ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのパーティ-5

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匿名ユーザー

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僕たちはルイズに案内されるがままに、学院寮にあるという彼女の部屋へと向かう(彼女が言うに、この学院は全寮制だという事)。
彼女曰く、本来使い魔はおのおのの適した環境を住処とするらしいが、人間というのは異例らしく、見合う場所がないため、暫定的にルイズの部屋ということになったらしい。
使い魔でない僕まで一緒というのは、あわや牢屋行きになりそうだった僕について、ルイズが口を利いてくれたためらしい。
大分、恩着せがましく言っていたため、少しばかり癪に障ったが、僕は素直に感謝の意を述べた。

石造りのアーチを抜け、重厚な石造りの階段を何段ものぼり、長い通路を通った先に、彼女の部屋はあった。
そこの部屋は、昔家族で行ったフランスで見た、貴族の部屋とよく似ていた。
もっとも電気でなく、ランプの明かりで部屋が照らされているため、派手な装飾が成されているであろう家具も、さほど嫌な感じをさせなかった。

ルイズは僕らにパンを渡すと、部屋にあるものの中でも、一際装飾が華美なベットに腰をかけ、僕たちと向かい合った。

「本当に、別世界から来たの?」

どうやら先ほどの話の続きを始めるつもりらしい。

「何か証拠見せてよ」

異世界から来た証拠。はじめは服の素材を見せてみようかと思ったが、それでは文化の違いですまされる可能性がある。
なら、ここでの文明レベルで作れないものを見せればいい。
今までの発言や、見た感じから生活レベルは僕たちの世界で言う、中世末期から近世初期ぐらいといった所だろう。
仮に魔法でさらに高い技術レベルを有していようとも、流石にここまでは作れまいと確信を持てるものが一つ、あった。

「才人、カバンの中身を」

だが言い終わる前に、既に才人も同じ事を思いついていたのか、先ほど中庭で回収したカバンを開き、中に入っているものを取り出した。
ルイズは出てきたものをじーっと眺める。

「何、これ?」
「のーとぱそこん」

パソコン。修理したばかりのそれは、ぴかぴかとプラスチックの光沢を放っている。
にしても才人の声が、詰め物をしている所為か、全く締まらない。いや、勢いよく肘打ちをした僕が悪いのだが。
もう少し加減をすべきだったな……等と考えている内に、才人はパソコンの電源を入れた。
そして、パソコンの画面やゲームなどをルイズに見せる。写真などがあれば良かったのだが、あいにく修理に出していたため、そういうデータは残っていなかった。

様々な説明の甲斐あってか、ともかくルイズは、多少の不信感を残しているようではあるけれども、一応、異世界から来たと言うことを信じるという意思を表した。
ここでようやく本題である、元の世界に返せるかという事をルイズに問う。

返答はすぐに返ってきた。
「無理よ」

彼女が言うに、サモン・サーヴァントは、本来この世界……ハルケギニアにいる生き物が呼び出される者で、異世界から使い魔が呼び出されるという話は聞いたことがないらしい。
またサモン・サーヴァントは呼び出すことしか出来ない上、使い魔がいると使えないらしい。

「そういえばさっき『できるんなら、破棄している』と言ってましたね。何故です?」
「それは……」

いささかルイズは間をおく。

「使い魔が死ななければ、ならないからよ」

そのままルイズは才人に向かって「死んでみる?」と聞く。才人は全力でかぶりを振った。当たり前だ。
ともかく、すぐに元の世界に戻る手段は無いらしい。
しかたない。長時間かかってでも、いろいろ調べてみるしかないだろう。
どれくらいかかるだろうか? 一ヶ月か? それとも一年? いずれにせよ、すぐには帰れないのだけは事実だ。

「わかった。じゃあ、僕たちは何をすればいい?」

しばらくは情報を集めなくてはならない。貴族の近くなら情報も多く手に入るだろう。
第一、彼女には迷惑をかけてしまったという負い目と、口利きをしてもらった礼もある。
僕は恭順するということを示した。
才人も渋々ながら、使い魔になることを了承する。
とりあえず僕は学ランの襟を正して、才人は鼻の詰め物を抜いて、形を正して、ルイズの方を伺った。

「そうね……」

考え込むように唸りながら、ルイズは僕と才人を交互に見る。そして大きくため息をついた。

「とりあえず使い魔の方からね。使い魔には、主人の目となり、耳となる能力が与えられるんだけど……無理みたいね。他には……主人の望むものを見つけてくるんだけど。
 例えば、魔法の触媒となる秘薬の材料。そうね……硫黄とか、特殊なコケとか。あんた、解る?」
「全然。無理」
「はぁ…… 後は、これが一番大事なんだけど、主人を守る事ね。でもこれは……」

間をおいて、僕の方を見、言う。

「こっちの方が、よっぽど期待できそうね」
「うっせ」
「だからあんたに出来そうなことをやらせてあげる。そうね…… 洗濯。掃除。その他雑用ってとこかしら」
「ふざけんな!」
「じゃああんた、何か出来ることあるの?」

そう聞き返され、言葉に詰まる才人。そんな才人を後目に、次は僕の方へと向き直った。
しかし指をさすなり、突然頭を押さえて、考え込むように唸った。その仕草は、何かを思い出そうとしているように見える。
そこでふと気がついた。
まだ僕は、彼女に対して名前を教えてないことに。

「花京院典明。僕の名だ」
「ノリアキ? 変わった名前ね。……あんたはここでは衛兵兼、あたしの従者ってことで学園長から達しが出たわ」
「具体的には?」
「あたしが学園に行ってる間は、衛兵としての仕事を。あたしが帰ってきたら、従者としての仕事をしてもらうわ。基本的にはそこの使い魔の手伝いね」
「そこのってなんだよ!」

正直、遠くに飛ばされたらどうしようかと思ったが、とりあえず、僕はここでの拠点を手に入れた。帰る方法は、これからじっくり探せばいい。

ルイズは大きく欠伸をする。

「ふぁ~……。いろいろと喋ってたら、眠くなってきたわ」

そういえばもう日が暮れて、大分時間が経つ。僕らの時刻で言えば、今は夜中の10:00ぐらいだろう。
ふと部屋を見る。ベットは当然、一つしかなかった。

「俺たちは何処で寝たらいいんだよ」

ルイズは毛布を二枚、こちらに投げてよこし、もう一度大きな欠伸をしながら、床を指さした。

「犬か猫かよ!」
「しかたないでしょ…… ベットは一つしかないんだから」

そういいながらルイズは、僕たちがいるにもかかわらず、服を脱ぎ始めた。
才人はなにやら興奮気味にルイズを止めようとしている。
僕はというと、そういえば貴族というのは小間使いが部屋にいたとしても、基本的に気にもとめないらしいな。
と歴史の授業で習ったことを思い出していた。
才人の方を見ると、今度はなにやら、ぶつくさ小声で何かいっていた。

そんな才人を見ている間に、こっちの方へと下着が飛んできた。

「じゃあ、これ、明日までに二人で洗っといて」
「何で俺がお前の下着を! 洗濯! ふざけるな! 嬉しいけどさッ!」
「誰があんたの面倒見ると思ってるの? ここは誰の部屋? 誰がご飯用意すると思ってるの?」
「うぐっ」

才人はまたルイズに不平を言っている。案の定、またやりこめられている。
そういう僕も危うく、自分でやれ、自分で! といいそうになったが、彼女は一応『恩人』であると言い聞かせ、喉元まで来たその言葉を飲み込んだ。

ともかく、今日は疲れた。僕は毛布にくるまり、床に身体を横たえた。
才人の方も、同じように毛布にくるまり、身体を横にしている。
ルイズが指を弾くと、部屋のランプは光を失った。便利なものだ。

しばらくその状態で横になり、窓の外から二つの月を眺めた。
ベットの方から寝息が聞こえる。既にルイズは寝ているようだ。
その、規則正しい寝息の音を聞き、僕も瞼がストーンと落ちてきたのだった。

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