ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

反省する使い魔!-8

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匿名ユーザー

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反省する使い魔!  第八話「情報交換×スタンド・レッスン」


音石はルイズ、ミス・ロングビルの案内の元
現在、トリスティン魔法学院、学院長室にいる。
部屋の中は隅に本棚、壁には一枚の鏡と絵を並べているといった
いたってシンプルなものだった。

「学院長、連れてまいりました」
「うむ、ご苦労じゃったのミス・ロングビル
…さて、はじめましてオトイシ君。わしがこのトリスティン魔法学院
学院長のオールド・オスマンじゃ」
「………………………」

音石は無言だった、オールド・オスマンが挨拶をしても
ただ黙っていたのだ。
当然、ルイズはそんな使い魔の反応を黙ってはいなかった。

「ちょっとオトイシッ!学院長オールド・オスマンが
直々に挨拶してるっていうのにだんまりだなんて
無礼にも程があるわよ!!」
「ふぉっふぉっふぉ、別にかまわんよ。ミス・ヴァリエール」
「ですが学院長!」
「彼の現状も察してあげなさい」
「…………わかりました……
あ、でも学院長……その…決闘の件なんですけど…」
「ふむ、その件なら先程、君らが来る前に
コルベール君と話し合ったんじゃが……」

ルイズは息を呑んだ。理由はどうであれ、自分の使い魔である平民が
貴族に危害を加えたのだ。どんな罰を受けてもおかしくはなかったし
そもそも魔法学院では決闘自体が禁止されている。
下手をすれば退学処分もありうるんじゃないかと不安になっているのだ。
しかし………。

「不問じゃ」

「え?」

ルイズは一瞬、オスマンがなんと言ったのか理解に遅れたが
飲み込むと同時に喜びと疑問が込み上がってきた。

「不問って……ほ、本当ですか、オールド・オスマンッ!?」
「ふむ、話は大体聞いておる。
今回の事の発端はギーシュ・ド・グラモンの二股から始まった事じゃ
ましてやその罪を無関係な給仕に擦り付けつけるなど笑止千万、
君の使い魔はあくまで人助けにをしたにすぎんよ」
「で、ですが…。仮にも相手は貴族、
もしもこの事がギーシュの実家に知れたら黙ってはいないはずです。
それに元々、決闘は禁じられていますし……」
「それはあくまで貴族同士の場合じゃよ、ミス・ヴァリエール
な~に、安心せい。
二股を揉み消すために無関係な給仕に罪を着せ、
あまつさえ、それを助けた平民に決闘を挑み敗北した
などという情けない事実をグラモン家に知られたら一番困るのは
ギーシュ本人のはずじゃ、例えグラモン家が抗議してこようと
適当に追っ払ってやるわい、ふぉっふぉっふぉっふぉ」

オスマンが笑って答えるが
それでもルイズは胸を撫で下ろすものの
それでもまだ不安なところがあった。

「で、ですがオールド・オスマン…
理由はどうであれ、先に手をあげたのは私の使い魔です!」
「……ミス・ヴァリエール、君は自分から罰を受けたいのかね?」
「い、いえ!?そういうわけでは………」
「確かに先に手をあげたのは君の使い魔じゃ、
じゃがのミス・ヴァリエール、彼がミスタ・グラモンに
蹴りをかましたのはミスタ・グラモンが君を侮辱したからじゃ、
主人を侮辱され使い魔が怒った、別に珍しくもなかろう?
それに、女癖の悪いミスタ・グラモンにはちょうどいい薬じゃわい」

ルイズは驚いた、不問になったこともそうだが
一番驚いたのはオールド・オスマンが言った一言だった。

「え?……ギーシュが…私を侮辱したから怒った?
……オトイシ、それ…本当なの?」

意外そうに目を見開かせルイズが隣にいる音石を見上げた、
しかし音石はただ一言……、

「フッ、一体なんのことだ?」

と鼻で笑っただけだった。

「さて………前置きはこれくらいにして
そろそろ本題に移ろうかの」

オールド・オスマンが改めて口を開く、
その言葉にルイズだけではなく、
学院長室にいる全員が音石を見た。
オスマンが言う『本題』………、
それはこの場にいる誰もがわかりきっていた事だった。

「オトイシくん、単刀直入に聞こう……
先程の決闘、ミスタ・グラモンのワルキューレを粉砕した
『アレ』は……なんじゃ?」
「……………………………………」
「……ふむ、では質問を変えようかの
君は………一体何者じゃ?」
「オトイシ、正直に話しなさいッ!ご主人様からも命令するわ!!」

音石はなにかを思いふけるように目を瞑った。
扉の前で待機しているミス・ロングビル、
オスマンの隣に立っているミスタ・コルベール、
椅子に腰をかけ机に手を置くオールド・オスマン、
そして隣で音石を睨むルイズ。
彼ら全員が音石を見る中、10秒ぐらいして音石は
なにかを決断したらしく、ゆっくりと目を開け口も開いた。

「話すのは……2人までだ…、
ルイズとあんたには話してもいい、だが…
コルベール先生とそこにいる……、ロングビル……だったか?
悪いがあんたらはダメだ。ご退場願うぜ」
「「「なっ!?」」」

音石の発言にオスマン以外の3人は唖然とした。
しかし、オスマンは至って落ち着きながら
音石に質問した。

「ほう…、それはどうしてかの?」
「悪いがそれも言えねェ、
そこにいる二人が出て行かない限りはな…」
「…ふむ、あいわかった。コルベール君、ミス・ロングビル、
そういうわけじゃ、席をはずしておくれ」
「学院長、よろしいのですか?」
「かまわんよ、コルベール君。ワシは彼を信用する」
「…………了解しました」

コルベールは学院長室を退出し、
それに続いてロングビルも部屋を後にした。

「これでよろしいかの?」
「十分だぜ、じいさん」
「ちょっとオトイシ!?偉大なるオールド・オスマンに
向かってそんな呼び方―――」
「よいよい、そう呼んでもらったほうが
親近感が持てるというものじゃ」
「そ、そんなモノでしょうか?」
「そんなものじゃよ、ミス・ヴァリエール
おっと、話が逸れてしまったの。ふぉっふぉっふぉ」

笑いながらオスマンはパイプを取り出し、火をつけた。
どうやらお互い固くならず気楽にいこうということを示しているらしい。
音石もそういうことならと部屋の中央に置かれてある
来客用の椅子に腰を下ろした。
ルイズも躊躇ったものの周りの流れに任せたほうがいいと
判断したのか、音石の向かいの椅子に腰を下ろした。

「ふむ、それじゃあひとつずつ質問するとするかの、
まずは…そうじゃな、なぜあの2人を追い出したのじゃ?」
「この『チカラ』ははっきり言ってそう何人にも教えていい
シロモノじゃねェんでな…。大体あんな状況じゃあ
気が張りすぎて教える気にもなれねーよ」
「………ほう、気付いておったのか」
「え、え、なに?どういうこと?」

ルイズは音石とオスマンが何のことを言っているのか
理解できず、二人を交互に見渡した。

「わかんねーか、ルイズ?」
「わ、わからないから聞いてんでしょう!?
ご、ご主人様にもわかるように質問しなさいよ!!」
「たくっ、しょうがねーなぁ、いいかルイズ?
さっきのコルベールとロングビルの二人がいた位置を
よーく思い返してみろ」
「え?」

ルイズはなんの事を言っているのか理解不能だったが
頭の中で先程の2人の配置を思い返す。

まずロングビルは自分たちの後ろのドアで待機していた、
続いてコルベールは自分たちと今も向かい合っている学院長の隣……、

「……………あっ!」
「わかったか?よほどオレを警戒してんだろーよ
オレをついさっきまで囲んでたんだからなぁ」
「い、いくらなんでも、そうこじつけるなんて無礼じゃない!?
たまたまそこに立っているだけだったかも知れないじゃない!?」
「いや…、彼の言うとおりじゃよ。ミス・ヴァリエール」
「そ、そうなんですか!?オールド・オスマン!?」
「気を悪くせんでおくれ、彼が得体が知れないというのも
 当然あったんじゃが、ワシはあくまで念入りにという
 前提で警戒しておったんじゃ、君の使い魔に
 乱暴するなどという考えはこれっぽっちもありゃせんよ」
「そ、そうでしたか…」
「ふむ、しかし…ワシも気になるのぉ
オトイシ君、一体どのあたりから気付いておったんじゃ?」

音石がギターの弦をいじりながら答えた。

「なんとなく…ってのもあるんだが、
一番ピンッと来たのはロングビルだな」
「彼女が?…はて、特に怪しい素振りはなかったはずじゃが?」
「オレが一番気になったのはソコじゃねーよ
ドアの前で待機していたってところだ」

音石がそう言うとルイズの頭に?マークが浮かび上がった。

「は?どういうことよ」
「確証はないんだがよ~~、あのロングビルって女
じいさんの秘書かなんかだろ?」

続いてオスマンが眉をひそめた。

「ほう、なぜそう思う?もしかしたら教師という可能性も―――」
「ないな、少なからず今まで見た限りじゃあ
さっきのコルベール、授業で見たシュヴルーズ、
そして散歩の時にチラチラ見かけた奴ら……、
言っちゃ悪いがどいつもこいつもいい歳こいた中年ばかりだ。
それに比べたら、あのロングビルはどぅおー見たって若い、
それにさっき彼女はあんたに変わってオレとルイズを呼び出した。
それはつまり日頃付きっきりでじいさんの傍にいるってこと……だろ?
そんな奴がじいさんから離れた位置にいるってところが
引っ掛かったんだ。ま、さっき言ったとおり確証なんてなかったがな」

音石の話を聞いたオスマン、ルイズは
心のなかで感心した。
この男、見かけによらずかなり頭がキレると………、

「ふむ、なるほど納得した。
では次に、君は一体どこの出身なんじゃ?
君の格好、そしてその手に持つ楽器………
ワシはこの歳になるまでハルケギニア中の
ありとあらゆるものを見てきたんじゃが…………、
はっきり言ってそのような楽器は見たことがないし、
君はさっきの決闘の時にも何度かそれを弾いていたが
あんな音は聞いたことがない」

オスマンは咥えていたパイプを一旦口から離し、
再度パイプを口につけた。

「こう言っちゃあ何だが、その楽器は我々の文化とは
 えらくかけ離れておる………、もちろん君自身ものぉ」

オスマンの推理に今度は音石が心の中で感心した。
このじじい、なかなか侮れねーぜ………。
そして音石は決心した、
当初は『スタンド』の詳細を教えるだけと考えたが、
得体の知れない自分の要求にも応じてくれた心優しさ、
そして、少しの手掛かりから相手を探る抜け目のなさ、
このじいさんになら信頼し、話してもいいかもしれない。

…以前の音石なら決してこんな決心はしなかっただろう、
しかし、音石は三年間刑務所の中で
あらゆる犯罪者の目というモノを見てきた。

当然犯罪者の目にも個性がある。
信用できる部類と信用できない部類だ、
しかし犯罪者なだけにその目の違いは
普通の人並み以上にはっきりしている。

先程も言ったとおり、
音石はそんな目をしている人間たちを三年間も見てきたのだ。
オスマンの目は信用できる部類だと音石の心が
無意識に決断させたのだろう。

「ルイズにも言ったがよぉ、オレはこの世界の人間じゃねェ
ここハルケギニアとは異なる世界、
地球ってトコからおれはルイズに召喚されたんだ」

パイプを咥えていたオスマンが目を見開いた。

「………なんと、それは本当かの。ミス・ヴァリエール」
「えっ?あ、はい!確かに昨夜、そう言ってましたが…
まさか本当だなんて…………」
「おいおいなんだよルイズ、やっぱり信じてなかったのか?」
「あんな突拍子も無い話、信じろってのが無理な話よ!!」
「はっはっはっ、違いねーぜ」

音石が笑う一方でオスマンが溜息をついた、
やれやれ、ミスタ・ヴァリエールはとんでもないのを
呼び出したモンじゃとでも言いたそう顔をしている。
しかしある意味、異世界などという突拍子もない話を
落ち着いて飲み込んでいるあたりは流石というべきだろう。

「初めに言っておくがよぉ、オレの居た世界じゃあ
魔法なんてモノは実際に存在しねぇんだよ、
あるにはあるが御伽噺とかそういった空想の中だけの話だ」
「ほう、魔法が存在しない世界か………」

オスマンが興味深げに考え込み、髭をいじっている。
しかしそれでもルイズは腑に落ちないらしい、
納得いかないのか、イライラしている感じが
あからさまに顔に出ている。

「魔法が存在しないなんて、とても考えられないわ…
 不便な事この上ないじゃない」
「魔法が常識のこの世界の人間なら誰だってそう言うだろうよ…」
「どういう意味よ?」

ルイズが首をかしげ、
音石はため息をついて呆れた。

「ルイズぅ、昨日言っただろうがよぉ~、
この世界は俺がいた世界とは文化が違いすぎるってなぁ、
確かにオレの世界には魔法は存在しねェ、
だが変わりに科学技術っつーもんが発達してんだよ」
「科学?」

ルイズがさらに首をかしげた。
オスマンもはじめて聞く単語に疑問を抱いている。

「科学…ふむ、一体どういうものなのじゃ?」
「あー…、科学っつーのはなー、えーっと……
あーーっ、だめだっ!!いざ説明するとなると
どう説明すればいいかよくわかんねェな」

音石は頭を掻いた、科学もないこの世界の人間に
どうわかりやすく説明すればいいのか迷っているのだ。
しかしオスマンはそんな音石の態度を察したのか
ふむ、まあその話はまた次に機会にするとしようかの
と答えてくれた。

「まあそんなわけで、俺のいた世界には確かに魔法は存在しねェ…
だが変わりにってったら言い得て妙だが魔法とは似ても似つかねェ
特殊な『チカラ』は確かに存在した」
「それが『アレ』か………」

「『スタンド』、精神力・生命エネルギーが具現化した像(ヴィジョン)」


沈黙が流れた。
ルイズもオスマンも何かを考えているのか
ルイズは音石を見ながら、オスマンはパイプを咥えながら
ただ黙り込んだ。

不意にオスマンのパイプを見ているうちに
音石はルイズに召喚される前にタバコを買ったのを思い出し、
上着のポケットにしまってあったタバコを取り出し
一緒に買ってあったライターで火をつけた。

ルイズからそれなんかのマジックアイテム?と聞かれたが
音石はライターっていう特殊な仕掛けで火が出る道具だ
と簡単に説明するとルイズは…そぅ、と小声で吐き捨てた。

「ふむ、亜人ではなく
精神が具現化した像(ヴィジョン)か………
長生きしてみるもんじゃ、まさかこの歳になって
異世界の住人の『チカラ』に出会えるとは…、
世の中捨てたモンじゃないのぉ」
「………説明を続けるぜ、スタンドには
人間と同じように個性みたいなもんが存在するんだ」
「個性?精神力が具現化した『チカラ』なんでしょう?
なのに感情や意思なんて存在するの?」
「そういうスタンドも存在するらしいぜ?
まあ、オレも調べただけで実際に見たわけじゃねーがな…
てゆーかオレが言いたい個性ってのはそんなんじゃねーよ。
スタンドは人によってそれぞれ異なるってことだ」
「つまり、人によってスタンドとやらの
姿かたちは様々っということかの?」
「へェ、さすがに察しがいいじゃねーか
まあ、口で説明するよりも見てもらったほうが早いな」

すると音石が立ち上がり、視線を机に向けた。

「『レッド・ホット・チリ・ペッパー』」

音石が口を開いた瞬間、机の上に
話題のスタンド、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』が発現した。

「きゃあっ!!?」
「おおっ!!?」

ルイズもオスマンもさすがに
獰猛な顔と姿をした『レッド・ホット・チリ・ペッパー』
いきなり現れたことにより驚きの声を上げたが、
机の上に立っていたチリ・ペッパーが
よっこらせと言わんばかりに机の上に腰を下ろし
腕を組み、胡座をかいている姿を見て
危険性はないと判断した。

二人とも一応危険性はないのは最初からわかってはいたのだが
先程も言ったように、チリ・ペッパーの獰猛な顔や姿を
いきなり見せられたら警戒………というよりも
びびるのは当たり前なのかもしれない。

「こいつがおれのスタンド、
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』だ」
「ふ、ふ~む、間近で見ると迫力あるのぉ~。
しかし、なるほどの…、間近で見て納得したわい
魔力も感じなければ実体感もあまり感じんのう」
「ねえオトイシ、あんたの居た世界じゃあ
誰もがこのスタンドってのを出せるの?」

『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をまじまじ眺めていた
ルイズの質問に音石がおっ!と声を上げ、
パチンッと指を鳴らし、ルイズを指差した。

「なかなかいい質問じゃねーかルイズ
さっきも言ったが、スタンドってのは特殊な『チカラ』だ。
それを扱える奴のことをスタンド使いと呼ぶが、
誰もが扱えるわけでもないし、ましてや
世間に知れ渡ってるわけでもねーんだよ」

音石の答えにルイズは疑問に思った。

「知れ渡っていない?それは変じゃない?
だって、魔法が存在しない世界でこんなのが
現れたらあっという間に広まるはずじゃあ……」
「スタンドはスタンド使いにしか見えねーんだよ」
「ええっ!?」「ほう………」

ルイズの驚きの声とオスマンの渋い声が同時に上がった。

「え…、でも私たちにははっきりと見えるわよ!?」
「ふむ、恐らく我々の世界では精神力を魔法で
扱っておるからじゃろう、そう考えれば説明がつく」
「あ……。な、なるほど…さすが学院長…」
「今日の授業で聞いたばっかだろ」
「う、うっさいわね!!
ちょ、ちょっとうっかりしていただけよ!!」
「左様でございますか………、おっと、話がずれちまったな。
スタンドってのは個人によってそのデザインが違うし
ちょっと特殊な能力があるんだ」
「ほほう、特殊な能力とな」

オスマンが興味深そうに呟くと、
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』に目を移した。
もちろんルイズもである、するとルイズは
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を眺めていると
あることに気付いた。

「特殊な能力…、
この『レッド・ホット・チリ・ペッパー』……だっけ?
決闘で見たとき、今みたいに体が光ってると思ってたけど、
よく見ると何かを身に纏ってるように見える……
これ……、もしかして雷ッ!?」
「半分は正解だな。まあ、雷なのは雷なんだが………。
正確に言えば、こいつは電気と同化してるのさ」
「………ねえ音石、電気って何?」
「あー…、そういやここの文化ほとんど魔法頼りなんだよなぁ」

ルイズたちが電気を知らないのも無理はなかった。

例えば、ここに燭台があるとしよう。
地球の文化ならわざわざ燭台に歩み寄り、
蝋燭などに火を灯さなければならない。

しかし、この世界では魔法を唱えるなり、
魔法で作られた特殊な道具を使えば一瞬で
火を灯すことができてしまう。
つまり魔法の活用性の良さが仇になっているのだ。

そのせいもあってか、ここハルケギニアは
今の地球のようなあらゆる道具の技術の発達によって
生み出された科学技術がないのはもちろん、
人工で電力を生み出すことなど魔法以外ありえないのだ。

「電気ってのは…そうだな、人工で生み出した雷。
簡単に言えばこんな感じだな
もちろん、魔法はなしだぜ」
「魔法を使わず雷を生み出す!?
あんたの世界じゃあ、そんなこともできるの!?」
「まあ、待てよルイズ。俺の世界の話は
また今度じっくりしてやる。今はスタンドの
話に集中しよーや」
「え、…あ……、うん……」

ルイズは戸惑ったものの確かに音石の言うとおり、
いちいち音石の世界に質問をしていたら日が暮れてしまう。
ルイズはそう判断した。

「ふむ、つまり君のスタンド、
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』は
その電気という雷と同化する能力というわけじゃな。
それについてはわかったんじゃが…、
しかし、一体スタンドとはどうやって身につくのじゃ?」
「オレが知る限りじゃあ、理由は2つある。
生まれたときから身につけているやつと……、
ある特殊な『弓と矢』で貫かれたやつ……、
オレは後者に値するがな」
「特殊な『弓と矢』?
それに貫かれたら誰でもスタンド使いになれるの?」
「いや、あくまで確率の問題だ
貫かれてそのままおっ死ぬ奴もいる」

音石はこの時、杜王町で『弓と矢』を使い
多くの犠牲者を出した虹村形兆と、
その形兆を殺し、『弓と矢』を使っていた
自分の過去のことを思い出していたが、
ルイズとオスマンに言ったところで意味がないと
判断し、あえて話さないことにした。


「まあ、大体こんな感じだな。
これで十分か、じいさん?」
「フォッフォッフォ、むしろ十分すぎるくらいじゃわい。
ふたりとも時間をとらせてすまんかったのう、
もう部屋に戻ってもかまわんよ」
「わかりました…オトイシ、いくわよ」
「はいよ…」

ルイズの後に続くように音石も立ち上がり、
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をおさめ、
扉に向かい学院長室を後にしようとしたが…

「オトイシ君、最後にひとつ聞きたいんじゃが…」
「ん?」

半開きの扉を掴み止めながら、音石は首を捻らせ
後ろを向いた。その時見せたオスマンの顔は
今まで以上に真剣さを物語っていた。

「君は……、なぜ異世界の住人でありながら
ミス・ヴァリエールの使い魔を務めてくれるのじゃ?
彼女になにか恩でもあるわけでもないじゃろうに……」

このオスマンの質問に、一瞬音石のそばにいる
ルイズも不満になった。たしかにいくら
召喚されたからといって、異世界の人間である
音石が自分の使い魔をする義理なんてどこにもないからだ。
しかし、音石からは意外にも素っ気無い言葉が返ってきた。

「別に理由なんて特に考えてねェよ、
まっ、強いて言うなら………、
おもしろそうだから………だな」

音石の答えにオスマンもルイズもきょとんとした
顔をしながら、目を見開いたが
すぐにオスマンが顔を戻し、笑顔で笑い始めた。

「ふぉっふぉっふぉっふぉ!
なんとも気さくな男じゃわい、
呼び止めてすまなんだな、もう行ってよいぞ」

そのままルイズが失礼しましたと声を上げ、
二人が階段を下りる音が遠ざかっていった。


二人が学院長室を後にすると
オスマンは自分の机の引き出しをひとつ引いた。

「伝説の使い魔『ガンダールヴ』か……、
まさか異世界の住人だったとはの……。
ん?まてよ…、そういえば……」

オスマンが何かを思い出したのか、
立ち上がり、学院長室を後にした。
しかし、引き出しを閉め忘れたままである。
そこには、先程コルベールが持ってきた本、
『始祖ブリミルと使い魔たち』とその上に
音石のルーンを書き記した紙が置かれていた。

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