ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

マジシャンズ・ゼロ-10

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「……とんだ目にあった。こういうのは、わたしのキャラじゃなんだがな」
まだ違和感の残る首を押さえつつアヴドゥルが言う。
「何よ。何か文句でもあるの!?」
それを嫌味と取ったのか突っかかるルイズ。
「いや、そうではない……しかし、コレを片付けるのか」
「…そうよ。私も手伝って上げるからさっさと働きなさい!」
(普通、逆のような気がするが)
慣れというのは恐ろしく黙って作業に入ろうとするアヴドゥルだが、ルイズの姿を見て止まる。
(なぜ爆発の中心にいて、無事なのは知らんが…。ボロボロの格好のままというのもな)
ルイズに怪我はないらしいが見事に外見はボロボロだ、服には穴が開き、全身を煤で汚している。
いても非力な上、今までの行動から率先して掃除はしないだろう。
また、必死に隠しているようだが、落ち込んでいるのが分かる。
(しばらく一人にしたほうがいいな)
それらを考慮した大人のアヴドゥルは、
「掃除はわたしがやっておこう。まずは着替えて来たらどうだ?」
遠まわしな戦力外通告を出す。
もちろん、そんな言葉の裏に気付かないルイズ。
「なんで、あんたに命令されなきゃいけないのよ!」
「貴族がいつまでもその格好ではまずいだろう?」
「…う。それはそうだけど……」
「着替えが終わってから、手伝ってくれればいい」
「確かに…、先に着替えたほうがよさそうね。いいこと、私がいないからってサボるんじゃないわよ!」
必要の無いキツイ釘を刺してからルイズは教室を出た。

「なんでこうなるのよ」
ボロボロの姿で自室へ帰りながら、ルイズは落ち込み呟く。
召喚したのが平民とはいえ、初めてまともに魔法が成功し、やっと自分は『本当』の意味でメイジになれたと思った。
誰にも『ゼロ』なんて呼ばれバカにされることもなくなり、輝ける未来が開けると思っていた。
そして……、
(……ちいねえさま)
いつもルイズに優しくしてくれた、姉のカトレア。
ようやく憧れの姉に自分の魔法を見せることができると思っていた分、落胆は大きかった。

(でも、それが何よ!)
この程度で負けるほどルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは弱いのか?
否!
この程度で負けるようなら、とっくの昔に引き篭もっている。
「たまたま、偶然、ちょっと失敗しただけよ!」
少し後ろ向きのような気がするが復活を果たすルイズ。

元気が出ると、周りのことを考える余裕が出る。
教室でのアヴドゥルを思い起こす。
冷静になると分かったが、どうやら気を使われたようだ。
ちょっと感謝の気持ちはある。
だが、ご主人様が使い魔に心配されるようではだめだ!
(あいつ、余計なお節介なんか焼いて)
ゆっくりだった歩く早さが、段々と早くなる。
そして、部屋に着くなり急いで着替え、体を拭く。
早々と身支度を整えたルイズはアヴドゥルの待つ教師へ急ぐ。
使い魔だけに自分の不始末を押し付けるのを、
(そんなの……貴族じゃない!)
強くルイズは心で否定した。

合流したルイズのがんばりもあり、なんとか昼休み前に掃除は終了した。
アヴドゥルやルイズにとって波乱の昼飯が始まる。
もちろんみんなの大好きな彼にとっても……。

ルイズの言葉通り、アヴドゥルの昼飯は朝より『少し』豪勢になっていた。
実際には、パンとスープに『ゆで卵』が新しく増えているだけ。
「これで『多め』か」
「何よ。文句あるの?増えただけでも感謝しなさい」
労働による空腹もあり、早々に食べ終えたアヴドゥルは、ルイズが上品に食べているのをしばらく眺めた後、辺りを見回す。

モギュモギュと、何回もよく噛み食べるルイズは食べるのが遅く、もう終わっている生徒が多い。
デザートを食べながら姿や、雑談している姿が多く見える。
その中でも、出入り口周辺でメイドに向かい合う集団が目に留まる。
どうやら、金髪で一人だけ趣味の悪い服の少年が、メイドにクレームを付けているようだ。
今にも土下座をしそうなメイドの姿がおもしろいのか、にやにや眺めている周りの連中。
あまりにもな光景に、注意しようと腰を上げかけた時、メイドの顔が見えた。
「あれは…シエスタか?」
(ますます放って置けなくなったな)
まだ食事中のルイズに、
「少し用事ができた」
一言残し、返事も聞かずアヴドゥルはシエスタに近寄っていく。

「その辺にしておけ」
いきなりの声に、シエスタを責めていたギーシュの声が止む。
「なんだ、君は?」
「何があったのかは知らぬが。これは少々やりすぎだ」
涙を浮かべ、土下座寸前のシエスタを見つつ、アヴドゥルは言い放つ。
「貴族なら貴族らしい態度を取れ」
「なッ!?」
『ゼロ』のルイズの使い魔である『平民』に咎められたギーシュに、周りからの野次が飛ぶ。
「そうだぞーギーシュ」
「元々、二股かけてたお前が悪いんだからな」
「もてねぇつらさがお前にわかるか?二股の罪を黙って受けろ!」
最後の……アフロのピザは怨念が篭っていそうだ。

ギーシュも、メイド-シエスタを泣かすほど脅かしたかった訳ではない。
ただ軽く説教し、犯した失態(二股)を誤魔化したかっただけだった。
(それが…どうしてこんなことに)
平民とはいえ、女性の涙に弱いギーシュは心の中で泣いていた。
どうにか話題を変えようとギーシュはあまり無い脳みそをフル回転させ、
「どうやら『ゼロ』のルイズの使い魔は、貴族に対する礼儀というものを知らないようだな」
さらに話を大きくし誤魔化すことにした。
「敬意を払う相手は選ぶんでな」
「よかろう、ならば君に貴族の礼儀というものを教えてやろう」
そこでチラッと視線を周りに送り、
「ヴェストリの広場だ。着いてきたまえ」
言い捨て去って行くギーシュ。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー