ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのスネイク 改訂版-17

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匿名ユーザー

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17話

「悪いわね、タバサ。部屋貸してもらっちゃってさ」
「気にしてない」
「でもキュルケは来る必要ないじゃない。
 あんたの部屋はまだ大丈夫だし」
「でもドアがないし、壁に穴だって開いてるわ。
 とてもレディーの住める場所じゃないわよ」
「わたしのとこはドアもなければ壁に穴も開いてるし、
 おまけに部屋の中は全部真っ黒焦げよ。
 あ~あ……誰のせいかしらね」
「それをいうなら、あたしの部屋のドアはどこの誰にぶっ飛ばされたのかしら?」

途端に両者の間に流れる空気が剣呑なものになる。
すかさずタバサは杖を振って、「サイレント」の呪文を唱えた。

タバサの部屋に二人が来たのは、昼ごろだ。
ルイズとキュルケが賊と戦ったという話はタバサも聞いていたので、
「いる部屋がないから、中に入れてほしい」と言われて断る理由は無かった。
だが部屋の主人はあくまで自分である。
激しい罵り合いをそのままにしておいては自分も本を読んでいられなくなるので、
魔法で強引に静かにさせた。

タバサがサイレントを唱えた後も、二人は罵り合いを続け、
両者が杖を抜いたところでとうとうホワイトスネイクが止めに入った。
部屋の椅子に腰かけてラングラーの記憶のDISCの中身を見ていた彼も、
当初は好きなようにさせるつもりでいた。
だが魔法を使っての戦いになったのではさすがに好きにさせるわけにもいかない。
ルイズでは100%確実に負けるし、それにTPOから言ってもタバサに多大な迷惑がかかる。

前に出会い頭にツララを何発か撃ち込まれて以来、ホワイトスネイクはタバサを警戒していし、
もっと言うならばあまり関わりたくないと思っていた相手だったが、
一応の、そしてとりあえずの、さらに成り行き上やむを得ずに従ってやっている主人が世話になっている以上、
やりたいようにさせるわけにもいかないからだ。

ふと、タバサは横目でキュルケが自分に何か言っているのを見た。
もう言いあいも終わっているようだったので、タバサはサイレントを解除する。

「タバサ、今日の舞踏会はどうするの?」

やっぱり解除しない方が良かった、とタバサは少し後悔した。

「あんた、確か昨日もそんなこと言ってたわね」
「当然よ! ああ、今年は何人の男の子と仲良くなれるのかしら。
 今から楽しみでしかたないわ!」

キュルケはキラキラしたオーラを振りまきながら雄弁に語る。
彼女の美貌なら、きっと1ダースほどの男の子を集められるだろう。

「ええ、そうでしょうね」
「同感」

ルイズとタバサは棒読みで同意する。

「あなたたちはどうするの?」

キュルケがキラキラオーラを二人に向ける。

「食べる」

そう答えたのはタバサだ。

「た、食べるって……男の子を!?
 ああタバサ、あなた随分積極的になったのね……」
「違う。食べ物の方。
 私は人食いじゃない」

タバサは呆れ半分で否定する。

「あっはっはっは! タバサったら、本当は何の事だか分かってるんじゃないの?」

キュルケはげらげら笑いながらタバサの肩を叩く。
キュルケが言った「男の子を食べる」とは、性的な意味で男の子を襲ってしまうことだからだ。
当然タバサがそっちを考える筈はない。
キュルケもそれを知った上で言っているのだ。
タチの悪いことである。

「ところで、ルイズは?」

話の矛先がルイズに向く。

「わたし?」
「そうよ。あなたはどうするつもりなの?」

ルイズは少し考えて、

「……行かないかも」

そう答えた。

「な、何ですっ「何ダト?」」

キュルケが驚きの声を上げ――

「……今の声」

3人が同時に一方向を見る。
その先にいたのは、

「ルイズハ舞踏会ニハ行カナイノカ?」

ホワイトスネイクである。
舞踏会の話題になってから、ずっと椅子に座ってDISCを見ていたようだ。
おまけに足まで組んで、大変リラックスしていたところらしい。

「……何であんたがその心配を「あらダーリン! あなたも舞踏会に行きたかったの?」」

訝しげなルイズの声を遮って、キュルケの甲高い声がホワイトスネイクにかかる。

「ソウダ。舞踏会トイウカラニハ、必ズソノ土地ノ文化ガ現レルンダロウ?
 音楽トカ、美術トカ、舞踏トカ……私ハソレヲ見タイノダ」
「あたしと踊るのはどう?」
「生憎トダンスハ心得テイナクテナ」
「あら、大丈夫よ。
 あたしが手取り足取り教えてあげるから」

そう言ってウインクするキュルケ。

「考エテオコウ」

ホワイトスネイクはそれだけ言った。

「ちょ、ちょっとホワイトスネイク! そこは断る所でしょ!」

面白くないのはルイズである。
自分が行かないと言っているのに使い魔は行きたいというし、
おまけにライバルの女の子と踊る約束までしかけているのだ。

「ソレグライハ私ノ好キニサセテモライタイモノダガ」
「ダメよ、絶対ダメ!
 っていうかあんた、私の半径20メイルから離れられないんじゃないの?
 わたしが行かないなら、あんたも行けないことになるじゃない!」
「ソコハ私ナリニ解決策ガアッタノダ」
「どっちにしてもダメよ!
 ダメって言ったら、ダメなんだから!」

完全に癇癪を起しているルイズ。
ホワイトスネイクは少し考えて、

「何デ行キタガラナインダ?」
「別に、大した理由があるわけじゃないんだけど……」
「大シタ理由ジャナクテイイカラ、言ッテミロ」
「……やっぱり言いたくない」

駄々っ子ルイズに、流石のホワイトスネイクもため息をついた。

「聞き方が気に入らないのよ!
 あんた、いっつも上から目線だし、今だって『聞いてやるよ』って感じだったじゃない!」
「…………」

(ツマリ、言イタクナイッテ事ダナ)

もはや言うべきことは何も無かった。
キュルケはやれやれ、といった表情でルイズを見ているし、
タバサに至ってはまたサイレントの魔法を使いそうだ。
もうこの場にいることはないだろう。

「ルイズ、先程『アレ』ヲ見オワッタ。
 今カラヤツニ返シニ行クカラ、一緒ニ来テクレ」
「あれって……ああ、あれね」

DISCの中身が記憶であることは、ルイズとホワイトスネイク、それとオスマンの間だけでの秘密である。
他人の記憶を自在に覗けるってことは、あまり人に知られたいことではないからだ。

「じゃあ、わたしは用があるから行くわ」
「そう、じゃあね」
「また今晩」

そう言ってルイズは部屋から出て、二人はその小さな背中を見送った。
ホワイトスネイクは何も言わずにその背中に続く。

「……それで、あんたは記憶を見て、何か見つけたの?」
「アア、大変ナ収穫ダッタ」
「何があったの?」

見上げるルイズの眼を見下ろし、ホワイトスネイクは、

「敵ノ首謀者ノ情報ダ」

自信ありげに、そう答えた。

「首謀者の情報?」
「ソウダ。ラングラーハ自分カラアンナ危険ヲ侵スヨウナ男デハナイ。
 確実ナ利益、確実ナ報酬ガ引キ換エニデモナッテイナケレバ、マズ動カナイヤツダ」
「ってことは……雇い主がいる、ってこと?」
「ソノ通リダ。中々頭ガ回ルヨウニナッテキタナ、ルイズ」
「いちいち褒めないでいいわよ。なんか腹立つから」
「ソレハ残念ダ」
「それで……分かったのは、その雇い主の情報なの?」
「ソウダ。ダガソイツモマタ、誰カニ雇ワレテイルラシクテナ……」
「そ、そこまで分かっちゃったの!?」
「推測ノ領域ヲ出テイナイガナ。ルイズモ見ルカ?」
「見るって、記憶を?
 い、いいわよ、わたしはそんなの!」
「ダガルイズヲ襲ッタ連中ノ情報ダ。
 自分ノ事ナノダカラ、ソレグライハ自分デ知ロウトスルベキダト思ウガナ」

ホワイトスネイクの言うことには一理あった。
確かにそう言われると、知っておきたくなる。

「そうね。じゃあわたしも見てみようかしら」
「イイ心ガケダ。デハ……少シ待テ。再生ヲ開始スル場所ヲ探ス」

そう言ってホワイトスネイクはDISCを額に挿す。

「ココカラ再生開始ダ」

少ししてから、ホワイトスネイクがDISCを頭から引き抜いた。

「貸しなさい」

ホワイトスネイクが差し出したDISCを、ルイズはあえて乱暴な態度で取った。
さっきはちょっと怖がらされちゃったけど、
これからは誰が主人で誰が使い魔なのか、きっちり教育してやるのだ。

こいつにはまだ勝ってないし、だからこそ勝ちたい。
でもその前に、最低限のことだけは叩きこんでおかねばならない。
それが上下関係であり、どっちが上でどっちが下かって話だ。
アイツは「半年間は使い魔でいてやる」と自分から言った。
なのにアイツはわたしの言うことをちっとも聞かないし、
おまけにわたしに指図までする始末!
使い魔はご主人さまより下だし、ご主人様は使い魔の上に立つ。
そんな基本の基本の基本さえ、アイツは分かっちゃいないのだ

だから、教育する。
これはその第一歩。
由緒正しきヴァリエール家の三女として、あのナマイキなホワイトスネイクに、キッチリと教えてやるのだ。
首を垂れるのはどっちなのか、ってことを!

そう張り切って、いざDISCを頭に差し込み――

『空気はおまえをあたしの方に吹き戻してくれてるぞォォォォッ!!
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラァーーーーーーッ!!!!』

そのまま、ブッ倒れた。
使い魔教育は第一歩から踏み外し、頭から落っこちるハメになった。

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