ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-01

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匿名ユーザー

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広瀬康一はネアポリスの抜けるような青空を仰いだ。
「いい天気だなぁ・・・」
今彼はイタリアでの用事をすませ(ついでの観光もすませ)ネアポリス駅行きのバスを待っている。バス停にいるのは康一だけだ。
観光名所だという町外れの教会を見てきた帰りである。
人通りが少ないのはシエスタ(イタリアではみんなそろってお昼寝をするらしい)の時間帯だからだろうか。
少々トラブルはあったが、パスポートも帰ってきたし、旅費もまだ十分ある。
康一はこれからフランスも見て回って、最後にパリのディズニーランドに寄って帰る予定だった。

そこまで考えて康一は由花子のことを思った。
「由花子さん、あんまり大騒ぎにしてないといいけど・・・」
由花子に「イタリアへ汐華初流乃という人物を探しにいってくる。」と話したところ、なぜか烈火のごとく反対されたからだ。
あまり人には話さないように、と承太郎さんから言われていたので、しつこく問い詰めてくる由花子に、康一は正直げんなりしてしまった。
結局最後には自分もついていくと言い張る由花子から逃げるようにイタリアにやってきたわけだが、あの由花子さんのことだ。今頃仗助くんたちに当り散らしていることだろう。(由花子はパスポートをもっていなかったので連れて行くわけにもいかなかったのだ。)

そこでふと康一は自分の左手に何かの気配を感じて振り返った。
そこにはいつのまにか、巨大な楕円形の鏡のようなものがあった。康一がこのバス停に来たときにはこんなもの無かったように思ったのだが。
「さっきまでこんなのあったかなぁ。」
オブジェかなにかだろうか。康一は鏡に映る自分の顔を覗き込んだ。
鏡に映る自分は二年前から何も変わっていない気がする。
もうすぐ18歳になるというのに康一の身長は157cmのまま一向に伸びる気配を見せない。
仗助くん(180cm)や億泰くん(178cm)と比べてずっと身長が低いのは今更気にしていないが、恋人の由花子さん(167cm)より10cmも低いのは我ながらどうかと思う。
二人連れ立って歩いているとよく店員さんに「ご姉弟ですか?」と言われる。
映画館に行ったときなど、一度何も言わないでいるうちに小学生料金のチケットを渡されてしまった。
そうした勘違いにブチ切れる由花子さんを宥めるのはもうデートの定番になってしまっていた。
ちなみに由花子さんは逆に、高校生だといっても信じてもらえないことが多いくらい大人びているから、カップルと見てもらえないのはしかたないのかもしれない。

康一は人差し指で軽く、鏡の自分の顔が写っている部分を拭ってみようとした。もうこれでイタリアを後にするという状況で、広瀬康一は少々油断していたのだ。
だから、表面を撫でるだけだったつもりの指が一瞬のうちに手首まで飲み込まれてしまったのには心の底から驚いた。
「こ、これは・・・!?」その瞬間手首から全身へと走るように電撃のような衝撃が走った。
「が、は・・・っ!もしかして・・・これは『スタンド攻撃』!?」
康一は意識を手放すまいと気力を振り絞りながら、鏡から手首を抜こうとした。
しかし、鏡はものすごい力でずるずると康一の体を引きずり込む。
とっさに残った左腕でバス停のパイプをつかんで踏ん張るが、今にも離してしまいそうだ。
「ACT3!この鏡を攻撃しろぉぉぉ!!」
「S.H.I.T!」
康一の叫びと共に現れた人影が、鏡を殴りつける!
だが、ACT3と呼ばれた人影の拳も鏡に触ることは出来ずに沈み込み、逆にずるずると鏡の中へ引きずりこまれていく。既に両腕を肩まで飲み込まれて身動きもとれない。
「ダ、ダメデス。コイツ、触レナイノニ・・・マジに(Ass Fuckin)『ヘヴィ』ナパワーデス・・・!引キ摺リ込マレマス・・・」
「く、くそっ!どうなってるんだ・・・僕にはこの鏡は壊せないッ!!『本体』を叩くしか・・・」
どこかに『本体』がいるはずだ・・・!康一はこの鏡をあやつっている『スタンド使い』を探そうと首をめぐらせたが、やはり、周りには人影一つ見られない。
「近くに本体もいない・・・!それなのにこのパワーは、遠隔自動操縦型か・・・?」
だとしたら状況は絶望的だ。一人で脱出はできそうにない、本体も見当たらない、そして何よりいつも自分を助けてくれる仲間はここにはいなかった。
せめてこいつのことを誰かに知らせなければ・・・。康一は叫んだ。
「承太郎さーん!」
だがその時既に、ACT3はもう頭部まで鏡に飲み込まれてしまっていた。それまでとは比べようもない衝撃が走り、ついに康一は抗すべくも無く意識を手放した。

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