ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

依頼! 風のアルビオンを目指せ! その③

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匿名ユーザー

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依頼! 風のアルビオンを目指せ! その③

早朝、ルイズ達は馬に鞍をつけ準備をしていた。するとギーシュが提案する。
「僕の使い魔を連れて行きたいんだ」
地面からジャイアントモールのヴェルダンデが出てきて、ギーシュは「僕の可愛いヴェルダンデ!」と抱きつく。
だが地中をかなりの速度で掘り進めるヴェルダンデとはいえ、行き先は『アルビオン』だからとルイズに却下される。
で、却下した相手をヴェルダンデは押し倒した。
「ちょ、ちょっと! 何なのよこのモグラ!?」
ルイズは身体をモグラの鼻で突き回され、地面をのたうちスカートが乱れたりした。
「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女ってのは、ある意味官能的だな」
「薔薇に棘がある理由はどーした」
冷静なツッコミを入れる承太郎だが助ける気も鑑賞する気も無く、ただ呆れているだけ。
ルイズはモグラが姫様からもらった指輪に鼻をくっつけてきたので本気で怒り出した。
「この! 姫様から頂いた指輪に!」
「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。 よく貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ」
「なるほど『土』系統のおめーにとっては相当役立つ使い魔って訳だ」
「そうなんだそうなんだ! さすがジョータロー話が解るゥ!」
その時、一陣の風が舞い上がりヴェルダンデを吹き飛ばした。
「なっ、何をするだァ――――ッ! 許さん!」
ギーシュが杖を抜いてわめく。
承太郎は静かに風の起こった方向を睨んだ。
『敵』ならヴェルダンデごとルイズを傷つけるに違いないが、ルイズは無傷。
現れた長身の羽根帽子男は敵ではないだろう……と承太郎は判断した。
羽根帽子の男は一礼をして名乗る。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行する事を命じられてね。
 君達だけではやはり心許ないらしい。しかしお忍びの任務であるゆえ、一部隊をつける訳にもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ」



帽子を取ったその男はルイズ達より十歳は年上と思われるダンディな髭の男だった。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。
 すまない……婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬフリはできなくてね」
「……婚約者…………?」
承太郎は疑いの眼差しでワルドと、ルイズを見た。
ルイズは確か十六歳のはずだ。まあ、婚約者がいてもいいだろう。
だがワルドはどう見ても十歳くらい年上だ。まあ、歳の差カップルもあるだろう。
ロリコンか、ヴァリエール公爵家の家名目当てか。
ルイズは自分を助けてくれたのがワルドだと解ると、信じられないといった面持ちで駆け寄り抱きしめられた。
そしてルイズは感動の再会を楽しんだ後、承太郎とギーシュを紹介する。
こうして彼等はアルビオンへと旅立つ事になった。
ちなみにヴェルダンデは「行き先はアルビオンだから」という理由で置いてく事に。

――トリステイン魔法学院、学院長室。
オスマンが水パイプを吸っていると、コルベールが部屋に飛び込んできた。
「いいいい、一大事ですぞ! 城からの知らせです! 
 チェルノボーグの牢獄からフーケが脱獄したそうです!
 門番の話ではさる貴族を名乗る怪しい人物に『風』の魔法で気絶させられ――」
コルベールの話をまとめると以下のようになる。
魔法衛士隊の中に裏切り者がいて、そいつが脱獄の手引きをした。
なるほど確かに大変だ。
「じゃが我が学院には何の関係も無いのう。 宝物庫はより頑強に修理したし、もう破壊の杖は盗ませんよ」
「それはそうですが……」
「ところで紙タバコの試作品はできたかね?」
「いえ、まだです」
何だかんだで平和な学院だった。
ルイズとギーシュ(と承太郎)が授業を休んで早朝から出かけた事は知っていたが、その中に裏切り者がいると噂の魔法衛士隊の隊員がいるなんて知る由もなかったし、
仮に知っていたとしても裏切り者が狙ったかのように同行してるなんて思わなかった。


アルビオンへ向かうルイズ一行。
さてここで誰が何に乗っているか記しておこう。

承太郎、学院の馬。
ギーシュ、学院の馬。
ルイズ、ワルドの膝。
ワルド、自前のグリフォン。

道中、ワルドは甘いささやきを繰り返し、ギーシュは愚痴を繰り返した。
ルイズはワルドの甘いささやきを聞きながら、チラリ、チラリと承太郎を見る。
承太郎は無言で馬の進路を見ているだけだった。
その反応が、ちょっと癪に障る。理由は解らなかった。
「やけに後ろを気にするね。まさか、どちらかが君の恋人かい?」
ワルドは笑いながら、しかし真剣な眼差しで言った。
「こ、恋人なんかじゃないわ」
「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまう」
「で、でも……親が決めた事だし……」
「おや? 僕の小さなルイズ、僕の事が嫌いになったのかい?」
「嫌いな訳ないじゃない」
ワルドは憧れの人だ。
幼い日、婚約の正しい意味を知らなくとも、彼がずっと一緒にいてくれると思って、嬉しかった。
今ならその意味が解る、結婚という意味が解る。
アンリエッタ姫の政略結婚とは違う、自分達の結婚を――でも――。
ルイズは何だかとっても複雑な気持ちになる。
ワルド――憧れ――婚約――嫌いじゃない――結婚――…………。
そんなこんなで港町ラ・ローシェルに到着する。


ラ・ローシェルは山道を越えた峡谷に挟まれるようにあった。
岸壁を彫刻のように彫った建物が多数見受けられる。土のメイジが作ったのだろうか。
しかし港町なのになぜこんな山地にあるのか……承太郎は天を仰いだ。
一際高い山に、小さな異物を見つける。スタープラチナの目で見ればそれは船。
(なるほど……空を飛ぶ船という訳か。やれやれ、じじいと一緒でなくてよかったぜ)
祖父ジョセフ・ジョースターと同行してたら必ず墜落する運命にあると承太郎は思った。
結局、一緒に飛行機に乗って無事だったのは、エジプトから日本に帰る時の一回切りだ。
一行はラ・ローシェルで一番上等な『女神の杵』という宿に入った。
と、そこでいきなりの歓迎を受ける。
「ハァ~イ、遅かったじゃない」
「きゅ、キュルケ!? 何であんたがここにいるのよ!」
一階は食堂になっていて、タバサもキュルケと同じテーブルで本を読んでいた。
キュルケはいきなりワルドににじり寄る。
「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」
ワルドはキュルケを拒絶するように左手で押しやる。
「婚約者が誤解するといけないので、これ以上近づかないでくれたまえ」
そう言ってルイズを見るワルド。赤くなるルイズ。つまらなそうな顔をするキュルケ。
「婚約者? あんたが? …………。ジョータロー! あなたを追いかけてきたのよ!」
即座に矛先を変えてキュルケは承太郎の腕にしがみついた。
いくら追い払ってもやめない事はすでに承知しているので、承太郎はげんなりとした口調で問う。
「キュルケ……何でてめーがここにいる」
曰く、朝方窓から見てたらルイズ達が出かけるのが見えたため、タバサに頼んでシルフィードで送ってきてもらったそうだ。
先程の言動から狙いは新たな恋の相手ワルドだったようだが、あっさり振られたため承太郎に戻ってきたようだが、
承太郎も最初から相手にしていないので結局キュルケの相手は誰もいないも同然だった。
哀れキュルケ。いつか君にも素敵な相手が現れるさ。
太陽のような輝きを持つ、強くて優しくて研究家のナイスガイが!
コーラを飲んだらゲップが出るってくらい確実に!


宿屋の食堂で承太郎達がくつろいでいると、桟橋へ乗船交渉へ行ったワルドとルイズが帰ってきた。
アルビオン行きの船は明後日にならないと出ないらしい。
仕方ないからそれまでの間この街で時間を潰す事となり、早速ではあるが宿の部屋割りがワルドによって決定され鍵を渡された。
キュルケとタバサが同室。まあ親友同士だし一緒に来たし文句無しだ。
承太郎とギーシュも同室。まあ男同士だし特に問題ない。
ルイズとワルドは同室。まあ婚約者だから当然ではあるが……ルイズはかなり動揺。
そしてルイズとワルドは同じ部屋へと消えていった。
承太郎は食堂に残って食事を続ける。タバサも見かけによらず大食いなのか食事を続ける。
向かい合って黙々と食事をする承太郎とタバサは何とも不気味であった。
キュルケはどうしたものかしらと思いつつワインを飲む。
ギーシュはもう腹がふくれていたため、ぼんやりと頬杖をついていた。
「しかし、まさかルイズに婚約者がいたとはなぁ……」
「あら、ルイズにも手を出そうとしてるって噂は本当だったのかしら?」
ギーシュの呟きに乗ってきたのはキュルケ一人だった。
他二人は黙々と食べている。
「やれやれ、何でそういう勘違いをするかな。単純に驚いただけだよ。 それにしてもルイズにはできすぎた婚約者だな。
 女王陛下の魔法衛士隊でグリフォン隊隊長……憧れるよ」
「でもあんな髭ヅラのおじさん、私ならお断りよ」
ここまでルイズ達を追いかけてきた最初の理由はすっかり忘却の彼方らしい。
「まっ、確かに年上すぎるかな。何歳なんだろうね? 三十には届いてないようだが」
「大人の殿方っていうのはね、ジョータローくらいの年齢が丁度いいのよ」
「まあ確かに。しかしルイズは年齢より幼く見えるからなぁ」
「ジョータローとルイズを『親子』って言ったら何人信じるかしら?」
「さすがそれは無理だろ。でもタバサなら『親子』で通用するかも」
「寡黙なところとか似てるしね。クスクスクス」


二人が調子に乗って笑い出すと、承太郎のフォークが止まった。
「おいッ! 俺はまだ十七だぞ」
二人の調子に乗った笑顔が凍りついた、タバサのフォークも止まった。
沈黙が流れる。
静かに流れる。
時間が停止したように。
「ん、んぐッ。コホ、コホッ」
タバサがむせ、慌てて水を飲む。
そしてグラスをトンとテーブルに置いた音を合図に、時は動き出した。
「僕と同い年だって!? ジョータロー!」
「私より年下ですって!? ダーリン!」
「老け顔」
タバサにまで言われてしまう。言われてしまった。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
承太郎の周囲の空気が質量を持ったようにズンと重くなる。
さらに気温がなぜか急に下がってきたような気がする。
エコーズACT3とホワイト・アルバムのDISCがINされたようだ。
「あ、あはは、ジョータロー? 怒っているのかい?」
「ダーリン! 落ち着いてダーリン! 普段のクールなあなたが好きよ!」
「…………」
タバサはスッとサラダを承太郎に差し出した。
お詫びのつもりらしい。
承太郎は無言でそのサラダを食べた。初めて食べるサラダだ。
苦い。テラ苦い。ゴッツ苦い。めがっさ苦い。ザ・ワールド級に苦い。
承太郎は盛大にサラダを吹き出した。タバサの顔にサラダがかかる。
「ゴホッ、ゴホ! ……何だこれはッ!?」
「はしばみ草のサラダ」
はしばみ草。苦くてマズイ食卓の嫌われ物。タバサの好物である。
それを大口でパクリと口に含んでしまった承太郎は、あまりの不味さに気分を悪くし早々に部屋で休む事になる。
空条承太郎にこの世界で初めて敗北を味あわせたのは、はしばみ草のサラダだった。

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