ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-20

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

一人で食べる食事というのは味気ないものだ。
だから、そんなときにやってきた食事のお誘いは大歓迎なわけで。
しかも誘ってくれたのが十人中十人が振り向く絶世の美女であれば、もうなにも言うことはないのであった。


「おいしそーだなあ―――!いただきまあ―――す!」
肉汁滴るステーキにかぶりついた康一は、目を輝かせた。
「おいしい!」
キュルケは微笑んだ。
「喜んでいただけてうれしいわ。あなたのために特別に用意したんですもの。」
「へぇー!うれしいなぁ!」
どれもこれも絶品だ!
しかし、グラスを手にしたところで康一はキュルケに尋ねた。
「これってワイン・・・ですよね?」
「それがどうかして?」
「いやぁ、ぼくの国ではお酒って大人にならないと飲んじゃいけないものだったんですよ。」
あら・・・。とキュルケは目を丸くした。
「あなたのお国はどちらなの?」
「え!?え、えーっとぉー、ロバアルカリイエ・・・てとこかな。」
康一はとりあえずルイズが言っていたようにすることにした。
「そう。あなた東方の出身なの。だから顔つきもそんなにエキゾチックなのね。」
キュルケはワイングラスを軽く掲げて見せた。
「でも、ここはトリステインなのだから、あなたも気にせずに飲めばいいと思うわ。」
「そ、そうかな?じゃあ、ちょっとだけ・・・」
グラスをちびちびと傾ける。
「あれ、でもなんだかお酒って感じがしないね。結構飲めるかも・・・」
「いいワインは人を選ばないの。お気に召した様で良かったわ。」
ふーん・・・。そういうもんかぁ・・・。ワインをちびちびと舐めながら康一は感心したが、ふと疑問に思った。
「そういえば・・・どうしてぼくを食事に誘ってくれたの?わざわざこんな料理まで用意して・・・」
ヴァリエールとツェルプストーの因縁の話を思い出した。
「ひょっとして、ルイズのことが聞きたいの?でもぼく、まだここに来てから日も浅いし、そんなにすごいことは知らないよ?」
おほほほほ。とキュルケは口に手を当てて笑った。
「あたしはルイズなんて眼中にないの。それにこんな回りくどいことはしないわ。」
キュルケは顔を赤らめた。
「あたしが知りたいのは、あなたのことよ・・・」
「ぼ、ぼくですかぁー?」
キュルケが潤んだ瞳で見つめてくる。康一はなんだかドキドキしてきた。顔が赤くなるのがわかる。
「最初はちょっとした興味だったの。ルイズがあなたみたいな不思議な使い魔を召喚したから。」
キュルケは立ち上がった。
「あなたは小さくて可愛らしいわ。でも、見ているうちに分かったの。あなた、その瞳の奥に、それだけじゃない『何か』を持ってる。」
キュルケはテーブルクロスを指でなぞりながら、ゆっくりと康一のところへ歩いてくる。
「トドメに、あの決闘。ギーシュを倒したあなた、すごくかっこよかったわ。まるでイーヴァルディの勇者のようだった・・・。あの時のあなたの強い瞳を見て、あたしの心は今までにないくらい燃え上がってしまったの。」
康一の肩にそっと手を乗せた。
「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね。」

ほっぺたに、スープがついてるわよ?
キュルケは康一の耳元で囁くと、康一の頬についた汚れを、小さく舌を出して舐め取った。

「なななななななにを!!」
康一はガタン!と立ち上がり後ずさった。
しかし、足元がおぼつかなかない。
ふらつく康一の手を、キュルケが握った。
「急に立ち上がったら危ないわ。ベッドに座りましょ?」
「う、うん・・・。」
どうしたんだろう。頭がぼうっとする・・・。
康一はふらつきながらも、キュルケに導かれるまま、ベッドに腰掛けた。
キュルケも隣に座って、しかし、康一の手は離さなかった。
暑くなってきたわね。とキュルケはブラウスのボタンをもう一つ外した。
ついそちらに目が行く。
康一君を責めるのは酷である。正常な男であれば目が行かないわけがないのだ。
それでも康一は慌てて目を逸らした。
「からかってるの!?」
すでに顔は真っ赤だ。
「いいえ。あたしは本気よ。あなたが好きなの。あなたのことがもっと知りたいのよ。」
キュルケは、康一の手を握っているのとは別の、もう一方の手で康一の膝頭を軽く弄った。
「う、うわぁ!」
こ、これはなんだかまずいぞ!と康一は思った。
このままではまずいことになる!
「ま、待って!ぼくには恋人がいるんだ!」
「あら、そうなの?でも当然よね、あなたのような可愛いくて頼もしい魅力的な男の人を、女が放っておくわけないもの。」
「い、いやぁ。そういうわけでもないけど・・・」
今まで由花子さん以外に浮いた話などまったくない康一である。
でもね・・・。
キュルケは続けた。
「ここはハルケギニアよ。はるかかなたにあるロバアルカリイエは、あたしたちの恋を邪魔できないわ・・・!愛してるの!コーイチ!」
キュルケは康一の頬を両手で挟んで、情熱的な口づけをした。
ベッドの上に押し倒されると、康一の頭の中で世界がぐるんぐるんと回転した。
押しのけようとしたが、腕に力が入らない。
あたまがぼーっとする。

ごめん由花子さん・・・。ぼくはこのへんてこな世界でお星様になりそうです。

そのとき。バターン!とものすごい音がして、扉が開いた。
「・・・なにをしてるわけ?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

廊下の明かりを背にそこに立っていたのは、白い肌にくっきりと青筋を立て、ドラゴンも逃げ出しそうな怒気をまとった、康一のご主人様だった。



数分後。康一はルイズの部屋で正座をしていた。
髪型を貶されたときの仗助もかくや、という勢いでプッツン来ていたルイズは、キュルケから康一を引っぺがし、そのまま襟首を持って部屋まで引き摺ってきたのだ。
ルイズが康一を見下ろす。まるで、道端に落ちた馬の糞を見るような目である。
康一の顔は未だ真っ赤だ。

部屋に連れ帰ってからもぼーっとした様子を見て、ルイズはようやく康一が酔っ払っていることに気づいた。
「(そっか・・・これが酔っ払うってやつか・・・)」
康一は回らない頭でぼんやりと考えた。
ルイズの手には乗馬用の鞭が握られている。
「・・・で、食事に誘われたわけね。」
「うん。」
「初めてのお酒を飲まされたと。」
「うん。」
「ついでに、ベッドにも誘われたと。」
「うん。」
「お酒のせいで、ろくな抵抗もできずに。」
「うん。」
「わたし、言ったわよね。ツェルプストーなんかにデレデレするなって。」
「うん。」
「デレデレしたら死刑って言ったわよね。」
「うん。・・・・・・え!?そんなこと言ったっけ?」
「言ったのよ。心の中で。」
康一は目をあげた。ルイズの目が本気と書いてマジだったので、康一は言い訳するのをやめた。
ルイズはぷるぷると震えている。
「それなのに・・・!それなのに・・・・!この・・・!スケベ犬がぁー!!!」
バシンバシンと鞭が振り下ろされ、康一は悲鳴をあげた。
「い、痛っ!やめっ・・・!痛い痛い!」
逃げまわる康一を、ルイズは鞭を振り回しながら追い回した。
「(がんばった使い魔に、せっかくご褒美を用意してたのに!一緒のベッドで寝させてあげようと思ってたのに!)」
よりによってキュルケに先を越されてしまうなんて!
べ、別にわたしは康一を誘惑しようとしたわけじゃないけど!
あの万年発情期のキュルケと違って!
ルイズは追走劇の結果、ボロ雑巾のようになった康一を見下ろした。
「もう・・・知らない!」
ルイズは鞭を投げ捨てて、ベッドにもぐりこんだ。
ようやく折檻から開放された康一がふらふらと起き上がった。
ルイズは毛布にもぐりこんで丸くなっている。
「・・・ぼくは、どこで寝ればいいんでしょう。」
凍て付くような視線が帰ってきた。
「犬は床って、相場が決まってるわ。」
今度は毛布すらなかった。
しかたなく康一は、部屋の隅に丸くなった。
寒い。床が自分の体温を奪うのがよく分かる。
ぼくがなにをしたっていうんだ・・・
康一は赤い顔で溜息をついた。


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