ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第一話 僕は使い魔①

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++第一話 僕は使い魔①++

「あんた誰?」

 突然目の前に現れた少女はそう言った。

「ぼくは……花京院……典明だ」

 答えながら花京院典明は記憶を探った。

 ここはどこだ? 彼女は誰だ? それに……ぼくは何で生きている?
 エジプトのカイロで、ぼくは死んだはずだ。『世界(ザ・ワールド)』というスタンドを操り、自在に時を止めることのできるDIOに殺されたはずだ。
 承太郎は? ジョースターさんは? ポルナレフは? ……みんな生きているのか?

 ふらつく身体に鞭を打って叩き起こす。
 周囲を見てみるが、視界の全体が黒っぽくなっている。
 顔を抑えてみると、サングラスが掛かっていた。どうやら黒みがかっているのはそのせいらしい。
 外して、見回してみる。
 目の前にはきれいなピンクのブロンドの少女、周囲には日本人ではない少年少女たちが大勢並んでいる、広がる景色は草原。どこを見てもエジプトとは結びつかない。

「君、すまないがここがどこか教えてくれないか」
「あんた、どこの平民?」

 つっけんどんな態度で、少女は逆に質問してきた。
 その態度に少し反感を覚えるが、堪えた。

「平民ってどういうことだ?」
「あんた平民でしょ。貴族にそんな口聞いて言いと思ってるわけ?」
「貴族?」

 聞いたことはあるが、めったに使わないその言葉に花京院は首を傾げる。

「そう。私は貴族、あんたは平民。こうやって口を聞くことさえありえない関係なのよ」

 尊大そうな態度で腰に手を当て、少女は花京院を睨みつけた。身長差があるゆえ、自然と見上げる形になる。
 威圧しているようだが、少女が子供っぽいせいか効果は薄い。
 花京院がなんと言うべきか迷ったその時、

「ミス・ヴァリエール。そろそろ『コントラクト・サーヴァント』にかかりなさい。これ以上時間は掛けられない。次の授業が始まってしまう」

 人垣の中から一人の中年男性が現れた。黒いローブを着て、大きな杖を片手に下げている。頭は眩しいほどに輝いていた。

「で、でも、ミスタ・コルベール。平民を使い魔にするなんて聞いたことありません」
「確かに古今東西人を使い魔にした事例はないが、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。呼び出した使い魔を変更することはできない」
「そんな……」

 少女はまだ文句を言おうと口を開くが、そこから言葉は出ない。どんなことを言っても、コルベールを説得できないと思ったのだろう。
 その様子を見ていたコルベールは少女の肩に手を置くと、花京院の方を向かせた。

「では、儀式を続けなさい」
「…………はい」

 しぶしぶながら、といった様子で少女は花京院の目の前に立った。

「あ、あんた、感謝しなさいよね。平民が貴族にこんなことされるなんて、普通一生ないんだから」

 きれいな声で少女は呪文を唱えた。
 突然、すっと花京院の額に杖を置くと、少女は距離を詰めてきた。
 困惑して花京院は一歩下がろうとするが、

「いいからじっとしてなさい」

 怒ったように少女が言うので立ち止まる。
 少女はものすごく緊張しているらしく、杖を握った手が白くなっていた。
 一旦少女は視線を落とすと、再び上げた。その目には決意がみなぎっている。
 そして、背伸びするような形で、少女は花京院と唇を重ねた。

「な……!」

 あまりの不意打ちに、花京院は飛びのいてしまった。
 何をするんだ? 一体、どういうことだ……?
 花京院の動揺を無視して、少女はコルベールの方を向いた。

「終わりました」
「うむ。『コントラクト・サーヴァント』は成功のようだ」

 満足そうに頷いて、コルベールは花京院を見た。
 次の瞬間、身体に激痛が走った。

「ぐうぅ……!」

 息が止まりそうなほど痛い。左手の甲が焼け付くようだ。
 焼きゴテを直に当てられているかのようなその痛みで、気が遠くなってきた。
 気力を振り絞り、花京院は耐えた。
 しばらくすると痛みはやわらぎ、やがて完全に治まった。
 おそるおそる左手に目をやると、そこには古代文字らしきものが刻まれていた。擦ってみるが、にじむことも薄れることもない。

「珍しいルーンだな」

 いつの間にか側に立っていたコルベールが言った。
 花京院は後ろに下がり、声を荒げた。

「なんなんだあなた達は!」
「さて、じゃあ皆教室に戻るぞ」

 くるりと背を向けると、コルベールは宙に浮いた。
 あまりに自然な動きだったので、一瞬その異常さに気付かなかった。すぐにそのことに気付いた花京院は口をあんぐりと開けて、その様子を見つめた。

 と、飛んだ? 糸を仕掛けるしても天井が無いから無理だろうし、スタンドの姿もない。一体、どうやって……?

 周りを囲んでいた他の生徒たちも一斉に浮き上がった。
 ありえない。一人ならなんとか説明はつけられても、こんな全員が一度に浮くなんてありえるはずがない。
 浮いた生徒たちは滑らかな動きで、遠くにある城のような石造りの建物の方へと飛んでいった。

「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」

 口々にそう言って、笑いながら飛び去っていく。
 草原に残ったのはルイズと呼ばれた少女と花京院だけになった。

 二人っきりになると、ルイズはまずため息をついた。それから花京院の方を向き、目じりを吊り上げた。

「あんた、なんなのよ!」
「それは僕のセリフだ。君たちは一体なんなんだ? それに、さっき空を飛んでいた。あれは何だ? 手品なのか?」
「ったく、どこの田舎から来たかしらないけど、説明してあげる」

 頭痛がするのか、ルイズはこめかみに指を当てながら説明した。
 ここはトリステイン魔法学院であるということ。
 貴族とは魔法を使えるもののことを指すこと。
 この世界にはドラゴンやグリフォンやマンティコアなどがいること。
 そして、自分はルイズに召喚され、使い魔になったということ。
 どれも突拍子もない話で、簡単には信じることができなかった。

「冗談だろう?」
「あんた相当田舎から来たみたいね」

 心底呆れ果てたように、ルイズは首を振る。
 空を飛んだ人たちを見たとはいえ、それが全て本当のことだとは思えなかった。半分は信じても、疑いが半分残っている。

「信じるも信じないもあんたの勝手だけど、とりあえず戻るわよ」

 二人は石造りの建物に向かって歩き出した……。

To be continued?→

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