ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-22

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 一行が町の入り口までやってきたのはそれから二時間後だった。
 タバサは近くの岩場に腰を下ろし、本を読んでいた。先ほどの竜がまるでタバサに話しかけるようにして顔を寄せている。
「おまたせ、タバサ。」
 キュルケが康一の馬から飛び降りた。
「遅れたけど紹介するわね。あたしの親友、タバサよ。」
 本を読んだままのタバサの肩を抱き寄せた。
「こ、こんにちはー」
 康一は馬から降りて声をかけてみたが、反応はない。
「無愛想な子ねー」
 ルイズはあきれたように言った。
 キュルケが康一にずっとくっついたまま離れなかったのでご機嫌ななめである。
「ちょっと無口なだけよ。それにルイズも無愛想さでは負けていないと思うわよ?」
 キュルケが軽く受け流すと、ルイズがむっとして睨みつける。
 空気が険悪になりそうだったので、ルイズが爆発する前に康一は話題を探した。
「え、えーっと、そういえばルイズは何を買うつもりだったの?」
「・・・あんたにいろいろ買ってあげなくちゃいけないじゃない。杖とか。」
「杖?」
 メイジでもない自分に杖などいるのだろうか。
 ルイズはコーイチの耳元に口を寄せた。
(あんたの『スタンド』。魔法だってことにしたら都合がいいでしょ?)
「ああ、そっかぁ!」
 康一は納得した。
 スタンドをおおっぴらに使えないおかげで、ギーシュとの決闘ではひどい目にあった康一である。
 杖さえ持っていれば、『スタンド』も『東方式のちょっと変わった魔法』としてみて貰えるかもしれない。
「なに、どういうこと?ダーリンって魔法が使えるわけ?」
 キュルケは理解できない様子である。タバサは黙ったまま何も言わない。
「(そっか。康一の『スタンド』のこと、知ってるのわたしだけなんだ。)」
 秘密を共有しているようでなんだか嬉しい。
「(そうよ。キュルケが無駄に色気を振りまいたって、所詮は他人だわ。わたしはご主人様なんだもの!)」
 自信を取り戻したルイズは、とたんに上機嫌になった。
「たいしたことじゃないわよ。ちょっとあんたにはいえないけど。」
 なんて澄まして見せる余裕まである。
 キュルケからすると、非常におもしろくない。
 康一から聞き出そうとするも、言葉を濁されるから余計である。
 ほら、さっさと行くわよ。背を向けるルイズに向かってつぶやいた。
「いいわ。いずれじっくり聞き出してあげるんだから!」




「へぇ!なんだかいろいろなものがおいてあるなぁ~!」
 康一はきょろきょろと興味深そうに店の商品を覗き込んでいる。
 露店に挟まれた通りは非常ににぎやかで、人でごった返している。
 売っているものも、肉や野菜や服などといったよくみるものだけでなく、日本では到底見れないようなものも並んでいる。
 ビン詰めの目玉なんかがあったりしたが、あんなの何に使うんだろう。
「ここはトリステインで一番の大通り、ブルドンネ街よ。」
 ルイズは心持ち得意げに説明した。
「え?一番の大通り!?」
 康一は驚いた。単に近くの街だと思っていたのだ。
「それにしては・・・ちょっと小さい気もするなぁ~」
 意外と規模の小さい国なんだろうか。
「なにわけわかんないこと言ってんのよ。ほら『杖』の店はこっちよ!」
 ルイズは康一の手を引いた。
「あ、ちょっと待って!あの路地の奥に、『剣』の絵が描かれた看板が見えるんだけど・・・」
 康一は薄暗い路地を指差した。
「そうね。武器屋があるんでしょ。それがどうかしたの?」
「いやぁー!ちょっと感動っていうか・・・!」
 ゲームでよくあるような武器屋の看板が実際にあるのだ。
 うわぁ、やっぱりファンタジーな世界なんだなぁ!と康一はわくわくした。実際の武器屋ってどんな感じなんだろう。
「ちょっと見てくるね!」
 康一が走り出すので、ルイズはあわてて追いかける。
「こらー!武器屋になんて行ってどうするのよー!」
「やっぱりダーリンも男の子なのねぇ。」
 キュルケとタバサも後を追った。



「おーい、坊主。ここはおもちゃ屋じゃねぇぞ。」
 武器屋の店主は、さきほど入ってきた小さな少年に声をかけた。
 ちょうど客もおらず、暇だったから構わないのだが、あまりにも目をきらきらさせて店を見回しているので苦笑する。
「あ、ごめんなさい。ぼく、こういう店、初めてきたんですよねー!」
 まぁ害もなさそうだから放っておくとしようか。金も持ってなさそうだし。
 と、そこへ今度は貴族の小娘が入ってきた。
 すかさず店主は腰を低くした。
「いらっしゃいませ貴族様!当店はまっとうな商売をしておりまさ!怪しいものなんてなにも・・・」
「別にこの店に用があるわけじゃないわ。」
 もみ手をする店長に、ルイズは興味なさげに返した。
「ほら、コーイチ。行くわよ!」
 ルイズが袖を引っ張るが、康一は「もうちょっとだけ!」と壁にかけられている武器にかじりついている。
「(へぇ、ひょっとしてこの坊主は貴族の従者かなにかか。ってことはカモがネギしょってきたのかもしれん。)」
 店主はにっこりと笑った。
「なんならお似合いのを見繕いましょうか?」
 康一は嬉しそうに振り向いたが、残念そうに首を横に振った。
「ごめんなさい。ぼくって、お金もってないんですよね。」
 店主は貴族の小娘を見たが、買い与える気など毛頭なさそうである。
 そこに今度は、まぶしいほどの色気がある赤毛の美女と、青髪の娘が入ってきた。こちらも貴族らしい。
「あたしが買ってあげてもよくてよ?」
 キュルケが康一に声をかけた。
 しかしルイズが立ちはだかる。
「わたしの使い魔に変なものあたえないでよ!それに剣なんか買ってもしょうがないじゃない!」
「いいでしょ。あたしが何を買おうと勝手だし、コーイチが何を貰うのも勝手だわ。」
 あのー、と康一が声をかけた。
「剣って杖の代わりにならないの?」
 杖はただの棒じゃないから、代わりにはならないけれど・・・とキュルケはあごに人差し指をあてた。
「でも、魔法衛視隊なんかは、大体レイピア形の杖を持ってるわね。それに、傭兵をやってるメイジで、杖の機能を持たせた武器を使ってることはあるらしいわ。」
 康一は財布を握っているルイズを見た。
「どうせ買うならそういうのがいいかなぁ~。って思うんだけど・・・高くなるのかな。」
 店主がすかさず割り込んだ。
「いえいえ!当店は平民用の武器だけでなく、メイジ様にもぴったりな武器も多数取り揃えておりますですよ!傭兵のお客向きの商品などは、貴族様が使う杖などよりお安くできまさ!」
 意地があるので決して口にはしないが、実は康一の治療費やらなにやらで、少し懐が心もとないルイズである。
 自分が知っている店は貴族用の高級な店で、かなりの出費を覚悟していただけにその言葉には少し惹かれた。
「ま、まぁコーイチがそんなに欲しいなら、考えないでもないわ。」
 ルイズが同意して見せると、店主は「では少々お待ちください!」と奥に引っ込んだ。
 あの貴族の小娘たちと従者。関係は良くわからないが、雰囲気は貧乏貴族ではない。
 おそらくかなりの金を持っているはず、と店主は睨んだ。
 笑顔で一本の長剣を抱えていく。
「こちらなどはどうでしょう。かの高名なシュペー卿の鍛えし大業物!ちょっとお値段は張りますが、鉄を紙のように切り裂くって触れ込みでさぁ!もちろん、お望みのように杖の代わりとしても使えますぜ!」
 宝石や金の装飾の散りばめられたいかにもな宝剣である。
「・・・ちなみにそれ、いくらなの?」
「そうですねぇ。本当はエキュー金貨で2500はいただきたいところですが・・・今回は、2000エキュー。新金貨なら2500で結構でさ!」
「2000!?ちょっとした家屋敷が買える値段じゃない!」
「いいものは値が張るものですぜ?命を懸けるものですからねぇ。」
 店主がもっともな顔をして言う。
 ルイズは顔をしかめた。
「・・・もっと安いのはないわけ?100くらいの。」
「まともな剣を買おうと思えば、少なくとも新金貨で200はしますがね。まぁそこにあるのは一律200ってものでさ。」
 店主は店の隅で剣が無造作に束ねられている一角を指差した。
「しかし、貴族様の従者に持たせるには、あのあたりの凡庸なのは少々物足りないと思いますがねぇ。」
 すると、突然、ガチャガチャという音とともに声が聞こえてきた。
「誰が凡庸だ、このスットコドッコイの詐欺親父!!このデルフリンガー様をそこらの剣と一緒にするんじゃねーよ!」
 一行は驚いて声のするほうを見つめた。
「だいたい、そんなコゾーに持たせるならおしゃぶりのほうがお似合いだぜっ!」
「こ、こらデル公!お前はだまってろ!」
 一本の錆びた長剣がカチャカチャと鍔を鳴らしているので、タバサがするりと引き抜いた。
「こら!小娘!勝手に触ってんじゃねぇよ!」
 タバサはそんな剣の罵声に耳を貸さず、しばらく見つめてから康一に手渡した。
「インテリジェントソード」
「ま、まさかこの剣がしゃべってるのかぁ~!?」
 康一は手に持ってしげしげと剣を眺めた。でもスピーカーはついてないしなぁ。
 すると、それまで騒いでいた剣が、突然黙り込んだ。
「・・・おでれーた。おめぇ『使い手』か。」
「『使い手』ってなに?」
 当然ながら今まで剣など触った事もない康一である。
「俺の柄を握ってみろ。」
 言われるがままに、両手で柄を握ってみる。
 すると、康一の左手のルーンが青白く光を放ち始めた。
 キュルケが叫んだ。
「だ、ダーリン!手のルーンが光ってるわよ!?」

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