ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-09

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匿名ユーザー

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アルヴィーズの食堂を飛び出した康一だったが、しばらく歩いたところで座り込んでしまう。
「あー、お腹減ったなぁ・・・」
お腹がグルグルと鳴る。さっきまではこの異世界に気を取られて意識しなかったが、お腹が減ってしかたがない。
「そういえば・・・」康一は思い出す。
昨日は駅についてから昼飯を食べようと思っていたところを捕まったのだ。
つまり、これで丸一日食べてないってことになるんじゃないのかァー!?
「衣食住は保障されるんじゃなかったのかァ~?約束が違うよ~。」
さっき豪勢な食事を見たせいで余計につらくなってきた。
康一はお腹をおさえて溜息をついた。
「あら、コーイチさん。どうかされたんですか?」
え?と顔を上げた。黒髪のメイドさん。朝に会ったシエスタだ。
「ああ、シエスタか・・・。いや、大したことないんだけどさ・・・ルイズにご飯を抜かれちゃって・・・」
お腹がグルグルキュキュキュ~!と鳴いて、康一は顔を赤らめた。
「まぁ、それは大変でしたね!こちらにいらしてください。まかない食でよければお出しできますよ。」
シエスタは康一の手を取った。
「ええっ!いいのぉ~!?」
「もちろんです。ささ、こちらにいらしてください。」とシエスタは康一の手を引いてくれる。
シエスタの笑顔が天使に見えて、康一はちょっとだけ涙ぐんでしまった。


「ゥンまああ~いっ!」
康一はシチューをガツガツとすくった。
「よっぽどお腹が空いてたんですね。」
シエスタはクスクスと笑った。
康一がつれてこられたのは食堂の裏手にある厨房の一角だった。
大きな鍋やオーブンなどが並んでいる。あちらこちらに色々な食材が貯めてあるのが見える。
そこでシエスタは、康一のためにパンとシチューを持ってきてくれたのだ。
この世界に来てから初めて優しくされた気がする!
お腹を満たす幸福感ともあいまって、康一はほろほろと涙を流した。
「こんなに美味しい食事は初めてだよぉ~!」
空腹は最高のスパイスというのは本当だ!と康一は思った。
「ふふ、大げさですね、コーイチさんは・・・」
シエスタは流れる涙をハンカチでそっと拭いてくれた。
たぶん、童顔で背の低い康一を年下の男の子だと思っているんだろう。
康一はたぶん同い年くらいだろうと思ってはいたが、優しさが心地よいのであえて何も言わなかった。
「ぼく、召還されてからこんなに優しくされたの、初めてで・・・本当にありがとうございます~!」
「いいんですよ。平民同士助け合わないと、ですしね。」
シエスタは笑った。
「それにしてもひでぇ話だ!」
40過ぎで太めの男がやってきて怒ったように言った。
彼はマルトーさん。この魔法学院で料理長をしているらしい。
康一を連れたシエスタが事情を説明すると、同情して食事を出してくれたのだ。
「無理矢理使い魔にしておいて、メシも与えないなんざ、平民をなんだと思ってやがる!」
康一の肩に手を載せる。
「貴族はいつも勝手なもんさ。平民がいなきゃなんにも出来ない癖して、いっちょ前にいばりやがって。おまえも災難だったなぁ。こんなもんでよけりゃいつでもご馳走するからいつでもこいよ?」
「はい!ありがとうございます!」
康一は初めて味方が出来た気がして嬉しくなった。
でも・・・とシエスタが康一を気づかうようにいった。
「あまりミス・ヴァリエールを嫌わないであげてくださいね?」
「どうして?」
康一は尋ねた。
「ぼく、あいつに召還されてから今までろくな目にあってないんだけど・・・」
「ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです・・・・」シエスタは目を伏せた。
話によると、シエスタが以前貴族にいびられているときに、ルイズが助けてくれたことがあるらしい。

「想像つかないなぁ~」
康一は首をひねった。
「多分ミス・ヴァリエールは焦っておられるんです。だから周りが見えなくなってるんじゃないでしょうか。」
「焦る?どうして?」
「えーっと、それはですね・・・」シエスタが言いにくそうに口ごもっていると、
「コーイチ!コーイチー!どこにいるのー!出てきなさーい!」
とルイズの呼ぶ声がする。
「噂をすれば、ってやつだね。」
康一は溜息をついた。でも、美味しい食事と優しさをもらった。しばらくがんばれそうだ。
「ありがとうマルトーさん。シエスタ。ぼく、行くよ。」
「そうか、がんばれよ。」
「またいつでもいらしてくださいね!」
二人に見送られ、康一はルイズの声がするほうへ走っていった。


康一が走ってくるのを見つけると、ルイズは怒ったように言った。
「どこいってたのよ。」
「ぶらぶらしてただけだよ・・・。」
厨房のことは言わなかった。何か言われたらたまったものではない。
さっき喧嘩したばかりで、少し気まずい康一に、ルイズが「これ。」と手を突き出す。手には一個のパンが乗っていた。
「・・・何これ。」と康一が聞くと、ルイズは少し顔を赤くした。
「お腹が減って倒れられたら困るでしょ!ほら、早く食べなさいよ!」
ルイズはパンを押し付けると、スタスタと歩き去っていく。
康一は押し付けられたパンを見た。多分食卓から康一のために取ってきてくれたのだろう。
ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです。というシエスタの言葉を思い出す。
「ほら、早く来なさいよ!授業に遅れちゃうでしょ!」
いつまでもついてこない使い魔をルイズが呼ぶ。
「も~・・・しょーがないなぁ~」
康一はパンをくわえると、小さなご主人様(仮)を追いかけることにした。

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