ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

割れないシャボンとめげないメイジ-3

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匿名ユーザー

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シーザーははっきり言ってまだ事態を軽く考えていた。
ここは世界とは隔離された未開の地であり、ここで使われている魔法はアフリカで見られるような一種の呪い(まじない)だと思っていたのだ。
そしてこの城は人が近寄らないような古城を勝手に使用してるのだろうと…その程度に考えていた。
ドラゴンやグリフォンといった空想上の生き物だって自身の知らない生き物をそう呼んでいるのだろうと考えていた。
使い魔だってインドのカースト制度に当てはまるようなもので不思議じゃないと。
『サモン・サーヴァント』と言われていたものは列車や何かしらの交通機関で通る日が少ないのだろうとも考えていた。
つまり、ここで言われた言葉は全てここ独自の物で世界から見ればなんて事はないものだと信じていたッ!


たしかにシーザーは昼間に魔法といった(あるいは呼ばれていた)自分の目では信じられない現象を目の当たりにした。
それでも、科学を持ってすれば解明されるものだと固く信じていた。
その上、魔法と似たようなことが自分にも言えることだったからだ。

即ち『波紋』と『吸血鬼』に『柱の男』の存在である。
人体のエネルギーは呼吸とは切っても切れない関係にある。呼吸によって人体の隅々まで血液に乗って酸素を運ぶからだ。
血中の酸素は体細胞つまりは肉体に関わりがある。
そして肉体に特殊な呼吸法により『波紋』を起こす。この『波紋』により人体のエネルギーを少しずつ少しずつ集めるのだ。
このことを東洋人の言う仙道とも言われ、『波紋』を使う人間は『波紋使い』と呼ばれている。
そしてこの『波紋』によるエネルギーは生命のエネルギー!ひいては太陽のエネルギーと同じなのだッ!
そして『吸血鬼』と『柱の男』は太陽を弱点とする。
故に!『波紋使い』は『柱の男』を滅ぼせる人類が持つ唯一の手段と言えよう!
そして『柱の男』は何時、何処でどのようにして発生したのかは不明である。
しかし何を食べるのか?それだけはハッキリしているッ!

それは『吸血鬼』である。
吸血鬼は人間を食べ、その吸血鬼を柱の男が食べるという食物連鎖の頂点中の頂点である。
しかし!シーザーにとって我慢ならないのは人間が危険に曝されるよりも、『奴ら』は人間に対して虫ほどにも関心が無いことである!!
それをシーザーが実感したのはあの日、ローマの地下にて友人のマルクを殺された時だ!

 マルクは純朴で、未来への希望に溢れていた!それなのに奴ら気にも掛けずに殺しやがった!

シーザーはその時、マルクの仇討ちに燃えていた。
それは漆黒の意思となってシーザーの心を燃やしていた!
しかし彼と出会って考えを改めたのだ!彼…JOJOつまりはジョセフ・ジョースターに!

 JOJOのあの時の俺とスピードワゴンさんを逃がそうと捨て身の囮を見て感動したのだ。
 俺はあれを見て『真の勇気』というものを知った気がする…それまで俺の頭にあったのは『殺す』という感情だけだった。
 だが、JOJOはまず俺達を『生かす』という事を実行したッ!
 俺はあの時、目の前の敵を殺すという漆黒の意思に支配されていたがJOJOは黄金のような意思を見せてくれた!
 それに報いる為に俺は帰らなければならないッ!JOJO達の元へとッ!!
 でなければかっこ悪くてむざむざあの世に行けねェーぜッ!

この様にシーザー自身も信じられないモノを扱っている。その点ではここの魔法使いとそう変わらない。
しかし、今彼の目に映っている物を理解して気が遠くなったッ!
今はもう夜であり月が出ている。只の月ならば良かったかもしれない。
ここは友の居る所から遠く離れた場所であるだけだと思うからだ。


しかし!月は『二つ』有ったのだ!!


割れないシャボンとめげないメイジ
現状確認


シーザーはまず目の前の小さい『主人』に対して自分のことを話した。
勿論『波紋』や『吸血鬼』等は今は関係ない。まずはこの少女に自分の世界の事を理解してもらわねばならないからだ。
「信じられないわ」
「俺自身信じられん」
シーザーはルイズに対して自身の住んでいた『場所』のことを説明していた。
「別の世界って、どういうこと?」
「魔法使いなんて存在しないし、何よりも月は一つしかない」
「そんな世界がどこにあるの?」
「俺が元々居たのはそうなんだッ!」
シーザーは怒鳴った。いや、正確に表現するならば怒鳴ってしまったのだ。
自身の認識していた事態と現在自分に起こっている事態との噛み合わせが非常に大きい事から意図せずつい怒鳴ってしまった。
「怒鳴らないでよ。平民の分際で」
「口を付いたら平民、平民とは随分口が悪いんじゃないかいシニョリーナ」
「だって、あんたメイジじゃないんでしょ。だったら平民じゃない」
「マンマミィーヤ…何なんだメイジだの平民だの…」
「もう、ほんとにあんたこの世界の人間なの?」
「だから違うと言っているだろうに…」
思わず溜息が出そうになる、それも一回や二回なんて数ではなく。

 まったく、地図に載っていないのも頷ける筈だ。元々そんな場所はなかったんだからな…
 こんな事態に比べたら地球の中心は実は空洞で地底人がひっそりと暮らしているとか
 南大西洋の海底には外宇宙から飛来してきた異形のモノが復活する日を夢見ながら待っているといった方がマシだ…

シーザーが溜息をつくとルイズは切なそうにテーブルに肘をついた。
テーブルの上にはランプが置いてあるが、電気を使ってはいないようだ。
それを見たシーザーは本当に異世界なんだなと思った。
「シニョリーナ…」
「何よ?」
「どうか俺を帰らしてくれ…」
「無理」
「何故だ…」
しかし、彼は昼間に説明を受けていたが、今は認めたくない故に聞き返した。
「昼間に説明したわ、使い魔として契約しちゃったのよ。
あんたがどこの田舎モノだろうが、別の世界とやらから来た人間だろうが、契約した以上動かせないって」
本当に現状を確認すればする程帰るということは絶望的らしい。
「そういえばシニョリーナ、使い魔とはどの様に召喚するだい?」
「使い魔は普通『サモン・サーヴァント』でメイジに応じた生き物が召喚されるわ。まったくなんでわたしだけこんな平民なのよ」
シーザーは平民という部分を聞き流し、質問を続けた。
「ならもう一回その『サモン・サーヴァント』だったかい?それをやってくれないか?」
「念のため尋ねるけどどうするつもりよ」
「呼び出すということは来る事が出来るっていうことだろう?ならそれをもう一回通れば元の場所に戻れるかもしれないッ!」
シーザーは名案だ!という風に提案した。少なくとも帰れるかもしれないという具体案が出てきたのだ!
先が全く見えない暗闇に希望という名の光が顔を見せたのだ。これにはシーザーも嬉しかった。
ルイズは一瞬悩んだ後、首を振った。
「………無理よ。『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文は存在しないのよ。」
「やってみなくちゃわからないだろう?」
「不可能。今は唱える事もできないわ」
「どうして!」

ルイズはこのことを言うべきか言わないべきか悩んだ。
この使い魔は元居たところに強烈に帰りたがっている。そのような人間にこの言葉は残酷ではないのか?とそう悩んだ。
しかし、意を決したように目の前の使い魔に言った。
「……『サモン・サーヴァント』を再び使うにはね」
そこで一旦区切り、また躊躇してしまった。
「構わない、続けてくれないか」
「…一回呼び出した使い魔が、死なないといけないの」
「なんだって?」
シーザーは固まってしまった。いや、固まるざるを得なかった。
「イッペンシンデミル?」
なぜ片言?とシーザーは思ったがこれは尋ねても仕方ない事だ。
「いや、いい……」
その言葉を聞いてシーザーはうな垂れてしまった。ふと視界には左手の甲に描かれたルーン文字が目に入る。
「ああ、それね」
そういえばルイズは説明していなかったのを思い出した。
「これはなんなんだい?」
「そのルーンはわたしの使い魔ですっていう、印みたいなものよ」
ルイズは立ち上がると、腕を組んだ。
よく見ると、目の前の少女は可愛らしいがシーザーは別に子供を口説くような趣味はない。
シーザーの理想はリサリサのような凛とした女性だからだ。
「………わかった。しばらくはキミの使い魔とやらになってあげよう」
「なによそれ」
「文句でもあるのかい?」
「口の利き方がなってないわ。『何なりとお申し付けください。ご主人様』でしょ?」
ルイズは得意げに指を立てて言った。それは可愛らしい仕草ではあったが、言っている事は厳しい。
「なら使い魔はどんなことをするんだ?」
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
要点を得ない説明にシーザーは理解できなかった。それが顔に出ていたようでルイズは今度はわかりやすく言い換える。

「つまり使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ」
「ほう」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「キミはついてないようだね」
誰のせいよ!誰の!とルイズは思ったが続けた。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬とは?」
「特定の魔法を使うのに使用する触媒よ。硫黄とかコケとかね」
「へぇ」
シ-ザーはそういうものなのかと感心しながら聞いていた。
「そんなの無理でしょ?秘薬の存在を知らないのに!」
「無理だね」
シーザーは即答した。薬草などの知識はあるがもともと世界が違うのだ。知識にあるのとは違うかもしれない。
「そして、これが一番なんだけど………使い魔は主人を守る存在であるのよ!でもあんたじゃ無理ね…」
敵というのが吸血鬼といったものならばシーザーも自信があったがどんなモノが敵として出てくるかわからない。
「守りきるという自信はないな…」
「だから、あんたにできそうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「使い魔どころか召使や使用人だな…」
「仕方ないじゃない。しゃべったら、眠くなってきちゃったわ」
ルイズはあくびをした。
「ではシニョリーナ、俺は一体何処で寝れば良い?」
どうにもソファーなどといった物も無いようだ。そう言った矢先にルイズは床を指差した。
その後、ルイズは毛布をシーザーに投げて寄越した。
これに対して流石のシーザーも腹に据えかねたようだ。


「どうにも誤解されてるようだが俺は犬や猫とは違うんだぜシニョリーナ!」

 もういい加減俺は怒っても良い筈だッ!確かに貧民街時代のあの時に比べたら良いかもしれないッ!
 だがこの言動は何なんだッ!?俺は自分でもJOJOの言葉を借りるならスケコマシだというの理解してるッ!
 寂しそうな女性を元気付けるための嘘ならばついても構わないとでも思っているッ!
 けれどそれとこれとは話が違うんじゃないのかッ!?

シーザーは抗議しようと思い口を開こうとしたがそのまま言葉が出ず、呆然としてしまった。
ルイズがいきなり脱ぎ始めたからである。
「…キミはいきなり何をしているんだい?」
キョトンとした声でルイズは答える。
「寝るから、着替えるのよ」
「………目の前に男が居ても平気なのかい?」
「男?誰が?使い魔に見られたって、なんとも思わないわ」
どうやら本当に犬や猫と同じらしいとシーザーは頭が痛くなってきた。
とりあえず寄越された毛布を掴むと頭からかぶり横になった。
もういい加減寝てやる、明日からは情報を集めなければなとシーザーは思った。
どうやって集めようかと考えようとするとその思考を中断するように何かがぱさっと飛んできた。
「じゃあ、それ、明日になったら洗濯しといて」
シーザーは不思議に思って手にとって良く眺めた。
それはレースやフリルのついたキャミソールや下着であった。

本当にこの先思いやられるとシーザーはこれからの未来と現在置かれている状況からつい自身の口癖が出た。
「マンマミーヤ」と。


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