ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『キュルケ怒りの鉄拳 その2』

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『キュルケ怒りの鉄拳 その2』


強烈な眩暈を感じ、同時に自分自身の特性を思い出した。
なぜここまで重要なことを忘れていたのか分からない。
分からないが、それでも目の前の事実は動かしてみようがなかった。
ドラゴンズ・ドリームの外周を取り巻く「円」に触れた生き物は、触れた部分が他所へ転移する。
使役者が確たる意思をもって触れれば吉の方角へ移動し、
何の考えも無く漫然と触れれば、向かう先は……。

「ル、ルイズ! 口で息シテンジャアネェー! 鼻使え鼻ァ~!」
ルイズの顔色は白から赤、赤からまた白、そして青へ入ろうとしてた。
「ダカラ鼻だッツーの! ハナハナハナハナハナハナハナハナハナハーッ!」
小刻みに痙攣し、寝ているというよりは気を失っている。
このままでは命さえ失ってしまうだろう。
「何処イッタルイズの口! ルイズの口ィ! デテコイくちィー!」
この部屋の中には大凶の方角がない。
つまり転移した場所はこの部屋以外のどこかということになる。
ベッドの底にでも押し付けられているのか。噴水の中にでも出てしまったか。
このままではルイズが死ぬ。大凶とはそういうものだ。
ドラゴンズ・ドリームは多くもない記憶を必死で手繰り寄せた。
この事態を解決する手段があったはずだ。あった。
「そ、ソウだヨ! 解除スりゃイインじゃネェか!」

能力を解除した、ような気がする。
自分が何をし、ルイズはどうなったのか。
それを知る前にドラゴンズ・ドリームの意識が途切れた。

ルイズに、昼食は抜く、と宣言された。
もともと必要ないものなのに、何の意味がある罰なのだろう。

一閃、剣が横に、縦に振るわれるたび、青銅の乙女が切り裂かれ、倒れ伏していく。
そこまですることはないんじゃないかと思ったが、
ゴーレム相手に容赦をするつもりはないようだ。
怯えきったギーシュの隣に剣を突き立て、決闘を終わらせるかどうか質問した。

土くれのフーケの正体が明らかになった。
そう、大泥棒土くれのフーケはなんと大泥棒土くれのフーケだったのだ。
この分かりきった事実に皆が驚きを隠せない。
とりあえずゴーレムにミサイルランチャーを向けた。

楽団が甘い音を奏で、豪奢な料理の数々は輪をかけて甘い香りを撒き散らす。
きらびやかな光源の下、人影が回り、抱き上げ、ステップを踏む。
ここは貴族のみに参加が許された絢爛な舞踏会。
美しい娘たちがより一層美しく着飾るが、ドラゴンズ・ドリームのお姫様にはかなわない。
桃色がかった髪をバレッタにまとめ、白いパーティードレスに身を包む。
開いた胸元は指を飾る宝石より輝き、はにかみを含みうっすら赤らんだ笑顔は何より愛らしい。
差し出された手に応えるべく、手を伸ばし、なぜか空を掴んだ。

「……アレ?」
小鳥が囁く愛の言葉が鬱陶しい。
空は白み始め、窓からは早朝特有の冷たく爽やかな風が吹き込んできた。
ランプは消え、本はあるべき位置に戻されている。
ベッドの上にルイズはいない。下着とブラウスが部屋の隅に重ね置かれていた。

頭が上手く働いていないようだ。
眩暈は無いが、シャボン玉を幾重にも重ねたように、意識がぼんやりとしている。
「何ヤッテタんだっけカ……オレ」
不幸な事故でルイズの唇をどこかへ飛ばし、その後何かを見たはずなのだが、覚えていない。
とても楽しい何かだったことは覚えているが、具体的に何だったのか思い出せない。
「あァー……アレだな。オレ自身の性質ってヤツが変ワッテきてンのかもナー」
そういえば昨日の昼にも原因不明の眩暈があった。
それに昨夜の失神。失神? スタンドが? ありえない。
この世界に召喚され、確実に何かが変わってきている。
「使い魔になりソコネタッツーのはクヤシイけどヨォー……」
世界に適応しつつあるのか。
「イイッちゃイイね。コノ調子でイキゃオレの姿が見える日も遠クネー」
まずはルイズを探すことにしよう。

「イねーなァー」
学院の中を探し回ったがどこにもいない。
念のため、と医務室まで見回ったがやはりいない。
食堂には人が大勢詰めていたが、そこにもルイズはいなかった。
睥睨した端にキュルケとシャルロットを認め、ドラゴンズ・ドリームはそちらへと降りていく。

「なァーキュルケキュルケキュルケよォー。ルイズ見なかったかよォー」
元気が無い。キュルケ曰く、おかしな夢を見たとのこと。
「ア、オレもナンカ見たゼ。アレ夢カ?」
小さいが性質の悪い蛭に吸い付かれる夢だそうだ。
「ヤダよなァーッ、蛭! ゴキブリやネズミもウゼーッケドよー。キノコもヤダねー」
記念すべき使い魔召喚の日なのに、とぼやくぼやく。
「ルイズも今日召喚すンダ。ルイズも」
シャルロットは聞いているのかいないのか。
口を開くのは食べ物を食べるためだけ、といった調子でサラダをついばんでいた。
「イーなァメシ。ケチケチシネーでオレにもワケロヨ。なァー」
キュルケがぼやき、シャルロットが食べる、
その後ろを男子の一団が通りかかり、足を止めた。


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