第三話『格差の世界』
「さっさと起きろ」
ベッドを2,3回蹴ったがルイズはまだ起きない。
頭を6回ほど蹴るとようやくもぞもぞと動き出した。
「ふぁ…ああ……」
「朝だぞ」
「むにゅ……もうちょっとだったのに……」
「何がだ?」
「……誰よアンタ?」
リンゴォは黙っていたがやがて思考能力を取り戻したルイズは、
目の前の男が何なのかを思い出した。
「あぁ…そうだった、そうだったわ…。平民なのね、現実なのねこれって……」
理解したくない現実をどうにか理解し、ルイズはリンゴォに向き直る。
ベッドを2,3回蹴ったがルイズはまだ起きない。
頭を6回ほど蹴るとようやくもぞもぞと動き出した。
「ふぁ…ああ……」
「朝だぞ」
「むにゅ……もうちょっとだったのに……」
「何がだ?」
「……誰よアンタ?」
リンゴォは黙っていたがやがて思考能力を取り戻したルイズは、
目の前の男が何なのかを思い出した。
「あぁ…そうだった、そうだったわ…。平民なのね、現実なのねこれって……」
理解したくない現実をどうにか理解し、ルイズはリンゴォに向き直る。
「服と下着」
「これか?」
「それよ。……着替え手伝って」
「確か……『使い魔』とやらは奴隷でも召使でもないとお前は言ったはずだが……」
本来は洗濯だって使い魔の仕事ではない。
使い魔と奴隷の仕事の境界線がリンゴォにとってどこなのか、それは定かでないが、
この要求は奴隷の仕事だ、と彼は感じ取ったらしい。
「しょーがないじゃないの! アンタは『平民』で! 何もできやしないんだから!」
「出来る仕事を与えてるだけ、ありがたいと思いなさいよねッ!」
「わかったなら、服ッ!」
「それと! お前とは何様のつもりよ!」
リンゴォ・ロードアゲインが何も言わずにルイズを着替えさせてやったのは、
立て続けにしゃべっている彼女の言い分に納得したからではない。
こんな女とこれ以上の会話を続ける事が、心底面倒くさかったからだ。
「これか?」
「それよ。……着替え手伝って」
「確か……『使い魔』とやらは奴隷でも召使でもないとお前は言ったはずだが……」
本来は洗濯だって使い魔の仕事ではない。
使い魔と奴隷の仕事の境界線がリンゴォにとってどこなのか、それは定かでないが、
この要求は奴隷の仕事だ、と彼は感じ取ったらしい。
「しょーがないじゃないの! アンタは『平民』で! 何もできやしないんだから!」
「出来る仕事を与えてるだけ、ありがたいと思いなさいよねッ!」
「わかったなら、服ッ!」
「それと! お前とは何様のつもりよ!」
リンゴォ・ロードアゲインが何も言わずにルイズを着替えさせてやったのは、
立て続けにしゃべっている彼女の言い分に納得したからではない。
こんな女とこれ以上の会話を続ける事が、心底面倒くさかったからだ。
「服が崩れてるじゃない! もう少し上手くやりなさいよ!」
「…だったら自分で着ればいい」
窓から外を眺めながらリンゴォは考える。
別にリンゴォはルイズに興味があるわけではないし、彼女がどう傲慢に生きようと知った事ではない。
何を命令されようが内容は高が知れているし、自分には関係のない出来事だ。
しかし、こうも近くで小うるさい事を喚く存在だというのなら話は別だ。
まだ『主人』が後ろで何か喚いているが彼は無視した。
(この女のところで働きながら気長に『相手』を探すつもりだったが……)
「…だったら自分で着ればいい」
窓から外を眺めながらリンゴォは考える。
別にリンゴォはルイズに興味があるわけではないし、彼女がどう傲慢に生きようと知った事ではない。
何を命令されようが内容は高が知れているし、自分には関係のない出来事だ。
しかし、こうも近くで小うるさい事を喚く存在だというのなら話は別だ。
まだ『主人』が後ろで何か喚いているが彼は無視した。
(この女のところで働きながら気長に『相手』を探すつもりだったが……)
「ボーっとしてんじゃあないわよ! 出るわよ! ついて来なさい」
向かった先は『アルヴィーズの食堂』。
食卓の上の料理を見ればリンゴォでなくとも『豪華』と思うだろう。
「ちょっと! ボサッとしないで椅子でも引いたらどうなの?」
椅子を引いてやるが、ルイズはまだ「まったく…だから平民は……」などと呟いている。
周囲を見回すとリンゴォは質問した。
「オレの朝食はあるのか?」
「あぁ、そこのそれよ」
『そこのそれ』……床の上に置いてある、これでもかというくらい貧相なスープとパン。
食卓と床――その高さの差が、そのまま貴族と平民の差だった。
しかし、リンゴォの頭に浮かんだ疑問と言えば、これだけ豪華な食事を出す貴族の学院のどこに、
こんな貧相な食事の需要があるのか、ということだった。
視界の隅で、給仕をしているシエスタの姿を発見し、リンゴォは成程、と思った。
「いい? 本来は使い魔は外で食べるところをわたしが特別に中で――
ちょっとどこ行くのよ勝手に!」
得意気に話す『ご主人様』を置いて『使い魔』は勝手にどこかに行こうとしている。
「何もお前たちと一緒に食べる必要は無いだろう……。俺はその辺で食っておく。
食事が終わったら呼べ……」
「…『たち』? どーゆーことよ、っていうかまた『お前』って言ったわね!?
フン、勝手に外で食べるがいいわ。けど今日の昼食は抜きだからね!!」
向かった先は『アルヴィーズの食堂』。
食卓の上の料理を見ればリンゴォでなくとも『豪華』と思うだろう。
「ちょっと! ボサッとしないで椅子でも引いたらどうなの?」
椅子を引いてやるが、ルイズはまだ「まったく…だから平民は……」などと呟いている。
周囲を見回すとリンゴォは質問した。
「オレの朝食はあるのか?」
「あぁ、そこのそれよ」
『そこのそれ』……床の上に置いてある、これでもかというくらい貧相なスープとパン。
食卓と床――その高さの差が、そのまま貴族と平民の差だった。
しかし、リンゴォの頭に浮かんだ疑問と言えば、これだけ豪華な食事を出す貴族の学院のどこに、
こんな貧相な食事の需要があるのか、ということだった。
視界の隅で、給仕をしているシエスタの姿を発見し、リンゴォは成程、と思った。
「いい? 本来は使い魔は外で食べるところをわたしが特別に中で――
ちょっとどこ行くのよ勝手に!」
得意気に話す『ご主人様』を置いて『使い魔』は勝手にどこかに行こうとしている。
「何もお前たちと一緒に食べる必要は無いだろう……。俺はその辺で食っておく。
食事が終わったら呼べ……」
「…『たち』? どーゆーことよ、っていうかまた『お前』って言ったわね!?
フン、勝手に外で食べるがいいわ。けど今日の昼食は抜きだからね!!」
ルイズ一人なら我慢できる。しかしこれだけの人数となると、それは無理だった。
それにもうここでの用は済んでいる。確認したのは『ここにはいない』という事。
ルイズの怒鳴り声に反応して、周りの貴族どもがひそひそと話している。
いくつか耳に入ったのは『ゼロのルイズ』『平民を召喚』『ゼロ』『ゼロ』『ゼロ』……。
どうやら自分たちのことらしい。だが、『ゼロ』とはなんだ?
そういえば、他の使い魔はどんなのだ?
ルイズの言い草からして、人間の使い魔が珍しい事は想像に難くない。
まあ、いずれわかる事だ。
「ほら、行くわよ!」
次の行き先は教室。
それにもうここでの用は済んでいる。確認したのは『ここにはいない』という事。
ルイズの怒鳴り声に反応して、周りの貴族どもがひそひそと話している。
いくつか耳に入ったのは『ゼロのルイズ』『平民を召喚』『ゼロ』『ゼロ』『ゼロ』……。
どうやら自分たちのことらしい。だが、『ゼロ』とはなんだ?
そういえば、他の使い魔はどんなのだ?
ルイズの言い草からして、人間の使い魔が珍しい事は想像に難くない。
まあ、いずれわかる事だ。
「ほら、行くわよ!」
次の行き先は教室。
惨劇の授業が始まる。