ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

おれは使い魔になるぞジョジョー!-9

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匿名ユーザー

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スタンド使い同士が引かれ合うように、ガンダールヴのルーンはディオをその進むべき道へと推し進める。
だが、それは本当に正しいことなのだろうか?その結果は誰も知らない…。

おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第九話

カーテンの光がやわらかい明かりを部屋に満たす中、ディオは目が覚めた。日の具合からすると
ルイズを起こすべき時間から30分は遅れてしまったらしい。ルイズを見るとこれまた陶器でできた人形のような顔で寝ている。
起きている時もこれぐらい静かならいい駒として使えるのだが、と思いながらディオはルイズを起こす。
だがルイズは特に慌てる様子もなく服を着替える(勿論ディオに渡して貰っている)。
別にルイズが遅刻しようがどうでもいいが一応聞いてみる。
「今日は…いつもより遅いようだけどいいのかい?」
「忘れてたわね。今日は虚無の曜日だから授業はないのよ。それよりも」

とルイズは珍しく手早く着替えると人差し指をディオに突き出す。
「さあ、今日は城下町に行くわよ!」
「城下町?」
また気まぐれが始まったのかと呆れるディオに気付かずルイズは説明を続ける。
「そう!あの時はたまたまだったけど、いつもあんな殴り合いが通用するはずないでしょ。
魔法が使えない以上剣の一つ二つ持たないと駄目よ。それに見栄えにも関わるしね。
あとついでにベッドも買わなきゃね。あんな臭いベッドをずっと使うつもりなら話は別だけど」
ディオにはどちらかというと剣よりも城下町の方に興味を引かれた。今まではトリステイン魔法学院という陸の孤島に
閉じ込められたようなものだった。だがこの世界の風俗を知る為には城下町は格好の場所であるし、うさ晴らしにもなる。
後者については言うまでもない。ディオは腕を組みながら答えた。
「いいだろう…ついていかせてもらうよ、ご主人さま」

ディオとルイズが部屋を出て角を曲がった直後、ルイズの向かいの扉からキュルケが出てきた。
ディオを口説き落とす為の化粧もばっちりだ。
「そうね、ルイズは物ぐさだろうからダーリンを開けに行かせるはず。そしてドアを開けたダーリンの胸に私が飛び込めば
さしものダーリンも…勝った!ゼロの使い魔、完ッ!!」

キュルケは自信満々にドアを叩く。
沈黙。
もう一度叩く。
沈黙。
「ノックしてもしもぉ~し!ルイズ、まだ寝てるの!?」
と声をかけながら叩いても何も返ってこない。
嫌な予感がしたキュルケがアンロックを使って部屋を開け、馬で出て行く二人を見つけてタバサの部屋へ猛ダッシュしたのは
その直後であった。

タバサは虚無の曜日が好きである。一日中自分の部屋に篭って好きな本を読めるからだった。
だが最近のお気に入りは小説ではなく『ツェペリの奇妙な冒険』と題した冒険漫画である。
場面はちょうど主人公のシーザーという青年が囚われの友人の知り合いの老富豪を助ける為、友ジョセフと共に
悪逆非道の軍隊の基地に女装して潜入しようとしたところである。
どう見てもバレバレな変装でどう見張りをごまかすのかワクワクしながらページをめくろうとするタバサであったが、
横から伸びてきた手がそれを掴む。
何を考えてるのかと見上げると、友人のキュルケが何か叫んでいた。仕方がなくアンロックを解除して抗議しようとする
タバサであったが、キュルケの怒涛の勢いに飲まれる。
「あたしね!恋したの!でね、その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!そう、馬で!
でね、あたしは行く先を突き止めたいけどあなたの使い魔じゃないと追いかけられないの!力を貸して!」
はっきり言えば断りたい。しかしたった一人の友人のたっての頼みである。断るわけにもゆくまい。
窓を開くと口笛を吹いて風韻竜シルフィードを呼ぶ。
「馬二頭。食べちゃだめ。」
せっかくの休日が台無しである。無意識のうちに爪を噛む。タバサは静かに暮らしたい。

それから暫くして、ディオとルイズは城下町に到着した。だがルイズの顔は心持ち暗い。
魔法が使えない代わりに馬の扱いには自信があったルイズだが、ディオはそれを上回る競馬の騎手顔負けな腕前であったからだ。
駅舎に馬を繋ぐとディオは周りを見渡す。人口は確かに多いが、町並みや道路の舗装はどう見ても産業革命以前である。
なるほど魔法が存在する以外は中世と同じと考えて差し支えないか、と一人ごこちてると、ルイズが声をかけてきた。
「どう?たくさん人がいるでしょ?驚いた?」
「ああ…驚いたよ(文明の低さに)」
その答えに満足したのかルイズは颯爽と町を歩きだす。

ルイズの後ろをついてゆくディオは昔貧民街に住んでいた事もあり大体の想像はつくが、この世界の文字が読めないので
一々ルイズに説明してもらう。
「あれは?」
「カジノダービーBr.」
「ほう、それでは向かいのあれは?」
「ブックスポルナレフ」
「ではこっちの」
「鳥犬専門ペットショップ・イギー!んなところよりさっさと行くわよ!」
そうしてルイズは恐れる様子もなく路地裏に入っていく。
狭い道を貴族くずれのスリが多発するというような話を聞きながら歩いてゆくと、明らかに武器屋と思しき店が目の前に現れた。
「ほら、着いたわよ」
とルイズが店に入ると太った親父が出迎えた。

「旦那、貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これぽっちもありませんや」
「客よ。」
「こりゃおったまげた、貴族が剣を!これはどういった心境で?」
と親父が目を丸くすると何かの冗談のように手を振る。
「だから違うわ。話を最後まで聞きなさい。今日はこいつに剣を買ってやりにきたのよ」
「ほほう、成る程。最近は下僕に装飾をさせるのが流行りなのですからな」
「貴族の間で?」
「そうでさ。なんでも『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。」
と店主は世間話をしながら宝石が各所に埋め込まれている一振りの剣を持ってきた。
「これなんかいかがでしょう?ゲルマニアの錬金術師シュペー卿が鍛えた剣、お値段に見合う威力は保証しますよ?」
ルイズも気に入ったようで満足そうな笑みを浮かべる。
「んー、なかなかいいわね…いくら?」
「そうですね、こいつは店1番の業物ですからね、新金貨で3000エキューで如何でしょうか?」
「た、高いわよ!もっと安くならないの!?」
いくらルイズでもたかが剣一つに広大な庭付きの豪邸が建てられるような金を払うのは躊躇われた。

その時、帽子を被った長髪の男が店に入って来たが、ディオを見るなりくるっとドアの方を向き、また外に出ていった。
店主から剣を見せてもらい、大剣を手に取りしげしげと眺めるディオ。と
「かーっ、わかってねぇなあんちゃんよ。糞みてえな安物売り付けようってこいつもこいつだが、
そんなもんに引っ掛かるような奴はそれにすら及ばねぇ。帰れ帰れ!」
店の奥から渋い中年男性の声が聞こえた。
「な、なによ今の!」
「デ、デルフリンガー、くそっ…いや、あいつは嘘つきのボロインテリジェンスソードでさぁ。気にしないで」
「へっ!嘘つきのおめーに嘘呼ばわりされるならおれっちが正しいってことじゃねーか!」
「なんだと!」

喧嘩を始める剣と主人。ルイズはあっけに取られて今のやり取りを見ている。さして気にする様子もなく辺りを見回すディオだが、
やがてその声を見つけるとなおも喋ろうとするのを無視して手に取る。
すると、デルフリンガーは今まで叫んでいたのが嘘のようにぴたりと声をあげるのを止めると、暫く考えてから口を開いた。
「…おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
「『使い手』?『使い手』とはなんだい?」
「言葉通り、おめーはかなり黒いがおれの使い手って事よ。どうだ、おれを買わねーか?」
そこでディオはルイズに向き直り、剣を渡す。
「ルイズ、これにしよう」
「はぁ?こんな喋るだけのボロ剣どこがいいのよ!」
「君には珍しくなくてもぼくには珍しくてね、それにぼくの事を何か知ってるみたいだ。気に入った。親父、これはいくらだい?」
「いや、若奥様の言う通りそんなボロ剣よりこっちのシュペー卿の剣の方が…」
「その偽物が、かい?」
「…畜生!」
店主は机を叩くと、大剣をしまう。

「わかったよ。そいつだな?捨て値で100エキューでかまわねえよ!」
店主が負け、あまり出費せずに済んだ事を喜ぶべきか錆だらけの剣を選んだ使い魔を叱るべきか微妙な表情を浮かべるルイズと
デルフリンガーを背負ったディオは家具屋に向かうべく店を後にした。

それを上空から眺める人影が二人。キュルケとタバサだ。ルイズ達がいなくなると早速店に入る。
「アッサラーム!今のメイジ、いえ、今の使い魔が欲しがってた剣とかってないかしら?」
店主はニヤリと笑うと手を振りながらさっきの剣を出す。
「ああ、こいつですね。さっきメイジの若奥様が買おうとしたんですがね、高いとかいって買い渋って結局ボロ剣買っていきましたよ」
公爵家の娘ともあろうものが貧乏ね、とほくそ笑みながらキュルケは値段を尋ねる。
「おいくら?」
店主は少し悩むそぶりを見せたあと、おもむろに値段を言う。
「本当は5000はしますが、事情がおありのようですな。いいでしょう、4500で勉強させていただきます」
いくらなんでも高い。だがキュルケは胸元を開くと色気たっぷりの声で誘惑する。
「ねぇ、もっと安く買えないかしら?」
「そ、それじゃあ4000…」
「ね…もっと色をつけて♪」
と、そこに先程店を出て行った男が入って来た。
「よぅ、ダンナ!…ヒヒ、実は最近いい仕事で金稼いだからよー、これを機会に傭兵始めようと思うんだが、なんかいーい剣はないかい?」
「ああ、こいつがあるよ。見てみるかい?」
と、急に商売人の顔に戻ると店主は大剣を見せる。帽子の男はそれを受け取ると多少大袈裟にも見えるそぶりで剣を振るう。
一方のキュルケは気が気ではない。
「おっ!なかなかいい剣じゃねぇか。いくらだ?」
「ちょっと!今私が交渉してるのよ!」
と、キュルケが慌てるが、店主は
「悪いね、これはまだあんたのじゃないんだ」
と言うと男に向き直る。

「そうだな、5000ってとこだ。」
「そこをもーちょっと安くならないか?」
「しかたねえな、4200でどうだ?」
「お!それなら払えるぜぇ!」
と、男は大金の入った袋を取り出す。
何故平民があんな大金を!とキュルケは驚くが、ここであの剣を売り払われる訳にはいかない。
今まさに剣を渡そうとする店主の腕を掴むと、キュルケは慌てて叫んだ。
「ちょっと待って!4500でいいわ!」
「本当かい?」
胡散臭そうな目つきで男とキュルケを見比べていた店主だが、にっこりと微笑むとキュルケに剣を渡した。
「…仕方ないな。お客さん、運が悪かったと思ってあきらめな」
「マジかよ…なんてこったい」

そうしてがっくりとしている男を残してキュルケはほくほく顔で剣を持つと、タバサの元へと向かう。
「…どう?」
「用事は済んだわ!さ、学院に戻りましょ。今夜はビッグサプライズよ!」
「…シルフィード。」
「キュイ♪」
とシルフィードは浮き上がるとルイズ達に気付かれぬように学院に戻るのであった。



数時間後、酒場の席で先程の二人が乾杯をあげていた。
「いやー、今回はいいカモが釣れたな。これもお前さんのお陰だよ」
「なぁーに、中々のいい女だったが、別に殴るわけじゃねえ、問題はないッ!」
男はいつの間にか短銃を取り出し、ニヤニヤする。
「それにしてもあの嬢ちゃんも驚くだろうよ、おれは確かに傭兵だが得物はこいつだって事をよ。」
「だな。」
「ま、おれがいたからこそだが、ダンナがいるからこそおれも楽して金儲けができるって事よ。 ダンナも知ってるだろ?おれの人生哲学をよ」
「ああ。1番よりNO.2!だろ?」
「その通り、わかってんじゃねーか…ヒヒ」
つまりはこういう事である。カモを見つけると店主は手を挙げて合図をするとともに吹っ掛けて、渋る客の目の前で
男が買うふりをする。そしてぐずぐずすると先に買われてしまうと慌てた客は店主の言い値で買ってしまうという訳だ。
「だがどうしたんだい?最初の客が来た時いきなり逃げ出しやがってよ」
長髪の男は手に持った短銃を回しながら答える。
「いや、どーもあのメイジの使い魔?あいつを見た時にな、いやーな感じがしてよ。3回くらい前世であんな奴に
雇われていたような、例えるなら暗殺しようとしても一瞬で後ろに廻られそう?そんな感じがしてな」
「なんじゃそりゃ」
呆れる店主に男は酒をつぐ。
「ま、気にしててもしかたがねぇ、ほら、もう一度乾杯だダンナ!」
「おう、乾杯!」
ディオは計らずも名剣を手に入れた。キュルケは予想外の出費で役立たずの剣をつかんだ。そして店主は計算通り金を儲けた。
世の中には知らない方がいい事も、悪い事もある。
                                        to be continued…



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