ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ 第二章-08

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匿名ユーザー

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アルビオンの端、ニューカッスル城の上空に浮かぶ貴族派の船がゆっくりと落下していく。
その中で一際目立つ巨大な戦艦…レキシントン号から巨大な樹が一本生えていた。

生命エネルギーを与えられ成長した巨木がレキシントン号を縦に貫きて葉を生い茂らせていた。
その幹には急激な成長を遂げる途中に巻き込まれたメイジや、竜やレキシントン号のメインマスト。
ジョルノの生み出した虫達までが巻き込まれていた。

AK小銃を一端肩に背負い、クイックローダーを使って拳銃の弾を入れ直しているジョルノの前にも一つの銃弾を元にして生み出された樹に飲み込まれた貴族派のメイジ達がいた。
だがその半分以上は既にジョルノの手によって殺害されている。
全員額に銃弾を一発ずつ撃ちこまれ、息絶えていた。

まだ生き残ってるのは裏切り者のワルド。
幹に取り込まれ、身動きできない状態にありながら戦意の衰えを見せないワルドの杖に向けて、ジョルノはリロードが完了した拳銃の引き金を引いた。
樹の破片に混じってワルドの指が宙を舞う。だがそれでもワルドは痛みに声を上げることもなく、憤怒だけを見せてジョルノに唾を吐いた。

「ジョナサン…ッ! 殺してやるッ貴様だけは、」

ジョルノは表情を変えずに生き残ってる残り二人を見た。
貴族派の総司令官クロムウェルとぴったりとした黒いコートを身にまとっている女性。
プッチ枢機卿の言葉を思い出し、恐らくはこの女性があらゆる魔道具を扱える虚無の使い魔・ミョズニトニルンなのだろう。
恐らくはプッチ枢機卿の手によって変貌した主人の仇を討つ為にクロムウェル達を利用しているのだろう、ということだったが…ジョルノはフードを捲った。

若干けばけばしい化粧をした女性の顔が現れ、その額にはジョルノの左手で光っているのとはまた別の使い魔のルーンが刻まれている。

「き、君! わ、私を助けてくれ! わ、私はシェフィールドに唆されただけなんだ…! 助けてくれれば褒美はなんでも取らせようッ、私の虚無を使えば死者を蘇らせることも…」
「ワルド。裏切ったとはいえ、トリスティンの魔法衛士隊の隊長が殺すなんて言葉は使うんじゃあない」

埋まったクロムウェルの体があるであろう辺りの幹に、ジョルノは銃弾を込めなおした拳銃を押し当てて引き金を引いた。
樹皮を打ち抜いて銃弾はクロムウェルの心臓を打ち抜いた。
シェフィールドが驚いて目を見開く。

「『心の中でそう思った時には既に行動は終わっている』、お互いそうありたいものだと思いませんか?」

紐で縛り、腰に下げた亀の中には、ポルナレフもテファもいる。
だがジョルノは構うことなく冷静な態度で言うと、ワルドにも銃口を向け引き金を引いた。
薬莢が吐き出され、床に落ちる。

「シェフィールド。僕の部下にならないか?」
「断れば…聞くまでもないか」

撃鉄が起こされるのを見て、シェフィールド…ガリア王ジョゼフ一世の使い魔は観念したような顔で息をついた。



そうして、王党派のアルビオン国王ジェームズ一世と貴族派の総司令官クロムウェルの戦死を持ってアルビオンの内乱は終結した。
ニューカッスルに突如出現したという夥しい虫の群れは何処かへ姿を消し、貴族派の死体でニューカッスル城へと続く道が埋まっていることだけが『始祖の奇跡』として記録に残った。
ニューカッスル以外の貴族派達も今まで一人の援軍も送らなかったガリア・ゲルマニア・ロマリア連合軍により悉く壊滅させられたという報が届くのは、ジョルノ達がクロムウェルの首級を挙げてから数日後のことであった。

亡命貴族達の要請に応えたと主張する彼らがアルビオンに居座ることは火を見るより明らかであったが、生き残ったアルビオン王国の皇太子ウェールズ・テューダーにはそれを跳ね除ける力はない。
貴族派の死体を片付け、彼らをニューカッスル城跡を会場にした宴に招待し、内乱の終結と即位を告げるウェールズの表情には時折曇るのはその為だった。
隠そうとしているのだが、報を聞き駆けつけたトリスティン王女アンリエッタを会場に見つけ、喜色満面の笑みを浮かべる最中にさえウェールズの表情には時折暗い陰が差す。

目聡い者は気付いていたが、皆父王の死によるものだと勘違いして皆気付かぬふりを決め込むのだった。

それはアンリエッタと共に招待された『マザリーニ枢機卿』とその護衛につく魔法衛士隊の一つマンティコア隊隊長に復帰した『烈風カリン』も同じであった。
トリスティンでマザリーニが推し進めていたアンリエッタの婚儀は、レコンキスタに対抗する為にこそ、彼らにとっては野蛮なゲルマニアへ王女を嫁がせようと言う話も出たのだ。

ゲルマニアはそれをトリスティン以外の国と電撃的にアルビオンに攻め込むことで解決した。
ないがしろにされた彼らの心中は穏やかなはずがなかったが、それらを軽く眺めて…ウェールズは壇上に奇妙な人物を呼んだ。

彼らの感性で言うと少し年かさの美女を伴い、金糸銀糸で細かな刺繍が施された清楚なドレスに身を包んだ少女がウェールズの隣に立った。
元王家御用達であったネアポリス伯爵家のお抱えの仕立て屋の手によるドレスに淑女達の間からため息が零れる。
少女が完全に壇上に上がった時、彼らはざわめき呟いた。

『胸が、革命を起こしている…ッ!?』

そのざわめきが覚めやらぬ内に、彼らは少女が気品のある美しい顔立ちをしていることと「エルフの耳」を持っていることに気付き更にどよめいた。
杖を抜こうとする者を慌てて同席していた者達が押し留め、国王となったウェールズは少女を…テファを彼らに紹介する。

「ゴホンッ、来賓の皆様にご紹介します。彼女は私の叔父今は亡きモード大公のご息女ティファニアです」
「は、初めまして…」

気後れしそうになりながらも、テファは傍で控えるマチルダに習った通りの作法で各国の要人へと挨拶をする。
胸が揺れてゴクリッと生唾を飲み込む音と女性に足が踏まれた男達の叫び声が響いてから、ようやくアルビオン貴族の誰かから、声が上がった。

「陛下! その娘の耳は…!」
「その通り、彼女の母はエルフだ」

エルフ…ッ!
聖地を占拠する亜人、始祖の宿敵を母とする始祖の血統を受け継ぐ娘…一瞬の空白が会場を支配し、その後糾弾する声が上がった。

非難する者。杖を抜き、魔法を唱える者。
だがそれらを…今にも一人の悪魔を殺そうとする貴族達の頭上に澄んだ少女の声と閃光が降ってきた。

「やめなさい貴方達! 始祖はそんなことは望んではおられないわ!」

貴族達は呆然と、特にその閃光に飲まれて消えたアルビオン貴族派の姿を見たアルビオン貴族達は頭上を見上げた。
片手に亀を持った尼僧姿の少女が空から降ってくる…隙間から覗く桃色がかった髪を見たカリンの、魔法衛士隊の制服が、表情を隠す仮面が微かに動揺で震えた。

「な、なんだ貴様はッ「せめて貴方様とお呼びしろゲルマニアの糞野郎!」

真っ先に正気に帰った誰かを隣に立っていたアルビオン貴族が殴り倒した。

「あの方こそ…「皆様。彼女こそ復活した虚無! 王党派を、アルビオン王家を…始祖の虚無で救った『ニューカッスルの聖女』ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール様です!」」


興奮した声で、壇上から誰かが説明した。
卑屈なほど丁寧にお辞儀をする彼は、鳥の骨とあだ名されるマザリーニとは反対に肥え太り、額に光る汗を拭きながら言ったのは、ロマリアの枢機卿の一人グロスター枢機卿だった。
アルビオン王党派を消し飛ばした閃光を見て聖女の誕生を確信したと言う彼はこの3カ国による共同戦線を提案した人物として顔も知られていたが、『虚無』の一語に気を取られ動けずにいる貴族達は誰も彼を見ようとはしなかった。

輝く太陽を背に降りてくる純白の尼僧服に身を包んだ聖女を見上げる彼らの中から、拍手が徐々に上がる。
背後の澄み切った空に、右手を輝かせた竜騎士が何十という竜を引きつれ飛んでいく。アルビオンの貴族達から喝采が上がった。ルイズの名が連呼される。
聖女は奇妙な杖を持っていた。
箱の付いた短い棒…ジョルノが用意した拡声器で増幅した声でルイズは言う。

「皆様、私は始祖の声を聞きました…! 始祖はこのハルケギニアでの繁栄こそ願っておられます。聖地の奪還など…まして武力で持って行うなど始祖ブリミルは望んでおられません…!」

虚無の光に敵意を消し飛ばされたように、彼らはルイズの言葉を大人しく聴き…種族間の壁を超えた恋愛の末に生まれたテファを祝福するという彼女の慈悲の心に感化されようとしている。

「聖女様が言うんなら…」

聖女の言葉を聴きいれ、テファの存在を認めようとする声が貴族達の中から上がり始めた。
彼らの中にいるプッチ枢機卿とパッショーネが手回ししたサクラ達が、機能し始めたのだ。




会場の端。
ジョルノが生物にし、能力解除によってただの物質へと戻った建材が詰みあがった瓦礫の中に光り輝くコロネがあった。
亀、ポルナレフはルイズに貸し出した為子の場にはいない。
サイトも竜を操ってルイズに箔を付けにいったし、ミキタカもそれについていってしまった。
人を殺したレンガが詰みあがった壁に隠れるようにして、ジョルノは一人。
テファが認められるまでの一連のパフォーマンスを厳しい目で見つめていた。

いつかはこうするつもりだった。

テファを、彼女を隠してきたマチルダ達の地位を回復させる。
ハーフエルフであることも含めて、世間に認めさせいつかは堂々と母の故郷にも行けるようにする。
内乱から逃れる為にアルビオンを脱出する時に、決めていたことがようやく第一歩を踏み出した。

その為に、彼らの信仰、彼らの受けた教育により彼らの奥底にこびり付いた反応を押さえ込む為にパッショーネを強大にもした。
何年かけても…その過程でどれだけのプロテスタントを生み出すことになろうとも。

だが、それはもっと緩やかに行われるはずのことだった。

こんなに急激な動き、ましてやルイズを聖女に仕立て上げ、テファを王女にしようなどという予定ではなかった。
自由を奪われ、利用し利用される世界へと足を踏み入れてしまった。
これで二人は軽はずみな行動など取れなくなっていってしまう。

今目の前の光景は、ジョルノの隣でワインを傾ける黒衣の枢機卿の手に拠るものに過ぎない。
ロマリアの思惑とトリスティンの思惑とアルビオンの、ウェールズの思惑が重なった結果に過ぎない。

テファを王女として世間に認めさせたのは、ゲルマニアとガリアにそれぞれ領地の三分の一に両国の軍隊を駐留させられた為だ。

トリスティンの大貴族ヴァリエール公爵家の次女カトレアの養女となる話は、マザリーニの手によって処理されていた。
トリスティン王家の血も流れている大貴族の養女が女性の身でモード大公となり、王女として王位継承権を持つことが両国の関係を深くする。
加えて結果的にジョルノがアルビオンの国益に叶うよう動く割合が多少なりとも多くなるであろうと考えられている…

そして『アルビオンの聖女』となってしまったルイズによって二国の関係は更に深まり、ロマリアとの、何よりブリミル教の信者達の支持を得る。

全てはガリアとゲルマニアの干渉に対抗してのことだ。
皆に会わせる顔などない…ジョルノの表情は険しかった。


いつのまにかその隣に黒い肌をした、枢機卿の礼服に身を包んだ男が現れていた。
今回の侵攻とそれに伴うこの不本意な流れを作ったプッチ枢機卿は乾杯、とアルビオン産のワインを注いだグラスを掲げ、一口に飲み干した。
次を注ぎながら彼は言う。

「ジョジョ。君の目的は一先ず達成と言った所かな」
「いいえ、」

「それに…」とジョルノは瓦礫に持たれかかり空を見上げた。

「それに?」

ジョルノは首を振って、爽やかな笑みを浮かべた。
その足元で正座をする牛男を見下ろし、「パッショーネの引き締めも行わないとならない。やることは山済みです」
プッチ枢機卿の前だったが、パッショーネのことはラルカスからばれてしまっていた。
それもジョルノがラルカスに反省を促す理由の一つだったが、だが牛男、ラルカスは反省のポーズをとりながらも目を目を逸らさなかった。

「だがジョナサン。これでパッショーネはより全ての国家に食い込むことが出来た…!?」

ラルカスは弁解しようとして顔を上げたまま動きを止めた。
トリスティンに残っている遍在に、何かあったのかもしれない。
ジョルノとプッチ。二人はラルカスの報告を待った。

「ボス…カトレア嬢が倒れた。病が、再発したかもしれん」

真剣な表情で告げられたジョルノは瓦礫から背中を離す。
会場に背を向けるジョルノに、ワインを堪能していたプッチ枢機卿が声をかける。

「行くのかね。そのカトレアとかいう女が心配か?」 
「パッショーネの引き締めも行わなければと言いました。テファともう一度話をしてからと思っていましたが…ここに来る時に彼女には無理をさせました。借りは返さなければ」
「なるほど。それなら、ロマリアの竜騎士に送らせよう。何せ君もクロムウェルを倒した勝利の立役者、危険があるかもしれない」

逡巡するような素振りを見せて、ジョルノは頷く。

「ラルカス。その遍在はこのままアルビオンに残れ。テファについていろ」
「わかったぜ」

そう言って、ジョルノは走り出す。
ジョルノが去ったことに壇上のテファが気付き、目に見えてオロオロし始めるのがプッチ枢機卿にはよく見えた。
見世物でも見ているように笑みを浮かべて見物する。

カトレアが体調を崩すよう仕向けた甲斐があったというものだ。

(今回の動きで、彼らの間には亀裂が入った。次はテファとの距離を置かせてみるとしよう…領地運営の為に若く魅力的なアルビオン紳士も補佐につけてやれば案外面白くなるかもしれない)

「ああそうだ。ラルカス」

プッチ枢機卿は思い出したようにラルカスに尋ねる。
ラルカスはまだ正座をしたまま瓦礫に腰掛ける顔所か心まで真っ黒な枢機卿を嫌そうに見上げた。

「名前を聞いて思い出したんだが、カトレア嬢もあの年だ。結婚相手を探そうっていう話が出ているそうだが…ジョジョが邪魔ということになってしまったりはしないだろうね?」
「それは…あるかもしれんな」
「そうか…残念だな」

全く残念そうではない口調で言うプッチ枢機卿をラルカスは睨みつけた。
今後アルビオンにはパッショーネの息がかかった店が増えることになるだろう。
その為に行ったのだが、この枢機卿がジョルノを追い込んでゆくのではないかと言う予感が頭の片隅に浮かんでいた。



To Be Continued...

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