服や小物、化粧品に下着etcetc。とかく女性の買い物は長いものである。
あの後、キュルケがタバサのために服や化粧品を選んでやったり、下着を試着したキュルケが「ねぇ、これってぐっとくるかしら?」と康一に見せようとしてひと悶着あったりなどするうちに、康一が抱える荷物は山のようになっていった。
気軽に「ぼくが持ちますよー」なんて言うんじゃなかった・・・
「ところで、あんたには他に欲しいものはないの?」
自分たちの買い物を女性陣が一通り済ませた後、ルイズがふと思いついたように聞いた。
山盛りの荷物を抱えたまま、康一はうーん・・・と悩んだ。そして「気軽に買えるようなものじゃないのは分かってるんだけど・・・」と断りを入れた。
「ぼくは・・・寝具が欲しいかなぁ~。床で寝るのはちょっとつらかったりするんだよね。」
こちらに来てから、基本的に床である。ギーシュにぼこぼこにされて唸っている間はベッドを使わせて貰っていたのだが、そういう例外を除いて基本的に犬は床らしい。
「ダーリン、床で寝させられていたの!?」
キュルケが悲鳴をあげた。溜息まじりのあきれた視線をルイズに向ける。
「ルイズ。あなたねぇ・・・」
「う、うるさいわね。あれは罰よ!罰!だいたいわたしの部屋にベッドなんてひとつしかないんだから仕方ないじゃない!」
ルイズがわたわたと手を振った。本当は今日から自分のベッドで寝させるつもりだった、などと口が裂けても言えない。
キュルケが感極まったように康一を抱きしめた。
「かわいそうなダーリン!こんな血も涙もない女のところに居る必要なんかないわ。今夜からあたしのベッドで一緒に寝ましょう?」
身長の高いキュルケに抱きしめられると、必然的に胸が顔の位置にくるのだった。うれしいし気持ちいいが、後ろめたいし恥ずかしい。
康一は顔を真っ赤にしてもがもがと唸った。
「あんたがそういうことするから罰を与えないといけなくなるんでしょぉ―――!」
顔を赤くしてもがく康一をルイズが引っぺがした。
あの後、キュルケがタバサのために服や化粧品を選んでやったり、下着を試着したキュルケが「ねぇ、これってぐっとくるかしら?」と康一に見せようとしてひと悶着あったりなどするうちに、康一が抱える荷物は山のようになっていった。
気軽に「ぼくが持ちますよー」なんて言うんじゃなかった・・・
「ところで、あんたには他に欲しいものはないの?」
自分たちの買い物を女性陣が一通り済ませた後、ルイズがふと思いついたように聞いた。
山盛りの荷物を抱えたまま、康一はうーん・・・と悩んだ。そして「気軽に買えるようなものじゃないのは分かってるんだけど・・・」と断りを入れた。
「ぼくは・・・寝具が欲しいかなぁ~。床で寝るのはちょっとつらかったりするんだよね。」
こちらに来てから、基本的に床である。ギーシュにぼこぼこにされて唸っている間はベッドを使わせて貰っていたのだが、そういう例外を除いて基本的に犬は床らしい。
「ダーリン、床で寝させられていたの!?」
キュルケが悲鳴をあげた。溜息まじりのあきれた視線をルイズに向ける。
「ルイズ。あなたねぇ・・・」
「う、うるさいわね。あれは罰よ!罰!だいたいわたしの部屋にベッドなんてひとつしかないんだから仕方ないじゃない!」
ルイズがわたわたと手を振った。本当は今日から自分のベッドで寝させるつもりだった、などと口が裂けても言えない。
キュルケが感極まったように康一を抱きしめた。
「かわいそうなダーリン!こんな血も涙もない女のところに居る必要なんかないわ。今夜からあたしのベッドで一緒に寝ましょう?」
身長の高いキュルケに抱きしめられると、必然的に胸が顔の位置にくるのだった。うれしいし気持ちいいが、後ろめたいし恥ずかしい。
康一は顔を真っ赤にしてもがもがと唸った。
「あんたがそういうことするから罰を与えないといけなくなるんでしょぉ―――!」
顔を赤くしてもがく康一をルイズが引っぺがした。
かくしてルイズの部屋である。
「うわぁ!ベッドだ!まともな寝床だよぉー!」
康一はつい先ほど運び込まれた自分のベッドに飛び込んではしゃいだ。
結局あの後、康一のためにベッドなどの寝具も買っていくことになったのだ。
平民が使うベッドとしては標準的なものである。現代のベッドのようにスプリングなどがついているわけでもない。
隣にあるルイズのベッドとは大きさもやわらかさも段違いなものではあったが、暖かな寝床というだけで康一は大満足だった。
康一にはさすがに持ちきれなくなったので(康一「まさかベッドを担いで馬にのれっていうんじゃないだろうね!」)、馬車を手配して部屋まで運ばせることにしたのだ。
帰ってからベッドを設置し、食事や入浴などをすませると、もうすっかり夜も更けていた。
キュルケからの熱心なお誘いもあったのだが、康一は遠慮しておくことにした。
自分には由花子さんという恋人がいる。ばれることは間違いなくないだろうが、そこはきちんとしておきたい。
さらに言えば、キュルケに誘われて考えるそぶりを見せると、ルイズが途端に不機嫌になるからだ。
「おおげさねぇ。」
ベッドにはしゃぐ康一にルイズはあきれて見せるが、実際には複雑な気持ちだった。
『自分のベッドで寝させてあげる』という『ごほうび』をあげられなくなったからだ。
思いのほかがっかりしている自分に、ルイズは気がつかないことにした。
康一はベッドに寝転がったままで答えた。
「君も一度床で寝てみるといいよ。硬いし冷たいしで、寝られるもんじゃないんだから。」
「いやよ。そんなの。」
ルイズはベッドの上にネグリジェ姿でぺたんと座ったまま康一の左手を見た。
「それより、あんたのルーンが光ったのって、いったいなんだったのかしら。」
康一は左手の甲にあるルーンをみた。手元にあったデルフリンガーを引き寄せて構えると、淡く光りだすのが分かる。
自分の皮膚がホタルよろしく光りだすのだから、康一としては不気味である。しかしいやな感じはしない。暖かいエネルギーがあふれてくるようだ。
「やっぱり、剣をもつと光るみたいだね。それになんだか・・・体に力が沸いてくる感じがする。」
康一はデルフリンガーを鞘から抜くと、軽く振ってみた。
野球のバットを想像してもらいたい。一般人でも全力で振ると振り回されるあのバットですら、長さはだいたい80~90cm。重さは900g強である。
一方のデルフリンガーは全長150cm余りと、長剣というよりはグレートソードのカテゴリーである。重さだって少なくとも倍以上はあるのだ。
本来、筋骨隆々の大男が力任せにぶん回すのがお似合いの大剣を、剣と大して身長の変わらない小柄な康一が軽々と振るうのは、かなり異様に見える。
「普段だったらこんな重い物振ったり出来ないよ。」
「それもそうよね。あんた、鍛えてる様にも見えないし。」
そのルーンの特性かしら。とルイズは首をひねった。
「使い魔のルーンで、犬や猫が人間の言葉を理解できるようになったりする、というのは聞いたことがあるわ。でも、『武器をもったら強くなる』なんて聞いたことがないもの。」
自分の使い魔は常識はずれなことが多すぎるのだ。もうほかの使い魔を参考にすることすら馬鹿らしい。
康一は枕元にデルフリンガーを置くと仰向けになった。
「明日君が授業に出てる間、いろいろ試してみるよ。『スタンド』に影響があるかどうか調べたいしね。」
「そうね。わかったらわたしに全部報告しなさいよ?」
うん、わかったよ。と康一が目を閉じたまま言うので、ルイズも灯りを消して寝ることにする。
瞳を閉じたまま、ルイズは小さな声で呼びかけた。
「ねぇ・・・」
眠そうに康一は返事をした。
「なぁに?」
「あんたってすごく変わってるわね。」
「そうかなぁ。」
「変わってるわ。あんたみたいな使い魔みたことも聞いたこともないもの。」
「『スタンド』はともかく、ルーンのことはぼくもよくわからないよ?」
「そうね・・・」
わたしもコーイチも普通じゃない。特にコーイチは。
「もしかして、あんたってすごいやつなのかしら。」
返事はなかった。もう、すやすやと寝息が聞こえる。きっと疲れていたのだろう。
あんたがすごい使い魔だとしたら、わたしはなんで『ゼロ』なんだろう。とは口に出さなかった。
代わりに小さくつぶやいた。
「わたしもあんたに負けないようにがんばらなくちゃね。」
「うわぁ!ベッドだ!まともな寝床だよぉー!」
康一はつい先ほど運び込まれた自分のベッドに飛び込んではしゃいだ。
結局あの後、康一のためにベッドなどの寝具も買っていくことになったのだ。
平民が使うベッドとしては標準的なものである。現代のベッドのようにスプリングなどがついているわけでもない。
隣にあるルイズのベッドとは大きさもやわらかさも段違いなものではあったが、暖かな寝床というだけで康一は大満足だった。
康一にはさすがに持ちきれなくなったので(康一「まさかベッドを担いで馬にのれっていうんじゃないだろうね!」)、馬車を手配して部屋まで運ばせることにしたのだ。
帰ってからベッドを設置し、食事や入浴などをすませると、もうすっかり夜も更けていた。
キュルケからの熱心なお誘いもあったのだが、康一は遠慮しておくことにした。
自分には由花子さんという恋人がいる。ばれることは間違いなくないだろうが、そこはきちんとしておきたい。
さらに言えば、キュルケに誘われて考えるそぶりを見せると、ルイズが途端に不機嫌になるからだ。
「おおげさねぇ。」
ベッドにはしゃぐ康一にルイズはあきれて見せるが、実際には複雑な気持ちだった。
『自分のベッドで寝させてあげる』という『ごほうび』をあげられなくなったからだ。
思いのほかがっかりしている自分に、ルイズは気がつかないことにした。
康一はベッドに寝転がったままで答えた。
「君も一度床で寝てみるといいよ。硬いし冷たいしで、寝られるもんじゃないんだから。」
「いやよ。そんなの。」
ルイズはベッドの上にネグリジェ姿でぺたんと座ったまま康一の左手を見た。
「それより、あんたのルーンが光ったのって、いったいなんだったのかしら。」
康一は左手の甲にあるルーンをみた。手元にあったデルフリンガーを引き寄せて構えると、淡く光りだすのが分かる。
自分の皮膚がホタルよろしく光りだすのだから、康一としては不気味である。しかしいやな感じはしない。暖かいエネルギーがあふれてくるようだ。
「やっぱり、剣をもつと光るみたいだね。それになんだか・・・体に力が沸いてくる感じがする。」
康一はデルフリンガーを鞘から抜くと、軽く振ってみた。
野球のバットを想像してもらいたい。一般人でも全力で振ると振り回されるあのバットですら、長さはだいたい80~90cm。重さは900g強である。
一方のデルフリンガーは全長150cm余りと、長剣というよりはグレートソードのカテゴリーである。重さだって少なくとも倍以上はあるのだ。
本来、筋骨隆々の大男が力任せにぶん回すのがお似合いの大剣を、剣と大して身長の変わらない小柄な康一が軽々と振るうのは、かなり異様に見える。
「普段だったらこんな重い物振ったり出来ないよ。」
「それもそうよね。あんた、鍛えてる様にも見えないし。」
そのルーンの特性かしら。とルイズは首をひねった。
「使い魔のルーンで、犬や猫が人間の言葉を理解できるようになったりする、というのは聞いたことがあるわ。でも、『武器をもったら強くなる』なんて聞いたことがないもの。」
自分の使い魔は常識はずれなことが多すぎるのだ。もうほかの使い魔を参考にすることすら馬鹿らしい。
康一は枕元にデルフリンガーを置くと仰向けになった。
「明日君が授業に出てる間、いろいろ試してみるよ。『スタンド』に影響があるかどうか調べたいしね。」
「そうね。わかったらわたしに全部報告しなさいよ?」
うん、わかったよ。と康一が目を閉じたまま言うので、ルイズも灯りを消して寝ることにする。
瞳を閉じたまま、ルイズは小さな声で呼びかけた。
「ねぇ・・・」
眠そうに康一は返事をした。
「なぁに?」
「あんたってすごく変わってるわね。」
「そうかなぁ。」
「変わってるわ。あんたみたいな使い魔みたことも聞いたこともないもの。」
「『スタンド』はともかく、ルーンのことはぼくもよくわからないよ?」
「そうね・・・」
わたしもコーイチも普通じゃない。特にコーイチは。
「もしかして、あんたってすごいやつなのかしら。」
返事はなかった。もう、すやすやと寝息が聞こえる。きっと疲れていたのだろう。
あんたがすごい使い魔だとしたら、わたしはなんで『ゼロ』なんだろう。とは口に出さなかった。
代わりに小さくつぶやいた。
「わたしもあんたに負けないようにがんばらなくちゃね。」
翌日。ルイズが授業に出かけた後、康一は二本の剣を持って学院から少しはなれた人気のない広場にやってきた。
ルイズはなんだかやる気満々で出かけていった。空回りしないといいんだけど。
「なあ相棒。こんなところで何をするつもりだい?」
デルフリンガーが尋ねた。
相棒、相棒と親しげに話しかけてくるので、康一とデルフリンガーは結構気安い仲になっていた。
「昨日光ったルーンを調べるんだよ。昨日言ってた『使い手』ってルーンのことなの?」
「そうさね。その左手のルーンが『使い手』の証だよ。」
デルフリンガーを握る。ルーンが光を放つ。体が軽くなる。
剣を軽く振ってみる。
ヒュン!と風切り音がする。
今度は思い切り振ってみた。
「おわっ!」
振りぬかれた剣に振り回され、体が泳ぐ。
転びそうになって思わずたたらを踏んだ。
「重い感じはしないんだけどなぁ。」
手の感触を確かめる。筋力は確かに強くなっている気がする。
デルフリンガーがからかう様に言う。
「相棒が軽すぎるのさね。ルーンは使い手の体重まで変えちゃくれないからな。」
「剣を振るのに体重が関係あるの?」
「そりゃああるさね。重心が体幹から遠くなると、とたんに扱いが難しくなるからね。」
康一は感心した。
人間だってこんなに詳しい人は居ない。たぶん。
「剣なのによくそんなこと知ってるなぁ。」
「まぁ6000年は生きてきたし、いろんなやつに使われてきたからね。」
「6000年!?」
現代ではイエスキリストが生まれたのが2000年前。6000年といえばそれの3倍じゃないか!
6000年という年月を自分の身に即して考えようとしたが、桁が違いすぎて実感がわかない。
「君って実は結構すごいわけ?」
「まぁね。」
デルフリンガーも心なしか得意げである。
「まぁそれは置いておいて、つまりぼくじゃ君を使いこなせないわけだよね。」
「大丈夫さね。相棒はまだ成長期だろ?これから大きくなるって。」
「ぼく、これでももう17歳。もうすぐ18になるんだよね。」
ちなみに高校の3年間で、身長はほとんど伸びていない。
「まだ若いじゃねぇか。これからまだまだ伸びるって。ところで、人間って何歳まで大きくなるんだっけか。50歳くらい?」
「50歳になるころにはぼくはもうおじさんだよね。」
「へぇ、そうだったっけか。」
この自称6000歳、いまいち常識に欠けるらしい。
しかしこのデルフリンガー。話を聞く限りすごそうな剣なのだが、もったいないことに自分には合わないのかもしれない。
「これなら、まだキュルケさんにもらったこの剣のほうがいいのかなぁ。」
もう一本の剣を手に取った。
比べてみると『シュペー卿の剣』のほうが、デルフリンガーよりは軽いようだ。長さも少し短い。ただ、格好よすぎて自分に不釣合いなのが問題だ。
「やめとけって相棒。そりゃあなまくらだよ。格好ばっかり気を使ってるが、造りがいいかげんだ。」
「ふぅん・・・」
次に『スタンド』を出してみる。
この『ルーン』はスタンドにも影響を与えるのだろうか。
「ACT3!」
康一が呼ぶと、空中に白い人型の『スタンド』が姿を現した。
「うわ!なんだいそいつは!」
デルフリンガーが驚いたように言った。
「ぼくが出した『スタンド』だよ。ぼくは『スタンド使い』だからね。」
「そいつを相棒が作ったっていうのかい?」
「まぁ、そういうことになるのかな。」
「へぇー。今度の相棒は変わってらぁ。」
表情がないのでわかりにくいが、感心しているらしい。
「6000年生きてきたのに、『スタンド』を見るのは初めてなんだね。」
「『ゴーレム』みたいだが、雰囲気は違うよな。先住でもないし。」
やはりこちらの世界に『スタンド使い』はいないのだろう。
何かヒントになることを知っていないかと思ったが、無駄骨だったらしい。
でも、めげない。まずはこのルーンが『スタンド』に影響するのか調べないとッ!
「ところでデルフ。君って頑丈なんだよね?」
シュペー卿の剣に持ちかえ、デルフリンガーを地面に置いた。
「まぁな。よっぽどのことがないと折れたりしないね。6000年も折れずにいるんだぜ?」
「それもそうだよね。それじゃ、ちょっと実験したいから感想を聞かせてくれるかな。」
「おう、まかせとけ!・・・・・・・え、実験?」
自分の頑丈さに自信はある。しかしなぜか相棒の言葉に、嫌な予感がよぎった。
「ACT3の『3FREEZE』は物体を『重く』するんだよね。だからこのルーンがあったらどれくらい『重く』なるのか知りたいんだよ。」
「んー・・・よくわかんないけど、かまわねぇよ。」
まぁたいしたことはないだろ。今までの6000年。殴ったり蹴ったりされたくらいじゃびくともしなかった。
「よーしそれじゃ・・・ACT3!この剣を重くしろ!」
「S.H.I.T!3FREEZE!」
ACT3が妙な構えの後、拳を振り上げた。
ルイズはなんだかやる気満々で出かけていった。空回りしないといいんだけど。
「なあ相棒。こんなところで何をするつもりだい?」
デルフリンガーが尋ねた。
相棒、相棒と親しげに話しかけてくるので、康一とデルフリンガーは結構気安い仲になっていた。
「昨日光ったルーンを調べるんだよ。昨日言ってた『使い手』ってルーンのことなの?」
「そうさね。その左手のルーンが『使い手』の証だよ。」
デルフリンガーを握る。ルーンが光を放つ。体が軽くなる。
剣を軽く振ってみる。
ヒュン!と風切り音がする。
今度は思い切り振ってみた。
「おわっ!」
振りぬかれた剣に振り回され、体が泳ぐ。
転びそうになって思わずたたらを踏んだ。
「重い感じはしないんだけどなぁ。」
手の感触を確かめる。筋力は確かに強くなっている気がする。
デルフリンガーがからかう様に言う。
「相棒が軽すぎるのさね。ルーンは使い手の体重まで変えちゃくれないからな。」
「剣を振るのに体重が関係あるの?」
「そりゃああるさね。重心が体幹から遠くなると、とたんに扱いが難しくなるからね。」
康一は感心した。
人間だってこんなに詳しい人は居ない。たぶん。
「剣なのによくそんなこと知ってるなぁ。」
「まぁ6000年は生きてきたし、いろんなやつに使われてきたからね。」
「6000年!?」
現代ではイエスキリストが生まれたのが2000年前。6000年といえばそれの3倍じゃないか!
6000年という年月を自分の身に即して考えようとしたが、桁が違いすぎて実感がわかない。
「君って実は結構すごいわけ?」
「まぁね。」
デルフリンガーも心なしか得意げである。
「まぁそれは置いておいて、つまりぼくじゃ君を使いこなせないわけだよね。」
「大丈夫さね。相棒はまだ成長期だろ?これから大きくなるって。」
「ぼく、これでももう17歳。もうすぐ18になるんだよね。」
ちなみに高校の3年間で、身長はほとんど伸びていない。
「まだ若いじゃねぇか。これからまだまだ伸びるって。ところで、人間って何歳まで大きくなるんだっけか。50歳くらい?」
「50歳になるころにはぼくはもうおじさんだよね。」
「へぇ、そうだったっけか。」
この自称6000歳、いまいち常識に欠けるらしい。
しかしこのデルフリンガー。話を聞く限りすごそうな剣なのだが、もったいないことに自分には合わないのかもしれない。
「これなら、まだキュルケさんにもらったこの剣のほうがいいのかなぁ。」
もう一本の剣を手に取った。
比べてみると『シュペー卿の剣』のほうが、デルフリンガーよりは軽いようだ。長さも少し短い。ただ、格好よすぎて自分に不釣合いなのが問題だ。
「やめとけって相棒。そりゃあなまくらだよ。格好ばっかり気を使ってるが、造りがいいかげんだ。」
「ふぅん・・・」
次に『スタンド』を出してみる。
この『ルーン』はスタンドにも影響を与えるのだろうか。
「ACT3!」
康一が呼ぶと、空中に白い人型の『スタンド』が姿を現した。
「うわ!なんだいそいつは!」
デルフリンガーが驚いたように言った。
「ぼくが出した『スタンド』だよ。ぼくは『スタンド使い』だからね。」
「そいつを相棒が作ったっていうのかい?」
「まぁ、そういうことになるのかな。」
「へぇー。今度の相棒は変わってらぁ。」
表情がないのでわかりにくいが、感心しているらしい。
「6000年生きてきたのに、『スタンド』を見るのは初めてなんだね。」
「『ゴーレム』みたいだが、雰囲気は違うよな。先住でもないし。」
やはりこちらの世界に『スタンド使い』はいないのだろう。
何かヒントになることを知っていないかと思ったが、無駄骨だったらしい。
でも、めげない。まずはこのルーンが『スタンド』に影響するのか調べないとッ!
「ところでデルフ。君って頑丈なんだよね?」
シュペー卿の剣に持ちかえ、デルフリンガーを地面に置いた。
「まぁな。よっぽどのことがないと折れたりしないね。6000年も折れずにいるんだぜ?」
「それもそうだよね。それじゃ、ちょっと実験したいから感想を聞かせてくれるかな。」
「おう、まかせとけ!・・・・・・・え、実験?」
自分の頑丈さに自信はある。しかしなぜか相棒の言葉に、嫌な予感がよぎった。
「ACT3の『3FREEZE』は物体を『重く』するんだよね。だからこのルーンがあったらどれくらい『重く』なるのか知りたいんだよ。」
「んー・・・よくわかんないけど、かまわねぇよ。」
まぁたいしたことはないだろ。今までの6000年。殴ったり蹴ったりされたくらいじゃびくともしなかった。
「よーしそれじゃ・・・ACT3!この剣を重くしろ!」
「S.H.I.T!3FREEZE!」
ACT3が妙な構えの後、拳を振り上げた。
「あ、やっぱちょっとm
ズン!!!!
一瞬でデルフリンガーが見えなくなった。
『デルフリンガー』-ACT3の超重力で地中深くまで沈み込んでしまい【再起不能】
なんてことに危うくなりそうだったので、康一は慌てて土を掘り下げ、デルフリンガーを回収した。
「壊れない自信はあったけど、まさか埋められるとは夢にも思わなかった!俺剣だから夢みないけど!!」
「ごめんごめん。まさかこんなに『スタンドパワー』が全開になってるとは思わなくてさぁ。」
大騒ぎするデルフリンガーに康一は頭を下げた。
「それにしても、やっぱり『スタンド』もルーンの影響を受けるみたいだなぁ。」
ACT3に調子を聞いたところ、
「最高ニ「ハイ!」ッテヤツデスネ。HELL YA!今ナラTRIPPING『キラークイーン』モ地球ノ裏側マデブッ飛バセソウデス!」
とパンチやキックをして見せていた。スラングも増えている。相当テンションがあがっているようだ。
「最高にハイってやつ、かぁ。でもなぁ・・・」
思わずため息が出る。
「なんだい相棒。うれしくないのかい?」
「うれしいけど、君みたいな馬鹿でかくて重いものを持たないといけないのはめんどうだなぁー、って。」
この馬鹿でかい剣を売り払って小さなナイフでも買おうかなぁ、というとデルフリンガーは「そりゃないぜ相棒~」と情けない声をあげた。
「壊れない自信はあったけど、まさか埋められるとは夢にも思わなかった!俺剣だから夢みないけど!!」
「ごめんごめん。まさかこんなに『スタンドパワー』が全開になってるとは思わなくてさぁ。」
大騒ぎするデルフリンガーに康一は頭を下げた。
「それにしても、やっぱり『スタンド』もルーンの影響を受けるみたいだなぁ。」
ACT3に調子を聞いたところ、
「最高ニ「ハイ!」ッテヤツデスネ。HELL YA!今ナラTRIPPING『キラークイーン』モ地球ノ裏側マデブッ飛バセソウデス!」
とパンチやキックをして見せていた。スラングも増えている。相当テンションがあがっているようだ。
「最高にハイってやつ、かぁ。でもなぁ・・・」
思わずため息が出る。
「なんだい相棒。うれしくないのかい?」
「うれしいけど、君みたいな馬鹿でかくて重いものを持たないといけないのはめんどうだなぁー、って。」
この馬鹿でかい剣を売り払って小さなナイフでも買おうかなぁ、というとデルフリンガーは「そりゃないぜ相棒~」と情けない声をあげた。