ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

おれは使い魔になるぞジョジョー!-10

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
『土くれ』のフーケは『破壊の杖』を手に入れ、目的を果たす。
だが、それがディオに更なる力を与えることになる事は本人にさえも予測できなかった。

おれは使い魔になるぞジョジョーーッ! 第十話

「物理的攻撃なら可能性があるのですか?」
ロングビルは昼食の鶏肉とトマトのスープを飲みながらコルベールに尋ねた。
ルイズ達が城下町にいたちょうどその頃、ロングビルに恋心を抱いていたコルベールは
ついに彼女を昼食に誘う事に成功したのである。
そして今、二人は宝物庫の事について話していた。もっともほとんどコルベールが一人で喋っている状態だが。
「そうです。あの扉は高度な魔術結界を幾重にも施されていて、スクエアクラスのメイジでも解く事は不可能です。
しかしその代わりに物理的な力に対してはさして警戒をしていないので、そこを突かれれば破られる可能性があります。
大体我々メイジは魔法にばかり目が行って人間の発想力など目が……」
機関銃のように喋り続けるコルベールだが、ロングビルはもはや愚痴と化したその話を聞いてはいない。
その口には笑みが浮かんでいた。

「どういう意味よ、ツェルプストー!」
「おっと会話が成り立たないアホがひとり登場~~。質問文に質問文で答えるとテスト0点なの知ってた?ルイズ。
まあいいわ、だからあたしはディオが欲しがってる剣を手に入れたから、そっち使いなさいって言ってるのよ」
「おあいにくさま。使い魔の使う道具なら間に合ってるの。ねえ、ディオ」
「まあまあ二人とも落ち着いて…」
「「あんたには関係ないでしょ、ギーシュ!」」
「…しょぼん」
その夜、ルイズの部屋では騒動が持ち上がっていた。
あの後学院に帰ってきたディオとルイズはベッドが届くとギーシュを呼び、薔薇の臭いがプンプンするベッドを
引き取って貰う事にしたのだ。そこでデルフリンガーに興味を示したギーシュがディオに色々と聞こうとした時、
剣とタバサを抱えたキュルケが突如部屋に入ってきたのである。
そしてディオにあの時武器屋で買わなかった高価な剣をプレゼントしようとしたことにルイズが怒り、現在に至っている。

二人は延々と言い合いを続けているが、ディオは無言で腕組みをして壁に寄り掛かって他人事のようにそれを眺めている。
(フンッ!たかが剣ごときで見苦しいッ!)
はっきり言ってディオにとってはどちらの剣を選ぼうとどうでもよかった。喋る剣に興味を持って買ったものの
ディオが剣に求めているのは相手を『斬る』事だけで、後は喋ろうが飾りが付いていようがどうでもよかったのだ。
(だが、このままどちらかに決めないというのは下の下策。
 かといって下手に選べば、もう片方がおれに悪感情を抱くは必定ッ!)
そう、この矛先がいずれ自分に向くのは分かり切った事であり、ディオはそれを座して待つ気もどちらも選ぶという愚を犯す気もなかった。
(現在の状況で最善の選択肢、それはこの場はどちらの顔も立てながら事を収める事だろう。その為には…)

ディオは言い争いをしている二人をよそにしょぼくれているギーシュに近づくと声をかける。
「ギーシュ、頼みがあるんだが、聞いてくれないかい?」
「なんだい?仲介ならお断りだよ?」
「いや、そうじゃない。これからある事をするんだが、それはどうしても君にしかできない事なんだ。」
「僕にしかできない、のかい?」
「そうなんだ…だから、友人として僕を助けてほしい」
ギーシュは驚いていた。あのディオが自分に助けてくれと言っている。しかもそれは自分にしかできないという。
友人であるディオに頼まれた以上はグラモン家の名誉に賭けてこの友達の危難を救うのが筋だろう。
ギーシュは爽やかな笑みを浮かべるとディオに答えた。
「ああ、僕にできる事ならなんでもさせてもらうよ」

「そうだな…」
言い合いをしていた二人がピタリ、と止めてディオを見る。
「成る程、このデルフリンガーは世にも珍しい剣、これを選ばないという選択肢はないな。」
「ほら、見なさいよツェルプス…」
「だが、ぼくの為にわざわざ高価な剣を買ってきてくれたキュルケの心はとても僕の胸を打った」
「ディオ…」
「そこで、だ」
二人を見回す。
「ぼくにいい考えがあるんだが、聞いてくれないか?」
ディオが二人を呼んでその方法を話す。納得したように頷いていたルイズだが、振り返ってギーシュに尋ねる。
「本当にいいのね、ギーシュ」
ギーシュは胸を叩きながら答えた。
「ああ、勿論さ。グラモン家の名誉にかけてこの喧嘩を納めてみせるよ」

「なんで!なんで僕がこんな事しなくちゃいけないんだー!」
「自分で言ったんでしょ!我慢しなさい!」
「でもこの役ってディオがやるべきだろ!」
「だってディオには魔法が使えないじゃない!その点あんたなら落とされてもレビテーションで浮かび上がれば大丈夫でしょ!」
数分後、中庭には本塔の上から吊り下げられたギーシュ、そしてそれを狙うルイズとキュルケがいた。
ディオは、
「君達二人は決闘をする予定だったな。ならばいっそそれで決めたらどうだい?だが剣の所有を巡って怪我を負うなんて馬鹿らしいだろう?
だから、誰かを塔から吊して、縛っているロープを先に切った方が勝ちというのはどうだい?」
と提案した上でギーシュがその役割を買って出たことを伝え、ルイズもキュルケもそれを了承したのである。

「…ちっ」
その集団から少し離れた所で一人の人影が舌打ちをしていた。そう、彼女こそが今世間を騒がし、貴族達を嘲笑うかのように
どんな厳重な警備もかい潜って財宝を盗んでいる『土くれ』のフーケである。しかしフードと夜陰で顔がよく見えないが
今の彼女が不満でいる事がわかる。
このトリステイン魔法学院にある『破壊の杖』を盗もうとして学校内部に潜り込み、宝物庫の弱点を聞き出したまではよかったが
その壁は彼女が得意とする実に20メイルもあるゴーレムの一撃ですらびくともしない強度を誇っていたのだ。
そして対策を考えていると、今度は学生どもがワイワイとやってきて邪魔をする。
「『破壊の杖』を諦めるわけにゃいかないが…また出直すべきかね…」
思わず一人ごとが出る。あいつらはまだ騒いでいる。しかもよく見ると宝物庫の壁に生徒を一人吊している。
どうやら彼を撃ち落とした方が勝ちらしい。くだらない。あんな馬鹿馬鹿しい事であいつらは私の邪魔をしたというのか。

明日、見かけたという事にして罰則を与えてやろうかとフーケが思っている間にどうやら勝負は始まったらしい。
「避けないでよ!ギーシュ!ファイアーボール!」
あれは確かゼロのルイズの声、でも魔法が使えない事で有名なあの生徒にファイアーボールが扱えたかしら?
と、次の瞬間ギーシュの背後の壁が爆発した。今だギーシュが命乞いをしている所を見ると外れたらしい。
だが、この威力は一体なんなのか、思わず爆心地を見るフーケだが、次の瞬間ある事に気付いた。
壁にヒビが入っている。
例えどのように堅牢な城壁であろうとヒビが入っている状態では土壁よりも脆い。天は私に味方したか。
フーケはほくそ笑むと呪文を唱えはじめた。

「残念ね、ヴァリエール!あたしの勝ちのようね!」
「~~~ッ!」
予想通りと言うべきかルイズには魔法が使えず、結果としてキュルケが勝負を制することとなった。
少し考えればわかる事をプライドで無視してしまったことを悔しがるルイズだが、あとの祭りである。
「さ、ダーリン。あたしの剣を受け取って♪」
とキュルケが剣を差し出す。
フン!こんな売女から剣を貰うのはしゃくに触るが、自分から言い出した以上仕方がない。
結果的にはこの剣を使う事になってしまったが、よもやルイズもこれに文句をつける事はできないだろう。
だが、ディオが剣を受け取ろうとした瞬間、辺りに轟音が鳴り響き、瓦礫が落ちてきた。
「ちょ…ちょっとルイズ!いくら何でも悪あがきが過ぎるんじゃない!?」
瓦礫を避けながら慌てて抗議するキュルケだが、ルイズも逃げながら反論する。
「ち、違うわよ!私なにもしてない!」
「…あれ」
突然の事に慌てる彼女達だが、タバサに指さされるまでもなく月明かりが遮られた事で全員がその影を作ったものを見上げる。
「ゴ、ゴーレムだ!」
ギーシュの叫び声で我に返り逃げ出すルイズ達だが、ギーシュは縄が絡まりうまく逃げる事ができない。
そんなギーシュにゴーレムは足を上げると勢いをつけて踏み潰し…

ふふ、たわいもない。あんなに悩んでたのが馬鹿みたいに宝物庫に侵入する事ができた。
素早く辺りを見回す。ゴーレムには注意を引き付けるよう暴れさせているが、あまり時間はない。
と、部屋の片隅に『破壊の杖。持ち出し不可』と書かれた札が目に入る。
いつも通り『破壊の杖、確かに領収いたしました 土くれのフーケ』というサインを残したフーケは
ゴーレムを壁に寄せると乗り移ろうとし、
壁に立てかけてあるものにふと視界がいった。ただの時代遅れの平民の武器。
それを無視しようとして、だが何かの役に立つかもしれないと思い直すとフーケはそれを手に取った。

地響きと共に辺りは砂煙に包まれる。そして砂煙が収まった時、ギーシュの居た場所にはゴーレムの足があった。
「いやあああああああああああ!!!!」
キュルケの叫び声が静寂を破り、ルイズは呆然と膝をつく。
確かにギーシュは嫌な奴だったかもしれない。だが、学友の一人であった。それをフーケはまるでたまたま見かけた虫を潰すかのように
殺したのだ。もしあの時逃げなければ、ギーシュの縄を引っ張れば…ルイズの瞳に涙が浮かぶ。
だが
「キュイ♪」
ルイズ達の上空を何かが高速で横切った。タバサのシルフィードだ。口にはギーシュを咥えている。
ギーシュは無事だった。踏みつぶされる瞬間、シルフィードが飛来してギーシュをすくい上げたのである。

地面に降り、ギーシュを離すと皆が駆け寄る。
「ギーシュ!大丈夫?ギーシュ!?」
「大丈夫。気絶してるだけ」
一息つくルイズだが、その隙にゴーレムは学院の外に逃れ、やがて元の土に戻った。

「逃げられたみたいね…」
キュルケが呟く。宝物庫の壁は壊され、中庭には壁の破片や砂山が所々にできており、あたりは惨憺たる状態である。
ルイズはディオに話しかけようとして、思わず息をのんだ。ディオの顔は怒りに歪んでいた。
(へぇ、こいつにも義憤っていうのはあるのね)
言うことを聞かない上に主人を殴りつけるようなディオに不信の念を覚え始めていたルイズであったが、
ディオにも正義の心があるという事に驚き、その評価を見直すのであった。

だが、ディオの怒りはルイズの考えている事とは全く違う動機であった。

(くそっ…このディオが…『恐怖した』…だと…ッ!あのような土くれ風情にこのディオがッ!
そう、あの瞬間、ディオには恐怖の感情、吸血鬼に襲われたあの瞬間のような感情が湧き上がってしまったのだ。
(いずれこの世界を支配するおれがたかがゴーレムごときに脅えるなどあってはならない!
 だから!おれはとっさの瞬間に足がすくみ何もできなかった自分が許せないッ!)
ディオの口元から血が流れる。怒りのあまり唇を強く噛んでしまっているのだ。だがディオは怒りのあまりその事にも気づいていない。
(『土くれ』のフーケ!貴様のようなコソ泥風情が!このディオを『恐怖』させた事を後悔させてやるぞォーーーッ!!!)
ディオは嵐の如き怒りを心の中に荒れ狂わせながらフーケに自分を恐怖させた事への代償を誓うのであった。
                                        to be continued…



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー