ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロいぬっ!-98中編

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匿名ユーザー

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ラ・ヴァリエール公爵は落ち着かない様子でカップに注がれた紅茶を啜った。
魔法学院に入学して以来、顔を合わせていない娘が帰ってくるのだ。
悪い虫が付いていやしないか、悪い級友にいじめられていないかと不安だった彼が、
その帰りを今か今かと待ちわびるのは至極自然な事だった。
しかし、彼の心境はとても複雑であった。
彼に突き刺さるような視線を向ける二人の女性。
愛する家内と長女、実質的なラ・ヴァリエール家の支配者コンビだ。

「分かっていますね。けっして甘い顔はしないように」
「そうよ。あれだけ忠告したのに戦場に行くなんて!
今回は運が良かっただけ。調子に乗ったら次は間違いなく死ぬわ」
「わ……分かっているとも。ルイズには厳しく私から言っておこう」

その言葉が信用に足らないとばかりに、さらにジロリと鋭い眼が向けられる。
身体を縮こませるようにして公爵は再びカップに口を付ける。
トリステイン有数の実力者も家庭ではほとんど立場がなかった。
厳格な性格で知られるラ・ヴァリエール公爵だが、所詮は可愛い娘には勝てない男親である。
ましてや末娘でメイジとしての出来も悪いとなれば放っておけなかった。
彼女達もルイズが嫌いなわけではなく、その身を心配しているからこそ怒っているのだ。

ここは心を鬼にして彼女を厳しく罰するのが正しいのだろうが、ルイズに嫌われると思うとどうにも腰が引けてしまう。
かといって“出来ません”などと答えようものならどうなるか。
最小限に手加減されたとしても半年は施療院から出られなくなるだろう。
そしてルイズは徹底的な制裁を加えられて一生もののトラウマが刻まれるかもしれない。
やはり、名目上とはいえ家長である私がやらなければならない事だ。
そう言い聞かせて己を奮い立たせる彼に、老執事が声をかけた。

「旦那様。ルイズお嬢様がたった今お戻りになられました」
「う、うむ。では早速出迎えに……」
「必要ありません。エレオノール、あの子をここへ」
「ええ。頬を引っ張ってでも連れてきます」

席を立とうとする夫をカリーヌが制す。
命令ではないただの一言。
だが、それは絶対遵守の力を以って公爵を椅子に釘付けにした。
鼻息荒くエレオノールが出て行ったことで、必然二人きりの状況が作られる。
張り詰めた空気を察した老執事は“さて、歓迎の支度を”と、
あからさまな言い訳をしながら、そそくさとその場を立ち去った。

二人の間に重苦しい沈黙が流れる。
幻覚だと分かっていても身体が重く感じる。
遂に耐え切れなくなったラ・ヴァリエール公爵が口を開いた。

「それにしても戦場に単騎で出向くとは……まるで誰かの若い頃のようだな」
「……何を仰りたいのですか?」
「その、なんだ、おまえも人の事は言えない訳だし、今回だけは特別に……」

刹那。妻の猛禽じみた眼差しに全身が凍りつく。
幾多の戦場を駆け抜けた彼女の迫力は凄まじく、
曰く、一睨みで大軍が武器を捨てて逃げ出した、とか。
曰く、睨まれただけで火竜がお腹を見せて服従を示した、とか。
曰く、イタズラ好きの子供に『烈風カリンが来るぞ』と告げると大人しくなる、とか。
そんな伝説級の怪物に立ち向かう彼の心境は如何ばかりのものだったろうか。
気分はイーヴァルディの勇者どころか捧げられる生贄の少女であった。

「私は別に戦場に出た事を怒っているのではありません。
家長の指示に背いた、それに対し罰を与えるべきだと言っているのです。
規則は規則。それを特別だと許せば次も同じ過ちを繰り返すでしょう」

静かに響くカリーヌの言葉は規律を重んじる騎士のそれであった。
強すぎる力を持つが故に、それを抑制する規則が必要だと彼女は自覚していた。
力に溺れぬよう驕らぬようにカリーヌは己が信念を貫いてきた。
その教えがあればこそ三姉妹の誰もラ・ヴァリエールの権力を傘に、
他の貴族達に傲慢な振る舞いをしなかったのだろう。

「それともう一つ、私はまだ若い。今すぐ訂正してください」

返答に困った公爵が苦笑いを浮かべる。
いいかげんなおべっかは逆に彼女を苛立たせ、
“一番上の娘が嫁き遅れといわれる歳で若いもないだろう”と、
正直に答えればそれが自分の辞世の句となるだろう。
言葉に詰まる彼の目の前で大きな音を立てて扉が開け放たれた。

「ちびルイズを連れてきましたわ」
「御苦労」

始祖の助けをその身に感じながら公爵は安堵の溜息を洩らす。
おほん、と咳払いして気を取り直し威厳ある態度で臨む。
だが、彼が目にしたのは見る影もない自分の娘の姿だった。
気落ちなどという生易しいものではない。
悲嘆に暮れた表情は幼い頃の面影を隠し、
その瞳からは輝きが失われ、絶望だけを色濃く映す。
公爵は何を言い出せなかった。
今の彼女はまるでヒビ割れた硝子細工のようで、
少しでも触れてしまえば壊れてしまうように思えたのだ。

一方、エレオノールは情けない妹の姿に苛立ちを覚えていた。
いつもの無駄に元気な彼女なら口答えの1つでもしてくる。
それなら頬を引っ張って訂正させるのが楽しみでもあったのに。
今のちびルイズは見ているだけで辛くなってくる。
まるで生きている意味さえも失ってしまったかのような絶望。
それに身を浸す妹に発破をかけるつもりで言い放つ。

「たかが使い魔一匹死んだぐらいで、いつまで落ち込んでるつもりよ!
代わりに、また新しいのを召喚すればいいだけじゃない」

学院に赴く以前と同じ様に頬を抓り上げて怒鳴る。
そしてルイズは痛みに耐えながら“ごめんなさい、エレオノールお姉さま”と答える。
それはごく当たり前に繰り返された日常的なやりとり。
なのに、彼女の反応はそれまでのものと大きく違っていた。
伸ばしたエレオノールの手を振り払い、怒りを滲ませながら彼女を睨む。

「代わりなんて……、代わりなんている訳ないじゃない!」

思わぬ反撃と気迫にたじろぐ姉に、胸の内を吐き出すようにルイズは叫んだ。
そのまま部屋を飛び出す妹をエレオノールは呆然と見送る。
初めての反抗に彼女は狼狽し、我に返った時には既に彼女を見失っていた。

「しまった! 逃げられたわ!」
「追う必要はありません」

駆け出そうとしたエレオノールをカリーヌが呼び止める。
何故、と困惑の眼差しを向ける娘に答えず、彼女は続けた。

「もし見つけても『顔を出す必要はない』と伝えなさい。
そのような情けない顔を晒す者にラ・ヴァリエールを名乗る資格はありません」

ぞくりとエレオノールの背筋が震えた。
お母様は本気で言っていると彼女は直感したのだ。
鉄の規律という言葉が頭を過ぎる。
硬く、決して曲がらず、そして人の温もりには程遠い冷たさ。
正しく彼女の判断はその通りの物だった。
イエスともノーとも答えず、そそくさとエレオノールは立ち去った。
こうなれば一刻も早くルイズを見つけ出して一緒に謝るしかない。
そう考えて彼女は屋敷の探索に乗り出した。

「………………」
去ってゆく娘を視界にも収めず、カリーヌは紅茶を口に運ぶ。
自分の娘の考えなど見え透いていたが、それを咎める事はない。
どの道、エレオノールにはルイズは見つけられない。
あてもなく、ただ闇雲に屋敷内を探し回るのがオチだ。
もし彼女を見つけられるとしたら、それは……。

「カリーヌ。その、いくら罰にしても厳しすぎるぞ」

思案に耽っていた彼女をラ・ヴァリエール公爵の声が引き戻す。
額から冷や汗を流しつつ気圧されながらも彼は反論する。
彼とて妻に恐怖するだけの男ではない。
もしその程度の男なら、とっくにカリーヌに見放されていただろう。

「罰ならばルイズは既に受けています」
「え?」
「それも最も重く、一生背負っていかなければならないものを」

ルイズと目を見合わせた瞬間、カリーヌは直感した。
彼女と同じ想いをした自分だからこそ理解できた。
“自分の判断で大切な何かを失ってしまった”と。
失った物は決して戻る事はない。
これから先、彼女は何度も後悔と共に思い返す。
どうしてもっと上手く出来なかったのか、
何故もう少し冷静に考えられなかったのか、
他に方法はなかったのだろうかと悔やみ続ける。
それは逃れる事の出来ない罪として永遠に彼女を苛む。

ルイズは初めて自覚したのだ。
自分の判断が誰かの命を奪うことになる、その重みを。
恵まれていた彼女には失うことを知らなかった。
だから命も名誉も頭では分かっていても本当の意味では理解していなかった。
大切な物を失なってようやく彼女はその恐怖を知った。
これで彼女はスタートラインに立ったのだ。
何の責任を伴わない判断など存在しない。
これから先、彼女は何度も重要な決断を下さなければならない。
覚悟なき決定に意味などない。悩み傷付いた末に選んだ結果だからこそ意味がある。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは強くならねばならない。
何度膝を屈そうとも立ち上がり、前へと突き進めるぐらいに。

「私たちに出来る手助けはありません。
あの子が初めて自分の足で立ち上がった時のように見守るしか」

手を貸してやれない事を恨めしく思いながらカップを置く。
寂しげに呟く妻に、夫は力強く答えた。

「心配はいらない。ルイズは強い子だ、私たちの子を信じよう」

何の根拠もなく言い放った夫にカリーヌは笑みを浮かべる。
普段の彼女からは想像もつかない優しげな微笑み。
鉄仮面で素顔を隠し鉄の規律に身を縛ろうとも、
『烈風カリン』が一人の女性である事に変わりはない。
戦況さえ変える力を持った彼女とて思い悩み、悲しい決断を迫られた事もあった。
そんな時、彼の言葉に何度励まされただろうか。
彼女は単騎であろうとも一人ではなかった。
倒れぬのは、その身体を支える誰かがいたから。
突き進めたのは、その背を押す誰かの手があったから。
感謝を言葉に乗せずに笑みで応えた彼女に。
「ひぃ…! す、すみません! 何の根拠もない事を言って…!」
これ以上ないほどラ・ヴァリエール公爵は怯えていた。
満面の笑みを向けたにもかかわらず、命乞いをするかのように震える亭主。

その瞬間。彼女の中でスイッチが切り替わった。
彼女の精神テンションは今! マンティコア隊隊長時代に戻っているッ!
火竜山脈の主が戦慄し、大地を踏み鳴らす軍勢が恐怖した当時にだッ!
冷酷!残忍!その彼女の杖がラ・ヴァリエール公爵に向けられた。

ルイズは一人、屋敷の中庭で佇んでいた。
そこは幼い頃より彼女が隠れた秘密の場所。
遠くで響く轟音もここまでは届かない。
辛い事があった時はいつもここに逃げ出してきた。
それは今も変わらないのか。夢中で走り続けて、気が付けば自分はここにいた。
咲き誇る花々に彩られた無人の庭園。
そこに面する池に反射した陽の光が眩いばかりに輝く。
ささくれた心でさえ美しく、また懐かしく思える光景。
……もし出来るなら“彼”にも見せたかった。
同じ世界を見て、同じ気持ちを共有したかった。

俯く彼女の背後で茂みを掻き分ける音が響く。
(まさか、もう見つかったの…?)
徐々に近付いてくる物音に彼女は連れ戻される事を覚悟した。
いや、どちらかといえば諦観だったのだろう。
もうどうなろうと構わない、そんな自暴自棄に似た感情が沸き上がる。
しかし立ち尽くすルイズの視線の先に現れたのは、柔和な笑みを浮かべた女性だった。

「おかえりなさい、ルイズ」
「……ちい姉さま」

込み上げる感情に堪えきれずルイズは姉の胸に飛び込む。
それをカトレアは身体全体で包み込むように受け止めた。
安らぎに満ちた温もりに、張り詰めた感情が解れていくのを感じる。
エレオノールやカリーヌにさえ心を開かなかった彼女だがカトレアは別だ。
いつも庇い、慰めてくれた優しい姉はルイズにとって母親よりも母親らしく思えた。
ルイズの髪を梳くように繊細な指先が頭を撫でる。
子供扱いでもイヤな気分にはならない。
孤独から解放された安堵からか、ルイズの瞳から涙が一滴零れ落ちた。

「……本当はアイツと一緒に、ちい姉さまに会いに行きたかった。
でも、もう居ないの……もう何処にも居ない」
「忘れなきゃいけないのに、いつまでも引きずっていちゃいけないのに。
アイツもそれを望んでるって分かっているのに……出来ないの」

誰にも言えなかった本音を吐露しながらルイズは泣いた。
大粒の涙と共に、閉じこもっていた殻が次第に崩れていく。
“誰かに伝えたかった”孤独の中にあっても彼女はずっと思い続けていた。
使い魔と過ごした日々は記憶に深く刻まれ、それ故に彼女を苦しめる。
悲嘆に暮れる彼女を優しく、しかし力強く抱き締めてカトレアは言った。

「それでいいのよ、ルイズ。大切な想い出なら忘れてはいけない」
「え?」

姉の返事を理解できず、ルイズはきょとんと目を丸くした。
だって彼女を立ち直らせようとした友達も家族も、
そして彼の存在を隠匿した貴族達も、誰もが“忘れろ”と言った。
しかし、最も信頼している姉は“忘れるな”と告げた。
その真意を測りかねて戸惑う妹にカトレアは問いかける。

「初めて会った時の事を憶えてる?」
「……はい」
「一緒に遊んだ時の事も?」
「………はい」

問いに答える度にアイツとの思い出が蘇る。
広場を逃げ回るアイツを追いかけた最初の出会い。
投げた棒を咥えて楽しげに尻尾を振りながら戻って来るアイツの姿。
どれもが昨日の事のように鮮明に思い出せる。
ぎゅっとカトレアの服を掴む手に、思わず力が篭る。

「それは全部、ルイズにとって辛い思い出なの?」
「……いえ、違います」
「辛かったり悲しかったり、だけどそれだけじゃない。
楽しかった事も嬉しかった事も全て大切な思い出よ。
決して無くならない、ルイズの心の一部なの」
「私の……心に」

カトレアの言葉に従うように、そっと自分の胸に手を当てる。
どくんどくん、と脈打つ鼓動とは別に確かな温もりがそこにはあった。
ルーンの繋がりは絶たれたけれど、それでも“彼”を感じ取れる。
使い魔と過ごした日々は、思い出と共にそこに存在していた。
いつかは声を思い出せなくなるかもしれない、
姿さえも忘れてしまうかもしれない、だけど一緒にいた事は忘れない。
私の心にある限り、私は決して貴方を忘れない。

「一人で立ち上がるのは難しいかもしれない。だけど貴女は違う。
ルイズの大切な友達も、私も、姉様も、皆が貴女を見守ってくれているわ」

涙は止まらなかった。悲しいだけじゃなくて嬉しかった。
公爵家に生まれながら魔法が使えない、そんな自身の出生を不幸と思った。
だけど、今は心から感謝している。
ラ・ヴァリエールに生まれたからカトレア姉さまに会えた。
エレオノール姉さまやお父様、お母様、大切な家族と出会えた。
キュルケやタバサ、ギーシュにコルベール先生、多くの友人と巡りあえた。
――――そして、アイツとも。

多くの出会いと別れを重ねてようやく彼女は気付いた。
自分が如何に家族や友、仲間に恵まれていたのかを。
そして、その絆こそ今の自分を支える力だという事に。

まるでこの世に生まれ落ちた時のようにルイズは泣き続けた。
それを愛おしく抱き寄せながらカトレアは確信した。
“ルイズはきっと立ち直る。今よりもっと強くなる”と。
そこには彼女の切なる願いも込められていた。
今度、挫折した時は慰めてあげられないかもしれない。
それどころか、あるいは……。

咳き込んだ口をカトレアは手で押さえた。
赤錆にも似た味が口の中いっぱいに広がる。
見れば、こびり付いた赤色が白磁のような手を汚していた。
妹の綺麗な桃色の髪を汚さぬように手を遠くへ離す。

もう長くはないと自分でも判っていた。
いや、“自分だからこそ”かもしれない。
そのせいでルイズをまた泣かせてしまうかもしれない。
“ごめんなさい”と心の中で詫びながら、もう一方の手で彼女を撫でる。

「私の可愛いルイズ。今は泣いていいの」

いつまでこうしていられるかは分からないけれど、今だけは胸を貸してあげられる。
強くなってねルイズ。私がいなくなっても大丈夫なぐらいに。
―――そして、貴女の心にいつまでも私を居させて。


(全く……。損な役回りね)
植え込みの陰に隠れながら様子を窺っていたエレオノールが愚痴る。
カトレアの部屋に逃げ込んだと思い探してみれば、ルイズどころかカトレアも不在。
慌ててカトレアの足取りを使用人達に問い質しながら、ようやくここを探り当てたのだ。

エレオノールとてカトレアに負けず劣らずルイズの事を心配していた。
だが彼女はどうしようもないほど不器用で、上手く愛情を表現できなかった。
そういう所が血筋なのだろうかと、つい思い悩んでしまう。
カトレアにしがみつき泣きじゃくるルイズを見て、
子供の頃と全く変わってない事に安堵と呆れが同時に込み上げる。

「しばらくぶりだものね、もう少しぐらい見逃してあげるわ」

溜息を零しながら、カトレアに似た温かな眼差しがルイズに向けられる。
直後。彼女の脳裏に妹に泣きついた先日の自分の姿が蘇った。
その光景がカトレアの胸で泣き続けるルイズと重なる。
鋼の令嬢とまで呼ばれた彼女にとって、あの失態は闇に葬りたい過去だ。
もし使用人が目撃したならば即座に生き埋めにし、
掘り返されないように真上に教会を建築していたであろう。
見ているだけで恥ずかしい記憶を揺り動かされるという、正に生き地獄。
遂に耐えかねたエレオノールが飛び出して叫ぶ。

「ここにいたのね、ちびルイズ!」
「え、エレオノール姉様!?」

恥ずかしさからか、飛び跳ねるようにカトレアから離れるルイズ。
その彼女目掛けてエレオノールは手を伸ばした。
一瞬にして彼女の頬を抓り上げると教師のような面持ちで彼女に告げた。

「『お』が抜けてるわよ」
「ほ……ほへんはひゃい……へれほほーるほへえはは」

じゃれあうような姉妹喧嘩、それを遠巻きに見ているカトレアがくすくすと笑う。
幼き頃より当たり前のように繰り返されてきた日常の風景。
だけど、いつの日かルイズは思うだろう。

姉妹で共に過ごしたあの日々は黄金にも勝る思い出だったと。

エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール
……心配かけさせた分、滞在期間中ずっとルイズを思う存分抓る。
彼女を見送った後日、バーガンディ伯爵から『もう限界』と言う言葉を最後に婚約を解消される。
そのストレスは後に訪れるルイズと平賀才人に向けられる事となる。

カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ
……勝手に部屋を抜け出した事でエレオノールにこっぴどく叱られる。
ルイズの滞在中は自室で大人しく動物達に絵本を読み聞かせて過ごす。

カリーヌ・デジレ
……彼女の機嫌が直るまで使用人でさえ迂闊に近づけない緊張状態が続く。

ラ・ヴァリエール公爵
……再起不能。滞在期間中も面会謝絶状態が続き、ルイズと会話できないまま別れを迎える。
この寂しさと悲しみは後に平賀才人に八つ当たり気味に炸裂する事となる。


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