ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのパーティ-3

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
地面に放ったエメラルド・スプラッシュの威力を見て、こちらへ近づこうとしていた鎧の男は足を止めた。
先ほどまでこちらに敵意を向けていた奴らも、目を丸くしている。
ともかくこの行動で、スタンド使いが今、ここにいないのは確認できた。
才人を引っ張る時も、今、エメラルド・スプラッシュを撃った時も、誰も反応しなかったからだ。
ならば結論は一つ。
僕をここに送り込んだ奴は、別にいるッ!

そうと決まれば、急いで本体を探さなくてはならない。
しかし……

「なんだよっ、変な所につれてこられたと思ったら、いきなり宙に浮いたりっ! 訳わかんねぇよ!」

あまりにも非常識な光景に、才人が思いっきり愚痴をたれた。
才人は僕と違い、スタンド使い、いや一般人に襲われても、それをのける術が無い。
多少危険だが、真っ先に逃がすしかない。
僕はハイエロファントの触手を、城壁に引っかけ、もう片方の触手を才人に巻き付けた。
そしてそのまま、定滑車の要領で城壁まで才人を持ち上げる。

「うおっ! なんだよ、これは!」
「黙ってろ! 舌を噛むッ!」

全力で才人を城壁の通路まで押し上げる。あまり力の強くないハイエロファント・グリーンにとっては、殆どパワーに余裕がない。
今、攻撃されれば、僕に身を守る手段はないッ!


しばしの間。
誰もこちらに攻撃してくる気配はない。それどころかほぼ皆が、僕の方には見向きもせず、才人の方を向いて驚いたような顔をしている。

「『フライ』ッ! しかも速い!」
「何で平民が魔法を使えるんだ!?」
「いや、その前に…… 誰か、あいつが杖を抜く所を見たか!?」

其奴等は、人が浮くということとは別の次元で驚いているようだった。
まさかスタンドの代わりに、違う概念があるとでもいうのだろうか?
ともかく、今はここから離れるのが先決だ。
友好的にすまそうにも、僕らはここの奴らに、敵意をもたれすぎている!
そのまま、才人を引き上げたハイエロファント・グリーンに捕まり、自分も城壁へと登る。

「この、火のラインメイジである僕が…… この僕が! 」

地面から立ち上がったマントをつけた奴らの一人が、こちらをにらむ。手には長めの棒ッきれらしきものが握られていた。
其奴は何かをブツブツとつぶやく。すると、杖の先に50cmはあろうかという火球が現れた。

「『フライ』中なら、さっきの妙な技もつかえまいッ! 平民風情がっ、思い知れ! 『フレイムボール』!!」

こちらに向かって火球が飛んできた。
僕は確信する。ここにはスタンドと違う、けれども似たような概念が存在するのだと。


速度は中々に速い。このままではかわしきれないだろう。
だが、このサイズなら……

「かき消せるッ! 『エメラルド・スプラッシュ』ッ!」

僕の捕まっていた触手から、エメラルドの力のビジョンが放たれる。
そのビジョンは、僕を追ってくる火球をうち消し、そのままマントの男に襲いかかった。

「何で『フライ』中に呪文が使えるんだッ!」

マントの男はそういって、僕のエメラルドスプラッシュを全身に浴びる。男の身体は木の葉のように宙に舞い、地面へとたたきつけられた。
下の広場が、一気に騒がしくなった。今ならここから逃げ切れる!

「なぁ、お前、今のどうやったんだ?」
「後で教えます。兎に角、いまは早く……」

下を見る。周りは平らな土地であるが、所々に点在する木々に隠れながらいけば、何とか巻けるかも知れない。

そのとき、後ろから小柄な少女特有の、高い声が聞こえてきた。

「まちなさいっ!」

僕らは、とっさに振り向いて、声の主を確認する。
その声の主は、こちらへ着た時、才人の一番近くにいた、桃色がかったブロンド髪の少女だった。
しかし、僕の視線はすぐにその少女の周りへと向けられた。
マントをつけた奴らが、さっきの奴と同じように、こちらに杖を構えていたからだ。

「ちょっとあんた達、あたしの『使い魔』に何するのよッ!」
「うるさいッ! まだ『契約』もしてないだろうが! 第一、『メイジ』だろうが『使い魔』だろうが、平民風情に貴族が遅れを取るなんて、恥さらしも良い所だッ!」

マントをつけた奴らのリーダー格らしき男と、先ほどの少女がなにやら言い争っている。
耳を傾けてみると、使い魔やら、契約やら、メイジやら、全く聞いたことのない単語が、連呼されているのが聞こえた。
良く解らないが、とりあえず、只で返してくれるつもりは無いらしい。
僕はハイエロファントをもう一度ほどき、触手状態にする。そしてそれを城壁の一カ所、一カ所に引っかけ、蜘蛛の巣のように張り巡らした。

再び下を見る。いつの間にか少女の姿は消え、マントをつけた奴らが杖の先を光らせていた。人数こそ10人ほどいるが、さっきの奴より大分、光が小さい。
無駄だと悟りつつ、僕は一応の警告を入れた。

「既にこちらには、そちらを攻撃する用意が出来ているッ! 何もしなければ、こちらも手を出すつもりはないッ」
「今更ァ、後に引けるかァァァァアアアッ!」

杖の光が石、氷、風、火… 兎に角、様々なものに変化し、僕らめがけて飛んでくる。
相手に引く意思は全くないようだ。ならッ!

「伏せてろ、才人! 『エメラルド・スプラッシュ』 INッ! 『法王の結界』ッ!」

僕も全力で応じよう。
人型の時なら裁ききれない量だが、この状態なら問題ではないッ!
先ほどの何倍もの量で発射されるエメラルドの破壊のビジョンは、石も、氷も、風も、火も全てを巻き込んで、奴らに襲いかかる。
相手を殺さない程度に加減はしたが、それでもこの量、もし、まともに食らえば二週間はベットから立ち上がれまい。
土くれはめくれあがり、ものはピンボールのように跳ね、砕け散る。
ほぼ瞬時に、下の奴らは恐慌状態へと陥った。

「ハァ~…… ハァ、ハァ、ハァ…… 」
「お…… おい、大丈夫かよ?」
「心配入りません。少し、疲れただけです」

しかし、僕の精神力も限界に達している。
あと一回、『エメラルド・スプラッシュ』を撃てるかどうか……
今、逃げ損なったら、次は無いッ!

「走ります。才人、ついてこれますか」
「ああ、何とか」

そのまま城壁の上部を駆け抜け、登った時と同じ要領で、城壁の外へと降り立った。
少し離れた位置に森があったのは、実に運がいい。
ひとまずここに身を隠して、それから本体を探し出して、叩く。
そうすれば……

「やっぱり、こっちの方にきたわね」
「!?」

いつの間にかいなくなっていた桃色ブロンドの髪の少女が、僕らの目の前に立っていた。

「よくもさんざん逃げてくれたわね……」

そういって、少女は杖を取り出した。どうやらあの力を使うには、こういう棒が必要らしい。
距離は10m程。今はスタンドパワーが惜しい。なら、近づいて取り押さえるッ!

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」

杖を取ろうと手を伸ばす。
しかしその手は空を切った。少女の方から、こちらに近づいてきた所為だ。
僕の顔の近くに、少女の顔が寄る。甘いにおいがした。

「あんた、感謝しなさいよね」

少女はさらに顔を寄せてくる。
何を感謝しろというんだ! と心の中で毒づきながら、僕は少女から逃れるように、思いっきり上体をそらした。

……少しそらしすぎた。体勢を崩した僕は、そのまま少女に巴投げをかけるようにしてこける。

「「え?」」

僕の後ろにいた才人は、そのまま少女と頭突きとも取れるような、盛大なキスをして、仲良く地面へと倒れ伏したのだった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー