ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

反省する使い魔!-11

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
反省する使い魔!  第十一話「アヌビス◇ビート」


時は既に夕方。夕日で照らされた城下町。
多くの人々がにぎわうなか、
夕日のように赤い綺麗な髪をしたキュルケと
赤とはまた対称的な青い髪をしたタバサが
城下町を歩いていた。いや、探索していた言ったほうが
この場合は正しいのかもしれない。

「………いないわ、どこに行ったのかしら」
「……………あの二人が乗ってきた馬は
まだ街に置いてあるからいるのは確実
もしも馬で学院に戻ろうとしたら見張らしてる
シルフィードが教えてくれる」
「そう……よね……、さっきの仕立て屋の話から
推測するとまだこの近くに居るはずだし………
もう、一体どこ行ったのよルイズたち…………」

キュルケは苛立ちと不安を顔に表しながら、
出店をやっている街人に聞き込みをしながら
ルイズと音石を追っていたが、
いつの間にか同じところをぐるぐる回っていることに
気付き現在に至る。

「………………」

タバサは何か言いたそうな目でキュルケを見ていたが
親友であるタバサの視線の意味をキュルケは
ちゃんと理解していた。

「タバサ、貴方が言いたいことはわかるわ
『学院に戻ってあの二人の帰りを持つのも1つの手』
って言いたいんでしょ?でもそれじゃだめなのよ……
一刻も早く彼に会って直接言わなきゃ私の気がすまないのよ
ごめんなさいタバサ、こんなことに貴方を付き合わせて……」
「別にいい」
「……ホントにありがとうタバサ」

【ガシャーーーーーンッ】

「「!?」」

突然、どこかのガラスが割れるような音が鳴り響いた。
いや、ガラスだけじゃない。ガラスの音に続いて
ガラガラっと木材が崩れ落ちるような音が二人の耳に入った。

「タ、タバサ。今の何!?」

キュルケとタバサは周囲を見渡した。
そして気付いたことがある。
見渡す限りどうやら自分たち以外、
さっきのガラスや木材の音に気付いている者はいないらしい。
つまり…………、

「こっち…………」

タバサが指差した先、それは二人の丁度背後にある
路地裏に入る入り組んだ道だった。
つまり、音の発信源は路地裏の先から鳴り響いたようだが
キュルケとタバサのいる位置で丁度音が
街の賑わいでかき消されてしまったのだろう。

「なにかあったのかしら?」
「……………」

キュルケは最初、ゴロツキとかの喧嘩かと推定したが
考えているうちにあることに気付いた。

「そういえば………この路地調べてなかったわね……」

キュルケの言葉にタバサもコクリと頷き
手に持っていた本を懐にしまった。

「嫌の予感がするわ………。タバサ、行ってみましょ!」

キュルケとタバサはそのまま路地裏に駆けて入っていった。
その先には恐ろしい敵がいるとも知らずに………。

そしてその音の発信源。夕焼けに照らされた路地裏。
発信源は音石が武器屋の出入り口の扉を突き破った音だった。
わざと突き破ったわけじゃない。
何気ない街巡りに突然現れた敵によって弾き飛ばされたのだ。

「いってぇぇ……、レッド・ホット・チリ・ペッパーで
咄嗟に防御してなかったら首が飛んでたぜ………」
「ひ、ひィィィ!?」

音石が吹っ飛ばされた勢いで一緒に吹っ飛ばされた店主は
頭を抱えながら震え上がっていた。

「ふっふっふっふ、惜しい……
やっぱりそう簡単にはいかないわね……
でもまあ、そうでなくちゃ面白くない……」

突き破った扉の奥の店の中から剣を持ったルイズが
不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。

「………ルイズじゃねぇな、どうなってやがる?」
「ひィィィッ!!なんてこった!!
よりによって『あの剣』を抜いちまうなんてっ!!
もうだめだァ……おしまいだァ………」

音石の後ろで震え上がっている店主が
まるでこの世の終わりのように絶望していた。
「おいじじィ!『あの剣』って言ったな!!
どうゆうことだ、説明しろ!!あの剣が原因なのか!?
あの剣は何だってんだっ!!?あれも魔法なのか!?」

音石はゆっくりと接近するルイズに警戒しながら
店主の胸倉を掴み上げ問いただした。

「ひィッ!?あ、あの剣は今朝入荷された代物で、
見ての通り美しい刀身が目立った値打ちモノなんですが
出荷先が言うにはなんでも道端に落ちてあったらしんですわ!
そ、それどころかその時、あの剣を拾った仕事仲間が
突然、その場所に居合わせた仲間連中に襲い掛かったそうなんです」

店主の説明に音石は眉を潜ませたが、
聞いていくうちにあることを理解した。

「剣を拾った瞬間襲い掛かったッ!?
つまりあの剣に操られたってことか!?
今のルイズみてぇによぉ!!」
「そ、そうなんです!!
で、でもその時は運よく仕事仲間が連れていた馬が驚いて、
その操られた仕事仲間の剣を偶然蹴り飛ばしたんですぜっ!!
そしたら操られていた仕事仲間も正気に戻って
事無きを得たそうなんですわ!!」
「なんでそんなやべぇ剣をこんな店に置いてんだッ!!?」
「厄介払いされたんですわ!!
入荷された時、あっしもその事を説明されて………
さ、最初は断ったんですぜ!?
『そんなあぶなっかしい剣をウチに置けるか!!』って……
で、でも出荷先の連中に………
『見た目は上等なんだ、うまく扱えれば高値で売れる』って
そそのかされて………ついつい受け取ってしまったんですわ!!」
「結局てめぇのせいでもあるんじゃねーかコラァッ!!?」

音石が店主の胸倉を掴む力がより一層強くなった。

「う……く、くるじィ………勘弁してくだせぇ………
あ、あっしだって処分するつもりだったんです……
『思い返してみればこんなモノを
誰かに売っ払う自体が間違ってる』って………
あっしにだって……げほっ…商人としての誇りがありやす
客は騙しても、危険な目に遭わすことなんて絶対にしやしません!!
さっきだって、どう処分するか店奥で考えていたところを
あんた等が来て………そしたらあの貴族様が勝手に………
なにも……あっしにだけ全責任があるわけでもありませんぜ……」
「………チッ!」

忌々しいがコイツの言うとおりだ。
そう判断した音石は店主の胸倉を掴む手を解き
店主はその場で尻餅をついた。

「げほっ……げほっ……」
「おいオヤジ、最後にひとつだけ教えろ。
あの剣から手を離せば元にもどるんだな?」
「う……げほっ、へ、へい!少なくとも
あっしはそう聞いています………」
「……わかった、とっととどっかに避難してろ
ガラじゃねぇが、俺がどうにかしなくちゃいけねぇようだ」

音石の言葉に店主は安堵の息を吐き、
その場からすたこらさっさと走り去っていった。

(さて…と、あのおっさんが助けを呼んで
大勢人だかりが出来たり、この街の衛兵が来たりすると
いろいろめんどくせぇからな…………。
とっととルイズ助けてこの場からバイバイしたいんだが………)

「そろそろいいかしら?」

店主を見送った音石の背後から
ドスのきいたルイズの声が耳に入り込む。

(……いやな気分だ、『簡単にはいかない』。なぜかそう思っちまう)

ゆっくりと首を後ろに向けると5メートル程離れた位置で
店の扉の瓦礫の上に乗っている剣を持ったルイズが
自分を見下していた。


「ああ……、わざわざ待ってくれて………」

首だけを後ろにしていた音石は
ゆっくりと体も前に向けようとする………次の瞬間!!

「ありがとよっ!!!」

体を半分のところまでゆっくりと振り向かせていたところ
音石はそこから一気に素早くルイズのいる前方に向き直った。
しかしただ向き直ったわけじゃない!
体の回転の軸を利用し足元の瓦礫をルイズ目掛けて蹴り飛ばしたのだ!!

「っ!?小癪な真似をッ!!?」

蹴り飛ばしたことによって大量に飛散した瓦礫の山。
操られているルイズは予想外の攻撃に対抗手段もなく
手に持つ元凶である剣で体をガードした。

「もらったァッ!!」

ガードしたことによって隙が出来た瞬間を音石は見逃さず
すかさずレッド・ホット・チリ・ペッパーを発現し
ガードしているルイズの手に持つ剣を
力尽くで叩き落すつもりで手刀を振り下ろした。

「このタイミングならその剣での反撃もできねぇぜ!!」
「甘いわァッ!!」
「なにィッ!!?」

勝利を確信していた音石は驚きの声を上げた。
なんとルイズは身を低くして後ろにステップすることによって
レッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃を回避したのだ!

「ば、ばかなっ!?ありえねぇ!!
俺のレッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃をかわすなんて……」

音石は驚異的なスピードを誇る自分のスタンドの攻撃を
かわされたことによって驚きを隠せないでいた。
強力なスタンド使いならともかく、相手はあのルイズだ。
あんな温室育ちの子供に回避されるなんて普通では考えられない。

「お前がここぞって時に詰めが甘い奴で助かったぜ……」
「んだとぉ……!?」

身を低くしていた体勢を立て直し、
操られているルイズは醜悪な笑みを浮かべて自分を見ていた。
音石はそんなルイズを睨む。

「たしかに今の攻撃はオレを正確に捉えていた……
だがご親切にお前はオレに教えてくれていたんだよ……
『今から攻撃するぞ』ってなァッ!!!」
「………チッ!!なるほど。そういうわけか……」

音石は理解した。そして頭に数十秒前の自分の行動を回想する。
『もらったァッ!!』というあの掛け声。
あの発言は攻撃する前に発したため
それに反応されてしまったせいでレッド・ホット・チリ・ペッパーが
攻撃するよりもさきにあのルイズは回避行動に移すことが出来たのだ。

「今度はこっちの番だな、ハアァッ!!」

今度は操られているルイズが音石に飛び掛り
剣による連続斬り攻撃を仕掛けてきた。

(ルイズが小柄なだけあってちょいと素早いな……だが!!)

しかしその剣による攻撃もむなしく
レッド・ホット・チリ・ペッパーが全てをガードした。
しかもなんとそのガードというのが両腕の指一本だけという
並のスタンドとは桁外れな実力あってのものだった。
操られているルイズはその防御法に
肝を抜かれたのか眉を深くひそめ、音石と距離をとった。


「………驚いたな。承太郎のスタープラチナでさえ
両コブシを使ってガードしたというのに………
それを指でガードするとは、大したスタンドだ……」

その操られたルイズの言葉に今度は音石が眉をひそめた。

「承太郎………だと!?それにスタンドって………まさかお前!?」
「ふんっ、今更気づいたのか?
ああ、だがまあ、自己紹介もしてなかったな、くっくっく
そう!俺は冥界の神『アヌビス』のカードを暗示としているスタンド!!
よぉ~~~~~~~~~~~~~くっ!!覚えておくんだなァッ!!」

ウッシャアッ!!っと雄叫びを上げ、
操られているルイズもといアヌビスが剣を横に薙ぎ払ってきたッ!

「ぬおぉッ!?」【ガキィンッ】

ルイズを操っている正体がスタンドだったということに
驚いた音石は反応が遅れてしまい、咄嗟に腕でガードしたものの
勢い良く弾き飛ばされてしまった。

「くそっ!」

このまま地面に倒れたりでもしたら確実に追撃してくる!
そこで音石はレッド・ホット・チリ・ペッパーの両腕を
おもいっきり地面に叩きつけうまいこと体勢を立て直した。

「しかもどうやら貴様も承太郎のことを知っているようだな。
そこらあたりには驚いたぜ、一体どういう因縁だこれは?」
「そんなもん俺が聞きたいな」
「ふん、まあそんなもんはどうでもいい
おれはより強い相手と戦ってさらなる高みを目指すだけだァ!!
うっしゃァッ!!!」

咆哮と共に操られているルイズ曰くアヌビスが
その手に持つ剣で勢い良く横に薙ぎ払ってきた!
しかしその時の音石にはフッと薄ら笑みが浮かび、
手に持つギターをビイィィィンっと鳴らした。

「てめぇなめてんじゃねーぞ!
そんなすっトロイ攻撃が何度も俺に通用すると思ってんのかァ~?
この音石明さまによぉ~~~~~~~~ッ!!!」

こんな薙ぎ払い、刀身を手刀でルイズの手から弾き飛ばしてやる!
そうすりゃあルイズも元に戻るだろ~よ~~!
レッド・ホット・チリ・ペッパーの素早く強力な手刀が
アヌビスの刀身目掛けて振り下ろされた。
捕らえた!!そう音石は確信した。
だが音石は知らない。アヌビスの真の恐ろしさを………
真の凶暴さを彼はまだ知らないのだ!


「なっ!!?」

音石は目を疑った。
さっき弾き飛ばされたとき、実は頭を打ったのではとも思った。
そう思ったほうが気が楽だからだ。
それほどまでに、自分の目に入った光景を受け入りたくないのだ。

薙ぎ払いのスピードが一気に上がったのだ!!!

「なぁにいいいいいィィィィィィッ!!!??」
「間抜けめっ!!
貴様の動きはもうほとんど『憶えた』わァ!!!
死ねぇぇぇ!!!」

その瞬間、すべてがスローモーションに
動いているような錯覚を音石はその身に味わった。

(このタイミング…。だめだ、間に合わない!
なんてこった。こんな隠し玉を持っていたなんて……
くそったれが、俺の判断ミスだ。
もっと……慎重にやるべきだったんだ。
相手の能力もまだ完全にわかってもねぇのに……
ちくしょう、いてぇんだろーなァ…、
腹切られるのって…………………)

その瞬間、音石は死を覚悟した。
あーあ、あの世に行ったら
形兆にボゴボゴにされるだろーなー……

「ファイヤーボール!!」
「「!?」」【ドゴォォォンッ】

その時だ!
音石とアヌビス、二人の間に火球が突っ込んで
地面に当たって爆発した!

煙が立ち上がり、その中から音石とアヌビスが
それぞれ反対側の方向に、対峙した状態で
飛び出してきた。

「チッ、邪魔が入ったか…」

アヌビスのルイズの口からそんな言葉が漏れる。
音石は危うく死を迎えかけたことに冷や汗をかきながら
火球が飛び出した方向を見た。


「…………………………キュルケ?それにタバサまで……」
「……はァい、昨日ぶりねオトイシ」
「……………」

そう、入り組んだ路地裏の一角から現れたのは
杖を構えているキュルケとタバサだった。

「わけは……さっきそこですれ違った
武器屋の店主から聞いたわ……
ヴァリエールが操られているらしいじゃない」
「………正直、半信半疑だった。剣が人を操るなんて……
でもこの状況で確信に変わった」

キュルケの言葉にタバサが続けてしゃべる。
そんな二人をアヌビスに操られているルイズが睨む。
殺気の篭った形相。今のルイズの顔をうまく言い表すなら
これが適任だろう。

「あ~ら、キュルケに………タバサじゃない。
奇遇ねぇ。それとも私を追ってきたの?
もしそうならこんな嬉しいことはないわ………。
わざわざ私に殺されに来てくれるなんてね!!」

アヌビスが宿主であるルイズの記憶から
キュルケとタバサに異様な威圧感を纏った声を投げ掛ける。
そしてそのまま剣を振り上げ、二人のほうへ駆け出した。
音石はアヌビスが自分からキュルケたちに
標的を変えたことを理解すると同時に咄嗟に叫んだ。

「ルイズの手から剣を離させるんだ!
そうすりゃあルイズは元に戻る!!」

音石が咄嗟に敵の情報を簡単に教えると
キュルケが不適に微笑んだ。

「魔法は既に完成してるわ!
ルイズ!聞こえてるかわからないけど
火傷したって文句言わないでよね!
できる限りは手加減してあげるから!
ファイヤー・ボール!!」


キュルケがアヌビスに杖を向けると
杖からバスケットボール並の火球が現れ
ルイズの剣目掛けて襲い掛かった。
それに続いてタバサもなにかを発動しようする………が!

「だめだキュルケ!そいつに同じ技は通用しねぇ!!」
「えっ!!?」
【ピクッ!】

音石の言葉にキュルケの口から疑問の声をあげ、
タバサはその声に反応し咄嗟に魔法の発動を止めた。

そして次にキュルケの口からは疑問から驚愕の声が出る!

「うっしゃあァッ!!!」【ぶぅわっ】
「嘘!?私のファイヤー・ボールが掻き消された!?」

アヌビスは、剣を大きく振り下ろすと
キュルケの放った火球をスイカ割りのように
真っ二つにし掻き消したのだ!
キュルケが驚いたのと同様に
タバサも音石もその光景に肝を冷やした。

(なんてスタンドだ。
さっき一回見ただけなのに
もうほとんど『憶えて』やがる!!)

音石がアヌビスの真の恐ろしさを実感するも
その間にアヌビスはキュルケの元に辿り着いていた。

「あっ……」
「死ねぇぇッ!!!」


キュルケは自分のファイヤー・ボールが
あっさりと掻き消されたことの驚きの衝撃からか
猛スピードで迫りくるアヌビスが
もう自分の目の前まで接近してきていることを
認識するのがひどく遅れてしまっていた。
認識したときにはもう振り上げていた最中で
死の恐怖に対する悲鳴を上げる暇すらも失っていた。
だが幸運はまだ彼女を見放してはいなかった。

【ドンッ!】「えっ!?」
【シュンッ!】「チィッ!!」

アヌビスから空気を斬る音が鳴る。空振ったのだ!
横にいたタバサがキュルケの体に体当たりし
タバサ自身もその勢いで回避に成功したことによって!

「あ、ありがとうタバサ!」
「後で。今は距離を取らないと………」
「逃がさん!!」
「「!!?」」

突き飛ばしたことで地面に倒れこんでいる二人を
アヌビスが体勢を整えられる前に斬ってかかってきた!

(間に合わない………!)

タバサは魔法の詠唱を始める
しかし距離があまりにも近すぎる!
どんな凄腕のメイジだろうと間に合わない距離を
既にアヌビスは見切っていたのだ!!

「もらった!二人まとめて!!」
「させるかよッ!!」
「ぬぅッ!!?」

アヌビスは気づいていなかった。
いつの間にか音石も自分に接近していたことに。

レッド・ホット・チリ・ペッパーのラッシュが
アヌビス目掛けて襲い掛かる。

「ほう、この小娘の体なのにも
関わらず本気で攻撃する気か?」
「情けねぇが、てめぇが手加減して
勝てる相手じゃないって実感したんでなァ!!
ルイズには悪いが全力でやってやる!!!」
「くっはっはっ!おもしろい!!
だが忘れたか!?貴様の攻撃は完全に『憶えて』いるんだぞ!!」

【ガンッガンッガンッギンガンッガンッ】

レッド・ホット・チリ・ペッパーの拳と
アヌビスの剣での攻防が炸裂する。

「・・・・すごい」

キュルケかタバサ、どちらの口から漏れたのかわからない
しかしスタンド同士の目にも留まらぬ攻防が
二人を呆然とさせた。


(くそ、やべえぞ。さらに『憶えて』やがる!
最初は俺のほうが攻めてたのに………、
徐々に防御に追いやられてるっ!!!)

【ガァッッンッ!!】「うおぉっ!!?」

とうとう、レッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃が
はじき返され、ボディがガラ空きの状態になってしまう。

「はっーーーーはっはっはっ、勝ったッ!!」
「いや、そいつはまだ速いんじゃねーのか?」
「!?」
「そらよ!!」【シュバババババッ!】
「なっ!?貴様いつの間にこれだけ無数のナイフを!!」
「てめぇがキュルケたちに気を取られてた間に
こっそり武器屋から拝借させてもらったぜっ!」


なんと音石はアヌビスの死角にナイフを隠し持っていたのだ。
アヌビスがナイフに驚き、反応が遅れたおかげで
すぐさまレッド・ホット・チリ・ペッパーの素早い動きで
無数のナイフをアヌビス目掛けて飛来させた。

「おのれ、くだらん小細工ぅ!!」【ガキィンガキガキィン】

アヌビスはナイフを剣であい程度防御し
サイドステップで見事にナイフを回避した。
すぐ傍で見ていたキュルケは驚愕した。
なんて事!これも通用しないなんて!!

「なるほどな。なんとなくわかってきたぜ。
お前の憶える仕組みが…………。」
「なにィ?」
「え!?」
「……………………」

音石の言葉にそれぞれが反応を示した。
一体どういうこと!?
キュルケの頭にそんな疑問が浮かび上がると
それに答えるかのように音石が解説を始めた。

「アヌビス。どうやらお前、
俺のスタンド攻撃を完全に『憶えて』対処しても、
『それとはまったく違う攻撃』には憶えるまで
対処が遅れるようだな。違うかァ、ええおい?」
「……………!?」

アヌビスを通して、ルイズの顔の眉が潜まる。


「お前は俺のレッド・ホット・チリ・ペッパーを
上回るスピードを持っているのにも関わらず
さっきのナイフをわざわざ横に避けてまで回避した。
レッド・ホット・チリ・ペッパーのスピードを
上回ってる状態なら、あのまま一気に
俺に斬りかかる事なんて簡単の事だろ?
だがお前は『避けた』。なぜだ?簡単だ。
俺のナイフの攻撃はお前が『憶えた攻撃』とはまったく違う
『憶えていない攻撃』だからだ。
互いに『剣』を持った戦士同士の戦いで
片方が突然途中で『槍』に持ち変えることによって、
今まで対剣による戦闘スタイルが変わるようにな………。
う~ん、自分で言ったのになんだが………
ど~もなんかこの例えいまいちだなァ~……」

ビィィィィィィンっとギターの弦を指で弾く。
今、音石の顔には焦りが消えていた。
いや、消えただけじゃない!
その顔はむしろ勝利への確信!
余裕の笑みをその顔に浮かべていた!!

しかしそれと対照的に、
アヌビスを通してのルイズの顔は
音石の余裕に対しての怒りからなのか
形相と殺気がさらに濃くなっていた。

「確かに鋭いやつだ。褒めてやる。
だが今更気付いたところでもう遅い!!
貴様のスタンドもナイフも完璧に憶えたのだ!!
もう俺には通用しない!
絶っ~~~~~~~~~~~~~対に負けんのだァ!!!
さらにそれだけじゃねぇ!
これから俺がやるとっておきのダメ押しに
貴様は絶望することになる!!」

するとアヌビスはルイズの懐から『なにか』を取り出し
空中に放り投げ、落ちてくるところをキャッチした。

そしてアヌビスの剣と、落ちてきた『モノ』……、
『杖』をクロスさせポーズをとった!!

「『ルイズの魔法』プラス『アヌビス神』
        二刀流!!!!!」

この行動に音石の余裕の笑みは消えた。

「操ってる宿主の能力も扱えるのか!?」
「その通り!!この小娘の魔法はどうやら
ちょいと特殊なようだが、扱えないことはない!!
俺は貴様を完璧に超越している!!!」
「………かかってきな」
「…………………何?」
「かかってきなって言ったんだぜアヌビス。
さっきからよぉ~、ギャーギャーうるせぇんだよぉ~
そんなに自信があるならさっさとかかってこいよ。
それともあれか?弱い奴ほど良く吠えるって奴か?
はっはっはっ、お似合いかもなァ~。
他人操らなきゃなーんにもできねぇような
なまくら野郎にはよぉ~~………」
「……………………………」

音石の言葉にアヌビスは物凄い形相で黙り込んだ。

キュルケは音石の妙な自信が理解できなかった。
何か策だあるのだろうか?
そんなものがあの剣に通用するのか?
キュルケは不安に惑わされた。
彼女自身、自分の自慢の魔法がハエをつぶすかのように
あっさりと掻き消されたからであろう。
隣にいるタバサも押し黙った状態で
音石の考えを考えているようだ。

キュルケの不安が渦巻くなか、
音石のアヌビスの間の空間に爆発が起こった!!


(これはルイズの魔法!?いつも失敗してる爆発!!)

いつも授業で散々な目にあってきた
この失敗魔法が今これほどまでに
恐ろしいと思ったことはなかった。

(このままじゃオトイシは……
この爆発で舞い上がった煙にまぎれたあいつに!)

そう思った瞬間。キュルケが手に持つ杖に力が入った。
正直に言うと怖い。足がすくんで仕方がない。
アレほどまでに凶暴で凶悪な相手に自分に何ができるのか?
ありとあらゆる不安が彼女の中で渦巻いた。
でも助けなければ!まだ自分は彼に昨日の償いをしていない。
このまま彼とお別れするかもしれないなんて………
そんなの絶対に嫌だ!
気が付けば、キュルケのすくんでいた足は
いつの間にか立ち上がっていた。

そして彼女は、隣で自分を制止していた
友人タバサを振りほどき、煙の中に入っていった!



音石は余裕の表情をとっていたとは裏腹に
内心ではかなり焦っていた。

(やべぇな…、『アレ』さえ成功すれば勝算はあったが
ルイズの魔法を使える上に、爆発で視界を遮るとは
予想外だったぜぇ~~~……。
だがもう覚悟を決めなくちゃいけねぇ……
ここが正念場だぜ。さあどうくる?後ろか?)

音石は後ずさりながら周囲を警戒していると
背中になにかがぶつかった。
目を後ろに向けて見ると、そこにあったのは建物の壁だった。
これ以上の後退はできないということを物語っていた。
しかしまさにこの時!
音石の脳裏に実に奇妙な発想の物語が出来上がった!



ギャァァァン!!ギャァァァァァァァァァァァァンッ!!!


(!………この音、彼の楽器の………)

煙の外にいるタバサの耳には
音石のギターの音が届く。
煙の外にいるタバサに聞こえたのだ。
当然この音は煙の中のキュルケやアヌビスにも届いている。

(これは…………位置を教えている?)



(後ろは壁だ。だがこれは追い詰められてるんじゃねぇ。
逆だ!後ろに壁があることによって
本来警戒するべき範囲が半分にも減らすことができた!!
きやがれアヌビス。てめぇをおびき寄せるための
『エサ』は撒いてやったぜ!!)

【……………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………
…………………………………………………………ザッ】

「そこか!!」

音が聞こえたのは音石の位置にして右側のほうだった。
しかしそこにいたのは………。

「ま、待ってオトイシ、わたしよ!」

煙が少し晴れてくる。
そこにいたのは間違いなくキュルケだった。


「てめぇ……、なんで煙の中に入ってきやがった!?」
「説教なら後でいくらでも聞かせてもらうわ!
でもあなたの役に立ちたいの!
わたしは昨日、あなたに失礼なことをしたわ。
あなたに言われるまで気付かなかった!
わたしはあなたの言う通り、
無意識のうちに男を暇つぶしの道具に扱っていた。
だから償いたいの!貴族として!一人の女として!!」
「……………お前」

その時キュルケは気付いた!
音石の前に影があったのだ。
しかしその影の上には誰も立っていない。
………………つまり!

「オトイシ、上よ!!」
「なにィ!?」

音石とキュルケはバッ!と上を見上げた。
そしてキュルケの言う通り、
奴は思いっきりジャンプしていた!
なにかを踏み台にしたのか、
アヌビスは上空7メートル程の高さで
落下する勢いで剣を振り下ろそうとしていた!!

「気付いたかァッ!!!だがもう遅い!!
貴様らに避ける暇はぬぅあァいッ!!!」
「いいえ!誰も避けたりはしないわ!!
逆よ!この場でアンタを迎え撃つ!
ルイズも助ける!オトイシも助ける!!
くらいなさい!『ファイヤー・ボール』!!!」

キュルケの手に持つ杖から
先程よりもさらに強大な火の玉が発射された!

「間抜けがッ!!忘れたか!!?
その魔法は完璧に『憶え』たのだっ!!
例え空中だろうと、俺には通用しない!!」
「ええ、誰もあんたに同じ技が通用するとは思ってないわ。
でもわたしが狙ったのはあんたじゃない!
私たちが今こうして背にしてるこの壁よ!!」

【ドグォッン!】

「な、なんだとぉ!!?」


キュルケの火球は壁に衝突し、
その時飛び散った壁の『残骸』がアヌビスに襲い掛かったのだ。
その衝撃で煙は一気に晴れ、アヌビスは攻撃を中断し
ガードしたものの、音石たちとは少しズレた位置に撃ち落された。

「今よオトイシ!あなたにどんな『策』があるのか私は知らない。
でも私は信じてる!あなたがルイズを救うことができる男だって!」

キュルケの言葉を合図に、音石は一気に駆け出した。
狙うルイズの手に持つ邪悪な剣、アヌビス神!!

「見直したぜぇ~キュルケ。
まったくお前は……、俺には勿体ねぇほどのいい女だよぉ!!
いけェ!レッド・ホット・チリ・ペッパー!!!」

レッド・ホット・チリ・ペッパーが手刀を振り下ろす。

「なめるなァ!!『憶えて』いない壁の残骸ならまだしも、
完璧に『憶えた』貴様のスタンドには!
絶~~~~~~~~~~~~~~~~~対に負けんのだァッ!!」

怒りの雄叫びとともに、
アヌビスは剣を横に向けて防御体勢をとる。

(この手刀を受け止めて一気に反撃して切り刻んでやるっ!!)

「アヌビス、剣のお前に教えてやるぜ。
そういうのを世間様じゃあァ~『墓穴を掘る』って言うんだよ。
それがてめぇの敗因よぉ~~。」
「『敗因』?『敗因』だとぉ~~~~~!?」
「てめぇは俺のスタンドにしか警戒していない!
それがお前の敗因だぜ!そしてもうひとつ!
俺が武器屋からくすねてきたのがナイフだけだと思ったかァ~~?」

その時、アヌビスは宿主であるルイズの目を疑った。
なんと、音石の持つギターのカゲから剣が現れたのだ!

「な!?その剣は………」
「ルイズの記憶から知ってんだろぉ~~?
 実はギターを持ってると見せかけてずっと隠し持っていたんだよぉ
こいつを……インテリジェンスソード……」
「デルフリンガー様をよぉ!!」

音石の後に、デルフリンガーが続けて叫ぶ。
そしてそのまま一気に鞘から引き抜き、
左手のルーンを光らせ、音石はデルフリンガーを
力一杯振り上げた。


【キーーーーーー…………ン】



ルイズの手に持っていた凶剣が、宙を舞う。

「まさか……スタンドではなく、
本体が、この俺を弾き飛ばすとは………
なるほど。恐ろしいのは奴のスタンドではなく………
あの男そのものだったのか…………ぬかったわ……」

アヌビスの剣はそのまま地面に突き刺さった。



アヌビスの呪縛から解放され、
倒れこもうとしたルイズを音石が支えた。
体中あちこちを戦いの影響で擦りむいているが
どうやら気を失っているだけのようだ。

「キュルケ、悪いがルイズを見てやってくれ。タバサも」

キュルケとタバサはそれぞれ頷き、ルイズの元に駆け寄った。
手に持つデルフリンガーを地面に置き、
音石はアヌビスの元に向かった。

「おいアヌビス。
スタンドなんだから剣の状態でも話せんだろ?
てめぇに聞きてぇことがある」

音石はこの時、その剣の後ろにうっすらと
犬の頭をした体が人間の怪物が見えていた。
おそらくこれがアヌビス本来のビジョンなのだろう。


「……ふん、敗れてしまっては仕方がない。
しかし予想は付くぞ。どうやってこの世界に来たのか…。
貴様はそれが聞きたいんだろう?」
「……………何か知ってるのか?」
「生憎となにも知らんな。
承太郎に敗れ、ナイル河に沈み、絶望していた時
いつの間にかこの世界にいたんだ」
「ちっ、使えねぇな」

ペッ!と音石は地面に唾を吐き捨てた。
すると今度はアヌビスのほうから話しかけた。

「さあ、これで十分だろ?………やれ」
「ああン?」
「俺は貴様に敗れたのだ。もう未練はない
俺を貴様のスタンドで破壊しろ
最後に貴様のような強者と闘えてよかった。
さあ、破壊しろ。もともと俺はスタンドだ
死など存在せん。ただ無に還るだけよ………」
「……………わかった。レッド・ホット・チリ・ペッパー」

音石がスタンドを発現させる。
そして手で触れるのは危険と判断し、
剣を足で大きく蹴り上げる。
そして落ちてきたところにラッシュをぶち込んだ。

【バゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴバッキーーンッ】









「……………………………あれ?
なんで俺まだ生きてんだ?」
「まだ刀身がちょっぴり残ってるからだろ?」
「ん?おお、ホントだ!!………………って
ちょっと待てぇぇぇぇぇぇッ!!!!??
なんでこんなちょぴっと残してんの!??
俺めっちゃかっこ良く腹くくってたのに
これじゃ台無しじゃねぇーーか!!」
「はァ?おまえ剣の分際で人様に
こんなシンドイ思いさせといて楽に死ねると思ってんのか?」
「え?ちょっと待て。まさかこの展開は……………」
「おらいくぞ…………、シューーーーーートォォォォッ!!!!」
「やっぱりいいィィィィィィィィィィィィ!!!?」

音石のレッド・ホット・チリ・ペッパーが
アヌビスをうまく破壊しないようなテクニカルな蹴りで
遥か彼方へと、蹴り飛ばしていった。


「キュルケ、タバサ。急いでここを離れようぜ
ややっこしいことが起こらないうちによぉ~~……」

音石がそういうと、デルフリンガーを拾い上げ鞘に納めた。
二人もその意見に賛成した。

「そうね、さすがにそろそろ野次馬が
湧いてくるかもしれないし、急いで離れましょう」
「………ついてきて、私の使い魔で脱出する」

タバサが口笛を吹くと、
街の空からタバサの使い魔、シルフィードが現れ
音石、ルイズ、キュルケ、タバサの4人を背負い
街から速やかに脱出した。

この時、竜に乗っての空の飛行に音石はちょっと興奮した。



ついでにアヌビスはというと…………、

【ヒューーーーーーーーン】

「ヒィィィィィィィィー、またこんな扱いかァーー!!
誰か今度こそ止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
あっ!屋根だ!!ラッキーッ。おっとだが落ち着け!
エジプトでの二の舞は御免だ、透過能力解除!!
おっけぇ!これでばっちしィィィィ!!」

【カーンッ】

「よぅし!屋根に当たったァ!!」

【スルスルスルスル】

「おお、屋根の斜面を滑る滑るぅ!!」

【ヒュー】

「おっほほーい。落ちる落ちる!」

【ボチャン】

「…………………………へ?」

【プーーーーンッ】

「お、おい。なんだこの桶の中の泥は?
なんでハエがこんなに集ってる?
はっ!ひょっとしてここって…………
ぎゃああああああああああああッ!!!!
よりによって牧場の屋根にぶつかって!
肥溜めに落ちちまったァァァ!!!うげぇ!!バッチィ!!!
ぬぅああ!!どんどん沈んでいくぅ!!
だ、だれかァーーーーー、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!
不潔だよーーーーーーーーーーーーーっ、うぷっ……………」


この肥溜めを肥料として撒き散らされた畑には
時々、変なうめき声が聞こえるという奇怪現象が起こったという……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー