ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔波紋疾走-4

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「ルイズー!ルーイズー!起きてるのー?」
ノック、というにはいささか品無くドアを叩く音にジョナサンは目を覚ます。
波紋呼吸法を覚えてからは多少寝なくても疲労感や眠たさを感じる事は無くなったが、師ツェペリから
『体の問題じゃあない、精神の問題なんだよジョジョ。波紋は心まで強くはしないからねェ~』
と定期的な睡眠を欠かさぬよう厳命されており、ジョナサン自身も守り続けていた。
どんどんとドアを叩く音が続く。
ジョナサンは椅子から身を起こし、ベッドで眠るルイズを見ると、
「んむにゅ、くらえ~い、きゅうきょくまほう~、のいらて~む!」
身振り手振りまで加えて寝ぼけていた。
「仕方ないな…」
ベッドの脇をすり抜けてドアへ。シンプルな引き手に手を掛け、
「待ってください、今…」
引くがびくともしない。
鍵かかんぬきがどこかにあるのかとも思ったが、鍵穴も何も見つからない。
「まーた寝てんのねぇ…」
ドアの外で溜息一つ。かちゃりと掛け金が外れる音がドアの中から鳴り、
「さあて今日はどうしてイジメてくれよう…」
開いたドアがジョナサンの額をしたたかに打った。
「ブ!」
「…ってあら?」
痛みと驚きで目を白黒させるジョナサンの前に現れたのは二人の女性。昨日から見てきた生徒達と同じ服装なので
ルイズの級友だろう。
一人は長身でグラマラスな赤毛。もう一人は小柄で(ジョナサンには信じられなかったが)青い髪。
「こいつ確か…ルイズが召喚した使い魔の平民じゃない?」
赤毛の娘が値踏みするような目でジョナサンを見つめている。

「…何の御用でしょうか?」
ジョナサンは立ち上がり、極力威厳を保った顔を作って尋ねる。
「ああ、ルイズを起こしに来たのよ。あたしはキュルケ、こっちはタバサね」
青い髪の娘が軽く会釈する。
「ジョナサン・ジョースターです…その、ミス・ヴァリエールとは…」
「ま、ライバルってところかしらね」
「…友達」
二人はジョナサンの脇をすり抜けルイズが眠るベッドの脇に立つ。
「相変わらず可愛い寝顔ねぇ…フレイム?」
にんまりとキュルケが笑むと、開いていた扉から巨大なトカゲがのっそりと入ってくる。
「ううッ!」
慌ててジョナサンが後ずさると、尾の炎から膨大な熱量をふりまきながら、それでいて室内の調度一切に
火を点けること無く、ジョナサンの目の前をすり抜け、ベッドの脇によじ登る。
「私の使い魔よ。私が操る限り危害は加えないわ」
火竜は口を開け、炎をひと吹き。
「うわきゃああぁぁぁ!」
鼻の先を高熱であぶられ、ルイズは文字通り跳ね起きた。
「はいおはよう、ルイズ。どう、私の使い魔?火竜山脈のサラマンダーよ?」
事の次第を理解する数秒の間の後、
「な、何考えてるのよツェルプストー!何で火竜なんて連れてくるのよ!焼き殺す気?
 タバサも何で止めないのよ?あんた達の後ろにいる男は誰?それと何時よ今?」
一気に全開でまくしたてるルイズと、
「あー、質問は一つづつお願いできますかしらねぇ、ミス・ヴァリエール?」
勝ち誇った微笑を崩さないキュルケ、
「あれ、あなたの使い魔」
無表情で答えるタバサから一歩引いた所で、
「な…何だ?これがメイジの日常なのか?」
ジョナサンは自分の常識を疑っていた。

「いっつもこうやって起こしてあげてるのよ。ヴァリエールは代々寝起きが悪いから」
「ふん!代々腰軽のツェルプストーに言われたくないわよ!」
ふくれながらベッドを降り、クローゼットに向かうルイズ。ジョナサンは慌てて部屋の奥に戻るが、
「ちょっと、服を着せなさいよ」
呼び止められて振り向き、
「君は自分で服も着られない赤ん坊じゃないだろう?」
言い放ってからキュルケへと向き直り、
「僕が来る前からこんな調子なのかい?」
疑問をぶつけてみる。
「んー…まあそうね。さすがに服は自分で着てたけど」
「余計な事言わないでよ!」
ルイズはクローゼットの戸の奥でぶつくさと文句を言いながら洗面と着替えを済ませ、
「はいこれ、洗っておくのよ」
洗濯物をかごごとジョナサンに手渡す。
「これは?」
「生徒の洗濯物は生徒寮付きのメイドがやるわよ…普通はね」
肩をすくめるキュルケに、
「ちょっとキュルケ!何教えてるのよ!」
目論見のことごとくが外れたルイズが食って掛かる。
「あぁら、常識知らずのヴァリエールに言われたくないわねぇ」
手を頬に当てて高笑いをすると、
「…ミス・ヴァリエールを侮辱するのは関心しないな」
ジョナサンの声色が変わったのに気付いたが、
「気にしないでいいのよ。じゃれ合ってるようなもんだから」
キュルケの余裕は崩れない。

「全く、あんた何考えてるのよ!ヴァリエール家にとってツェルプストー家は仇敵なの!
 あたしの許可も得ないで勝手に喋ってるんじゃないわよ!」
怒鳴りながら中央塔への渡り廊下を歩くルイズの後ろについて歩くジョナサン。
「でも起こしに来てくれたんだろう?方法は…まあ問題があったけれど」
廊下を歩きながらあちこちを見回す。ぱっと見では東欧あたりのどこかの城としか思えなかったが、
塔を主体とする建築様式やあちこちの意匠、特に文字は馴染みの無い物ばかりだ。
「方法?使い魔の自慢してただけじゃない!何であの色気バカの使い魔がサラマンダーであたしが平民なのよ!」
両開きの扉の前でジョナサンが先に進み、右手の戸を開ける。今度は特に鍵は掛かっていない。
足音高く中に入るルイズを追うと、ドアの向こうは塔の直径をそのまま長辺とする広大なホールになっていた。
幾重にも並んだ長テーブルに朝食とは思えない豪勢な料理が並び、生徒達がずらりと席に着いている様は
なかなか壮観だった。
「ここが『アルヴィーズの食堂』。平民はまず入れない場所よ。感謝しなさい」
自分の席に向かいつつなぜか自慢げなルイズ。
「なるほど、礼儀作法も教育のうち…貴族ならば当然だろうな」
料理の匂いに気を良くした様子のジョナサンはルイズの椅子を引き、座らせてから、
「で、僕の席は…」
ルイズが指差した物に気付く。
「本当は使い魔は、外。あんたはあたしの特別な計らいで、中。感謝しなさい」
床に直に置かれた木製の素っ気無い皿の中に、薄いスープと質の悪いパンが二切れ。
スープには木製のこれまた素っ気無いスプーンが一本転がされている。

「…良く分かったよ、ミス・ヴァリエール」
きびすを返し、ホールの出口へと向かう。
「ちょっと!どこ行くのよ!嫌なら朝食抜きでも…」
「このような物を食事とは呼ばない」
ジョナサンの視線にたじろぐルイズ。
「何言ってるのよ!これは使用人の食事と同じ物よ!贅沢言うんじゃないわよ!」
「食事の内容じゃない」
戻ると皿を拾い上げ、テーブルの上に置く。
「ちょっ…汚いじゃない!」
「貴族は自分が汚いと思うような物でも平気で平民に食べさせるのか?」
ルイズの顔に傷ついたような表情が一瞬浮かぶが、
「朝食は要らない。君の食事が終わるまで入り口で待っている」
ジョナサンが背中を向けると、
「ふ、ふん!要らないなら要らないって言えばいいじゃないの!」
いつもの調子に戻った。


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