「ちょっと! そんだけ元気なら、さっさとベッドから出なさいよ! 気持ち悪いわね!!」
「あのレディは、男同士の美しい友情というものを……」

どんどん不幸になっていく康一であったが、こんなのはまだまだ序の口であった……。

To Be Continued →

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