ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-30

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匿名ユーザー

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一行はすぐさま学院の二頭立て馬車に乗り出立した。

 道案内のロングビルが御者を買ってでており、後ろの座席にルイズと康一、キュルケとタバサが座っている。

「ねぇダーリン。盗まれた弓と矢ってどんなものなのかしらね。」

 ルイズとキュルケの康一の隣争いは、キュルケの「ルイズってばそんなに康一にひっつきたいわけ?」の一言に、
「ご主人様は使い魔がへんなことしないように見張ってないといけないんだもん。」と言い張るルイズが勝利を収めていた。

「え、えーっと・・・どうだろうね。」

 康一は答えた。
 どんなのかはわかんないけど、ぼくあんまり弓矢にはいい思い出がないんだよね。」 

 康一は胸のあたりをさすった。
「一度死にかけたことがあってさ。」

 キュルケが目を丸くする。
「まさか弓で射られたことがあるの?」

「うん・・・まぁね。」

 虹村形兆に矢で貫かれたあのとき、仗助くんの助けがなければぼくはきっと死んでいた。

「あんたって意外と危ない人生送ってんのねー。」
 ルイズが半分呆れて言った。

「いや、それまでは平和に学生生活送ってたんだけどね・・・」

「小さい頃からそういう経験してたからこんなに頼りになるのね。トリステインの男共も見習ってほしいわね~。」
 キュルケは御者台に目を向けた。
「そういえば、ミス・ロングビルの魔法のクラスはどのくらいなのかしら?」

 ロングビルは軽く振り向きながら答えた。
「私は土のラインです。でもみなさんと違って戦いの経験があまりないので、道案内以上のことはあまり期待しないでくださいね。」

「十分よ。それでもトライアングルの私とタバサ。それにコーイチはいるし、ルイズの爆発・・・あら、ちょっとした戦力じゃない。」

「私は爆発なわけ・・・」
 ルイズは不満げだ。

「あら。あなたの爆発だって馬鹿にしたものじゃないわ。やれることがゼロじゃないんだから、少しは役に立ってもらわないとね。」

「やっぱり馬鹿にされてる気がするわ・・・。」
 キュルケの軽口にルイズはため息をついて顔を背けた。

でもその背中にうれしい気持ちが隠し切れずに見えて、康一は思わず笑ってしまった。

「みなさん。そろそろ目撃証言のあった小屋につくころです。ここからは歩いていきましょう。」
 ロングビルは道ばたに馬車を寄せた。

 一行が馬車を降り、茂みの奥をのぞき込むと20メイルほど先に小さな小屋がある。

「昨夜、あそこにフーケらしき、ローブをまとった男が入っていったということです。」
 ロングビルが声をひそめて説明した。

「まだ中にいるのかな。」

 康一がつぶやきに、今まで空気のように静かだったタバサが答えた。

「気配はない。でも確証がない。偵察が必要。」

 自然と皆の視線が康一に集まる。

「ぼ、ぼくですかぁ!?」

「あたりまえでしょ。使い魔なんだから。」
「適任。」
「ダーリン。がんばって!」

 三人がそろって頷く。

「全く・・・こういうときだけ一致団結するんだからなぁ。」

 康一は剣を抜いた。シュペー卿の剣である。
 デルフリンガーは大きすぎて、扱いづらかったので、馬車に置いてきたのだ。

 茂みを出て、小屋まで小走りで近づく。

 壁際にしゃがみこむと、窓から中を覗いた。
(誰もいないな・・・)
 しかし中に隠れているかもしれない。

 康一はACT2を呼び出した。


 康一はあれから密かにスタンドと魔法について実験をしていた。
 スタンドは本来、スタンド使いが触らせようとしないかぎり、スタンドでないものが触れることはできない。
 つまり逆にいえば、スタンドはどこでもすり抜けて移動ができる。
 しかし魔法学院の壁のように、固定化などの魔法がかけられている場所や魔法自体、そしてメイジの体はなぜか透過することができなかったのだ。
 一方、魔法がかけられていない壁はやはりすり抜けることができた。それどころか平民にはやはりスタンドが見えていないことが分かったのだ。
(シエスタの目の前で手を振らせてみたのだが、見えている素振りも見せず、小首を傾げるだけだった。)

 ACT2は壁をぺたぺたと触る。透過できそうだ。魔法はかけられていない。
 康一はスタンドを小屋の中に潜り込ませた。


 こじんまりとした小屋である。
 壁際にはいくつかの棚。箱。
 ベッドなどはない。

(隠れ家じゃないみたいだな・・・)

 人影もない。念のためにACT2に小屋の周りも調べさせたが、やはりどこにも人影はなかった。

 剣を納め、陰からこちらを見守っている女性陣に首を振ってみせた。

 皆ほっとした様子で康一の元に駆け寄る。

「もう逃げちゃったのかしら・・・。」
 その中でルイズが残念そうにいう。

「いないにこしたことはないよ。」
 相手はメイジが総掛かりで捕まえられない大盗賊である。
 康一はそんなのを相手にして無事でいられるかどうか全く自信がなかった。

「では中の調査をお願いしますわ。わたしはこの辺りを調べて参ります。」
 ロングビルは小屋の裏手へと行ってしまった。

 もう調べましたよ。と言いかけたが、やめた。
 言ったらキュルケやタバサにも「スタンド」について説明しなければならなくなる。

 もう言ってしまってもいいとも思うのだが、今はその時ではない。これが終わったら説明しよう。

 ロングビルを見送って、康一は小屋の扉を開けた。
 中にいないのは分かっている。警戒することなく、小屋の中を調べにかかる。

 女性陣三人も恐る恐るついてきた。

「ちょっとダーリン。いきなり入っちゃうなんて不用心じゃない?まぁ大丈夫だったみたいだけれど。」

 うん、そうかもね。言葉を濁す。

 棚の中にはそれらしきものはなかった。
 棚の横にある木箱を開いた。

          ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「こ、これは・・・・!!」
 そこに入っていたのは『弓と矢』。そこいらで狩猟で使われているようなものとは明らかに違う。装飾がちりばめられた鏃。
 そして康一には分かる。これは自分を含め、杜王町にたくさんのスタンド使いを生んだ、あの矢。あれと同じものだ!

(まさかとは思った。でもまさか本当にあの『弓と矢』だなんて・・・)
 『弓と矢』を手に取った。自分の中の「エコーズ」が、引き寄せられるようななにかを感じた。

「どうしたの?なにか・・・あっ・・・こ、これって。盗み出された『弓と矢』じゃないの!?」
 ルイズが歓声をあげる。

「そうみたいね・・・でも、フーケはいないのに、なぜ『弓と矢』だけがここに残されていたのかしら。」
 キュルケの疑問は誰もが思うところだった。

 しかし、自分たちの任務は『弓と矢』の奪還であって、フーケの捕縛ではない。

「一度学院に帰るべき。」
 タバサの提案に異を唱えるものはいなかった。

「それにしてもあっさり終わっちゃったわ。心配して損しちゃった。」
 ルイズは小屋の扉を開いて外に出ようとした。


 目と鼻の先で巨大な土のゴーレムが小屋を見下ろしていた。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「・・・間違えました。」

バタン

「ちょっとヴァリエール!なんで扉を閉めちゃうのよ。」
 外が見えないキュルケが文句を言う。

「・・・いるんだもん。」

「はい?」

「いるんだもん!フーケのゴーレムがすぐ外に!目が合っちゃったんだもん!」

「そんな馬鹿なこと・・・。逃げだしたフーケがわざわざ戻ってくるわけないじゃないの。ほらどいて。」
 キュルケがルイズを押し退けて扉を開けた。

 遙か高みから見下ろすつぶらな石の瞳と目があった。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「お邪魔しました。」

バタン

「いたわ。目が合っちゃったわ。どうしましょうか。」

「どうしましょうかって・・・」

 ルイズとキュルケは言葉につまった。
 天井からぱらぱらという音が聞こえてくる。
 まるで土や小石が屋根の上に落ちてきているような・・・。

 どんな顔をすればいいかわからないまま、ルイズとキュルケは天井を見上げた。
「キュルケ。私すごくイヤな予感がするんだけど。」
「奇遇ね。あたしもよ。」

 タバサがぼそっと言った。
「踏みつぶそうとしている。」

 四人は目を合わせた。


「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁあ!」
「いやぁぁぁぁぁあ!」
「・・・・・」

 そこからは早かった。窓をぶち破って四人が外に転がり出るのとほとんど同時に、ゴーレムの巨大な足が小屋を踏み潰した。

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