ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

反省する使い魔!-12

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匿名ユーザー

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反省する使い魔!  第十二話「無尊敬な過去、そして香水」


「なんと、お主意外のスタンド使いが………!」
「ああ、なんとか撃退したがな………」

アヌビス神との激戦から勝利した次の日、
時間にして午前11時頃、音石は学院長室でオスマンに
昨日、武器屋での出来事を報告していた。
当たり前だが、来たときに部屋に同席していた
コルベールとロングビルには退席してもらっている。

「ふ~む、他人を操る剣のスタンドとはのぉ~~
して、その後ミス・ヴァリエールはどうしたのかね?」
「タバサのシルフィードで学院に戻る最中に無事目ぇ覚ましたよ
筋肉痛で元気な悲鳴あげるたくらいだ。問題ねぇよ」
「ふむ、それを聞いて安心したわい。
しかしわからんのぉ、そのアヌビスというスタンド。
君のようにサモン・サーヴァントで
呼び出されたわけでもないのに、
なぜ君の世界地球からこのハルケギニアに……………」
「………………………………」

この時。音石の頭にはある人物の言葉が浮かび上がっていた。
三年前、彼のかつての部下であった少年、間田敏和だ。

スタンド使いとスタンド使いは引かれ合う……。

(…………まさか、だろ)

「まあしかし、無事解決してよかったわい。
あやうくワシの学院の生徒が
殺人鬼になるところじゃったわい。
ここはこの学院の長として何か礼をはずまんと……」

オスマンのその言葉に音石はピクッと反応した。

「お!なんかくれんの?」
「……お前さん、そこは普通遠慮するところじゃろ?」
「くっくっくっ悪いなじィさん。おれはそこまで善人じゃねぇんだよ♪」
「やれやれ、現金な小僧じゃのぉ。
まあ、言っちまったモノは仕方がない………
ホレ持ってけ、この悪党め!」
オスマンが机の中を漁り、小さな袋を取り出した。
音石は素早い動きで袋の中を確認し、
オオッ!!と歓喜の声を上げた。
以前、キュルケに対して現金な女と評価したことがあったが
これでは俗に言うどっちもどっちである。

「ああそうだ、報告のついでにアンタに頼みたいことがあんだよ」
「ほう、一体なんじゃ?」
「万が一なんだが、俺やアヌビスのような
スタンド使いがこの世界にいる可能性がある。
だからもし、アンタ耳に『魔法とはちょっと違う奇妙な情報』が
入ったら、俺に伝えてほしいんだ。
あんたのほうが俺よりよっぽどその手の情報が入るだろ?」
「なるほどのぉ………ふむ、あいわかった。了解じゃ」

オスマンの承諾を確認し、音石はもらった袋を懐にしまい
座っていた席を立つ。

(この世界に電気回線が走ってたら
こんな回りくどいことする必要もねぇんだがなァ……
まっ!いまさら悔やんだってしょうがねぇか)

「しかしまァ、何から何まで悪いなじいさん」
「なァに、気にせんでもよい。
こちらとしても、異世界の住人である君を呼び出した
ミス・ヴァリエールの学院長としての責任があるからのぉ。
それにワシ自身、お主と話していると退屈せんしの。
スタンドだのギターだの、なかなか新鮮な体験を
させてもらっておるんじゃ。そのお礼とでも思っておくれ」

オスマンの返答に音石が小さく鼻で笑う、
そのままオスマンに背を向け、
部屋の扉を開けたところでまたオスマンが話しかけてきた。

「気が向いたらお主の世界の話でも聞かせておくれ。
この年寄りにも今をより楽しく生きていく薬になるわい」
「その歳で縁起でもねぇこと言わねぇほうがいいぜ爺さん。
そういうのに限ってロクなことねぇからな。
まっ、気が向いたら話してやるよ。そんじゃ」

フォフォフォフォッと学院長の愉快な笑い声を
聞きながら、音石は学院長室を後にした。

「…ふむっ、しかし彼とはまた別のスタンド使いか…
ウチの生徒が被害にあった以上、
もしもの時の為に…なにか対抗策を考えんといかんのぉ………。
しかしのぉ~、一人一人が別々の能力をもっている以上
これといった対策法もないじゃろうし……、
なにより能力以前にスタンドそのものが強力じゃしのぉ~
彼のレッド・ホット・チリ・ペッパーのような
素早く、破壊力があるようなスタンドでは
生半可なメイジなどでは歯がたたん。
はてさて……なにかうまい対策法はないものか……」

途中で椅子から立ち上がり、学院長室をぐるぐる回りながら
オスマンは独り言を自分に言い聞かせ、
髭をいじりながら思考に耽っていた。

もしも恐れている事態がこの学院で起こった場合
唯一頼りになるのは彼だけじゃろう。
生徒を危険にさらすわけにもいかんしの~、
しかも学院の教師たちはほとんどが口先だけの腑抜けばかりじゃ。
ふ~~~~~~~~~~~む…………………あっ!

「しまった!彼に『あのこと』を伝えるのを忘れとったわ!
やれやれ、歳をとると物忘れが多くて難儀じゃわい……
仕方ない、モートソグニル」

オスマンが自分の使い魔の名を言うと、
部屋の中央の机の上で横になっていたネズミ、
モートソグニルが起き上がった。

「起こしてしまってすまんのぅ。ちと頼みがあるんじゃ
コルベールくんを呼んできてくれんか?
今日のこの時間は、あやつの授業はないはずじゃから……
いつもの研究室にいるはずじゃ。頼むぞ………なに?
あそこは臭いがひどく鼻をつつくからいや?
そう堅いこと言わんでおくれ。
この歳であそこまで出向くのもホネなんじゃよ」

モートソグニルは嫌そうな顔をしながら
仕方がないと自分に言いつけ、学院長室から姿を消した。

音石はというと、ルイズと昼食時間に食堂で待ち合わせしていたため
学院のいつもの食堂の壁にもたれ掛っていた。
この時、音石も音石で、オスマンと同じように悩んでいた。

スタンド使いは引かれあうか…。
うまいこと考えたもんだな間田のやつ、
そう言えばあいつ今何してんだろ?おっと、そんなことはどうでもいいな。
だがまあ、俺以外のスタンド使いが現れたからといって
まだほかにもスタンド使いがいるって確証もねぇしな……、
この引かれあう法則はほかの連中にはまだ黙っておくか…。

一通りの思考を終了させ、音石はハァッと一息吐き捨てる。
すると食堂が賑わい始めていることに気付いた。
どうやら生徒たちが授業を終了させ、
昼食をとろうと集まり始めたようだ。
音石は目を凝らしながら、そのギャラリーを見ていると
ルイズ、キュルケ、タバサの三人組を発見した。
彼女たちがそれぞれの席に着いたのを確認すると、
音石もその席に向かった。

「お疲れさん、どうだ調子は?」

音石がルイズに話しかけると、ルイズが首をギギギギギッと鳴らし
こちらを見てきた。髪の毛が顔を隠し、青ざめたルイズの顔。
それは一種のホラーだったため、
音石の口から「うへぇ…」という声がこぼれ落ちた。

「……最悪よ、体中は痛いったらありゃしないわ…
椅子に座るのも一苦労よ……体がギシギシいって…」
「ああ、そういえば椅子に座るときなんかギコチなかったな」
「それだけならまだしも……見てよこの手のタコ!
ペンを握るときも痛くて仕方なかったんだから……」
「まったくよ、授業中ルイズの苦痛の声を聞いてると
こっちまでなんか痛くなってくるくらいなんだから……」

近くの席に座っているキュルケがそう言ってはいるものの
皮肉で言っているわけではない。
純粋にルイズを心配してでの言葉だった。

「それぐらいのタコがなんだ。
オレがいた町にはなァ~、手のタコが発達しすぎて
そのタコん中にナイフとか仕込んでいるやつがいんだぜ?」
「………どんなやつよそれ…」
「一言で言えば変人だな。
それ以上もそれ以下もなく間違いなくな」

その変人、『スーパーフライ』のスタンド使い
『鋼田一豊大』と音石は面識があった。
いや、面識といっても鋼田一は音石を知らない。
時期にして仗助たちが間田を打ち倒した後、
康一が由花子に誘拐される前あたりといったところだろう。
その時に音石はたまたまスーパーフライの鋼田一を発見した。
そして何の因果なのか、鋼田一はその時も仗助のときと同じように
鉄塔のボトルで魔法の絨毯のように移動していたため
音石はすぐ鋼田一がスタンド使いだと確信した。

当然、音石は鋼田一を仲間にしようと考えたが
仲間にする前にいざという時を考え、
鋼田一のスーパーフライの全貌を知る必要があった。
スーパーフライのその姿は『鉄塔』といった巨大さだ。
下手をすれば自分のチリ・ペッパーを上回る能力を
秘めている可能性があったため、
音石は一旦定期的に鋼田一を監視する必要があった。
だが生憎のこと、音石は鋼田一を仲間にする前に
仗助たちに敗北したため、結果的に無駄足となってしまった。

ついでに言うと、SPW財団に尋問されたとき
音石が鋼田一のことを黙っていたのは
当時、邪悪な精神に染まっていた彼の心が
うまくいけば鋼田一が自分の代わりに仗助たちを
殺してくれるかもしれないという
姑息な考えを生んだからである。

それと疲労回復剤と偽って飲まされた自白剤。
あの時、SPW財団が質問してきた内容はあくまで
『弓と矢で射たやつ』であったため、
弓と矢が形兆によって杜王町で乱用される以前から
スタンド能力に目覚めているタイプの鋼田一は
その質問の対象にあてはまっていなかったこともあってか
音石の口から漏れることはなかった。

「だがまあ、その程度で済んで幸運だったと思うべきだぜルイズ」
「うっ……そ、それはわかってるわよ!
あのままじゃ私がずっとその……アヌビス、だったわよね?
ソイツに操られたままで、下手したらそのまま人斬りの殺人鬼に
なっていたかもしれないって自覚してるし…………、
元々の原因は勝手に剣を抜いた私にあるってのも反省してる……、
でも……痛いのは痛いんだから仕方ないじゃない!!」

涙目で語るルイズの訴えに音石はやれやれと吐き捨てた。
するとキュルケが、なにかを思い当たったかのような口ぶりで
ルイズに話しかけた。

「そんなに痛いんだったら、
医務室に行って治療してもらったらどうなのヴァリエール?
治癒の魔法ならそんな痛み一瞬じゃない」

(さすが魔法)

キュルケの内容に音石は素直な感想を心の中で呟いた。
しかしルイズは………、

「……わたしだってそうしたいわよ……、
でも…、昨日こいつの為にいろいろ買ったから……」
「金銭不足ってわけかい、たくよ~……ほらよ!」

すると音石は懐を漁り、
先ほど学院長にもらった金貨の入った袋を
取り出し、ルイズの前に放り投げた。

「なによこれ?…………えッ!?ちょ、ちょっとオトイシ!?
あんたこれどうしたのよ!!?
しかも結構入ってるじゃない!!?」

ルイズは信じられないという目で音石を見た。
キュルケも少し驚いてる感じだったが
タバサは関しては相変わらず黙々と本を読んでいた。

「さっき学院長の爺さんに昨日のことを話した。
ルイズを助けた礼としてもらったんだよ」
「…っ!?あんた…!私に何も言わずに何勝手なことしてんのよ!!
しかも偉大なるオールド・オスマンから
お金巻き上げるなんて!!」
「……彼はそれに見積もった十分な働きをした」

意外にも、黙々と本を読んでいたタバサが
突然ルイズにそう言った。正直意外な助け舟だ。

「タバサのいう通りよルイズ。
あんたは操られてたから覚えてないんでしょーけど………
操られていたあんたははっきり言って、恐ろしく強かったわ。
でもねルイズ。あんたの使い魔は、
そんなあんたを精一杯、傷付けないとように気配りしながら
命懸けで戦って、あんたを救ったのよ?」
「…………………」

キュルケの付け足しにルイズは押し黙るしかなかった。

「でもオトイシ、学院長に話してよかったの?
色々と不味いんじゃ……」
「いや、俺とあの爺さんには
それなりの信頼関係があるからな…
あの爺さんは結構信用できるタイプの人間だ」
「あら?それじゃあ私とタバサは信用してないってことかしら?」
「俺の『能力(チカラ)』のことを言ってんのか?
生憎悪いがその通り。まだお前らに教えるわけにはいかねぇよ…」
「……そう、でもまァ。
結構ワケありっぽいし…、仕方ないわね」
「…………………………」

少し残念そうな顔でキュルケがそう言った。
タバサは手に持つ本を机に置いた。
その動作を合図に、音石は食堂中の生徒たちが
食事前のお祈りに入ろうとしていたことに気付いた。

「ルイズ、どうせ俺が持ってたって
価値もわからねぇし、使い道がねぇんだ。
メシ食ったらこの金で傷治してもらってこい………
ああでもツリは返せよ」
「……………………………………」

音石はそのまま、ルイズたちに背を向け
厨房のほうへ向かっていった。

「…………なんか私、オトイシに助けられてばかりね」
「え?」
「…………」

音石が厨房に姿を消したと同時に
ルイズの口から突然こぼれた一言だった。

「それが使い魔としての役目だからでしょ?」
「そんな簡単な一言の問題じゃないのよキュルケ…
覚えてる?あいつが召喚さえた日、
ミスタ・コルベールが言ったこと……
『彼は使い魔ではあるが人間だ』………
あいつはね、わざわざ私の使い魔でいる必要もないのよ。
なのにあいつは私に使い魔でいてくれている……、
いいえ、それどころか……私を助けてくれている……」
「……ルイズ、なにが言いたいの?」
「………なんだか、自分が情けないのよ
仮にも誇り高い貴族の称号をもつ私が………
使い魔だからって、所詮他人でしかない筈のあいつに
助けられてばかりの自分が…………」
「ルイズ………」

貴族。それは誇り高き血を受け継ぐ人種を意味している。
当然ルイズは自分のヴァリエールという家名に誇りを持っている。
だからこそ複雑なのだろう。ルイズぐらいの年頃なら尚更だ。



「…………彼は……」
「「え?」」

ルイズとキュルケの声が重なる。
意外、突然口を開いたのはタバサだったのだ。
「彼は……召喚される前は自分は牢屋に入っていたと言っていた」
「ええっ!?」
「あいつがっ!?」

はじめはキュルケ、その次にルイズが驚きの声を上げる。

「……彼は過去に取り返しのない過ちを犯している
私にはわかる…、理由は聞かないで………」

ふと、ルイズは音石が以前、
殺人を犯してしまった過去のことを
自分に教えてくれたことを思い出した。

「で、でもそれになんの関係が……」
「彼自身は気付いていないと思う…
無意識……そう言ったほうが正しいかもしれない…
彼は…あなたの使い魔としてあなたを守ることによって、
自分の中にある罪に償いをしているんだと思う…………」

ルイズは反射的に振り返り、音石が向かった厨房の入り口を見た。
しかし既に音石は厨房の中に消えていた。

「……………………」

ルイズが黙り込んだ沈黙の空気の中、
その静寂に、キュルケが口をあけた。

「ねぇルイズ、一体……彼にどんな過去があるっていうの?」
「……私も知らないわ……、でもいつかわかる時が来ると思う」
「え?」
「あいつが……私の使い魔でいることが……例え無意識でも、
罪滅ぼしだと思っているなら……私は受け入れるわ。
あいつの罪を、あいつの主人として………ね
だから、あいつがそれに気付くときがくるまで……
私は待つわ。あいつが自分からすべて打ち明けてくれるのを…」

キュルケも、タバサさえも、意外そうな顔でルイズを見た。
しかしキュルケの口が徐々ににやけた。

「な、なによ?」
「………ふふっ、いいえなんでもないわ
さっ!ルイズ、食事のお祈りをしましょう
後でわたしも一緒に医務室に行ってあげるわ」
「……?……あ、ありがと?」

日頃、口喧嘩している相手の妙な優しさに違和感を感じながらも
ルイズはそのまま食事前の祈りを終え、
生徒たちと一緒に一斉に食事を開始した。

「今日もウマかったぜマルトー
また明日もよろしく頼むわ」
「おう!遠慮せずいつだって来い!!」

厨房で食事を終え、マルトーに別れの挨拶を済ました音石は
厨房を出て、食堂の様子を見渡した。

(生徒たちもメシ済ました後の昼休みの最中みてぇだな)

次に音石はルイズたちが座っていた席を見た。

(……いねぇな、キュルケが言ってた医務室か?
まっ、今日は別にやることねぇし………
ルイズに付き添ってやるかな)

その場を移動いようと、音石が一歩食堂を踏み出した瞬間。
彼はある重大なことに気付いた。

「オレ医務室の場所知れねぇな」
「だったら案内してあげましょうか?」
「ああン?」

音石の愚痴を誰かが聞いていたのか、
いきなり横から声をかけられた。
その声がした方角を見てみると、
特徴的なリボンをした少女、
モンモランシーが音石を見上げていた。

「またお前かよ、えーっとぉ確か名前は………」
「またで悪かったわね、モンモランシーよ
覚えときなさい、『香水』のモンモランシー」
「………『洪水』?」
「『香水』ッ!!」

(ぷっ、おもしろいなこいつ)

自分の二つ名の間違いを否定する際の
モンモランシーのリアクションに音石はちょっとニヤけた。

「で?その『香水』のモンモランシーさまは
どういう心境の変化でこの俺の手助けなんかしてんだぁ?」

以前も言ったが、モンモランシーは
音石が決闘で半殺しにしたギーシュの恋仲だ。(ルイズに聞いて確認した)
そんな女が自分の手助けなど、気味の悪い話である。

(相当変わり者なのかぁ、こいつはぁ?)

音石からしてみれば、この考えが一番妥当である。

「別に、ただいつまでもそんなトコに突っ立ってられても迷惑だし
わたしもちょうど医務室に用があるし…………
ついでよ、ついで!ほら、ついて来なさい」

モンモランシーはそのまま音石を通り過ぎ食堂から廊下に向かう。
ルイズみてぇな奴だな、などとデジャヴ感を覚えながら
音石はそのままモンモランシーの後を追った。



「……おめぇ一体どういうつもりなんだ?」
「え?」

医務室に向かう廊下の途中、
音石はモンモランシーに自分の疑問をぶつけた。

「普通によぉ、考えてみたって変な話じゃねーか?
ルイズから聞いたぜ?
お前、俺が決闘で半殺しにしたギーシュの恋人らしいじゃねーか
こっちはただでさえその件で学院の生徒連中にびびられてるってのに、
どういうつもりなんだぁ?気味が悪いったらありゃしねぇ…」
「………………………」

その言葉にモンモランシーが黙り込んで足を止めた。
音石もそれに続いて足を止める。
モンモランシーは少しまじもじした様子でそっと口を開いた。

「た、たしかに今のあんたはこの学院のお尋ね者よ!
みんなあんたのことを恐れてるし、
なかにはあんたのことを『貴族の敵だ』って言ってる人もいる……、
私だって……あんたがギーシュを
あんな目に合わせたのは正直言うと、許せない気持ちはある」

すると次にモンモランシーは音石から視線を外し、
照れたような口調で言葉を連ねた。

「………でも、あんたは………あなたは私を助けてくれた。
それに、あなたがギーシュと決闘した理由は
ギーシュに二股の罪を擦り付けられた
給仕を助けるためだってのも知ってます。
だからその……なんていうか………
わ、わたしは……あ、あなたのことを尊敬してるのよ、
貴族とか…平民とか、関係なく………
ひとりの人間として………」

モンモランシーがそう言い終わると
赤くした顔を隠すために前に向きなおり
廊下にあるひとつの扉に入っていった。
どうやらそこが医務室らしい。

「……おれは、誰かに『尊敬』されるような人間じゃない」

モンモランシーに言ったたわけじゃない、
ただ……音石はだれにも聞こえることなく、ポツリと呟いた。
どこか複雑で、どこか悲しさを感じさせるような表情で………。

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