ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-08

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「そろそろ朝食の時間ね、あんたもついてきなさい。」
とルイズが言うので、彼女について康一は部屋を出た。
すると丁度康一の左手のドアが開いて、女の人が出てきた。
「(あっ、昨日の女の人だ)」
と、康一は気づいた。
炎のような真っ赤な髪と褐色の肌。ルイズと同じ服装(たぶん魔法学院ってやつの制服なんだろう)なのに、上のボタンを大きく開けて豊満な胸を露出しているせいかずいぶんと印象が違う。
ルイズが『美少女』ならばこちらは『美女』だろう。とびっきりの、とつけたいところだ。
康一はついつい胸元に目が行きそうになるのをこらえた。
「(だ、だめだだめだ!こんなところ由花子さんに見られたらどんな目にあうか!)」
 付き合うようになってからの由花子は、暴力で康一をどうこうすることはなくなった。
 だが、代わりにあの気の強そうな目を細めてずっと康一を睨むのである。
 ・・・もう由花子さんには会えないのかなぁ・・・。
 康一は切なくなった。 康一は切なくなった。
『美女』はこちらに気づくとにこりと笑った。
「おはようルイズ。昨夜は楽しめて?」
「た、楽しんでなんてないわよ!あれは使い魔の持ち物をチェックしてただけなんだから!勘違いしないでよね!」
「まぁ、あなたの恋路には口を挟む気はないわ。それより・・・」
ルイズが「恋路って何よ!色ボケキュルケ!」と叫ぶのを無視して、キュルケは康一のことをじろじろと眺めた。
「な、なに?」
康一はこんなに色気のある人と出会ったのは初めてだったので、目のやり場に困って顔を赤くした。
「ふーん・・・ホントに人間じゃない!人間を使い魔にするなんて、さすがはゼロのルイズ!」
ルイズはむっとした。
「うるさいわね。私だって好きで平民を呼び出したわけじゃないわよ!」
ぼくだって好きで君に召還されたわけじゃないよ!と康一は思ったが口には出さなかった。
「あたしも昨日使い魔を召還したのよ?どこかの誰かさんと違って一発で成功したわ。」
そういうと、キュルケの部屋からのそりと大きな何かが姿を現した。
「うわぁ!」
康一は飛びのいた。
真っ赤なトカゲである。それだけなら一向に構わないのだが、その大きさが虎ほどもあった!
四つんばいなのに頭が康一の胸の高さにある。なぜか尻尾の先が松明のように燃え上がっており、むんという熱気が康一のところまで届く。
使い魔といわれて犬とか猫とかネズミとかを想像していた康一は悲鳴をあげた。
「そ!それなに!?」
「あたしの使い魔・・・『火トカゲ』のフレイムよ。見て!この大きさ!鮮やかな炎!わたしにぴったりの使い魔だわ!」
「あんた『火』属性だもんね。」
ルイズは苦々しく言った。
「ええ、あたしは『微熱』のキュルケ。ささやかに胸を焦がす情熱の炎よ!」と胸を張った。
さらに突き出した胸に、康一はごくりと生唾を飲み込んだ。これはさぞやモテることだろう。
キュルケは腰を屈め、康一に顔を近づけた。大きな胸がさらに強調されて、康一はドギマギした。
「それで・・・あなたのお名前は?」
「ひ、広瀬康一・・・」
「そう。変わったお名前ね。あたしはキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。」
そして康一の耳元に唇を近づけて言った。
「あたし、あなたに興味があるの。また今度二人きりでお話したいわ・・・」
「はわわわわ・・・」康一は顔を真っ赤にした。
「ちょっと!わたしの使い魔になにしてんのよ!!」
ルイズが二人をぐいっと引き離す。
「あら、独占欲?力ずくは醜いわよルイズ!」
「違うわよ!この色ボケ!!行くわよ、平民!」
康一の襟を引っつかんでずるずると引き摺っていく。
「わ、わぁ。ちょっと!歩く!歩くから!」
康一は引き摺られながら悲鳴をあげた。
「またね~~♪」
キュルケは満面の笑顔で手を振って見送った。



「ほんとにもう!ツェルプストーなんかにデレデレしてっ!この馬鹿犬!」
ついに犬に格下げですかぁー!?もう怒る気も失せる。
「あの人と仲悪いの?」
「ヴァリエールとツェルプストーとは先祖代々犬猿の仲なのよ。」
ルイズは歩きながら説明した。
要するに、ルイズのヴァリエール家とキュルケのツェルプストー家はトリステインとゲルマニアっていう二つの国の国境沿いで領地を接していて、代々何かと戦ってきた間柄らしい。
しかもなぜかいつも恋のライバルでもあったようで、代々ヴァリエール家は代々ツェルプストー家に恋人を取られ続けてきた歴史があるのだという。
「なんとなく想像つくなぁー」
康一はちらりとルイズを見た。
ものすごくきつい性格のルイズと比べて、あっちのキュルケは包容力がありそうだ。
それに何より、ストーン!としたルイズとボイーン!としたキュルケ。
ふらふらとあちらに行きたくなったヴァリエール家ご先祖様達の気持ちが康一にも分かる気がした。
「・・・なによ。」
ルイズがじろりと睨む。
「いーえ・・・なんでも・・・・」
康一は目を逸らした。


「うわぁ!すごい豪勢だなぁ!!」
康一は目を輝かせた。
ここは『アルヴィーズの食堂』。トリステイン魔法学院の貴族は、みなここで食事をとる。
学院の中で最も高い、真ん中の本塔の一室にある食堂は、驚くほど広い空間だった。
学校の体育館ほどの広さがあるだろうか。だが、これだけ広いのに、イタリアで見た教会の大聖堂ような荘厳な雰囲気を漂わせている。
3列に並べられた長い長いテーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられ、その上には燭台が並べられ、フルーツの篭やでかい鳥のロースト、ワインや鱒の形をしたパイなどが所狭しと並べられている。
ゴクリ・・・。康一は口の中でよだれが出てくるのを感じた。そういえば昨日の昼に召還されてから何も食べていないのだ。
「うわぁー!すごい豪勢な食事だなぁー!朝からこんなに食べられるかなぁー!」
康一はここにきて初めて、「召還されていいこともあるなァー!」と思った。
ルイズは眉をひそめた。
「何言ってるの。ここは貴族の食卓よ?あんたみたいな平民が席を同じくできるわけないじゃない。」
「え・・・?」康一は目を見開いた。
「じゃあ、ぼくの朝食はどこにあるっていうのさ!」
そういうとルイズはそこで初めて気がついたように、「あー、そういえば。」と言った。
「あんたの食事、手配するの忘れてたわ。」
「わ、忘れてただってェー!!」
「しょ、しょうがないじゃない。手配するような暇がなかったんだもん。」
ばつが悪そうにしてつぶやく。
「じゃあ、ぼくは何を食べればいいのさ!」
「一食抜いたくらいじゃ死にはしないわよ。悪いけど我慢してちょうだい。」
「ぼくは昨日の夜も食べてないよっ!」
「うるさいわねー。わたしだって食べてないわよ。それよりも、椅子を引いてちょうだい。気の利かない使い魔ね。」
「こ、このぉー!!」
こいつ、可愛い顔して血も涙もないッ!ギブ&テイクといっても限度がある!大体お前がぼくを無理矢理こんなところに連れてきたんじゃないか!!
康一は踵を返した。
「ちょっと、どこ行くのよ。」ルイズが呼ぶが、
「知るもんかッ!!」康一は振り返らずにアルヴィーズの食堂を後にした。

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