ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀な使い魔-5

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ヴェストリ広場。普段は人気の無いこの場所は、噂を聞き付けた生徒で溢れ返っていた。
「諸君!決闘だ!」
ギーシュが高々と薔薇の造花を掲げそう宣言すると、周りから歓声が上がった。
(どうやら完全に娯楽扱いらしいな。本人は気付いてるか知らんが。)
ポルナレフはだんだん自分が何やっているのか分からなくなってきた。
「逃げずによく来たね。一応褒めてあげるよ」
キザったらしく髪を掻き揚げ薔薇の造花をポルナレフに向ける。
「…」
ポルナレフは無言だった。
ギーシュは何か言おうとしたが、ポルナレフが右手に持っている物が目に入った。
「なんだい、その『亀』は?」
「…俺の相棒だ。」
「…亀…ああ、君は『ゼロ』の使い魔だったか!
道理でどこかで見た気がしたよ!」
やっぱり貴族という連中は亀が好きらしい、というか亀以下なのか、俺は?
ポルナレフはそう思った。
「どうせ貴様は魔法を使うんだろ?素手じゃ不利だからな…」
「ふん!まあ構いやしないだろう!大体亀ごときに何が出来るッ!ナイフでも持ってきた方が良かったんじゃないか!?」
ギーシュは素早く薔薇の造花を振った
その動作に伴いはらりと花弁が舞い、それが地面に落ちるや否や等身大の人形へと変化した。
「おっと言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』ッ!青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するッ!!」
ワルキューレが女騎士の恰好をしているのを見て、やっぱりただの女好きらしいと判断するポルナレフ。
「青銅…か」
チャリオッツだったら一秒もかけずに十六等分してるだろうな、とも考えたが、チャリオッツのいない今、そんなことを考えても仕方がないので雑念を捨てた。

「まずは小手調べだッ!」
「来い、小僧!」
ギーシュの台詞と共に一体のワルキューレが突進し、拳を繰り出す!
しかしポルナレフは繰り出される直前にズボンから厨房から(無断で)借りてきたテーブルクロスを取り出し、ワルキューレと自分の前にバサッ!と広げた。
「目くらましかッ!」
そのテーブルクロスにワルキューレの拳が炸裂する!
が、手応えが無かった。
それどころかポルナレフの姿自体が無かった。
いきなりのことに慌てるギーシュ。
「ど、何処に隠れたッ!?」
返事が無い。
地面に落ちたテーブルクロスをめくってみてもポルナレフの姿は無い。
いるのは亀のみ…
その時ギーシュは閃いた。
あの平民は亀を相棒と呼んでいた。
→とすれば亀を人質(?)にすれば問題は無いッ!

…明らかに汚い手だがギーシュはそれを実行に移した。
ギーシュはワルキューレに亀を捕まえさせると自分の手元にまで持って来させ、受け取ると高らかに叫んだ。
「出てこい平民ッ!さもなければお前の亀を殺すぞ!」
…ただのゲス野郎にしか見えない。
そして何処からともなくポルナレフの声がした。
「やれやれ、しょうがあるまい…大切な相棒兼寝床だからな。
床で寝る真似など、俺には出来ん。」
ギーシュはニヤリと笑い、「かかったなダボがぁ~」と思った。
だが、そのせいで気付かなかった。その声が『何処から』響いてきたのかを。


ドスッ!


いきなりの事にギーシュは手の甲に感じた衝撃が何かわからなかった。
見てみると、亀の甲羅からから伸びた腕が、
ギーシュの右腕をナイフで深々と刺していた。

後日彼が語るにはー
「あ、ありのままあの時起こったことを話すよ…
『奴の前で亀を人質にとったと思ったらいつの間にかナイフが刺さっていた』
何を言っているのか分からないだろうが僕にも分からなかった。
先住魔法だとか虚無だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない。
もっと訳の分からないものの片鱗を味わったよ…」



「ギャァァァアァァ!」
ギーシュは思わず亀から手を放し左手で傷を押さえた。
しかし亀から出た腕は間髪入れずギーシュの顔面を殴り飛ばす!
ギーシュの体は空を舞い、地面に仰向けに叩き付けられた。
「あ、ぐ…」
ギーシュの意識が一瞬飛んだ直後、今度は頭を踏み付けられた。
ギャラリーにはいつの間にかポルナレフが現れ、ギーシュの頭を片足で踏み付けた、としか見えなかった。
ポルナレフの左手には血で濡れたナイフが握られていた。
(ポルナレフ以外誰も知らなかったが、それはナランチャ・ギルガの遺品である。)

「…小僧、何で貴様がここまでズタボロになっているか分かるか?」
ポルナレフは静かに尋ねた。
ギーシュはそこに何故か怒りがあるのに気付いた。
「そ、それは…お前が怪しげな魔法を…」
ポルナレフの威圧感に押さえ付けられつつも、ギーシュは一応返答した。

バキィッ!

ポルナレフはギーシュの頭を躊躇せず蹴りとばした。
「このドグサレがッ!
貴様が負けた理由、それは相手には無いッ!
それは貴様が相手を見くびったからだッ!」
ポルナレフはギーシュを初めて見てから、ずっとかつての自分を感じていた。
そして亀の中から戦い方をみて確信した。
亀を人質にとったりするのはただのゲス野郎だが、それを除いたとしても、
ギーシュのある程度実力はあるが、自信過剰気味で油断している姿は
まさにアヴドゥルがホルホースにやられかけた時より以前の自分そのものだった。
それだけに、厳しくしようとしてしまう。
「貴様は見くびって、小手調べだと言ったろう?
それが駄目なのだッ!勝ちたければッ!」
ポルナレフは一呼吸おいてから静かな口調で言った。
「自分の持てる全力で来い。それが闘いへの、相手への、騎士の誇りへの礼儀だ。」


To Be Continued...

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