ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀な使い魔-6

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ギーシュは目の前に立つ男に恐怖していた。
(この男は平民だ。それどころか杖を持っていない。
魔法を使えるはずがないッ!
しかし、こいつは身を隠したと思うと左腕だけが亀から出てきて攻撃した。
何をやったのかサッパリ分からない!
しかも「全力で来い」だって!?
こいつは僕を、いやメイジそのものを全く恐れていない!
いや、そうじゃない。こいつは『戦って死ぬ事』自体を恐れていない!
何故だ!?何故平民がそんな風に考えれるんだ!?)

「君は…一体何者なんだい…?」
ギーシュは右腕の痛みを堪えつつ尋ねた。
「俺はそこのルイズとか言う小娘の使い魔とやらだが?」
「そうじゃない。君は使い魔である以前に、何者なんだと聞いたんだ。」
「…良い眼になったな。
よし、いいだろう。教えてやる。俺は平民で…」
ポルナレフはエジプトで死んだ親友達を思い出しつつ静かに言った。

「…悲しい友情運を持つ男だ…」

ギーシュに向けた眼に先程の怒りは無かった。
あったのは貴族の屋敷で暮らして来たギーシュやギャラリーのほとんどにとって、見たことが無いほど悲しい光だった。

「…悲しい…友情運?」
「そうだ…」
辺りに何か辛い空気が流れた。
誰もポルナレフの過去に何があったのか知らなかったが、悲しみだけは伝わって来たのだ。

「…さて、小僧。いい加減決闘の続き、と行こうか。」
ポルナレフはナイフを逆手に構えた。
「ああ、いいだろう。」
ギーシュが薔薇を振ると新たに六体のワルキューレが現れ、計七体となった。
「それが貴様の限界か?」
「ああ、僕のワルキューレは同時に七体までだ。」
この時、ギーシュは男に勝つには複数でやるしかない、と考えた。
(それに全力で行かないと後が怖かった)
「行け!ワルキューレッ!!」
号令と共に一体を残し六体のワルキューレが突進をしだした!
一方のポルナレフにはナイフ一本しかない。
亀のトリックはもう使えないことは明白である。
ポルナレフはナイフをより強く握りしめた。
「来い…!」
その時、左手のルーンが輝き出した。
ポルナレフは体が軽くなった気がした。
まるで、チャリオッツの装甲を外した時の様だった。
これならイケるかもしれない。思わずそう思ってしまった

…が当然ナイフだけでは多勢に無勢だった。
現実は非情である。
ポルナレフは二体の肘から先を切り落としたが、
あっという間に囲まれると、殴られては蹴られ、蹴られては殴られた。
「所詮カッコつけてもやっぱり平民は平民か。」
「メイジには勝ち目ないよな、そりゃ。」
周りから失望に似た声がし始めた。


「オラァッ!」
ギーシュの掛け声と共にポルナレフはワルキューレの渾身のストレートを腹にモロにくらい、吹っ飛んだ。

ゴシャァァアァァッ!


ポルナレフは地面にたたき付けられた。
誰もがやれやれ、やっと終わった、と思った。
その中でルイズは自分の使い魔が一方的にやられる姿を我慢できなかった。
闘いを止めようと急いで間に入ろうとしたが、
「ミス・ヴァリエール。決闘の邪魔をしないでくれたまえ。」
ギーシュが杖を向けた。
「どう見たってもうあんたの勝ちじゃないッ!大体平民がメイジに…」
ギーシュはやれやれと呟いた。
「君は自分の使い魔の台詞を聞かなかったのかい?これは決闘だ。
侮辱なんてあってはならないんだよ。」
でも…とルイズが言ったその時だった。
「小僧の言う通りだ、小娘。手を引け。まだ決着はついてはいない…」
土煙の中からポルナレフの声がした。
しかし、同時にゴフッ!と血を吐いた音がした。
「あんた…何で…?何の為に闘うの?勝ち目なんて無いのに…」
ルイズはその音を聞き、涙を流しそうになりながら呟いた。

またゴフッ!と血を吐いた後、ポルナレフは誰に対してでもなく、独り言のように語り出した。
「俺はまだ、死んではいない。死んではいけない。そして死ぬことは出来ない…。それだけの理由がある…」
「?」
「俺は…死んだ。『二度』…な。そしてここに来て『一度』蘇った…。」
「何を言っているんだ!?」
ギーシュはポルナレフの言葉の意味が全く分からなかった。
「しかしもう『一度』蘇ることは出来なかった。何故か?『運命』がそれを望んだからだ。我々は『運命の奴隷』だからな…運命には従わざるをえない…」
土煙の中からポルナレフが出てきた。
その眼はしっかりとギーシュを見ている。
左手には先程のナイフが、右手には…
「だが、君のお陰で私は『運命』に選ばれる事が出来た。」

ボロボロの石の鏃ような物がその掌を貫いていた。
そして背後には、誰にも見えない、『白銀の戦車』の名を持つ『騎士』がポルナレフを護るように立っていた。


To Be Continued...

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