ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第七話『ギーシュにキッス』

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匿名ユーザー

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『決闘』の場、そこにいたのはギーシュのみではない。
噂を聞きつけた生徒たちの人だかりが出来ている。
観にきたのは、『決闘』ではなく、『暴力』

そこに現れたのはリンゴォ・ロードアゲイン。
待ち受けるは、ギーシュ・ド・グラモン。

ギーシュの頭はすでに冷えている。
しかし、ギーシュの怒りは溶岩の如く煮えたぎっている。
「…来たか」
「さて、それでは始めるとしよう……。諸君! 決闘だッ!」
派手な挙動で観衆へのアピールを決める。
「逃げ出さずにここへ来た事は、褒めておいてやるよ、逃がすつもりは無いがね」
観衆の中で、ルイズは一人不安であった。いや、一人ではない。
貴族たちの中に紛れて、シエスタも勝負を見守っていた。
『勝手にしろ』とは言ったが、この勝負を止められないものか、ルイズはそう考えていた。

「さて始めようか…。平民」
ギーシュが造花の杖を振る。花びらから現れたのは、青銅の人形。
「だが貴族を尊敬しないゲス者とはいえぼくの方から礼節を欠くのもなんだな…」
「自己紹介をさせていただこう、ぼくの名は『ギーシュ・ド・グラモン』
 土のドットメイジだ。『青銅のギーシュ』と呼べ」
「そしてメイジたる僕は魔法で戦うが…よもや文句はないな? つけさせるつもりも無いが」
「『ゴーレム』は『ワルキューレ』と名付けた。
 君のお相手を務めるのはこのワルキューレだ……。どこをヘシ折って欲しい?」

ルイズの思惑をよそに、決闘はその火蓋を切られた。

第七話『ギーシュにキッス』

青銅のゴーレムが一体、リンゴォへと近づいていく。
「それが魔法と言う奴か?」
「YES! 平民ごときに使ってやるんだ有り難く思いたまえ」
使わなければボロ負けする事は言うまでもない。
「なるほど…。それならばオレからも対等となる話をしておこう」
「…『対等』となるだって? 君とぼくが? ま、いい、聞いておいてやろう」
ワルキューレが動きを止める。

「まず…オレの名はリンゴォ・ロードアゲイン。武器はこの腰の拳銃だが……」
ブッ、とギーシュが吹き出す。
「じゅう? 銃だって? そんなものでこのぼくを?」
「そのとおりだが…オレがお前にあと『6歩』近づけば、正確な射程距離内に入る」
「なぁるほど、ご忠告痛み入るよ」
ギーシュは半分聞いてない風だったが、リンゴォは構わず「そして、」と続ける。
「俺の『能力』だが……」
「能力?」
平民が使うにしては妙な言葉に、ギーシュは怪訝な顔をする。
「ほんの『6秒』、それ以上長くも短くもなく」
「きっかり『6秒』だけ『時』を戻す事が出来る」

時が止まった。

騒いでいた観衆たちも、リンゴォの発言に凍りついた。
何人かはおしゃべりに夢中で聞き逃していたが、周囲の雰囲気を感じ静かになった。
しばしの沈黙――破ったのはギーシュである。
「えーと…何かな? 聞き間違いかもしれないが……『時を戻せる』?」
「それが能力。能力名は『マンダム』 そう認識していただきたい」
「く…くくく……」
こらえきれずに爆笑が巻き起こる。
ルイズは笑えない。己の使い魔の言動に頭を抱えている。
「まさか……」
「どしたのタバサ?」
「それにしても、あの男、何言ってるのかしら?」
この場にいる観衆の中で、ただ一人冷静なのがタバサであった。
勝つのは『どちら』なのかはタバサは最初からわかっていた。
いや、そもそもこれは勝負ですらない。
男の『能力』にはほんのちょっぴり驚いたが、勝負の結果には変わりがない。
ブックメーカーやっておけばよかったな、と少し後悔した。
キュルケは笑いこそしなかったが少々ルイズが哀れに感じた。
(こ、こいつはキチガイか……ルイズもかわいそうな奴じゃのう、キチガイを召喚するなんて) 

「フン! 対等なお話はそれでおしまいかい? それなら行かせてもらうぞ『ワルキューレ』ッ!」
ギーシュはリンゴォの話などハナから信じていない。ここにいる誰もがそうだろう。
ギーシュが気にかけたのは、相手の『能力』よりもむしろ武器。
銃など1メイル先から撃っても当たるかどうか疑わしい代物だが、一応の警戒はしておく。
が、所詮は『一応』――平民がメイジに立ち向かうには、あまりにも脆い杖。
剣が平民の『牙』ならば、さしずめ銃は少し遠くまで届く『唾』に過ぎぬ――そう自惚れていた。

青銅の戦乙女がリンゴォに躍りかかる。
金属製にしては早い動きだが、問題なく避ける。『1歩後退』
わずかな隙を突いて走り寄る。『2歩前進』
しかし後ろからワルキューレの追撃。後ろは振り返ったが、リンゴォは避けない。腕を交差し防御。
ワルキューレの拳が直撃。同時のタイミングで飛びすさりさらに加速をつけ『3歩前進』
少々ダメージは受けたが問題なく戦える。
転がりながら立ち上がり、前方に向き直る。『1歩前進』
体勢を崩したリンゴォにワルキューレが猛然と襲い掛かる。
「リンゴォ!!」
ルイズが叫んだ。同時に駆け出す。ギーシュは動かない。ワルキューレが真後ろに迫る。
『1歩前進』
ギーシュが有効射程圏内に入った。
瞬間、腰の銃を抜き出す。
それと同時に左手が光り輝く。リンゴォは体が羽のように軽くなったのを感じた。
今までにないスピードで狙いを定める。後ろのワルキューレでは間に合わない。
ここに来て、ギーシュが初めて焦りの色を浮かべる。
だがもう遅い。
引き鉄を引く。

ドグシャアッ


「…『一応』の用心は……」
「……な…!?」
ギーシュがほくそ笑む。
『何か』がリンゴォの足首を握り潰していた。
その衝撃で狙いは大幅に逸れギーシュの足元に着弾した。

「我が『ワルキューレ』…すでに地面に潜ませていた……」
リンゴォが『2発目』を撃つ前に、後ろのワルキューレが右腕を蹴り飛ばす。
左手の輝きも消え去る。
「君がさっき…『振り向いた』隙にな……」
勝利を確信したギーシュが得意満面の解説を始める。
「そしてきみは目の前のワルキューレさえ何とかすればいいと思っていたようだが…」
さらにワルキューレは倒れ付したリンゴォに蹴りをブチ込む。
「それ以上やめてギーシュ!」
ルイズの叫びはギーシュの鼓膜で自動的にシャットアウトされていた。
「フフフ、ヘシ折れたのは右腕か? 左足首は潰れている様だが…。大丈夫か?」
「それで、だ。解説するとだな」
「我が青銅のゴーレム『ワルキューレ』、操れるのは一体のみではない」

「ぼくのワルキューレは七体まであるぞ」
ドーーーン

ルイズは信じられないものを見た。
ワルキューレにつかまれていたはずのリンゴォが一瞬で脱出していたのだ。
いや、脱出と言うのもおかしい。
地面から現れたワルキューレの手を、彼は確かに避けたのだ。
つまり、ルイズが確認した時には、リンゴォはもうすでに脱出していた。
奇妙な事はそれだけではない。
確かに蹴り飛ばされたはずの銃が、今リンゴォの手の中に握られている。
(なぜ?)
リンゴォの左手が光るのをルイズは見た。

ギーシュは信じられないものを見た。
なぜ、と考えるヒマはなかった。
リンゴォの発射した鉛弾が腹に突き刺さっていたからだ。

「やはり……おまえは………ギーシュ・ド・グラモンといったか…」
「おまえは『対応者』にすぎないッ!」

腹の銃創からは血が溢れ出し、焼け付く様な痛みが走る。
致命傷ではないが、かつて経験した事のない痛みが体中から脂汗を流させる。 
血の気の引いた顔面には涙が伝い、全身無様に震えている。
腹から流れ出す血液が、ギーシュを更なる恐慌に誘い込む。
「い……イィッ、クァアア……!」
(痛い、痛い、痛い、痛、死、死ぬ――――)
死ぬわけはない。しかしそれが今の彼に理解できるだろうか?

「この弾倉にはあと『五発』残っているが……オレが仕とめるのは『漆黒の殺意』で
 オレの息の根を止めようとかかってくる者だけだ」
もはやリンゴォは背を向けてその場を歩き出していた。
「おまえなんかにはとどめを刺さない…………。失せろ……さっさと医者にでもかかるがいい」

to be continued...

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