ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

おれは使い魔になるぞジョジョー!-6後

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匿名ユーザー

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ディオはギーシュを甘くみていた。平民が近寄る事すらできないからこそメイジは特権を持ち続けていられるのだ。
だがガンダールヴというルーンはその理を覆し、運命の女神はディオに味方する…

ぼくは使い魔になるぞジョジョーッ! 第六話②

「よく来たな!逃げ出さなかったその度胸だけは誉めてやるぞ!」
ヴェストリ広場で決闘が行われるという噂は瞬く間に学院中に広まり、ディオが広場に来た頃には多くの野次馬が詰めかけていた。
ディオはその中を広場の中央まで歩いてゆくとギーシュと相対する。
早速薔薇の花に紛した杖を上げ、戦闘体制に入ろうとするギーシュだが、ディオはそれに待ったをかける。
「なんだ!まさか戦う前に命乞いじゃないだろうな!?」
「どうだ?ただ決闘するだけじゃ面白くない。ここは一つ賭けをしないか?」
「賭けだと!?」
ディオは頷くと宣言する。「ぼくが負けたら我が主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの
三月分の生活費を君に渡し、ぼくも君に土下座をして謝ろう。」

もちろんルイズは驚愕し、怒り出す。
「ちょ、ふ、ふざけないでよ!何勝手に決めてるのよ!」
「お待ちなさいな」
飛び出そうとするルイズの肩を押さえる浅黒い腕。
「面白そうじゃない。それにあのディオって使い魔、かなり自信があるみたいよ。」
「…勝つ気。」
「キュルケ!なんであんたがここにいるの!?」
「この騒ぎだもの、来ない方がおかしいですわ。ね、タバサ」
「…。」
いつの間にかキュルケとタバサがルイズの隣にいた。
「信じてあげなさいな、あなたの使い魔なんだから」
「う…。」
沈黙するルイズ。

ディオは続ける。
「だが!君が負けたらぼくにベッドと今月分の小遣い全てを渡し、八つ当たりでミス・シエスタに無礼を働いた事を詫びて貰おう!」
そして周りに聞こえないよう小声で続ける。
「もちろん受けてくれるよなあ、グラモンくん。もっとも君がぼくに負けるのが怖いというのなら話は別だけどな。」
ギーシュは最初は賭けなど受けない気でいたが、このディオの一言に乗せられる。
「よし、その賭けに乗った!このギーシュ・ド・グラモン、この勝負に負けたら確かにベッドと小遣いを提供し、
そのシエスタとかいうメイドに謝罪しよう!」
この言葉にわっと沸く野次馬達。自分達もと賭けを始めている生徒達もいる。

「それでは改めて始めよう!ああ、言い忘れるところだった。。僕はメイジだ、魔法で戦う。よもや文句はあるまいね!?」
ギーシュが叫びながら杖を振ると、薔薇の花びらが一枚飛び、見る間に女戦士の形をした青銅のゴーレムになる。
「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
「さっきから言い忘れが激しいな!ボケ防止の薬でも飲んだらどうだい?」
「ほざけっ!」
女戦士の形をしたゴーレムがディオに向かって突進する。思わず目をつぶるルイズ。
そしてワルキューレの右の拳が、ディオの腹にめり込……まなかった。

ディオは不思議なポーズを取ると無駄のない動きで後ろに下がり、ワルキューレの拳をかわしたのだ。
「な…に?」
「ふん、なかなか素早いパンチだ。だが!ジョジョの拳に比べると止まって見えるぞッ!」
生徒たちから歓声が上がる。ルイズも呆気に取られて見ている。
その後もワルキューレの攻撃はことごとく空を切った。
「なに!あの足捌きは!」
「…見たことがない」
キュルケとタバサもその動きに目を丸くしている。
それもそのはず、ディオの取っている行動は20世紀に入ってから発達するボクシングのスウェーイングなどの防御テクニックだった!
余裕の表情で右に左にまた背を反らしてワルキューレのパンチを受け流す。気がつくとワルキューレがもう一体増えていたが、
これも難無くかわすッ!

「…くっ!」
ギーシュは焦っていた。当初の予定では腹に一発当てて動きを止めたあとゆっくりとなぶり殺しにするつもりだった。
だが、あの奇妙な動きの前に未だ一発も当てられない。
だが、ギーシュはまた分かっていた。あんな行動がいつまでも続くはずがない。
一方は生身の人間、もう一方は疲れなどとは無縁の人形なのだ。この勝負、長引けば長引くほど有利ッ!
実際ディオの顔からは段々と余裕が失われはじめている。このままではいずれあの重いパンチを食らってしまうだろう。
と、そこにシエスタが走ってくる。手には何かを持っている。
「ディオさん!頼まれたものを持ってきました!」
シエスタが持っている、メイジには見慣れない手袋のようなものはボクシングなどに使うグローブである。
そう、あの後厨房に入ったディオはマルトーに、拳で殴る為の武器を持っていないか聞いたのだ。

話は少し横に逸れる。
『殴る』というのは人間の基本動作の一つである。最も安易で、かつ相手にダメージを与えられる『殴る』行為は人間社会なら必ず発達する。
よってこのハルケギニアでもボクシングのようなものが平民社会でできていた。
もちろん様々な技術が生まれる前、19世紀イギリスのそれ程度だが。

残念な事にマルトーはグローブを持っていなかった。しかし知り合いに拳闘を好む衛兵がいる事を思い出すと、
シエスタに借りに行かせたのだった。

一瞬の隙をついてディオはワルキューレから離れ、シエスタのところへと後退する。
またディオが離れたのを見てルイズも駆け寄ってくる。
それを見たギーシュはどんな武器なのか興味をそそられて一旦ゴーレムを引く。
「分かってるの!このままじゃ勝ち目はないわ!」
ルイズが叫ぶ。
「あんたはよくやった。だけどそれだけよ!いずれあのパンチを食らって負ける!決まってるじゃない!いい加減に降伏しちゃいなさい!」
「ディオさん、ディオさんがここまでしてくれただけでも私は嬉しいです。だからもう…」
シエスタも『武器』を持ってきたもののディオを心配し、ルイズに合わせる。
ディオもその事はよく分かっていた。だが!ここで引く訳にはいかない!
あんなひょろひょろの少年に敗れる事はディオのプライドが許さなかった。
そしてそれ以上に!この勝負に負けたらディオは一生笑い者になり、計画は破錠するのだッ!

故にディオはシエスタからグローブを受け取ると、腕に嵌めながら二人に言う。
「忘れたのかい?この勝負に負けたらルイズは明日から生活できなくなるんだよ。」
「…あ゛」
「それに…魂が負けたと思った瞬間にもう負けは決まってしまう。だからおれは最後まで諦めないッ!!」
「…ディオ…」

と、その時、ディオは不思議な感覚に包まれた。疲れが吹き飛び、身体中に力が漲ってくるのだ。

ゆらりと立ち上がる。顔が影になっていてよく見えない。
「…ディオ?」
「……フフ…馴染む、馴染むぞォ!この気分!最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ」
反り返って高笑いするディオ。いきなりの変貌に周りはドン引きである。
それを気にする事もなく、ディオはギーシュのもとへと駆け出していく。
「何を受け取ったのかは知らないが、君では絶対にワルキューレには勝てない!さあ、覚悟したまえ!」
ギーシュは勝利宣言を告げると、ワルキューレを突進させる。

ワルキューレとディオが拳を打ち合う。と、次の瞬間、ワルキューレは粉々になって崩れ落ちた。
「いいぞォ!新たな力がわいてくる。いい感触だッ!」
突然の身体の変化に戸惑うが、それ以上に戦局を変化させる力を得た事を喜び、にやり、と笑うディオ。
グローブで隠れているが、その隙間からガンダールヴのルーンの光が漏れている。

「なにっ!」
ギーシュはワルキューレを錬成すると武器を持たせ、残っていた一体と共にディオを攻撃する。今のはまぐれだっ!
今度こそとどめを刺してやる!……だが、
「エエィ、貧弱!貧弱ゥ!」
それは新たな瓦礫の山を生み出しただけであった。

「う、うわあああああ!!」
この展開に冷静さを失ったギーシュは残り全てのゴーレムを錬成すると、ディオの周りを取り囲ませ、一斉に攻撃させた。
「ワルキューレ!そいつを倒せ!」

ギーシュは不運であった。もし、最初から全力で攻撃していれば。もし、休憩など認めず、ディオにグローブを付けさせなければ、
ギーシュは勝っていた。だが、全ては手遅れだ。
「無駄!」
「無駄ァ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」
目に見えないほどのパンチの連打に次々とスクラップになっていくワルキューレ達。
そして最後のゴーレムが崩れ落ちた瞬間、ディオは人間ばなれした速度でギーシュに近づくと、
慌てて新たなワルキューレを錬成しようとしているギーシュの顔面を思いっきり殴りつけるッ!!

「ブガゴッ!」
豚のような声をあげるギーシュ。もはや戦意は消失している。だが、ディオがそれだけで許すはずがなかった。
(これでこの決闘はおれの勝利!!しかしまだまだ安心するなよギーシュ!)

(このまま!!)
ディオの親指が曲がる。
(親指を!)
そのままでギーシュの目に迫る。
(こいつの!)
ギーシュの目にディオの指が突き刺さる。
(目の中に……突っ込んで!)
「殴りぬけるッ!」

ブッギャア!という嫌な音とともにギーシュの身体は空を舞い、地面に叩きつけられた。

飛びそうになる意識の中、ギーシュは片目でディオがゆっくりと近づいてくるのを見た。
気のせいかどす黒いオーラがディオを包んでいるように感じる。
(こ、殺される!)
そう感じると、ギーシュは死力を振り絞って叫ぶ。
「ま、参った!降参だ!」
そして―――気絶した。
「やった!ルイズの使い魔が勝った!」
「あのギーシュが平民に負けた!」
「ディオはわしが育てた」
次々にあがる歓声。片手を上げてそれに答えるディオの顔は先程までの邪悪な顔が嘘のように澄みきっている。
ルイズとシエスタが駆け寄ってくる。
「すごいじゃない!あのギーシュに勝つなんて!」
「だから言っただろう?ぼくは最後まで諦めないって。」
「ディオさん…私…私…」感極まったシエスタの頭ににディオは優しく手を置く。
「これで、君の受けた屈辱はあいつに返してやったよ」

シエスタの顔が真っ赤になる。泣いたらいいのか恥ずかしがったらいいのかわからないような表情をしている。

(これでメイジ共の間でおれの株は上がり、こいつも完全におれの事を信用するだろう!それだけではないッ!
 こいつの口から今の決闘の噂が平民共に広まれば!それだけで会ったことのない奴らもおれの味方となるのだッ!
 まさに一石二鳥、いや三鳥よッ!)

ディオは倒れているギーシュを抱えると、近くにいたやはり顔を朱く染めているキュルケに尋ねた。
「彼を運んでやりたいのだがね、医務室はどこかな?」

オスマン老とコルベールは『遠見の鏡』で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。
「あの青年、勝ってしまいましたが……」
「ううむ…」
「ギーシュは『ドット』メイジですが、あそこまで一方的に平民に負けるとは考えられません!あの動き、やはり
 彼は『ガンダールヴ』なのです!さっそく王室に報告を…」
と、ここでオスマンはコルベールを押しとどめる。
「ミスタ・コルベール、ガンダールヴがどういうものなのか知っているかね?」
興奮して答えるコルベール。
「勿論です!並のメイジでは歯が立たず、一度戦場に立てば千人の軍隊もあっという間に打ち倒すという力を持っている!
 それがガンダールヴです!」
「だからじゃよ。この事を王宮なんぞに知られてみよ。ミス・ヴァリエールと共に戦場行きじゃ。」
「な…なるほど」
「よって、この件は私が預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「は、はい!かしこまりました。」

(しかしそれよりも……わしは気になるのじゃ。あのグラモンの息子を殴っていた時の青年の顔、あれはまるで相手を嬲る事を
 楽しみにしているような顔じゃった…。もしガンダールヴが純粋な『悪』だったとしたら…そうではないと信じたいのじゃが…)
オスマン老は深く嘆息しながら空を見つめるのであった。
                                        to be continued…



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