ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-16

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

康一は、一本の道を歩いていた。
隣では仗助くんと億泰くんがいて、一緒に馬鹿話をしている。
道の左手からは、露伴先生が現れて、一緒に取材に行こうとぼくを誘う。
康一どのー!という声が聴こえた。右手から玉美と間田さんが合流する。
やれやれだぜ・・・。という声が聴こえた。後ろでは承太郎さんがぼくたちを見守ってくれている。
由花子さんが道端に立ってぼくを待っていた。並んで歩く。
仲間達と共に歩く。
こうして歩いていれば、ひょっとしたら雨が降るかもしれない。小石に躓いて転んでしまうかも。
でもぼくには仲間がいる。寂しくなんかない。

この道は、杜王町へと続いている。


えーんえーん・・・
康一はふとあたりを見回した。
子どもの泣き声が聴こえる気がするのだ。
康一は道をはずれ、その声の主を探しにいくことにした。
声を追い、藪を分け入って進むと、小さな池が現れた。
池の真ん中には小船が浮いていて、鳴き声はそこから聞こえてくるようだ。
子どもが池に一人取り残されて泣いているんだ。と康一は思った。
康一は池の中に踏み込んだ。そこまで深くはない。腰ほどの高さだ。
じゃぶじゃぶと水をかき分けて進む。
船にたどりつくと、ピンクブロンドの髪の女の子が毛布にくるまっていた。
女の子は小船の中で、独りぼっちで泣いていたのだ。
「もう大丈夫だからね。」
康一はその女の子を抱き上げた・・・。



康一は目を開いた。
知らない天井?いや、馴染みこそないが、ぼくはこの部屋を知っている。
コンコン、とノックがあり、扉が開いた。
目を向けると、黒髪でメイド姿の少女が現れた。
「コーイチさん。目が覚めたんですね!」
「し、シエスタ!?」
シエスタは胸に手をあて、大きく息を吐いた。
「よかった・・・。心配したんですよ・・・。あんなに大怪我して・・・!」
康一はようやく、自分が何をしていたかを思い出した。
「そっか・・・。ぼく、気を失っちゃってたんだ・・・」
「はい。三日三晩ずっと眠り続けてました。」
「そんなに!?」
徹夜でゲームをしてしまった翌日だって、そんなに眠ったことはない。
「頭を強く打ってましたから、そのまま起きないんじゃないかって心配しました・・・。」
康一はワルキューレに散々殴られたり蹴られたりした時のことを思い出した。
「他にも、両腕にはヒビが入ってましたし、歯も折れてました。肋骨は3本ほど折れて、一本は肺に突き刺さっていたそうです。」
「う、うわぁ。重症じゃないか・・・。」
康一は他人事のように答えた。自分の体を触ってみる。
「でも・・・あれ?その割には痛くないんだけど・・・。」
脇腹を触ってもうずく程度でそんなに痛くはない。腕にもあまり違和感はない。舌で口の中を確認したが、折れたはずの歯が元に戻っていた。
「ええ。コーイチさんをここに運び込んだミス・ヴァリエールが、先生に頼んで、水魔法の治療を施してくださったんです。」
シエスタは窓を開けた。
窓から日の光が差し込んできて、康一は目を細めた。
そして気づいた。
自分のベッドのうえにルイズが頭を乗せて眠っている。
ピンクブロンドの髪が太陽の光を反射してきらきらと光っている。
「ミス・ヴァリエールはこの三日間、ずっと学校にもいかず、ほとんど寝ないでコーイチさんの看病をしていたんですよ?」
「そうなの!?」
康一はルイズの寝顔を見つめた。
この我が侭娘が、そんなにぼくのことを心配してくれたのか・・・!
康一はルイズの頭を撫でた。
ルイズは、う~ん・・・とムズがっていたが、不意に目を開けると、がばっと起き上がった。
自分の頭に手を当てて顔を赤くする。
「ななな何してんのよ!!」
「いや、寝顔が可愛かったから・・・つい。ずっと看病してくれてたんだって?」
ルイズの顔が、ボッっと音を立てて真っ赤になった。
「ば、馬鹿じゃないの!犬のくせに・・・!自分の使い魔が怪我したら、面倒を見るのは当然でしょ!!」
そしてはっとした表情になった。
「そういえば、体は大丈夫なわけ・・・?」
心配そうに尋ねる。
「うん。もうなんともないよ!」と腕を振り上げて見せた。
実はその瞬間、脇腹にビキッっとした痛みが走ったが、辛うじて表情には出さずにすんだ。
「そう・・・よかったわ・・・。」
ルイズはほっと胸をなでおろした。
「あんまり無茶するんじゃないわよ。あんた、下手したら死んでたのよ?」
「ごめん・・・。」
康一は頭をかいた。
ルイズはそんな康一に一つ溜息をつくと、立ち上がる。
「じゃあ、どいて。」
「え?」
「わたし、あんたが寝てる間ほっとんど寝てないの。眠いの。」
「え、ご・・・ごめ・・・」
「だからほら!ベッドを空けなさいよ!」
ルイズは康一をベッドから引き摺り出すと、そこにするりと飛び込んだ。
毛布にもぞもぞと猫のように包まる。
そしてそのまま寝息を立て始めた。

「追い出されちゃったよ・・・。」
苦笑いするとシエスタと目があった。
ふふふっと笑いあう。
「それじゃあ、ちょっと厨房にいらっしゃいませんか?お腹が減ってるんじゃないかと思うんですけど。」
「そういわれると・・・」
代わりに康一のお腹がグルグルキューと返事をした。
「・・・減ってるみたい。」
「よかったぁ。」
シエスタは嬉しそうに手を合わせた。
「マルトーさんに、コーイチさんの目が覚めたら連れてくるようにって言われてたんです。」
シエスタは康一に、あの学生服を手渡した。
「寝ておられる間に、洗って修繕しておきましたから。」
康一にとっては、こちらで持っている唯一の服である。
「ありがとう!助かったよ!」


康一は、寝ている間に着せられていたのであろう、パジャマのような服を脱ぐと、いつもの学生服に着替えた。
そしてシエスタについて、厨房へと向かうことにした。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー