ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

D0C-11

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匿名ユーザー

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大統領がフーケ討伐の時に自らの運命を知らせる夢を見たように、
ルイズもまた夢を見る、


自分の実家であるラ・ヴァリエールの屋敷の中庭にある池、
その真ん中ポツリと浮かんでいる小船の上でルイズは泣いていた。
魔法が使えないことへの不甲斐なさ、母と自分の将来にたいする恐怖、
どれだけ泣いただろうか?ふと、小船にもう一人、自分以外の人がいつの間にか乗っているのに気づく。

涙でぼやけた目を擦りながら尋ねる
「貴方はだあれ?」
尋ねられた人物はゆっくりと立ち上がる、スラリと背が高く、真っ白い布を体にまとっている
体つきと顔に生えた髭から男であることがわかるが顔は太陽の逆行のせいでよくは見えない。

男はルイズを抱きかかえる、
ルイズは抵抗しようと思ったがあまりにも“安心感”があり、暖かさと心地よさに包まれたため。
それを止める…、

男はルイズの顔を覗き込む、男の顔は…やはりよく見えない。

少し間をおき、男はゆっくりと呟き始める、

「…この世界に意味の無いものは無い…どんな物事にも…かならず意味はある。
君がこれから辿る道筋は…一見して無駄かもしれない、だが…必ずそこには意味がある、理由がある、必要がある。
そしてなにより…糧がある。」

その最後の言葉を聞き、ルイズの目がゆっくりと暗くなっていく、
ルイズは男の言葉を反芻しながら視界が完全に真っ暗になったときに覚醒した。


目覚めたルイズはまだ若干頭の中をカラッポにしていたがだんだん意識がはっきりしてくると
床で寝ている大統領を見つめる、なぜ見つめたのか理由は無かった、あえて言うなら
夢の中の男と大統領の雰囲気が少し似ていたからかもしれない。



完全に意識が覚醒すると視線を外さぬまま大統領を起こす。

「…今日はやけに早いな…」
大統領が仰向けのままうっすらとあけた目を向ける。
「ん…良い(?)夢見たからかもね、さあ早く起きて」

大統領がルイズの寝具を直し、その間にルイズが顔を洗い髪を整え、大統領が服を着替えさせるという
いつものサイクルを終え、授業に赴く、


その日はギトーという教師による授業だが、どうも自身の得意系統である風の魔法に完全に陶酔しているらしく、
長い時間つかって風の魔法の長所しか語っていなかった。
大統領はうんざりした目でギトーを見つめていたが、
あの過信とも言える(というかそうとしか言えない)自信はスタンド使いにも(ある程度は)通じるものだ。


(自らのスタンドへの絶対の自信…それは最大のスタンドパワーになる…
そういった点ではあの教師も一応尊敬はできる…筈だ…多分)

やがてギトーが実際に風魔法の強さを知らしめるためにキュルケを挑発し魔法を唱えさせる、
キュルケの放つ炎の魔法をギトーは風の魔法で掻き消し、そのままキュルケを弾き飛ばす。

一連の動きを大統領は瞬き一つせずに見つめていた。

やがて授業が終盤に入ると不意に教室のドアが開き、
頭にカツラを付け、派手な衣装に身を包んだコルベールが大慌てで入ってくる、
学園に王女殿下が視察にやってくる事を知らせに来たようだ。

(昔の貴族のような格好をしているがここではあれが正装なのか?)

大統領の見当を外れたことを知らしめるかのようにコルベールの服装(主にカツラがずれた為に)で
教室内が爆笑の渦に包まれる。

王女が視察にくるのはかなり急な話だったようで、授業が終わった直ぐ後にやってきた、
大統領とルイズは行列の中、ユニコーンの馬車に乗った王女を眺める、
大統領は王女を見定めてこの国をそれなりに理解する為の判断材料とすることにした。

(かなりの器量良しだな…民衆からの人気も高いらしい…)
行列の中には学院の貴族ではない平民も混じっていることからも察せられる
そして馬車の中で王女の隣に座っている男に目をつける、

(かなり痩せてはいるが服装と王女の隣に座っていることから察してかなり地位が高い
さらに注意を引いたのは目だ、政治内での修羅場のやりとりを経験している目、
一見穏やかだが隙あらば喰らいついてくるあの目、外交でなんども見たことがある…)
恐らくは国家の政治、それもかなり重要な事に携わっている者だろうと大統領は判断した。
(そんな人間が来る…フンッ、ただの視察じゃあないな。)

大統領が思索を巡らしているといつの間にか大統領の隣にいたキュルケが
「トリステインの王女って言っても、あんなものね…。あたしの方が美人じゃない、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
それを聞いて大統領は少し考え込むふりをして
「さて、美しさで言えばキュルケだが清楚な部分では王女様だろう…可愛さで言えばうちのご主人様だが…」
その言葉を聞いたキュルケはクスリと笑いながら同意した。


そんな中ふと大統領はルイズのほうを振り返る、普段のルイズならキュルケと話していれば大目玉を食らうはずだがそれがなかったため、違和感を感じたのだ。
どうもルイズは何かに目を奪われているらしい、大統領が目線を追いかけるとグリフォンに乗った羽根付き帽子の貴族がいた、
護衛役なのだろう、ルイズの目は完全に恋する乙女になっていた、キュルケもルイズと大統領の視線に気づいたらしく
その護衛役を見て顔を赤らめる、
(キュルケはいつもの事らしいからほっとくとしても…ルイズは違うだろう…何かあるな。
だがまあ…人の恋路に関わるつもりは無い…少なくとも私に関わらない以上はな…)


王女の凱旋が終わり、その日の授業も終えて、大統領とルイズは部屋に戻る、すでに外は真っ暗になっていた。
ルイズは凱旋の時に見た護衛役の事が忘れられないのだろう…窓の外を眺めていて、たまにため息もついている、

大統領もやることがないためそんなルイズを見ているしかない、壁に背をもたれさせていた。

しかしそんな静寂をやぶりドアをノックする音が響く、
長いノックを二回、短いノックを三回。
それを聞いたルイズは立ち上がって急いでドアを開ける。
そこにいたのは黒いローブに身を包んだ女性だった、顔もフードを被っていて見えないようにしている。

異様な風体に大統領は驚くが殺意が無いため警戒はしたが直ぐに如何こうはしなかった、
ルイズもその姿に驚いたが黒いローブを着込んだ女性は口元に指を立てる、
「静かに」という意味だろう、そして女性はローブの隙間から杖を出し、ルーンを唱える、
部屋に光の粉が舞いながらルイズがポツリと呟く「ディクトマジック?」

(たしか探知魔法だったか?)

ルイズの質問に女性は頷く。
「どこに目や耳があるか判りませんから」
そういってその女性はフードを外し顔を見せる。
黒いローブの女性はなんとアンリエッタ王女だった、

「姫殿下!」
と、ルイズは慌てて膝をつく、

しかし大統領の脳内はこの事態に対して軽いパニックを起こす、
「アンタ何やってるの!」
自分に続いて膝をつかない大統領を叱咤するルイズ。
それに気づいて大統領も膝をつく

昼間に凱旋したこの国の王女、つまりトップが自分の主人の部屋にいる…
しかも人目を忍んでくるというトドメつき、

大統領は背骨に氷を詰められたような気分となる。



ルイズと王女の昔話は咲きに咲いた
王女という身分があるあたり同年代の友達が従姉妹のルイズぐらいというのも頷ける話だろうと
大統領は氷よりも冷めた瞳で二人のやりとりを眺めてる。

(ルイズは別に構わない…あの表情は純粋に楽しんでいる…だが王女の方はヤバイ、楽しんでいる反面どこか芝居がかっている)
嘘を見抜く技術を持った人間がいるが、単純に嘘を見抜くよりも本当の事を交えた隠し事の方が見抜くのは難しいものである、
しかし大統領はそれらを多用する政治家、企業家、スタンド使いを相手取り勝利してきたのだ
王族とはいえ政権闘争の前線にもでていない王女では大統領の目に偽るのは無理があった。


過去の先人達の例に習い自分がこれからくるであろう“厄介事”にどうやって対処しようかと考える反面、
この手の類は避けて通れた例が無いという諦めという感情も沸いて出てきた…

やがて王女の表情が暗くなり始め、「あの頃は楽しかった」等という台詞がでてきて大統領は
(ああ意外と早かったな)と死刑が執行される囚人の気分になった。

ルイズが王女を心配すると王女は「なんでもない」、「自分が恥ずかしい」「頼めるようなことじゃないのに」と
(Dioではないが「ウザイ態度はもう止めとけ」と言いたくなるな…)
第三者であるなら誰でもわざとらしく聞こえる台詞だがどうも大の親友であるルイズにはそうきこなかったらしく。

「昔はなんでも話し合った仲じゃございませんか!」と頼れる友人として接している。

大統領は自らは席を外すと二人に伝えたが
「メイジにとって使い魔は一心同体」と王女に言われ引き止められた。
使い魔なんぞ私的なものであって公的なものの方が重要だろうが!っと大統領は怒鳴りたい気持ちをグッと押さえ聞きたくない話しに耳を傾ける。

王女の話を要約すると

アルビオンでクーデターが起こり、反乱軍であるレコン・キスタが勝利する直前であるということ
レコン・キスタが次に攻めてくるのはトリステインの可能性が一番高いということ
レコン・キスタに対抗するためにゲルマニア皇帝との婚姻を成立させなければいけないということ
その婚姻、及び軍事同盟を妨害する材料をレコン・キスタが探しているということ
最後に、かつてアルビオンの皇太子と王女は恋仲で手紙を送った事
手紙が公になれば婚姻が破棄されてしまうということ


大統領は手紙を送った事を聞いたあたりで王女の首をD4Cで切り飛ばしたい思いに駆られたが。
自身が民主主義の時代に生きていたことを思い出し溜飲を下げる



王女の方はもう隠す気も無いらしい
「貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険な事、
頼めるわけがありませんわ!」

(全部自分で言ってるぞオイ)

そしてルイズの方はルイズの方で
「姫さまの御為とあらば、何処なりと向かいますわ!姫さまとトリステインの危機を、
ラ・ヴァリ エール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません! 」

(勇ましいことだなうちのご主人様は…)

大統領はトントン拍子で進む会話を聞き流し、今回の件を少しだけ考える。

(そもそも昔のラブレターがばれた程度で婚約破棄ってどうなんだ?いや待て、
戦争で疲弊しているであろう反乱軍に対して単独で防衛できないという点から考えれば…
ゲルマニアへの取引材料は王女の純潔ぐらいしかない?あるいは単純に皇帝の趣味か?
というか今気づいたが王女の隣に座っていたあの男は王女のお目付け役か、
コイツが馬鹿な真似をしない為に一緒にいたのか、ちゃんと仕事しろよ!
それよりなんでルイズに頼むんだ!他に優秀な奴がいるだろ!信頼できるからか?何を信頼したんだ?!)

大統領はこの王女の“真の目的”に気づき始めていた…その時、

「姫殿下!その困難な任務!!是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」

大統領と決闘したあのギーシュが扉を開けて入ってきた
(…厄介者の二乗だ…)
大統領は頭を抱えたが王女は大歓迎らしい、ギーシュの父親が元帥ということで信頼できたのだろう。


ルイズの目を見て、そして王女、ギーシュの二人がいる今、説得が無駄だということを悟り…

ルイズから荷造りの命令を受けた瞬間、大統領は…一時的にではあるが考えることを止めた。


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