ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

反省する使い魔!-13 後編

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匿名ユーザー

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時は流れ夜、眩しい夕日の光もとうの昔に沈んでいき
空に浮かぶ二つの月が神秘的な輝きを発している。
そんな月の光に浴びながら、音石は目を覚ました。
医務室を後にしたあと、特にやることもなかったので
部屋に戻り昼寝をしていたのだ。当然藁の上で。

「あーあ……、ヒデェ中途半端な時間に起きちまったな…」

確実に狂ってしまっている自分の睡眠の習慣に頭を抱える
外の静けさから考えて、学院の生徒たちもとっくに夕食を終え
部屋に戻って寝静まり始めているくらいの時間だろう。
少し遅くはあるがシエスタに頼んでメシを恵んでもらおうかなと考えていると
壁に掛けてあったデルフリンガーが突然話しかけてきた。
ついでにその隣では音石のギターが掛かっている。

「気分が最悪のお目覚めだな相棒、どうだ気分は?」
「てめぇ自身が最悪だって言っといて喧嘩売ってんのかコラ」
「冗談だよ冗談、そんなに睨まねぇでくれよ、
でもよぉ、剣の俺様が言うのなんだが
そんなんなるんだったら最初っから昼寝なんてしなきゃいいだろうよ」
「眠くもねぇのに無性に寝たいって気分があんだよ
たくっ、これ俺夜寝れんのかねぇ~?」

【コンッコンッ】

音石とデルフリンガーの何気ない会話の最中、誰かが扉をノックした。

「あン?だれだよ?ルイズなら今いねぇぞ」

誰かわからないがわざわざ扉を開けるのも面倒なので
音石は扉越しに声をかけた。しかし帰ってきた言葉から、
訪問者が意外な人物だというのが判明した。

「私だオトイシ君、コルベールだ。
夜分遅くにすまない、君に用があるんだ」
「なにぃ~~?」

訪問者はなんとコルベールだった。
それがわかると音石は藁から立ち上がり、すぐさま扉を開けた。
それと同時に、部屋から差し出す月の光が扉を開けた先にある
『とあるモノ』によって反射し音石の目を刺激した。

「目…目がくらむッ!げ…限界なく明るくなるゥ!」
「……………なにか言ったかね?」
「あ、いや、なんでもないッス」

つい口が滑った発言にコルベールの嫌な視線を向けられたが
音石はすぐさまそっぽ向くことによってその視線を受け流した。
そして何事もなかったようにコルベールに質問する。

「召喚されと日の時といい、また俺になんか用ッスか?」
「いや、今回は学院長の頼みで君に会いに来たんだよ
詳しいことは私の研究室で話をしたいんだが…………
ミス・ヴァリエールはいないのかね?」
「あの爺さんからの頼みで?
…………いいッスよ、特に今やることもないんで。
ルイズもまだ帰ってきてねぇし、丁度いいでしょう?」
「ふむ、それはよかった
では案内しよう、私についてきてくれ」

(あの爺さんからの頼みってコトはおそらく
スタンド使いに関すること、あるいは地球の手掛かりがあるってことか?
だがそれにしたって早すぎねぇか?頼んだのは今日の昼だぞ?
それに学院長室じゃなくこの先生の研究室ってのも妙だ、
………なにか……あるのか?この学院に、こんなすぐ傍に、
スタンド使いか、地球に関する手掛かりかなにかが………)

自分のなかに渦巻く疑問を胸に、音石はコルベールの後にを追うため
留守番をデルフリンガーに任せ、ギターを手にルイズの部屋を出て行った。



コルベールの後についていく内に音石は塔と塔に挟まれたいっかくにある
小汚い掘っ立て小屋に辿り着いた。

「これが………研究室?」

音石の呆然とした声にコルベールは苦笑した。

「はははっ…、以前はちゃんとした部屋があったのだがね
薬品などの臭いが理由で場所を移されてしまったのさ」
「はっ、随分優遇されてるなアンタ」
「君は嫌味で言っているんだろうが、実際そうなのかもしれない」

コルベールが扉を開き中に入り、音石もその後に続いた。
まず目に入ったのは薬品のビンや試験管、さまざまな実験器具だった。
壁は書物の詰まった本棚に覆われ、
蛇や蜥蜴や得体の知れない生物が檻に入れられている。
そして次に音石が感じたのは強烈な刺激臭だった。

「うあァ、こりゃ追い出されても文句いえねーわ」
「なぁに、これぐらいの臭いすぐに慣れるさ
しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく
私はこの通りまだ独身だがね」

コルベールは慣れた表情で言うが、音石はそうはいかない。
ある程度の臭いは刑務所で多少慣れてはいるものの、
この研究室に漂う臭いはそれはまた別の臭みをもっていたため、
音石は自分の顔の前を手で振り払う仕草を示した。

「それでっ?どんな用件なんッスか?
人をわざわざこんなところまで連れてきて」
「こんなところとは酷いじゃないか、
しかしそう言われても文句は言えないね
とりあえず本題に入ろう、実はオールド・オスマンから
君にあるモノを見せて欲しいと頼まれたんだよ」
「……ここに連れてきたってことは、
ここにそのあるモノってのがあるってわけかい?」
「さすがに察しがいいね、そして学院長から聞いたよ
君がこのハルケギニアとは違う別の世界から来たということも」
「げっ!?あのジジィしゃべりやがったのかよ!!」
「ああ、だが勘違いしないでほしい。
私が聞いたのはあくまで君が異世界の住人だということだけだよ
それ以上のことは聞いていない。君の不思議なチカラのこともね
仮に聞いたとしても、私はそれを他人に話すつもりはないよ
当然、君が異世界の住人だということもね」

コルベールはそう言うが、それでも音石は苦い表情を浮かべた。
あの学院長が話す程の相手ならそれなりに信用性はあるのだろうが
やはりどちらかといえば複雑な気分があった。

「だと嬉しいんだがなァ~、
ていうかアンタ、俺が異世界の人間だってのにえらく冷静だな
それ以前に信じてんのかよ?こんな突拍子もない話」
「もちろん驚いたとも、しかしそれと同時に納得もした。
いままでの君の行動、その服装、見たことない楽器、
すべてハルケギニアの常識を覆しているからね。実に興味深いよ」
「あんた変わり者って言われたことないか?
あっ、図星だな?めちゃくちゃ顔に出てるぜ?
そんなんだからいい歳ぶっこいて独身なんだよ」

いつの間にか音石のコルベールに対しての言葉遣いが荒くなっていた。
ある意味これは秘密を知るもの同士の親近感を表しているのだろう。

「ゴホンッ!私のことはどうだっていい
話がそれてしまったが、君に見せたいあるモノというのが
…………これなんだよ」

コルベールが研究所の奥から、キャスター付きの机を持ってきた。
その机の上には何かが黒い布で覆いかぶされていた。
なんだこりゃ?と音石は疑問を感じた。
しかしコルベールがその布を引っ剥がした瞬間、
その疑問は…………驚愕へと変わった!

「………ばかなっ!?おいおいタチの悪い冗談だろ?
なんで………、なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」

時間は少しさかのぼり、
ルイズは今、食堂でキュルケ、タバサと一緒に夕食をとっていた。
そしてルイズはキュルケとタバサに医務室での出来事を話していた。

「へぇ~、前々から思ってたけど
オトイシって結構やること容赦ないのね、
傷もまだ完治していないギーシュに掴みかかるなんて」
「………でもある意味、彼らしいといえば彼らしい」
「ふふっ、確かにそうかも♪
………それでルイズ?結局ギーシュのことは許してあげたの?」

キュルケの質問にルイズは食事の手を止め、
難しそうな表情を浮かべた。

「正直………なんとも言えなかったわ、
ギーシュはああ言ってくれたけど………ギーシュが今まで
わたしのことを侮辱してきたのは紛れもない事実だもの……
ギーシュ自身が言ってたようにね、
…………だから…………なんとも言えなかった」

重い静寂な空気が流れた。とても気まずく、とてもぎこちない空気、
しかし間もなくしてその空気の中で
キュルケがグラスに入ったワインを
口に軽く流し込んだのに続いて言葉を発した。

「だったら……それでいいんじゃない?
ギーシュが本気であんたにしてきたことを『反省』してるのなら
これから先、あいつの行動がそれをあらわすはずよ」
「それこそ……あなたの使い魔のように……」

キュルケに続いてタバサまでが言葉を並べた。

「……………なんかさ……」
「「?」」
「あんたたちがなんで親友同士なのかちょっとわかったような気がしたわ
だって、息がピッタリなんだもの」

その言葉にキュルケは笑い出し、ルイズもそれにつられて笑った。
そしてタバサも……その小さな口が薄く笑みを浮かべてるように見えた。

夕食を終えると生徒たちは自分の部屋に戻り寝静まっていく、
しかしルイズたちは寮から少し離れた広場にいた。
ルイズの魔法の練習が目的だ。しかもそのために
キュルケとタバサに協力を求め、キュルケたちもそれに承諾した。
タバサならともかく、ルイズがあの犬猿の仲だったキュルケに
こんなことを頼むなど、少し前の彼女なら考えられないだろう。
もちろんキュルケだって同じことだ。
ある意味これも音石明という男に関わったことによる
二人の変化………いや、成長なのだろう。
だが実際は…………、

【ドゴォォォンッ!】

「だからちがうでしょうヴァリエール!
この魔法での詠唱はそうじゃなくてっ!」

とキュルケが説教をし、

「だからちゃんとその通りにしてるって言ってるでしょう!?」

ルイズが抗議し、

「…………………………」

タバサが黙って本を読む、……………の繰り返しである。
実はその口論の最中に音石とコルベールが研究室に向かって
ルイズたちと入れ違いになったというのは誰も知る由もない。

「でもなんで詠唱も杖の振り方も完璧なのに
爆発ばっか起こんのよっ!!ホントわっけわかんない!!」
「そんなの私に聞かれても知るわけないでしょヴァリエール
ほら!もう少し付き合ってあげるからがんばって………」

【ドオォンッ】

「「「!!?」」」

キュルケが喋っている最中に突然どこからか轟音が響いた。

「なんなの今の音!?
ルイズ、あなた杖を振った?」
「振ってないわよ!
『大きな音=わたしの魔法』って認識しないでよね!!」
「あそこ」

タバサが冷静に、学院の中央塔の方角を指差した。
その指の沿ってルイズとキュルケも中央塔を見ると
10m以上はある巨大な何かが蠢いていた。
夜の暗闇でよく見えなかったが、目を凝らしてみると
徐々にその何かの正体が明らかとなった!

「あれは………ゴーレム!?なんて大きさなの!!
それにあんなところで一体なにを………」

キュルケが驚愕の声をあげるが、
頭の中では自然に状況の分析が行われていた。
そしてその分析の中で『ある人物』の名前が浮かび上がった。
しかしその名を口にしようとする前に
親友タバサに先にその名を出されてしまった。

「『土くれ』の……フーケ…」
「フーケッ!?最近このあたりを荒し回っている盗賊じゃない!!」

一人だけ分析に遅れていたルイズが
キュルケと同じような驚愕の声を上げた。
しかしそれでもキュルケに引きをとることもなく
すぐさま次なる状況分析結果に辿り着いた。

「まさか宝物庫の宝を狙ってるんじゃ!?」
「おそらくその通りでしょうね、
さっきの大きな音………きっと宝物庫の壁を攻撃した音だわ。
でもまぁ随分とナメられたものね、
あんな堂々と大胆に学院の宝を盗もうとするなんて………
タバサ、急いで先生たちに………」

タバサに視線を向け、指示を送ろうとしたとき
キュルケはあることに気付いた。
さっきまで自分の隣にいたルイズがいなかったのだ。
まさか!と思い、キュルケは視線を前方の塔の方角に移した。
予想した最悪の通り、ルイズがゴーレムに向かって走っているのだ!

「ルイズ!なにをするつもりよ!?危険よ!!」
「先生たちを呼んでいたら逃げられるでしょう!!
フーケはわたしが捕まえて見せる!!」
「そんなの無茶よ!!あなたもわかってるでしょうルイズ!?
あんな巨大なゴーレムを作り出せるなんて
フーケは相当腕の立つメイジの筈だわ!!」

キュルケがいくら叫び止めようと、ルイズにも意地があった。
キュルケの言葉に耳を傾けることなくゴーレムに向かっていった。

「このままじゃルイズが危険だわ!
急いで追うわよタバサッ!!
もうっ!ルイズッたらほんっと手間かけさせるんだか!!」

その言葉を合図にキュルケとタバサは走り出した!
そしてタバサは走りながら口笛を吹くと空から月をバックに
風竜シルフィードが姿を現し、キュルケとタバサの横に近寄り
低空ギリギリを飛行する。そして二人は空飛ぶ魔法『フライ』を唱え
シルフィードの背中に飛び乗り、塔の方角へと駆けていった。

そしてそのゴーレム自身は再度腕を振り上げ、全体重をかけて
宝物庫の壁に巨大な腕のパンチをぶつける。
しかしヒビも入らなければビクともしないその現実に
ゴーレムの肩に乗りマントで顔と体を隠しているフーケが一番苛立っていた。

「くそったれっ!硬いッたらないねぇホントにっ!!
あの禿げ、なにが外側の物理的衝撃には弱いよっ!!
外が『禿げてる』なら中も『剥げてる』ってことだねまったく!」

【ドゴォンッ】

「っ!?爆発!?一体どこの命知らずだいっ!!?」

突如自分のゴーレムの脇腹部分が爆発によって軽く削り取られた。
巨大なゴーレムに乗っていたせいで気付かなかったが、
よく見ると自分のゴーレムの足元に誰かがいた。

「『土くれ』のフーケ!
これ以上、神聖なる学院で好き勝手にはさせないわ!」

しかしとうのフーケは相手がルイズだと認識すると鼻で嘲笑った。

「はっ!だれかと思えば落ちこぼれの『ゼロ』のルイズじゃないか
驚かせんじゃないよ!
あんたごとき『障害』と呼ぶ以前に論外なのよ!!」

距離があるせいか、ルイズもフーケも互いに
相手の声が聞こえることはなった。
しかしフーケのゴーレムはルイズを攻撃しようとせず
再び宝物庫の壁に向けて腕を振り上げようとした。
その行動にルイズは自分が相手にされていないことに気付いた。

「わたしなんて相手に眼中にないってことっ!?舐めないで!
由緒正しきヴァリエールの血統のおそろしさ、
思い知らせてやるんだから!!」

ルイズが再び杖を振り上げようとしたとき、
自分の頭上にタバサのシルフィードが通ったのに気付いた。
よく見るとシルフィードの背中にはキュルケとタバサが乗っている。
しかし今はそれどころじゃない、
ルイズは再び目の前のゴーレムに視線を戻した。

「タバサ、はやくルイズをゴーレムから離れさせないと
あのままじゃ危険だわ!」

シルフィードに跨ったままキュルケは現状を把握していった。
もちろんタバサも同じことだ。
しかし状況はそう簡単なものではなかった。
それを理解していたタバサは冷静にキュルケに伝えた。

「彼女を無理やり引き離すなら、『フライ』を使わないといけない」
「じゃあはやくそうしましょうよ!」
「落ち着いて。そうしたいのは山々だけど
簡単にはいかない、飛行している私たちと彼女との距離は
『フライ』の範囲外、近づこうとすれば間違いなく
フーケのゴーレムが攻撃してくる」

迅速かつ簡潔な説明にキュルケは歯を強く噛んだ。

「じゃあ一体どうすれば……」
「幸い、フーケは彼女を敵と認識していない
でもいつ攻撃されても人質にされてもおかしくない
今は無闇に攻撃するのはかえって危険」

せっかくわざわざ危険を冒してゴーレムに向かったというのに
手も足も出ないなど屈辱意外何者でもなかった。

そしてフーケも竜に乗ったふたりが攻撃してこないことでそれに気付いた。

「はっ、どうやら『ゼロ』のルイズのおかげで
余計な邪魔が入らずに済んだみたいね…………でも……」

【ドォォンッ】

フーケが乗っているゴーレムの肩の反対側の肩が爆発した。

「もうっ!なんでそっちで爆発するのよ!
反対よ!逆よ、逆!!」

ゴーレムではなく本体のフーケを狙って魔法を発動したが
なんの嫌がらせか反対側で爆発した自分の魔法を起こした
手に持つ杖に向かって、ルイズは惜しむ声を上げた。
だがその行動が命取りとなってしまった!

危うく自分が爆発に巻き込まれそうになったことに
危機感を覚えたフーケが、標的をルイズに移したのだ。
壁を向いていたゴーレムがゆっくりとルイズのほうに体を傾けていく。
それにいち早く気付いたのはキュルケたちだった。

「まずいわ!ルイズを攻撃しようとしてる!
タバサ、こうなったら一か八かの賭けに……」
「待って……」

焦るキュルケにタバサは静止の声をかけた。

「なにか……聞こえる……」
「え?」

【………ブゥ……ゥウ……………ウ……】

「なに………この音?」

珍しくタバサが不思議そうな声をだした。
二人はシルフィードに乗りながら辺りを見渡した。
しかし暗闇で何も見えはしない。
微かに聞こえる音もなぜかそこらじゅうから聞こえるような気がした。
もちろんこの音にフーケもルイズも気付いた。

「い、一体なんだいこの音は?」
「…………………?」

ルイズが無言のままキュルケたちのように辺りを見渡す。
しかしすぐにその視線はゴーレムのほうに戻った。
目の前のゴーレムが自分に向かって拳を振り上げているからだ。

「ちっ!なにかは知らないけど、
耳元でハエがさえずっているようでイライラするったら
ありゃしないね、この苛立ちをアンタにぶつけてやるわ!!」
「ルイズッ!お願いにげてぇっ!!」

キュルケの願望も虚しく、
ルイズはゴーレムを前に勇気を振り絞って、誇りをかけて
ゴーレムに向かって杖を振りかざした。
ルイズにとってこれが最後のチャンス、
呪文を口で唱え、魔法の名をゴーレムに……
フーケに向かって吐き出した!

「ファイヤーボールッ!!」【ドゴォオンッ】

…………最後の足掻きは虚しく宝物庫の壁へとぶつかった。

【ドゴバァンッ!】

「な、なにぃっ!?」
「えっ!?」

だが次の瞬間、
なんと振り上げられていたゴーレムの腕が粉々に粉砕していった!

「なっ、あいつの爆発は間違いなく壁に当たったのに
なんであたしのゴーレムの腕が粉々に………ッ!?」

【ブゥウ……………ウウウゥ…………】

「はっ!またこの音!!
さっきから聞こえるこの音は一体なんだってんだい!?
一体どこから聞こえ…………」

一瞬、フーケは自分の横を何かが横切ったのを感じた。
咄嗟に視線を向けてもそこにはなにもありはしない。
だが自分の横に間違いなく何かが横切った………、
そして気付いた。この音…………はじめはどこか遠くからかに
聞こえてくる音だと思っていた。だが実際はそうじゃなかった。
自分の耳が……脳での認識が、その音に追いついていなかったのだ。
『ソレ』が……あまりにも高速でゴーレムの周りを飛び回っていたから……

「タ、タバサッ………あ、あれって……?」

上から見ていたキュルケたちもようやく
『ソレ』を認識することができた。
だが認識したことによって二人の混乱は増すばかりだった。
そしてタバサの口からぽつりと言葉が零れた………。

「鉄の……竜の子供……?」


「な、なんなのよあれ!?
あんなの……今まで見たことがないわ……」

ゴーレムの足元でルイズが唖然として立ち尽くし、
視認した『ソレ』を目で追っていた。
すると空飛ぶ『ソレ』が再びゴーレムに急接近すると、
あるもの飛び出してきた。『光る腕』だった!

「あ、あの腕!あれってまさかっ!!」

その光る腕は強烈なラッシュをゴーレムの腹部に炸裂した!
ラッシュによって抉られた腹部の影響で
ゴーレムは大きくバランスを崩した。
不安定に全体がぐらぐらと揺れている。

「うっ……ッ!くそっ、なんだってんだいあれは!?」

フーケはすぐさま杖を振り、抉られたゴーレムの腹部を修復し、
体勢を立て直すと、すかさず空飛ぶ『ソレ』に向けて
ゴーレムで攻撃させたが…………

(は、速いッ!?)

『ソレ』の驚異的な速さにフーケは肝を冷やした。
ゴーレムの攻撃を回避した『ソレ』は一旦距離をとった。
するとルイズたちの耳につい最近聴き慣れた音が鳴り響いた!

ドギュウァーーーーーーーーーンッ!!!

音が鳴ったのはルイズの後方!
その場にいた全員がその方向に目を向けた。
そこに居たのは、ギターを構え、特徴的な長髪と
顔に大きな傷のある青年!ルイズの使い魔!!

「オトイシッ!!」
「On、YEAH!!」


数分前、コルベールの研究室にて。

「なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」
「……………やはりコレを知っているんだね
オトイシ君、私はめずらしい噂や情報を耳に入れると
よく休暇をとって研究しに行ったりしているのだが………
これはその中で一番興味深い代物だよ、
数ヶ月ほど前のことなのだが……ある田舎の村で
『奇妙な鉄の竜の子』が拝められているという情報を耳に挟んでね
非常に興味深かったので、実際に見に行ってみたら
私の中の研究意欲を最高に刺激してね、村人たちに頼んで
譲ってもらったんだよ、私の財産の四割程が消し飛んだがね。
それから色々と研究してみたのだが、いっこうに謎ばかりだよ。
だがこのハルケギニアで作れるような代物じゃないこと理解できる。
そして君は異世界の住人、私も………学院長も………
これは君の世界から来たモノなのではないかと予想しているんだよ」
「………ああ先生、あんたの言うとおりだよ。………こいつは…」

【ドオォンッ】

「!?」
「な、なんだ今の音はッ!?」

コルベールは素早い動きで研究室から飛び出すと
音石もそんな彼の後に続いて外に飛び出した。
そして二人の目に入ったのは本塔の前に蠢いている
巨大なゴーレムだった。

「な、なんだありゃ!?」
「ゴーレムだよ!それにあの大きさ、相当腕の立つメイジの仕業だ
おそらく『土くれ』のフーケだ!」
「誰だそりゃ?」
「貴族を相手に盗みを働く盗賊だよ、
最近トリスティンにも現れはじめたとは聞いていたが
まさかこの学院をねらってくるとは………ハッ!?」

するとコルベールはその巨大なゴーレムに走り向かっていく人影に気付いた。

「あれは………ミス・ヴァリエール!?
まずい、彼女はフーケを捕まえるつもりだ!!危険だッ!!
急いで止めないと取り返しが付かなくなる!!」

コルベールがルイズを止めるため、駆け出そうとしたが
肩をグッと音石につかまれ静止された。

「あんたは学院長のジジィにこのことを伝えなよ!
ルイズは俺がなんとかする、フーケもその間足止めしといてやるよ」
「だ、だが!いくら君でもあれだけ巨大なゴーレムが相手では………」

コルベールが音石の方へと向くと、音石の手には
先ほど見せた『ソレ』が脇に抱えられていた。

「きみ………それは………」
「まあ、確かに普通じゃ厳しいだろうーな…
だが『コイツ』があるんだったら……勝算はあるかもな!」

そう言って音石はルイズを助けるために駆け出した!
そしてルイズを助けるために己が分身の名を叫ぶ!

「レッド・ホット・チリ・ペッパー!!
そして飛べェッ!『ラジコン飛行機スピットファイヤー』!!」




そしてゴーレムに攻撃されそうになった
ルイズの危機を音石は見事に救った!!

「よ~うルイズぅ、随分と無茶やってんじゃねぇか?
まあ後は任せろよ、なんで三年前に俺がジョセフを殺すために
使おうとしてた『ラジコン飛行機スピットファイヤー』が
この世界に来てるのかは理解できねぇが…………
まあ、せっかくだぁ。三年前あんまり使ってやれなかった分……
思う存分暴れさせてやるぜぇっ!!」

ギュアァアーーーーーーーーーーンッ!!

【ブウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ】

ギターの音を響かせ、ラジコン飛行機の機動音が鳴り響く!
スピットファイヤーinレッド・ホット・チリ・ペッパーは
フーケのゴーレム目掛けて飛来していった!!

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