ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-11

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「さて…どうだね? 今のうちに言っておくが…」
仗助を宙に吊り上げたギーシュはスデに勝ち誇っていたッ
「キミ、敗北を認めたまえ! そしてぼくにわびろ
 『いやしいワタクシのせいで二人の尊きレディの名誉にキズがつきました』とね
 反省の色さえ見せてくれれば…なに、ぼくだって鬼じゃあないのさ」
地上から薔薇をふりかざし仗助を見上げ、一方的な言いたい放題
わざとらしく聞き耳を立てる仕草をし かすかに動く仗助の唇に注目する
「ンッン~? なんだい、悪いがよく聞こえないんだ
 もうちょっと大きな声を出してくれないか?
 それともなんだい 反省が足りないのかなぁぁ―――ッ」

ズドァッ

落とした 頭からッ! 首の骨でも折っちまう気なのか?
単にギーシュはハイになりすぎていた
キュルケやコルベールさえ苦戦した使い魔に完封勝利をおさめつつあることにッ
「ドッ…ッラァ!!」

グシァ ギュンッ

頭からも血を流す仗助の反撃は
落ちた地面の土を掘りあげ投げつける
コルベールに試みたものとまったく同じ
ゆえにギーシュはあわてなかった
「おおっと!」

ドドッ ズバシィッ

地面の中から突如生えてきた槍が飛んできた土くれを阻んだ
土中から身を起こし完全な姿を見せたのは、青銅製の女神像ッ!!
「このぼくのワルキューレ 動きはそれほど速くはないが
 正面から来るとわかっている『土くれ』程度、たたき落とせないほどヤワでもないのさ…」
すでに土の中 待機させていたッ
歯ぎしりをする仗助がまた宙に浮かんでいく
「あ――っと 言い遅れたが ぼくはギーシュ・ド・グラモン
 二つ名は『青銅』 青銅のギーシュだ 以後お見知りおきを…使い魔君
 そしてキミの今の態度 なるほど、もっと反省したいらしいね?」
「なに言ってんのよ!」
調子にのりまくったギーシュをどやしつけたのは、遅れてやってきたルイズ
ようやく気をとりなおして後を追ってみたら 見せられたのは使い魔が痛めつけられる光景ッ
そんな有様、我慢して見ていられる女では…やはり、なかった
「おわびなんかしようったって、しゃべれなくしてるのアンタじゃないッ フザけないで!」

「そうは言うがねミス・ヴァリエール 反省には態度ってやつがあるだろう?
 彼からはね、なんというかァ、そのォ…見えてこないのだよ 誠意とかそういうものがね
 わびるべき相手にドロを投げつけるんじゃあ 救ってやりようがないよなぁぁ~~~」
「二股かけてたヤツがイッチョ前に反省とか誠意とかカタッてんじゃないわよッ
 大体なによ、決闘は禁止じゃないのッ」
「だまりたまえッ 平民との決闘を禁じる法はないッ
 彼は決闘を請け負った ここではそれが全てだろうッ!
 それともなんだねキミは この決闘を侮辱しようとでもいうのかい?」
押し黙ったルイズを放って 続きを楽しもうと振り返るギーシュ
彼は今、生まれて初めて「暴力」の甘美に酔っていた 強い力をより強い力で蹂躙する快感にッ
二股がバレてかいた恥も これで埋め合わせがききそうな気分だった
決闘! 決闘! 決闘! ハハハハハ

ニィィ

「…では決闘だ キミがわびるまで落とすのをやめないよ クク」

くっ…

額を割りながらもなお にらむのをやめない仗助に
ギーシュもまた ニヤついた顔をやめない
得意げにビシリと指さす

「次にキミが何を考えているか当ててやろう!
 また叩きつけられるその瞬間 キミは地面を殴って逃れようとしているな?
 そのいきおいでぼくの方へ飛び、この顔面に拳をくれようと思っているな?」

ドン!

「…っ」
「図星を刺された顔色だね フフフ」
薔薇を左右に振り始めるギーシュ
仗助の身体も左右に振れる
同時に槍をかかげ 直立するワルキューレ
「いいだろう、やってみるがいいさ!
 キミの拳とぼくの槍、どちらが先に届くか勝負しようじゃないか」
「~~!」
「キミに勝ち目があるとしたら、そのくらいだろう?
 感謝したまえよ、ぼくの慈悲にッ
 決闘の幕引きにはピッタリだと思わないかい?」
つまりギーシュはこう言っていた
「こいつで終わりだ!」と
それはたった今駆けつけたルイズにもビンビン伝わった

ルイズは息を呑んで見入る
ワルキューレの掲げる大振りのランスに…
騎乗突撃用の大槍! こんな太いのをぶち込まれたらどう考えても即死!
見上げた先の使い魔からは血がしたたっているというのに
「ねえ、おまえッ」
耐えきれなくなってルイズは叫んだ
「どうして治さないのよッ
 わたしのキズを治したみたいに、自分のキズを治せばいいじゃないッ」
……… 使い魔の反応は無い
不可解だ あれほどの力を持ちながら 自分のキズを治そうとしないなんて …あれほどの、力?
「あれほどの力だから連発できない」ッ! ルイズの脳天に雷が落ちた
そうだ、トライアングルメイジやスクウェアメイジだからって 無尽蔵に魔法が使える人間などは存在しない
あの使い魔… わたしの治療と建物の修復で、ほとんど力を使い切っているのか!
うなずける上につじつまがピタリ合う
「フ、なるほど」
…ギーシュが気づいてしまったらしい
わたしが叫んだせいでッ ルイズはサッと青ざめた
「考えてみれば当然ってやつだな
 先住魔法だか何だか知らないが…あれだけハデなことをやったんだ
 そりゃ魔力も残っているわけないよなぁ――」
薔薇を振り上げる ついに落とす気だ
この戦い最後の火蓋を 切って落とす気だッ!
「だが決闘にハイと言ったのはキミだぁぁ――ッ
 さあ落ちろ、そして来いッ 最後に血にまみれて反省しろぉ―――ッ」

もうダメだ あまりにもカワイソウすぎる
わたしを助けたせいで自分のキズも治せなくなって
こんなフウになぶりものにされて しゃべることも反撃もできないまま
だからルイズは走った 走って…
「ル、ルイズ、なにを…」

ドグシャアッ

外野からも驚愕の声が上がった
ルイズは走って、落ちてきた使い魔を「受け止めた」
実際は身体のサイズが違いすぎて 落ちてくる使い魔のために自分の身をしくことになった
ゼロのルイズは レビテーションひとつ使えないからッ
「うぅぅっ……」
痛い…泣きそうだ 腕がつぶれたんじゃあないか?
ほとんどしびれた感じの中に刺すようなのが混じってくる
シャツに染み込んでくるぬるい感覚は 使い魔が流している血なんだろう
使い魔がなんだか目をぱちくりさせているから言ってやった
「ご主人様の言うこと…聞かないから、こーなるのよ
 あげく、わたしに手間かけて どういうつもりよ…」
「おま、え…」
「おまえ呼ばわりは禁止したはずだわッ…
 そこで… しばらく黙ってなさい」
使い魔の下から這い出して、右手をついて… 痛い痛い痛い痛い痛い!
左手をついて立ち上がった

服がひどいことになっている ご主人様を血で汚した報いはそのうち受けてもらうとして
今はギーシュ・ド・グラモンに…
「…な、なんのマネなんだい、ゼロのルイズ」
彼の理解を数百万リーグも超えた行動にアングリと口を開いているギーシュだが
そんな様子になど構っているヒマはない
「わ…わたしの、使い魔の不始末を…おわびするわ」
「…は?」
ルイズは… その場にひざまずいた
外野のさらなる驚愕の声
王家に連なる侯爵家がッ ヴァリエール家の三女がッ!
あの気位ばかり高い『ゼロ』のルイズがッ!
『ヴァリエール』が『グラモン』の前にひざまずくッ
なにをやっているのかわかっているのか?
きっとそう思っているんだろうな
「つ…使い魔のかみついた責めは主人にあるんだもの
 だから、ヴァリエールの名にかけて、伏してお願い申し上げるわ」

『どうか、お許し下さい』

頭をグイと下げる
悔しい…泣きそうだ でも泣いたらもっとヴァリエールの名に傷がつく
もう、あのバカ使い魔を助命してやる方法はこれ以外になかった
こうやって次々と取り立てていくの? お金の次はプライドを?
なんてヒドイ疫病神よ 正直、殺してやりたいわ

「…よ、よしたまえよ『ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール』
 キミが頭を下げるほどのこともあるまい…」
これ見よがしに姓も一緒に呼ぶとは さぞかしイイ気分でしょうね、ギーシュ・ド・グラモン
いいわよ 『プライド』くれてやるわ せいぜい鼻を高くしなさいよ
これで使い魔にかけた『お金』がムダにならないのなら安いものよ…

ヒュ… ドグチァ!!

「うげぇッ!?」
いきなりギーシュの顔面にすっ飛んできたドロの塊は
ルイズには意味不明、意味不明、意味不明…
振り向いたらそこには使い魔 こいつが今のを投げつけた 確定!
理解不能、理解不能、理解不能、理解不能…
「な、に…な…ん…… なん、てこと、してくれんの、よ、あん、た」
ぼやく彼女の表情をたとえるならば そう…
『水中で窒息、あとわずかで顔を出せるところを目の前で水位がグングン上がっていく』絶望だった
「もう、おしまいだわ…
 わたしには、あんたのために支払えるもの何ひとつ残っていない」
「殺してもかまわないなッ ミス・ヴァリエールッ!!」
ドロをぬぐったギーシュの目つきはすわっていた
ルイズは、その場にくずれ落ち、すすり泣きを始めてしまった…
「使い魔なのに 使い魔のくせに…
 どうしてムダにするの、どうしてわたしの頑張りをムダにするのよおおおお…」
「だからよー…てめー、の召使いになった覚えは、ねーよ」

はっとして仰ぎ見ると 立っている! 使い魔が横に立っている!
血だらけ傷だらけで今にも膝を屈してしまいそうなのが!
「先に言っとくけどよぉー おまえのガンバりは最初っからムダだぜ」
「なっ…」
「なぜならあいつに頭を下げて『ゆるして下さい』っつー理由が オレにもおまえにも無いからだ」
「……ほう?」
とんでもない悪人ヅラで微笑みを浮かべているギーシュに
使い魔はこともあろうに人差し指をさしてみせたッ!
「敗北だの反省だの誠意だのが今この場で一番必要なのはよぉぉ――
 フツーに考えてテメーだと思うんだよなぁ――― そこんトコどうよ? グラモンさん」
「人を指さして気安く呼べる立場と思うなよ、下賤(げせん)ッ」
「そぉーッスかぁー 超安心ッスよ、話の通じねー貴族様でよぉぉ―――
 こころおきなく存分にボコッてやれるッスからなぁぁ――――ッ!!」
そのとき、ルイズは見た
使い魔がギーシュを指さしている左手から飛び出した もうひとつの左手
錯覚だと思ったがそんなことはない たしかにもうひとつ はっきり見える左手がある!
そしてその手の甲に光輝いているのは…使い魔のルーン?
あんなところにあったというのか!

繰り返すが、東方仗助にしてみれば 召使いになった覚えがないのは当然である
どうしてこんなワケのわからないところに誘拐されて仕えなければならない?
いきなり殺されかけたと思ったら下僕扱いされて ムチで叩かれて…冗談じゃない!
だが、それでも…たとえそこから発した動機であったとしても
仗助を助けるためにその小さな身体を張り、下げにくいだろう頭を必死で下げた
その後ろ姿に仗助は『タイヤのチェーンでズタズタになった学ラン』を見た
そう思った途端に 身体が熱くて止まらなくなった 魂のエンジンに火が入ったのを実感した
そして心底ぶっ飛ばしてやりたくなったのだ!
『学ラン』をズタズタに踏みにじる、あの二股のクソヤローがッ!
(なんか泣き顔にうまく使われてるみたいでシャクだけどよぉー
 だけどこれでグッと来ねーヤツは男じゃねぇーぜッ
 そして、なんとなくわかってきた…今までバク然と使ってきたオレの『武器』)
歯車が、仗助の全身にピタリとはまりつつあった
今まさに呼ばれるその瞬間を待っている力の『砕けない名前』
運命であり、魂そのものであるそれは、今!
東方仗助の中で高らかに名乗りを上げたのだッ!

「クレイジー・ダイヤモンド…」

『そばに立つもの』、真なる覚醒ッ!!


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