ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

依頼! 風のアルビオンを目指せ! その①

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依頼! 風のアルビオンを目指せ! その①

ラ・ヴァリエールの屋敷にある中庭の池に浮かぶ小船の上ででルイズは泣いていた。
そこはルイズが一番安心できる場所。
秘密の場所。
そこに一人の若者が現れる。
「泣いているのかい? ルイズ」
十六歳の彼は優しく微笑むと、六歳のルイズに手を差し出した。
魔法が使えないという事で家族に色々言われて、悲しくなって、でも彼は違う。
彼はルイズにとても優しくしてくれる。
だから、ルイズは彼の差し出した左手を握った。
――あれ?
彼の左手はやけにゴツゴツしていた。おかしいな、もっとスラリとした手だったはず。
手の甲を見てみれば、なぜかルーンが刻まれてたりする。
――あれ? あれ?
十六歳になったルイズは相手の顔を確認した。
承太郎だった。
無表情だった。
「オラァッ!」
「えっ」
そして突然ぶん投げられた。
「ほれほれ、早く『レビテーション』を使わないと池に落っこちるぜ」
「イィィィヤァァァァァァッ!!」
悲鳴が上昇し、そして落下する。
ルイズの眼前に冷たい池の水が迫り――!


ドテチン。そんな情けない音を立てて、ルイズはベッドから転げ落ちた。
パチパチとまばたきをして、ここがトリステイン魔法学院の寮の自室だと確認する。
「……夢、か」
何て夢だろう。何でいきなり彼が承太郎なんかに変わったんだろう。
その挙句……ぶん投げられるなんて。
そういえばフーケのゴーレムと戦っていた時、あんな風に投げられた。
あの時は緊急事態だったし、ある意味仕方のない事だったけど、今思い出すとフツフツと怒りが込み上げてくる。
そこでルイズはまだソファーで眠っている承太郎に忍び寄った。
帽子のつばに目が隠れていて起きてるのか眠っているのか解らないが、これだけ近づいても反応が無いって事は寝てるって事だよね。
絶対そう、間違いない、うん、そうに違いない。
「あの時の恨み、思い知りなさい! コォォオオオッ!」
力いっぱい息を吸い、ギュッと拳を握って振り下ろす。

   ツンデレオーバードライブ!

それはまさにツンデレという精神エネルギーを凝縮したツンデレ疾走!!
『弾くツン』と『くっつくデレ』のうち、『弾くツン』を一点集中した流法!
いかに好感度が高まりつつあっても、ツンが発動したからには問答無用。
ツンっと突っぱね弾くエネルギーを右拳に集中した一撃が放たれたのだ!

承太郎の鳩尾にルイズの拳が触れる直前、その手首を背後からカルーク掴まれた。
「へ?」
振り返ってみると、スタープラチナが背後に立って┣¨┣¨┣¨┣¨していた。
「何の……つもりだ? ルイズ」
眠っていたと思っていた承太郎が帽子のつばを上げながら睨んでくる。
「こここ、これは、あの、ちょっと起こして上げようと思っただけよ!」
「ほーう。この世界じゃ人を起こす時は鳩尾を殴るもんなのか。
 明日からてめーを起こす時……そうさせてもらおう……」
こうして今日もご主人様としてのイニシアチブを取れない一日が始まるのだった。


土くれのフーケを捕らえ、破壊の杖を取り戻したルイズとキュルケとタバサ。
この三人の噂は学院中に広がったが、同時にこんな噂も広がっていた。

・ゼロのルイズは特に何も活躍していない。
・ゼロのルイズの使い魔があの奇妙で強力な魔法でフーケをやっつけたらしい。
・なんだルイズがすごいんじゃなくて使い魔がすごいんじゃないか。

そんな空気を嫌ってか承太郎は授業への参加を拒んだ。
その日の授業は疾風のギトーによる、風が最強である所以を講釈されたのだが、承太郎はそんな事知る由もなかった。
厨房の裏で薪を割りを、シエスタに料理をもらい、そしてコルベールの自室を訪ねる。
「やあジョータロー君、いらっしゃい」
「邪魔するぜ。…………」
「あはは、すまんね、臭いだろう? 色々な薬品を研究しているからねぇ」
コルベールの自室は本やら研究器具やらで満たされ、さながら化学室のようであった。
「紙タバコだがね、あれはまだできとらんよ。試作品を作ってる最中だ」
「いや……シエスタにこの学園で一番歴史に詳しそうな教師を教えてもらってな、まだたいして日は経っちゃいないが……何か解った事はあるか?
 俺の世界の事でも……ガンダールヴの事でもいい」
コルベールは謎の液体が入ったフラスコをいじりながら答えた。
「魔法は『火』『水』『風』『土』の四系統ではなく、元々は五系統あり、それぞれがペンタゴンの頂点を指していたと言われている。
 その失われし頂点の一角こそ『虚無』の系統。
 ガンダールヴとは伝説の虚無の魔法使いの使い魔の事なのだ」
「虚無の、魔法使いだと?」
「だが、現在において虚無系統の魔法は確認されておらん。
 君の手に現れたルーンは、ガンダールヴのそれと非常によく似ておる。
 が、虚無の魔法使いが存在しない以上、残念ながら君がガンダールヴであるという確証は無いなぁ」


「……ルイズが魔法を使えない理由は、ルイズが『虚無』系統のメイジだからとは考えられないか?」
「ハハハッ、これはまた突飛な事を思いつくね」
「ルイズは『火』も『水』も『風』も『土』も使えねー。
 そして俺が虚無のメイジだけが呼び出せる使い魔なのだとしたら……」
「面白い仮説だね。だがミス・ヴァリエールは魔法は使えない」
「もし、失われた虚無の魔法の呪文や使い方を知る方法があったら、コルベール、あんたは虚無の魔法を使えると思うか?」
コルベールはフラスコから目を離し、しばし黙考した。
「うーん、どうだろう。解らないな。私は火のトライアングルメイジだし、使い方が解ったとしてもさすがに虚無までは……」
「ルイズの系統が虚無だとしたら、虚無のドットメイジになるという可能性は?」
「可能性は限りなく低いが、まあ否定し切る事はできないね。
 なぜなら虚無は失われている。誰も試す事すらできない魔法なのだから」
これ以上虚無だのガンダールヴだのの情報を得るのは難しそうだった。
承太郎は他に何か役立つ情報はないかと考えつつ、部屋を見回し、それを見つける。
「臭うと思ったら……これか」
それはフラスコに入った液体だった。しかも以前、嗅いだ記憶のある匂いだ。
「それは竜の血液だ」
「竜の血?」
コルベールが答えたが、承太郎にはとても血の匂いには思えなかった。
なぜならこの匂いはよーく身に覚えのある匂いだったからだ。
そんな承太郎の困惑に気づかずコルベールは講釈を続ける。
「昔、すさまじい雄叫びを上げて、見た事もない二匹の竜が東の空より現れ、一匹はその場から消え去り、もう一匹はどこかに落下したという。
 その時に流したと言われる血液を偶然入手してなぁ、その複製に取り組んでいる最中なのだよ」
「これが血液? だがこの匂いは……『ガソリン』ッ!」


「ガソリン? 何だねそれは」
「破壊の杖同様、俺の世界にある特殊な燃料だ。車やバイクを動かすのに使う……」
「くるま? ばいく? それはいったい何だね? ちょっと話してみてくれ」
異世界の道具に興味を惹かれ、コルベールが真面目な顔して問いただしてきた。
「やれやれ……その代わり、この竜の血について知ってる事をあらいざらい――」
「いや、今話した以上の事は知らんよ。なぁに後で調べとく。さ、話なさい。
 くるまとは何だね? 何をする物だね? どんな形だね? さあ、さあ、さあ!」
「……やれやれだぜ」
承太郎が解放されるのは夕食時になってからだった。
そしてコルベールの授業はその日すべて自習となった。
その理由を知る生徒はいない。

そんなこんなで結構普通だったか普通じゃなかったかよく解らない一日の最後、今日という日を普通じゃなかったと決定づける出来事が訪れた。

場所、ルイズの部屋。
ノック、初めに長く二回、それから短く三回。
フードの女、室内に入ってきてディティクトマジック(探知)をかける。
フードを脱ぐ。
品評会前日とまったく同じ行動パターンでやって来たのは、王女アンリエッタだった。

「ルイズ! あなたにしか頼めない重要な依頼があるの!」

その時承太郎は我関せずといった態度でソファーに寝転がっていたそうな。

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