ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

4 もしかしたら平和な日常 前編

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
4 もしかしたら平和な日常
 夏の虫が夜のタルブに夜想曲を奏で、ゆらりと吹く風は草木の拍手を誘う。
 いつものように夜の村を哨戒する自警団の目を掻い潜って、月明かりの下を金髪の少女が小さなボロ小屋に向けて走っていた。
 昼間の一件で逃げ回ったり誤解と知って方々を謝って回ったりと忙しく動いていたため、自分が思っていたよりもずっと疲れていたのだろう。仮眠で終わるはずの眠りが、随分と深いものになってしまっていた。
 動き出した時間が、前日よりも二時間ほど遅い。
「地下水さん、待ってるかしら」
 手の中の小さな鈴を渡してくれた、肌の温もりのない友人を思い浮かべて、ティファニアはそれなりに走り慣れた道を進む。
 隙間風吹くボロ小屋は依然健在だ。風が吹けば倒れてしまいそうな見た目も、今は気休め程度に手直しがされている。流石に、多過ぎる隙間風に耐えられなくなったのだろう。
 まだ入っていない窓ガラスと玄関の戸を確認し、緊張する胸を押さえて、ティファニアは手の中の鈴を鳴らした。
 りん、りん、と二度。確かに鳴り響いたのを確認して、返事が来るのを待つ。
「……?」
 夜の静けさの中では小さな音も良く聞こえてくる。
 意図して伝えようとする音を聞き逃すことは無いはずだった。
 しかし、いつもの高く鋭い音が、何時まで経っても聞こえてこない。
 こちらの合図が聞こえなかったのだろうかと思い、紐に吊るされた鈴をもう一度鳴らす。
 今度こそ、とは思うが、やはり返事は来なかった。
「眠ってしまったのかしら」
 そっと窓辺から顔を覗かせ、小屋の中の様子を確認してみる。
 人の家を覗き見るのは良いこととは思えないが、こちらにもそれなりの理由がある。
 それでも罪悪感を感じながら、ティファニアは暗闇の中を見るために目を凝らした。
 月明かりのお陰で真っ暗闇というほどではない。だが、それでも森を背後にした小屋の中は暗く、窓の位置からでは普段地下水が居る奥まった場所までは見通せなかった。
「どうしよう……」
 今日はもう帰るべきなのだろうか。
 自分一人では上手くやる自信が無い。実際、最初の一回目から床に開いた穴に足を突っ込んでしまってホル・ホースたちを起こしかけているのだ。一番早く気付いた地下水がフォローしてくれなかったら、伝えたくないことを伝えなければ成らなくなるところだった。
「一日くらいなら、多分、大丈夫だと思うけど……」
 無理に行動して目を覚まさせてしまえば、もう後戻りは出来ないだろう。
 ホル・ホースの肉体は、指輪の力でかろうじて生かされているに過ぎない。失われたはずの命は、魔法という細く短い糸で肉体と繋がれ、危ういバランスの上に成り立っている。
 魔法で命を繋げている間に肉体が生きる活力を取り戻せば、あるいは指輪の力を使い切った後も生き残れるかもしれない。
 毎晩のように小屋に訪れて行っている延命処置は、そんな確証も無い淡い期待を抱いての行動だ。

 そんな事実を伝えられたら、どういう反応をするのだろうか。ティファニアと同じように僅かな希望に縋るのか。それとも、絶望するのか。もしかしたら、生きているのか死んでいるのかもわからない状態にしたティファニアを責めるかもしれない。
 義姉や子供たちとは違う、初めて友人としての関係を築くことの出来た人たちの悲しむ顔を見るのが怖くて、ティファニアにはそれを打ち明けることが出来なかった。
 とはいえ、いつホル・ホースの命を支えている魔法が力を失うのか分からない以上、いつまでも弱気になっているわけにはいかない。
 反応が返ってくることを期待して、もう一度鈴を鳴らす。
 高く響く鈴の音が、草原と森の境にある小屋の中を満たした。
 お願いだから、返事をして下さい。
 ティファニアが、心の中で祈りの声を上げる。
 赤と青の二つの月が、それを祝福するかのように雲の隙間から月光を地上に降ろして、ティファニアの周囲を明るく照らした。
 床板の軋む音が耳に届く。
「地下水さ……、ん?」
 やっと目を覚ましてくれた。そう思ったのも束の間、月明かりの下に金色の髪が浮かんだ。
 カタカタという、いつもの軽い金属音が無い。
 窓辺から眠たそうに顔を出した人物の手にあるべき刃物の姿が無いことに気が付いて、ティファニアは足を一歩後ろに下げた。
「……こんな夜中に、どうしたのかな。ミス・ティファニア」
 小屋の中を覆う暗い影から姿を現したのは、昼にも一度会ったウェールズだ。
「え、えっと、あの、その……」
 相手が地下水ではなく、また、昼中に騒ぎを起こさせてしまった相手とあって、ティファニアは落ち着きを失い、分かり易く狼狽する姿を見せる。
 その様子にウェールズは唇の端を少しだけ持ち上げると、首を軽く横に振った。
「ああ、失礼。そう警戒しなくても良い。昼間に言い忘れていたが、大体の事情は地下水から聞いているんだ。君がここに来た理由はわかっているよ。ただ、残念なことに、ここの住人は僕一人を置いてどこかに出かけたみたいだけどね」
「お出かけ、ですか?」
「そう。何処に出かけたのかは知らないけどね。事情を理解している地下水が止めていないということは、すぐに帰って来るんだろう。だから、心配することは無いと思うよ」
「すぐに……」
 ティファニアは少し迷ってから頷き、自分の手にある指輪に視線を落とした。
 台座に乗った指輪の大きさを考えれば、使えるのは後五回か六回。それも、力を節約しての話だ。不安に駆られて毎日使うよりは、ホル・ホースの体調を見ながら使ったほうがいいのかもしれない。
 指輪の力は、補充が効かないのだから。
「……明日、一日だけ待ってみます」
 すぐに帰ってくるという言葉を信じたティファニアは、もう一度、今度は力強く頷いて顔を上げた。

「それでも帰ってこなかったら、こちらから探しに行きたいと思います。あの人の体は、わたしにもよく分からない状態ですから、放っておけないんです」
 普段は気弱そうな印象を残すティファニアだが、その血にはやはり王家の血が流れているらしい。時に見せる力強い意思は、ウェールズに父や叔父の姿を思い起こさせていた。
 これで姿がエルフに酷似していなければ、父は処刑以外の方法を考えたのではないだろうか。
 そんなことを思いながら、ウェールズは従兄弟の頭を優しく撫でた。
「分かった。明後日になっても彼らが帰ってこない場合は、探しに行くと良い。ただし、それには一つだけ条件がある」
 髪を梳くように撫でられる感触を何故か懐かしいと感じながら、ティファニアは問い返すように首を傾ける。
 その様子に、ウェールズはもう一人の従兄弟の幼い頃を思い出した。
 血の濃さという意味では、目の前の少女も今いる国の王女も、自分から見れば同じ位置にある。同じ従兄弟でも姿は似ていないし、性格も随分と違う。だが、世間知らずという意味では似たり寄ったりだ。
 アルビオン王族の血筋に生まれた女性は、皆、幸せな心を持って生まれてきたのかもしれない。良い意味と悪い意味、その両方を含めて。
「僕も同行させてもらうよ。君一人では、色々と心配だからね」
 出会った事も無い二人の従兄弟に同じ不安を寄せてしまう。そんな事実に、ウェールズはどうしても苦笑いを隠せなかった。


 そこは息苦しさを感じるほどに狭い空間だった。
 天井は立ち上がることも許されないほど低く、手を伸ばせば四方を囲う壁に簡単に触れられてしまう。昼間でも感じる薄暗さは窓がない事が原因だろう。隙間風は吹くが、篭る熱気を和らげるには弱弱しく、不快な風に変わって淀んだ空気をかき回すだけだった。
 そんなところに年頃の少年少女が四人、肩を寄せ合って火や水、風や土を模った模様と数字が刻まれた薄い青銅のカードを手に睨み合っていた。
 青銅のカードは一人五枚。この数は決して変わらない。
 一人が動き出し、手元のカードから数枚を抜き取って、円状に並ぶ四人の中央に模様が見える面を向けて放り出す。その代わりに、別に作られた数十枚のカードの山から、捨てた分だけカードを手に取り、手元に加えた。
 絶対に数の変わらない五枚のカードを、気が狂ったように、何度も、何度も、四人は順番に交換し続け、手元のカードに視線を落としては表情を渋くさせる。
 そんな、延々と続けられる終わりの見えない奇妙な反復運動は、青く短い髪の少女が交換を止める言葉を口にした瞬間、唐突に終わりを迎えようとしていた。
 じわり、と終了を告げた少女以外の三人が肌に汗を浮かべる。
 カードの交換を続けていたときには気付くことの出来なかった、この狭苦しい世界の異常な環境。五つの感覚は悲鳴を上げ、頭の中は混濁としている。
 もう、限界だ。
 これが最後の戦いになるだろう。

 知らぬ者が見れば奇怪な儀式を行っているようにも見える集まりは、参加者の限界を持ってピリオドを打つ。それが、この場に居る全員の総意だ。
 ごくり、と思わず鳴った喉に、体が水分を求めていること嫌でも知らされる。
 だが、カードの交換は終わったわけではない。
 少女の次を指名されている少年が手元の五枚から一枚を抜き出し、それを捨てて山から一枚抜き取る。単調な行動だが、そこに張り詰めた緊張が宿っていることは誰に目にも明らかだ。
 手にしたカードを見た瞬間、卑屈な笑みがそこに浮かぶ。
 まるで生け贄にされた羊の鳴き声のように小さな呻き声を漏らして肩を落とした少年を横目に、更に次を指名されている少女が、手元から二枚のカードを抜き取り、やはり、それを交換した。
 視線だけで交換したカードを読み取り、しかし、表情には何の変化も与えることなく、息だけを少しだけ深く吐く。
 それだけで、他の三人は少女に希望が残っていないのだと察したのは、相当の集中力と緊張の中で他人を観察する目が鍛えられたからだろう。
 無情にも続けられる無機質な行動は、次の位置に腰を下ろす少年が引き継ぐ。
 一枚だけ捨てられたそれに意識を向けることなく、山から一枚を拾い上げて自分の手に加える。
 その手にあるのは、やはり、捨てても拾っても五枚だけ。
 一体、その数に何の意味があるのか。
 ハルケギニアに住む人類の力の象徴である魔法。大きく四つに分かれ、その究極にして原初であるとされる虚無の名前。ハルケギニアにおける五とは、丁度、四つの系統と虚ろな奇跡を足すことで満たされる数字だ。
 果たして、人目に隠れるようにして奇妙なやり取りを続けている四人は、それを知っているのだろうか。いや、知っていて行っているのだろう。
 その証拠に、この儀式のようなやり取りの終焉を唱えた少女の手には、広く知られる四つの力と、伝承の中に埋もれた最後の力を示したカードが握られていた。
 こうやって、意味ある組み合わせを手に入れるためだけに、この四人はこの場に集まり、不気味な行動を続けていたのだ。
 少年が行ったカードの交換を最後に、永遠に繰り返されるかと思った四人の行動は止まった。
 それぞれに視線を絡め、その奥に隠れる自信と虚勢を覗き込む。
 心の壁が最も高い者が栄光を掴む。それが、彼らが見つけた暗黙のルールだった。
 欲張るな。妥協するな。手にある物を見定め、自らを信じ、天運を引き寄せ、その先にある勝利を掴み取れ。
 戦いの基本原則を脳裏で繰り返し、四人は自分の戦いが誇り高いものだったかを鑑みる。
 自分に負けたものは勝負にも負ける。しかし、自分に勝った者は、栄光の道へ歩くことを許されるのだ。
 自分がその道を歩くのに相応しい人間かどうか決めるのは、そこにある全ての感情を受け続けた五枚のカードである。
 もはや、泣いても笑っても、結末は変わらない。
 汚染された空気を肺に一杯に詰め込んで、四人は全ての決着をつけるべく、手元のカードを世界に提示した。

「ツーペア……」
「フラッシュ!」
「フルハウスよ!!」
 長い交換の果てに出来た役を口にしながら、それぞれがカードをみんなに見えるように表に向けて自分の手前に並べる。
 一人は既に負けを見越していたのか、酷くやる気のない声を出し、自信があったと思える一人は威勢良く声を上げたものの、絶対ダメだと思っていた思わぬ伏兵に驚愕の声を上げた。
「ふっふーん。わたしの勝ちね!」
「クソッ、さっきの溜め息はハッタリだったのか!?せこいぞ、モンモン!」
「そのモンモンってのは止めてよ!わたしには、モンモランシーって名前がちゃんとあるんだからね!」
「ああぁ、これで八連敗かあ。なんで勝てないのかなあ」
 長い金髪をロール状に巻いた少女が薄っぺらい胸を反らし、それに指を突きつけて才人が抗議の声を上げる。きちんと名前を呼ばない才人に文句を言うモンモランシーを余所に、負け続けのギーシュは膝を抱えて丸くなっていた。
「あ、ちょっと待った!タバサ、なんであなただけカードを見せないのよ」
「はっはーん。さては、ブタだな?何も揃わなかったんだろ?ん、でもそうすると、なんでタバサがストップをかけたんだ?」
 一人だけ手札を見せないタバサを、モンモランシーと才人が突っつく。
 それに対し、タバサは一瞬だけ口の端を伸ばしてニヤリと笑うと、メガネのズレを直しながら自分の手札を一枚ずつ開示した。
 キュルケの肖像が描かれた火のQ。使い魔のシルフィードを背景にしたタバサの横顔が描かれた風のQ。無駄に豪勢な花束に包まれたモンモランシーが描かれた水のQ。そして、何故かポニーテール姿でメガネに指先を添えた格好のミス・ロングビルが描かれた土のQ。全てがク
イーンだ。
「フォーカードか!?……いや、これは!」
 才人が、女王達の揃い踏みに驚愕したのも束の間、最後まで隠されていたカードが小さな手によって表に向けられると、連敗のショックでなにやらブツブツと呟いていたギーシュや既に負けが確定していたモンモランシーが目を丸くして、あまりの衝撃に口をだらしなく開きパクパクと動かした。
 最後の一枚。そこにはピンクブロンドの綺麗な髪を躍らせたどこかの犬っコロのご主人様が、人を小ばかにするように舌を出した姿でこっちを見ていた。
 その脇に書かれた数字は、ゼロ。つまり、ジョーカーである。四枚のクイーンとジョーカーを揃えた役はたった一つしかない。
 限りなく最強に等しい手札を揃えたタバサに、一気に悲鳴が上がった。
「ファイブカードだって!!なんでそんなもんが揃うんだよ!」
「いやあああぁぁ!せっかく勝ったと思ったのに、なによこれええぇぇ!?」
「ははは、流石はミス・タバサだね。僕はもう、勝つのは諦めたよ」
 滅多と見られない奇跡の役を羨む三人に言葉を語ることなく、タバサは涼しい顔で傍らに置かれていた本を取り出して読み始める。だが、少しだけ嬉しそうに表情が緩んでいるのは、気のせいではないだろう。


 ゲーム中の静かだった雰囲気は一変し、狭い空間はやたらと騒がしくなる。騒動に気付いたらしい誰かが出入り口の前に立っても、この場に居る四人が一人として気付かないほどに。
 簡素なボタンで留められただけの入り口を褐色の手が恐る恐る開き、日の光が暗い世界に差し込んだ。
「こんなところでなにやってんのよ、あんた達」
 適当に切られた木の棒とボロ布で作られたテントの中に顔を覗き込ませたキュルケが、タバサの勝利に悔しがる才人たちに、そう問いかけた。
 才人たちが集まっていたのは、トリステイン魔法学院の中庭の一つ、ヴェストリの広場の端にひっそりと張られた手作りのテントだ。傍らには才人が浴槽代わりに料理長のマルトーから貰った大きな鉄の鍋が置かれ、ほんの少し離れた場所には教員のコルベールが建てた、なぜか天井に穴の開いている掘っ立て小屋の研究室がある。
 ルイズに部屋を追い出された才人は、行き場を無くしてこんなところに住み着き、通り掛るギーシュやタバサなどの知人や友人を引っ張り込んで暇潰しに付き合わせていたのだった。
「やあ、キュルケじゃないか。どうしたんだい、こんなところに来るなんて」
「それはこっちの台詞よ。授業にも出ないで、こんな狭いところに集まっちゃって。どういうことなのよ?」
 一番最初に気付いたギーシュが反応を示すと、キュルケは心外そうに問い返してテントの中を見回す。
 夏もまだ本場を迎えていないとはいえ、どうして四人もこんな狭い空間に集まるのか。立ち込める熱気と強い汗の臭いは、キュルケに疑問を抱かせるに十分な威力があった。
「いやあ、それがサイトの故郷の遊びらしいんだけど、トランプという道具を使ったポーカーというゲームが思いのほか面白くてね。つい、夢中になってしまったのさ」
「夢中になるにも程があるわよ。よくこんな場所に耐えられるわね」
 鼻を摘みながらキュルケがあまり得意ではない風の魔法を行使してテントの中に新鮮な空気を送り込むと、やっと外の匂いとテントの中の臭いに差があることに気付いたのか、モンモランシーとタバサが顔色を変化させた。
 熱気に晒された体は本人も気が付かないうちに汗を大量に吐き出して、白いシャツを水を溢した様な姿に変えている。そんな状態が長く続いたせいで、蒸発した汗は酷くすっぱい臭いを醸し出していた。
「うわ、酷い汗の臭い……。ちょ、ちょっと、わたしお風呂に入ってくるわ!」
「……同行する」
 のそのそとキュルケの脇を通ってテントを抜け出して、モンモランシーとタバサはシャツの袖に鼻を近づけて据えた臭いに眉を顰める。汗の臭いも凄いが、青銅の錆びついた臭いが何よりキツい。一度の入浴で完全に洗い流せるかどうか疑問だ。
「あ、待って待って。ここに来た目的を話さなきゃ」
 小走りに女子寮に向かおうとした汗臭い二人を呼び止めて、キュルケは隠し持っていた紙の束を取り出した。
 酷く薄汚れた羊皮紙に書かれているのは、地図と奇妙な記号。それに、暗号とも呼べない暗号が並べられている。
 早くお風呂に入って体に付いた臭いを落としたいモンモランシーは、それを見て盛大な溜め息を吐くと、係わり合いを避けるように止めた足を再び動かした。

「あっ、あっ、ちょ、ちょっと待って!話も聞かないで行くなんて酷いじゃない!」
「酷いのはアンタの脳味噌よ。それって、宝の地図でしょ?二束三文でどこにでも売ってるような胡散臭いヤツ。で、その宝探しにわたし達を付き合わせようとしてる。どう、違う?」
 少々苛立った様子で詰め寄るモンモランシーに、キュルケはたじろぎながら頷く。
「ほら、やっぱり。聞くだけ無駄よ。無駄」
 それで話は終わりだと、モンモランシーは手をひらひらと振ってキュルケに背中を向けた。
 外の空気に晒されて汗が乾き始めたせいで、臭いは現在進行形で強くなっているのだ。早く体を洗わなければ、どこの誰が鼻を摘み始めるか分かったものではない。
 そうなれば、モンモランシーが持つ香水の二つ名は異臭や腋臭などという、年頃の少女には致命的なものに変わるかもしれない。それは、今も涼しい顔をしているタバサも例外ではないのだ。
 だが、そんなモンモランシーに声をかける人物が居た。
「ちょっと待ってくれ、モンモランシー」
「……なによ、ギーシュ」
 テントから顔を出したギーシュに、モンモランシーは再び足を止めた。
「キュルケの話は悪いものじゃないと思うんだ。君は最近、小遣いを減らされて愚痴っていただろう?それに、新しい水の秘薬を作る実験とかで散財したらしいじゃないか。もし、それが事実なら、宝探しで上手いことお宝を見つければ、財布の中身も潤うんじゃないかな?必ず見つかるとは限らないけど、道中で薬草を採取したりすれば、少なくとも損になることは無いと思うんだが……」
 モンモランシーの顔色を窺うように話しながら、ギーシュは造花の薔薇を手持ち無沙汰にくるりと回す。
 人のお財布事情を、いったいどこで知ったのか。
 モンモランシーが苦々しい視線を向けていることにも気付かず、ギーシュはキュルケの手から宝の地図を受け取り、その内の数枚に目を通した。
「見たところ、ミス・ツェルプストーも明らかな贋物は除いて、それなりに厳選しているようだし、完全な外れはそう多くないと僕は判断するね」
 宝の地図の多くは、没落貴族が隠したへそくりだったり、誰かの忘れ物だったりする。変に壮大な物語が付加されているようなものは、付加価値を高めようとして売っている店の主人が勝手につけた曰くばかりなのだ。現実味の濃い隠し場所や、いっそのことまったく信じられない逸話が入った中途半端ではないものだけをキュルケは収集したようだった。
 傍で話を聞いていた才人は既に期待に目を輝かせ、ギーシュはそれなりにやる気を見せている。タバサは相変わらず無表情だが、わざわざ足を止めて話を聞いているところを見ると、付き合う気はあるのだろう。
 そうなると、一人だけ反対しているのも居心地が悪い。
 ギーシュが言ったように、賛同する理由も無いわけではないのだ。ここで意地を張っても仕方がないだろう。
「しょうがないわねえ」
 そう言葉を溢して、深く溜め息を吐くと、モンモランシーはぴっと指を立ててキュルケに突きつけた。

「儲けはちゃんと均等に分けること。それだけは守ってよ!」 
 それにキュルケがウィンクで返すと、タバサとモンモランシーは風呂に入りに移動し、才人とギーシュも臭いに耐えかねたキュルケに男子風呂に放り込まれるのであった。


 昼中の風呂というものも中々悪くないものだ。
 流石に、本来の入浴時間とはかけ離れているために準備が手間取ったが、たった二人のため
に用意された浴場の雰囲気は、普段から使い慣れているにもかかわらず奇妙な贅沢感を味わわせてくれた。
 ほう、と息を吐いて、上気する頬に濡らしたハンカチを当てたモンモランシーは、ほんの数十分前のことを思い出して幸せに浸っていた。
 だが、幸せな時間というものはあっという間に過ぎ去ってしまうものだ。
 小さな鞄に数日分の着替えと雑品を詰め込んで、まだ体を洗うために使った石鹸の香りを匂い立たせていたモンモランシーが集合場所へと向かうと、そこで喧嘩をしているらしい男女の声が聞こえてきていた。
 学院を囲う五つの塔をそれぞれ結ぶ石壁を刳り貫いた様に作られた、大きな門。トリステイン魔法学院の出入り口であるそこには、既にモンモランシー以外のメンバーが揃い、出発の準備を終えていた。
 騒動を起こしているのは、その中に一人と、今回の計画には一切関係が無いはずなのに、なぜかこんなところに居る三人の人影の内の一つだ。
「だから、アンタはここに残りなさいって言ってるでしょ!?何度言わせれば分かるのよ!」
「なんでお前の言うことを聞かなくちゃなんないんだよ!首にした使い魔なんて、放っておけばいいだろ!たまには好きにさせてくれよ!」
 特に騒がしい二人に視線を向けると、やはり、そこにはトリステイン名物である珍しい人間の使い魔とその主人の姿があった。
 一体どこで聞きつけたのか。宝探しの旅に向かおうとしている才人を止めようとしているらしい。
 少し離れたところで様子を傍観しているギーシュやキュルケたちに近づいたモンモランシーは、聞くまでも無い事情に辟易としながら声をかけた。
「騒がしいわねえ。これ、いつからやってるの?」
「やあ、モンモランシー。なあに、つい数分前だよ。僕らが来た時にはもう待ち伏せされていてね……、才人と顔を合わせるなりこの調子さ」
 見ているだけとはいえ、疲れるのだろう。やれやれと肩を竦めて首を振る仕草が、妙に様になっている。隣のキュルケはニヤニヤとしているが、流石に飽きてきているのか、時折、我関せずと本を開いているタバサにちょっかいをかけていた。
「で、どうするの。あの平民の使い魔、置いていくわけ?」
 率直に結論を求めてギーシュに尋ねると、軽く首を振って否定を示す。
 面倒な相手は置いていってもいい気がするのだが、どうにも、ギーシュはあの平民の使い魔を気に入っているようで、情が湧いているらしい。女好きのくせに、見た目だけはいいルイズよりも重要視しているようだ。

「人の立ち寄らないような森の深い場所にも入るからね。才人の剣は僕らのように詠唱を必要としないし、以外と役に立つと思うんだよ」
「ちょっと前までは、剣なんて役に立たない平民の武器だなんて言ってたくせに……」
「価値観が変わったのさ。直接戦って負けた以上、認めないわけにはいかないだろ?」
 そう言って、いつものように造花の薔薇を無意味に動かす。
 やはり、変わってしまったと、モンモランシーは心の中で呟いた。
 あの平民の影響が一番強いのだろうが、それは切っ掛けに過ぎないだろう。決闘騒ぎを起こして以来、視野が広くなったというか、物事を客観的に見る目が出来たというか。
 相変わらず馬鹿であることに違いは無いが、ちょっとだけ男らしくなった気がする。
 そんなところに唐突に気が付いたモンモランシーは、こんなどうでもいい時間と場所で胸をちょっとだけ高鳴らせてしまう自分に自己嫌悪した。
「なら、好きにしなさいよ!でもアンタの帰ってくるところはここには無いからね!」
「ああそうしてやるよ!二度と戻ってくるもんか!そのまま日本に帰ってやる!!」
 誰も止めない口喧嘩が発展し続けたために、どうやら行くとこまで行ってしまったようだ。
 ふん、と鼻息荒く顔を背けた二人は、のっしのっしと音がしそうな歩き方で距離を離し、ルイズに至っては学院の塔に戻っていってしまう。
「ちょっと、いいの?」
「あんなヤツ知るか!いつもいつも自分勝手で、俺に我が侭を押し付けやがって……!」
 普段から抑圧されているために、溜まった鬱憤は相当なもののようだ。心配して声をかけるモンモランシーにも怒鳴り声で返す才人には、いつもの能天気さが見当たらない。
 我の強いルイズに付き合っていれば、確かにストレスも溜まるだろう。特殊な性癖の持ち主でもない限り、付き合い続けるのは並大抵のことではない。
 友人、と言えるほど親交があるワケでもないモンモランシーでも、そんなをこと感じてしまうのだから、才人の苦労は相当なもののはずだ。逆に、キュルケのように適度に距離を置いて人と付き合えるようなタイプだと、あの性格は見ていて楽しいものなのかもしれない。
 まあ、他人事だし、首を突っ込むのも馬鹿馬鹿しいか。
 そう判断したモンモランシーは、ルイズと才人の喧嘩に戸惑っている様子を見せている予定外のメンバーに、視線を向けた。そこにいるのは、困った様子で佇む黒髪のメイドと、いろんな意味で有名な太っちょことマリコルヌの二人だ。
「ねえ、あんた達はなんでここにいるわけ?」
 その質問は、まだギーシュたちもしていなかったらしく、興味深そうに視線が集まる。
 モンモランシーの問いかけに最初に答えたのは、若干パニックを起こしていたメイドだった。
「え、は、ハイッ!?あ、あの、その、えっとですね……」
 このメイドがルイズや平民の使い魔と一緒に居るところを多く目撃している。となると、それなりに良かったのだろう。今回の喧嘩で、一番混乱しているのは、この少女なのかもしれない。
 随分と面倒な立場にいるものだと、若干の同情心を湧かせたモンモランシーは、戸惑うメイドに落ち着くように言うと、深呼吸を促して言葉の整理をさせた。
 少しの時間を置いて、やっと息と考えを整えたメイドは、学院で働く使用人達と同じように貴族に対する礼をとると、やっと立ち直って口を開いた。

「わ、わたし、料理が作れるんです!」
 訂正。まだ、混乱から立ち直っていなかったようだ。
「だからなんなのよ?」
 この場に居る理由とまったく直結しないことを言い始めたメイドに、モンモランシーは淡々と返す。ギーシュやキュルケも、首を捻って困ったように表情を変えていた。
「あ、その、ですね。皆さん、お出かけになられるんですよね?それも、宝探しをされるということですから、野宿が基本となるようなお出かけ……、ですよね?」
 確認するように言って、メイドは背後においていた重量感たっぷりのリュックサックを持ち出すと、それを目の前に置き、中から鍋やお玉、それにいくつかの香辛料を取り出した。
「きっと、旅の途中では保存食をお召し上がりになられると思うんですが……、保存食になるものはみんな味気の無いものか、塩辛いものばかりです。でも、わたしが居ればいつでもどこでも、美味しいお料理をご提供できますわ」
 つまり役に立つから連れて行け、ということだろう。
 自己アピールの間も、ルイズのことで怒っている才人にちらちらと視線を向けているところを見ると、どうやらそういう関係らしい。
 一方通行の感情だろうが、平民に恐れられる貴族の中に好きな男のために飛び込めるその根性は中々のものだと、内心でモンモランシーは感心した。
「でも……、危ないんじゃないかしら?」
「確かに、人の領域から外れた森の中にはオーク鬼やトロル鬼にオグル鬼と、人間を食べてしまうような怪物が沢山居るからね。そうそう出会う相手でも無いけれど、戦う力の無い者の安全は保障しかねるよ」
 オークを代表例に挙げられる人を食う鬼は、ハルケギニアにおいて決して数が少ないとはいえない存在だ。軍の手によって適度に駆逐されはするが、それは町や街道の周辺に限られているため、今回のように森や山の奥深くでは接触しないとは限らない。
 ギーシュたちは貴族として、平民の身を守ることも義務の内と教えられているが、所詮は学生の集まりだ。正当な軍事訓練を受けたわけではないし、人を守りながら戦うことに慣れてもいない。
 足手纏いであることがあらかじめ分かっている人物を連れて歩けるほど、ギーシュたちは旅の経験は豊富ではないのだ。運悪く死なせでもすれば、自分一人だけでなく家族の名誉にも泥を塗ることになる。
「危険なのは分かっています。あくまでも、自分の責任で付いて行きますから……」
「そうは言っても……、ねえ?」
 懇願するメイドに、モンモランシーは助けを求めるように視線を横に向けた。
「いいじゃねえか、連れて行けば」
 まだ怒り顔の才人がぶっきらぼうに言う。
 このメイドの知り合いである才人としては、彼女の希望を出来るだけ叶えてやりたいという思いがあるのだろう。しかし、それだけで決めるには、あまりにも短絡的だ。
 別の意見を求めて、モンモランシーがギーシュやキュルケに視線を向けると、こちらではやはり渋い顔が待っていた。
 貴族の生まれである以上、責任感というものは子供のころから教えられるものだ。そういう部分にあまり頓着しない時代と言われていても、知人が死ぬ可能性を黙殺することが出来るはずも無く、首を振っての否定の意見が返って来ていた。

「そう……、ですよね」
 まるで体が小さくなったかのように、メイドは背中を丸めて顔を伏せる。
 可哀相だとは思うが、仕方の無いことなのだ。宝探しは遊びだが、待ち受ける危険が本物である以上、迂闊に巻き込むわけには行かない。
 落ち込むメイドの肩に手を置いて、慰めの言葉の一つもかけてやろうと、モンモランシーが一歩踏み出す。
 その時、むっと口をへの字に曲げていた才人が、背中に背負ったデルフリンガーに手をかけてメイドの隣に並んだ。
「守るやつが居れば問題はないんだろ?なら、シエスタは俺が守る」
 メイドの腰を抱き寄せて、力強く才人が宣言する。
 普段見せない甲斐性を、なんでこんなタイミングで発揮するのか。まったく理解に困る男だ。
 厄介ごとを抱え込むなと怒鳴りたいところだが、モンモランシーにはそれを言葉にする力は残っていなかった。周囲に振り回されている自覚が頭痛を生んでいたし、なにより、腰を抱かれたシエスタというメイドが顔を真っ赤にして、なんだか幸せそうだったのだ。
 これに文句を言えるのは、馬に蹴られて死ぬ覚悟のある人間だけだろう。
「まったく……、言ったからにはちゃんと守りなさいよ!」
「男として羨ましい台詞ではあるが、相応の責任もあるということを自覚しておきたまえ」
「平民を嫉ましいと思ったのは初めてだわ……、タバサもああいうことを言われたい、って思うとき、ある?」
「ノーコメント」
 勇ましい才人の台詞にそれぞれ感想を溢しつつ、場が和やかになり始める。
 メイドはそれぞれに自己紹介をはじめてそれなりに好印象を植え付け、才人は才人でルイズとの喧嘩で失っていたやる気を取り戻し、モンモランシーは能天気に笑っているギーシュにちらちらと視線を送っていた。キュルケとタバサだけは、妙にのんびりしている。
 そんな中、一人忘れられていた男が動き出した。
「僕を置いてきぼりにしないでよおぉっ!」
「うわあぁ!マリコルヌ、君、何時の間に居たのかね!?」
 完全に無視されていたマリコルヌがギーシュの足に飛びつき、ズボンに零れる涙と浮かび上がる汗を擦り付ける。
 言葉に現し難い嫌な感触が脛のあたりから広がったことで、ギーシュの全身から冷たい汗が一気に噴出した。
「さっきから、居たじゃないか!何度も視線が合ってたよ!ラブやらコメやらに夢中で、僕のことを忘れるなんて酷い!そんなに臭い台詞がいいのなら、枕元で何時だって語ってあげるのにいいぃぃ!」
「何を言っているのかね君は!足を放したまえ!放せって言ってるだろう!?は、放してえええぇぇぇ!!」
 想像もしたくないような発言に寒気を覚え、何とかしてマリコルヌを引き剥がそうと造花の薔薇を振り上げたギーシュは、杖代わりのそれに魔力を込めて、お得意の錬金の魔法を唱えた。
 作り物の花びらが宙を舞い、地面に降り立つと光と共に青銅の人形が形作られていく。
 鎧を身に纏った女性を模ったゴーレム。ワルキューレだ。

 一体、また一体と作り出され、ギーシュに作れる最大数である七体が揃うと、薔薇の杖の動きに合わせて行動を開始した。
「放せ、放せマリコルヌ!」
「嫌だあぁっ!連れて行ってくれるって約束してくれるまで、絶対に放さないぞおぉぉ!!」
 足や胴体を青銅のゴーレムに掴まれて引っ張られても、マリコルヌは手を放さない。ゴーレムの力は成人男性のそれに相当するため、実質七人がかりで引っ張っているのだが、それでもマリコルヌの手はギーシュの足に食い込むばかりで、まるで離れる様子は無かった。
 七人分の力に逆らえる握力というものは馬鹿に出来るものではない。
 掴まれた足が激痛に悲鳴を上げ、ギーシュがその場に倒れこむのも時間の問題だった。
「ええい、放せというのが分からんのかね!」
「煩い!密室で女の子と遊んでいたのも、隠れて見てたから知ってるんだぞ!ギーシュのくせに、こんな、女の子一杯引き連れてお出かけなんて、この風上のマリコルヌの目が黒い内は絶対に許さないからな!」
「君の瞳の色は黒ではないだろうに!」
 痛みに耐え切れず、ギーシュはマリコルヌの顔面を足の裏で強打する。顔面に足跡をつけたマリコルヌは、それでも手を放そうとはしない。
 ギーシュが女の子を複数連れて出かけるのが、それほどまでに羨ましいようだ。
 魔法学院でもトップクラスのモテない男の子であるマリコルヌが、女性に飢えているという話は有名である。本人や一部の生徒は知らないことだが、マリコルヌが時折見せる変態的な行動は、教員達にもマークされているのだ。当然、そんな人物に近づく女性がいるはずもない。
 マリコルヌが有名人である理由を思い起こして、モンモランシーはキュルケと顔を見合わせて肩を竦めた。
「わたし、ここで抜けても良い?」
「あら、だめよ。言いだしっぺのアタシは抜けられないんだから、一度行くと言った以上、最後まで付き合ってもらうわよ」
 逃げ出したいが、逃げられないようだ。
 キュルケの辞書には、不幸はみんなで分かち合うという言葉が刻まれているに違いない。聞こえのいい言葉だが、こういう場合には適用して欲しくない言葉でもある。
 もうどうにでもなれと、深く溜め息を吐いたモンモランシーは、放す放さないで争っているギーシュたちに視線を向けた。
「マリコルヌ、あんたも来ていいわよ」
「連れて行ってくれるのかい!?」
 ギーシュの足蹴りを食らいながら顔を上げたマリコルヌが、目を輝かせてモンモランシーに問い返す。その瞬間に力が緩んだのだろう。一際強い足蹴りを顔に受けて、ギーシュの足を放してしまい、ゴーレムに引き摺られて行ってしまった。
 足を放してもらえたことで集中が途切れたギーシュが、薔薇の杖を放り出して悶絶する。
 心配そうに駆け寄ったシエスタがズボンを捲り上げると、青く染まった肌が露出した。骨折でもこうはならないだろうと思えるほど、酷い状態だ。
 無言で近づいて来たタバサが治癒の魔法をかけることで見た目は綺麗に戻ったが、痛みはまだ残っているようで、ギーシュは足を押さえてゴロゴロと地面を転がっていた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー