ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの世界-1

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  『召喚の世界』

窓から空を見上げると、二つの月が浮かんでいる。
月が二つあるのは当たり前だが、今日はなんだか、それが不思議な気がした。
明日が儀式の日だからだろうか、そんな気分になるのは。
そのまま月を見上げながら、さり気なくテーブルの端に小さな箱を置く。
「いったいそれは何?」
「君へのプレゼントさ」
「どうしてプレゼントをそんな端っこに置くのよ?」
「君がその美しい腕を伸ばすところを見ていたいからさ」
決まった。完璧に決まった。
「貴方のその気障ったらしいところって、どうにかならないのかしら?」
言いながら箱を受け取る。言ってはいるが、内心満更でもないのだ、彼女は。
さて今宵は、この辺でお暇しよう。焦らすのもテクニックさ。
「あら、もう帰ってしまうの?」
「ああ、もっと君と一緒に過ごしたいけれど、君をいつまでも夜更かしさせるわけにはいかないよ」

「そう…ところで貴方、『浮気』……してないわよね?」
 ギクリ。
「まさかだろ? この僕がそんな仕打ちを君に対して!」
証拠なんかありはしない。だからこそ余計にタチが悪いのだ、女の勘というのは。
「別に疑ってるわけじゃあないわよ。けど、嫌な気にさせたのなら謝るわ。
 そのお詫びと言っては何だけど……」

ポケットの中で小瓶を転がしてみる。ひょっとして、これが渡したかっただけなのか。
そう思うと、なんだかばつが悪かった。

そして翌日、『儀式』が始まった。


いったいこいつに、どんな名前をつけてやろうか!?
いくつか候補は決まっているが、やはり迷うな……。
召喚したばかりのジャイアントモールについてのギーシュの思考は、突如後方で起こった
爆発によって中断せざるを得なかった。

「ゲホ、ゲホッ」
土煙に咽ぶのは、今しがた契約を完了したばかりのキュ(略)・ツェルプストー。
「やってくれたわね…ゲホ、予想通りに、やってくれたわねぇ……」
「いつものこと」
特に動じていないのか、隣に立つ友人(タバサという)はそう言いながら
呼び出した竜の頭をなでている。高速で。
「またしても、またしても失敗かしらね、あの子は」
答える代わりに、タバサは土煙の中を指差した。
「人影」
成程、煙の中に二つの人影、一つはこの爆発を起こした張本人のものと、
もう一つ背格好の高い、確かに人型の影が確認できた。
「いえ…、あれはサラマンダーね」
「?」
タバサにはキュルケが何を言っているのかサッパリ理解できなかった。
「サラマンダーよ…火トカゲ、ヒトカゲ、ひとかげ……『人影』」
そう言うとキュルケは、チラリと何か期待したような表情で、タバサの顔を見た。
少々の思考の後、タバサの発言は――
「かなり大爆笑」
「そう? 後でもっとジワッと来るから気をつけなさいよ。…ところで見て何アレ……」

男が、立っていた。

(何よ何よ、なんなのよ)

想定外。斜め上。いったいこれは、何なのか。成功なのか、失敗なのか。
周囲のどよめきが嘲笑、爆笑に変わっても、彼女はそれに対応するどころではなかった。
目の前に、男が立っている。紛れも無く、『男』…人間の……つまりは――
(平……民?)

(落ち着きなさい、逆に考えるのよ……逆に…)
(…うん、やっぱダメ。無し、アウト、チェンジ!)

「ミスタ・コルベール!」
彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは召喚のやり直しを
要求した。返答はNO! 当然である。この男と契約しなければならない。
それがこの神聖なる儀式の約束事である。しかしルイズにとってそれは――
(ファースト・キスッ! アタシってばわりと純情まっしぐらなのに!!)

気付くと、さっきまで立っていた男は仰向けにぶっ倒れている。
恐る恐る近寄るが動く気配はない。気絶しているのだろうか?
(まあ、起きてる相手よりはやりやすい、かな)
寝ている人間の唇を奪う行為の是非は考えない事にした。

そっと口付けをする。ひげがくすぐったい。男は少し呻いたが、目覚めはしなかった。
ルーンの確認が終わると、みんな帰っていった。『みんな』…彼女以外の。

チラ、と男のほうを振り返る。
(変なヒゲ……ガイコツみたい)


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