ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-42

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匿名ユーザー

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「・・・ズ。ルイズーッ。起きてよ。もうこれしか氷が無いけど元気になってよ!」
「・・・キュルケ・・・ここは?」
塔の中みたいだけど、みんなは?そして、プロシュートは?
「塔の一階よ。さあ早く戻りましょ、タバサが時間を稼ぐのにも限界があるわ」
キュルケが上に行こうと階段に進む。
「・・・いかない」
「なんですって?」
キュルケが足を止め振り返る。
「もう・・・どうでもいいわ」
キュルケがわたしを鋭く睨みつける。
「プロシュートは・・・わたしの事なんかどうでもよかったのよ」
「このままだと、ここにいる全員が死んじゃうのよ。
それでもいいって言うの?」
うるさいわね・・・。
「もう、どうだっていいのよ。わたしの知ったことじゃないわ」
キュルケは黙って、わたしを見つめ続ける。
「そう・・・。ルイズ、あなたにとってプロシュートは一番じゃ無かったのね」
「・・・なんですって」
これだけは聞き捨てならない。
「あなたにとって本当に彼が一番なら、あんな操られている奴の言う事なんか
気にしないわ。なのにそれを信じて不貞腐れて、それこそ生きていた彼に
対する侮辱だわ」


「フハッ、フハハハハハハハハッ。何を腑抜けていたの、わたしはッ!!」
そうよ!プロシュートがあんな事、言うはずが無い!
まったく、それを鵜呑みにして落ち込んでいた自分が恥ずかしいわ。
「立ち直ったようね」
キュルケがニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「わたしを励ましてくれたの?」
いつも見ていて腹が立つ笑みも気にならない。
「まさか!思った事を言ったまでよ」
そう、その不敵な態度こそキュルケよ。
「行きましょうか。プロシュートを倒しに」
わたしは杖を顔の前に掲げた。
「ええ、行きましょうか。プロシュートを倒しに」
キュルケも続けて杖を掲げた。

「「杖にかけて!」」


わたしたちは上に戻るために階段を上る。
「キュルケ、走っちゃだめよ」
「ええ、わかってるわ」
踊り場に一人の老人が倒れていた。
「放っておきなさいよルイズ。プロシュートを倒せば全員助かるんだから」
この服に薔薇の杖・・・
「ギーシュじゃないの?」
「あらホント生きてたのね、プロシュート相手に」
そんな気はしたけどホントに生きていたのね・・・そういえば・・・
「ねえキュルケ。わたしはプロシュートに掴まってたと思うんだけど、
どうやって助かったのかしら?」
「ギーシュが大変だわ!すぐ氷で冷やさないと」
あからさまに話を逸らしたわね。
「ちょっと答えなさいよ!すごく重要な事よコレ」
キュルケは顔を逸らし自分の体を抱きしめる。
「・・・・・・よ」
「何?よく聞こえないわ」
「体当たりよ、体当たり!文句ある?」
      • は?
「いや、無いけど、よく助かったわね」
「そうね彼も『えっ?』て顔してたわ。もうあんな真似、二度としないわ」
「ありがとうキュルケ。でも体当たりとわね」
「だって、しょうがないじゃないの。私の『火』はプロシュートの『力』と相性が
悪すぎるんですもの」
「確かにそうね。フフッ、いや馬鹿にしてんじゃ無いのよ」
「き・・・君たち・・・僕を忘れないでくれたまえ」
ギーシュが擦れた声で助けを求めてくる。
「えっ?ああ、そうね」
わたしは溶けてちっぽけになった氷の欠片をギーシュに押し当てた。
シュパアアアアァ
「ふう、助かったよルイズ」
若返ったギーシュがポーズを取り髪をかき上げた。
なんだか髪が薄くなってるのは気のせいかしら?
「わたしたちと別れてから何があったの?」
ギーシュが腕を組み天井を見上げる。
「・・・そう、僕は時間稼ぎの為ワルキューレたちに武器ではなく盾を持たせた。
なにしろ兄貴は傷がすぐに治るのだからね、倒そうなんて思わなかったさ」
「適切な判断ね」
「その後は、ワルキューレがブッ飛ばされて僕もそれに巻き込まれ窓から
転落・・・レビテーションで何とか助かったと言う訳なのだよ」
「ふーん」
よく見るとギーシュの顔や手には切り傷がいくつもあった。
「そして君たちと合流しようと走っていたら気を失ってしまったというのだよ。
いや、体温を上げてはいけない事をすっかり忘れていたよ」
はっはっは、と声をあげて笑うギーシュ・・・あんた凄いわ。
「さて、今から兄貴を止めに行くのだろう?『対策』とやらは分かったのかね?」
「ええ任せてよ!プロシュートを倒してみせるわ」

「ほお、オレを倒すと言うのか?」

プロシュートが上から勢い良く飛び降り目の前に着地した!
「くっ!」
マズイ!こんなに近くじゃ呪文を唱える時間が無い!
「えいっ」
わたしもプロシュートと同じ様に踊り場から飛び降りる。
わたしに続きキュルケとギーシュも一緒に飛び降りてきた。
「少しでいい、時間を稼いでちょうだい」
「うむ、わかった!」
ギーシュが薔薇の杖を振るうと一体のワルキューレが出現する。
だけど、グレイトフル・デッドの一撃であっけなく胴体に穴が空く。
わたしは、その隙に呪文を唱える。
体の中に波が生まれてきた。
はじめての感覚・・・これがリズムが生まれるってやつなの。
その波がさらに大きくうねりだす。
「ディスペル・マジック」
プロシュートは咄嗟に掴んでいたワルキューレを目の前に差し出した。
ワルキューレが鈍い光に包まれ元の花びらに戻っていく。
「防がれた!」
「もう一度だ、ルイズ!」
ギーシュが叫ぶと同時に杖を振るう。
しかし、今度は何も起こらなかった。
「精神力が足りないってヤツか?追い詰められたムダなあがぎしやがって」
プロシュートは、こちらに向かって飛び降りる。
「いいえ兄貴。魔法は成功しています・・・『油』を連金する事は」
「何ッ!!」
プロシュートが着地した途端ズルリと滑りスッ転んだ。
やるじゃないギーシュ。プロシュートに一杯喰わせるなんて!
「何をしているッ。もう一度だ、ルイズ!」
気を取り直して呪文を唱える。
「忘れたのかッ!オレにはグレイトフル・デッドがあるという事をッ!」
グレイトフル・デッドが、わたしに迫る。
「ディスペル・マジック」
狙いは倒れているプロシュート本人。しかしグレイトフル・デッドが目の前に
立ち塞がり防御の姿勢をとった。グレイトフル・デッドは鈍い光を放つがその
まま、わたしは掴まりプロシュートも立ち上がった。 
「掴んだッ!これで学院のヤツ等は皆殺しだ!!」
「やはりガードしたわね・・・いや、あなたは動けなくてガードせざるをえな
かった・・・未確認の情報・・・スタンドのダメージイコール本体のダメージ
だということを。まったく、ギーシュの簾金した『油』に救われたわ」
プロシュートの体から以前ワルドに斬られた傷が浮かび上がる。
「バカな!」
プロシュートの体から力が抜け前のめりに倒れていく。
「ルイズゥゥゥッ!      ゴバッ!!」
プロシュートを倒した。
体が軽くなっていくのが分かる。
グレイトフル・デッドが解除され、みんな助かった。

なのに何故わたしは泣いているの?    

わたしは偽りの命の炎が消え動かなくなったプロシュートの側に立った。
開いたままの目を閉ざそうと手を翳したとき心底信じられないものを目にした。
「・・・ルイズ?お前か?」
弱弱しく、消え入りそうな声だったが、まぎれもなくプロシュートの声であった。
「プロシュート・・・ごめんなさい、わたしのせいであなたを死なせてしまった」
「違うな・・・オレは、お前のダメージが自分のダメージになる事を知っていた。
それを承知で・・・お前を守りきれなかった・・・オレの責任だ・・・」
なんで・・・なんでそんな事が言えるの?わたしを責める事も出来るのに・・・
「違うわ。わたしがあなたの言うことを聞いていたら・・・魔法を使わなければ!」
「・・・ルイズ・・・『たら』『れば』は・・・無しだぜ・・・」
「?・・・何?何が言いたいのプロシュート!」
「『たら』『れば』・・・そんな言葉は使う必要は無いんだ・・・
なぜなら、オレやオレ達の仲間は常に・・・殺るか、殺られるかだ・・・
そこには・・・『たら』『れば』・・・もしもの話は存在しねえ・・・
だから・・・後悔しないように自分自身の全てを懸けて・・・戦うんだ・・・
ルイズ・・・お前も・・・そうなるよなぁ・・・オレの言ってる事わかるか?・・・
ええ・・・おい」
心で理解できるけど・・・それを納得しろというの?・・・
「・・・わかったわプロシュート。もう後悔しない!全てを受け止めるわ!
それが、わたしの『覚悟』よ!」
「・・・それで良い・・・それで・・・ゴブッ」
口から大量の血を吐き出した。もう、ここまでなの・・・
「ルイズ・・・オレはお前を襲った時・・・実験と言ったが本当は陽動だ・・・」
陽動?
「・・・新生アルビオンの艦隊が・・・タルブ村方面からトリステインを襲う」
「信じられない・・・だって不可侵条約が結ばれているのに」
「・・・忘れるな・・・ヤツ等は革命を起こした・・・連中だぜ・・・」
じゃあ、わたしたちは何の為に手紙を取り戻したって言うの?
プロシュートの死は?
オリヴァー・クロムウェル・・・あのクソ野郎・・・
「・・・どうやら・・・ここまでのようだ・・・意識がヤバクなってきた・・・」
「待ってプロシュート!待ってよーッ」
「・・・アリーヴェデルチ!(さよならだ)」
「プロシュート?・・・プロシュートオォオオオオォ」


ポフッ ポフッ ポフッ
妙な音がしたので振り返るとワルドが拍手をしていた。
「ワルドッ!」
「まさか、ここまで上手く事が運ぶとはな。しかも始祖の祈祷書まであるでは
ないか。そうかルイズ、君が巫女に選ばれたのだね。おいおいおいおい
何なのだこれは、あまりにも出来すぎているではないか!」
上機嫌に饒舌なワルドに違和感を覚える。
「状況が理解できて無いの?陽動は失敗したわよ」
「ハハハ。陽動など無くとも特に支障は無い。僕の本当の目的は君だよ
僕のルイズ」
どうも話が噛み合わない。
「何を言ってるの、生獲りも失敗に終ったわ」
「生獲りでは無い。僕の思惑は君の成長にあったのだよ。
なぜ襲撃に、この場所が選ばれたのか。なぜ君は襲撃と同時に目が覚めた
のか。なぜ最初に逃げた時、彼は上に行ったのか。そう全て僕の手の中に
あったのだよ。命を懸けた戦いが君を成長させると信じて」
「そんな・・・そんな事の為に皆を巻き込んだっていうの?」
「その通りだよ僕のルイズ。さて、すまないがそこを退いてくれないか
彼に用があるのでね」
「一体何の用?プロシュートは死んだわ。もうそっとしてあげて」
「閣下に再び命を与えてもらう。彼には、まだまだ働いて貰わなければ
ならぬのでね」

プツン

「ワルドォォォオォォォォオォッ!!」

「ファイアーボール」
キュルケの呪文がワルドを襲う。しかしワルドは突然の炎を杖を使いキュルケ
に撥ね返す。自分の炎を浴びたキュルケは気を失ってしまった。
「スクエアの僕に不意打ちなんぞ効くか」
何事も無かったかの様にワルドはこちらに向き直した。
「ワルド、お前、お前、お前ーッ!」
「どうやら素直に退く気は無いようだね」
「当たり前よ。お前は絶対に許さない!」
「よかろう。ならば決闘だ、表に出たまえ。」
マントを翻し表に向かうワルドの後を追うわたしをギーシュが止める。
「無茶だルイズ。相手は魔法衛士隊の隊長なのだよ」
「ねえギーシュ。貴族の資格って何なのかしら?」
「こんな時に何を・・・魔法が使える事に決まっているじゃないか」

「違うわギーシュ、魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。
敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!」

「ワルド。生獲りに拘っていたお前が決闘だなんて、どうゆうつもりよ?」
「別に殺してしまっても再び命を与えれば良いのだ。
君が手に入る予定に変りは無い」
「・・・もはや、お前に何も言うことは無いわ」
以前ギーシュとプロシュートが決闘した広場で、わたしとワルドが決闘する事
になるなんて。
「ルイズーッ!」
上からシルフィードに乗ったモンモランシーが声をかけてきた。
「モンモランシー、タバサ、無事だったのね」
シルフィードからモンモランシーとタバサが降りてきた。
「はいこれ、大切な剣なんでしょ。もう老化の心配は要らないのよね?」
「ありがとうモンモランシー。ええ心配ないわ」
モンモランシーが差し出したデルフリンガーを受け取る。
「よう貴族の娘っ子。今からあのメイジとやり合うのかい?」
「ええ、その通よデルフリンガー。皆は手を出さないで、これは決闘なのよ」
わたしは、この場にいる全員に告げ、皆から離れワルドと対峙する。
「さっそく始めましょうか。もたもたすることも無い・・・
一瞬でカタをつけてあげるわ」
「ああ・・・君は、その『剣』を使うのかい?」
わたしはデルフリンガーから手を放す。
「おい、貴族の娘っ子!?」
「当然!『杖』を使うわッ!祖先から受け継ぐ『杖』ッ!それが流儀ィィッ!!」
わたしは杖を構える。
デルフリンガーが地面に倒れた瞬間が合図となりワルドが詠唱を開始する。
なるほど、だから外に出たのね。わたしの使う呪文は決まったわ。

ウル・スリサーズ・アンスール・ケン・・・

「ヤベーぞ貴族の娘っ子『カッター・トルネード』だ!」
知ってる。

ギョーフー・ニィド・ナウシズ・・・

「死ぬぞ、貴族の娘っ子!」
あれじゃ死なないでしょ。

エイワズ・ヤラ・・・

これだけでは勝てないので使える呪文がないか片手で祈祷書を開く。
浮かび上がる呪文『エクスプロージョン』(爆発)。
今の気持ちをそのまま表す呪文・・・気に入ったわ。

ユル・エオー・イース!

「祈祷書を読み上げての決闘とは舐められたものだな僕のルイズ!」
馬鹿の相手は必要ナシ。

「『ディスペル・マジック』」

ワルドのカッター・トルネードが鈍い光を放ち消滅した。
「??なにが起きたと言うのだ?僕のスクエア・スペルが?」
「わたしが何から何まで親切に教えると思うの?」
「君の系統『虚無』は命を操る系統では無いのか?」
ワルド、お前は情報に踊らされる節があるわね。
「お喋りは、ここまでよ」
わたしは呪文を詠唱する。

エオルー・スーヌ・フィル・ヤンサクサ

「もう一度カッター・トルネードを・・・だめだ同じ結果に・・・
それに精神力も・・・ならば、ユビキタス・・・」
ワルドも呪文の詠唱を始める。

オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド

ディスペル・マジックを唱えた時とは比べ物にならない力のうねりを感じる。
この呪文・・・直感だけど何かヤバイ・・・わたしは詠唱を中断した。
しかし五体に分身したワルドの中心に光が生まれ、どんどん広がっていった。
「こ・・・この光はッ・・・うおおおおお・・・」
呪文を止めた・・・はずなのに・・・どうして?
光が収まると、ワルド達の姿は無かった。
「勝ったの?」
「いいや、勝つのは僕だよ」
後ろから声をかけられた。
ボロボロのワルドが一人、目だけはギラギラと輝いていた。
「サイレント?」
いつの間に後ろに回り込まれたというの?
「不正解、単に気配を消しただけだ。これで僕の勝利は確定した!」
「へえ、どうしてかしら?」
「簡単な事だ。この『距離』なら君の詠唱より僕の攻撃の方が早い」
「なるほど完璧な作戦ね。不可能という点に目をつぶればね。情けないわね
だからトリステイン貴族は口だけだって言われるのよ『マンモーニ』のワルド」
ワルドの言葉を鼻で嗤う。
「『閃光』のワルドだッ!」
顔を真っ赤にしながらワルドが一直線に跳躍してきた。
「もらった!ブッ殺してやる。くたばれッ、ルイ・・・」
「ウル・カーノ」
目の前の爆発がワルドを襲う。
「ぐはッ!?」


「『ブッ殺してやる』。そのセリフは終わってから言うものよ、ワルド」


煤だらけのワルドは倒れたままピクリとも動かなかった。
「勝った!」
わたしは杖を掲げ宣言する。
「凄いじゃないかルイズ!スクエアのメイジに勝つなんて」
「すごく立派よ、ルイズ。もう、貴女を馬鹿になんて出来ないわね」
ギーシュとモンモランシーが、わたしの勝利を共に喜ぶ。
「喜ぶのはまだ早いわ。新生アルビオン艦隊を何とかしないと」
早くタルブ村に行かないと。
わたしはキュルケに膝枕をしているタバサに目を向ける。
「ねえタバサ、わたしに借りがあるって言ってたわよね。シルフィードで
タルブ村まで連れて行ってくれない?」
タバサは無言で、わたしの後ろを指差した。
何事かと思い振り返るとワルドの姿が無かった。
「空」
タバサが呟く。
上を向くとグリフォンが飛んでおり、その足にワルドを掴んでいた。
「ファイヤーボール」
爆発はグリフォンの手前で起こる。思ったよりもスピードが速い。
「逃した・・・使い魔の方が、よっぽど優秀じゃない」
人の事いえないか・・・
「今、ワルドの事は良いわ。タバサ、タルブ村まで連れて行ってちょうだい」
「わかった」
ギーシュが前に出てきた。
「僕も行くよルイズ」
「ギーシュはこの事を姫さまに知らせてちょうだい。」
「そ、そうか。わかった、任せたまえ」
「お願いタバサ」
タバサは頷くとシルフィードに命令する。
「タルブ村まで」

オリヴァー・クロムウェル・・・今まで好き勝手にしてくれたけど
今度はこちらがお前を利用する番よ・・・
わたしの・・・いや、わたしたちの栄光の為に

偉大なる使い魔  完

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