ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ACTの使い魔-2

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康一が、ルイズの使い魔として『召喚』された日の翌日。
ロクな寝床を与えられず、床で毛布に包まっていた康一は、両肩の痛みと共に目が覚めた。
現在の時間を確認するために、時計を手探りで掴もうとする。
しかし脳ミソが半分も活性してない康一は、時計じゃなく昨晩ルイズが投げてよこしたパンティを掴んでしまった。

「う、うわあああああああッ!」

あたふたしながらパンティーを放り投げ、康一は一気に目が覚めた。
周りをキョロキョロと見回し、やっとのことで自分が置かれている状況を理解する。

(そうだ、僕は自分が住んでいた世界から別の世界に呼び出されたんだっけ……)

康一のことなどまったく気にもとめずに、ルイズはベッドの上でスヤスヤと寝息を立てている。
顔を覗き込むと、ニヤニヤと笑っている。良い夢でも見ているのだろう。
顔は可愛いけど、ワガママなんだよな。などと思いながら、康一は昨日起こった出来事を回想していた。

康一が呼び出された世界は、魔法が当たり前のように使われているファンタジー世界。
ここはトリスティン魔法学院とかいう所らしく、その学院は、まるで中世の城のような佇まいだ。
しかし、そんな中世の城よりも康一が驚いたことは、二倍程の大きさがある月であった。
大きさだけでなく、数も二倍に増えており、この世界に月は二つも存在しているらしい。
なお、地球のどこを探しても、月が二つ見える場所なんて存在しない。
つまり、ここは地球外の場所であるということの証明である。

もし飛ばされたのが康一じゃなく露伴だったら、

「凄い! 本当に凄い所だ! こんな体験は他の誰にも出来ないぞ! 僕は最高のネタを手に入れた!!」

と言いながら、大はしゃぎしているだろう。

しかし、今回この世界に連れてこられたのは康一であり、そんな感動に浸る余裕がある人物ではない。
早く自宅に戻って、犬の散歩をして、宿題をしなくちゃいけない。
このままでは学校にも通えず、母親や姉に再会することすら出来ないのである。

召喚されてから数時間後、ルイズの部屋にいた康一はこのままじゃまずいと思い、

「なんとか元の世界に帰る方法は無いんでしょうか?」

とルイズに聞いたが、「無理よ」という期待外れな答えが返ってくるだけだった。

「でも、僕をこの世界に連れてきたのだから、元の世界に戻す事だって……」

ルイズは困り顔で、康一の言葉を遮った。

「あんたが、他の世界から来たなんて信じられないけど、別世界を繋ぐ魔法なんて知らないもの」
「じゃあ、どうやって僕をここに連れてきたって言うんですか!」
「こっちが聞きたいわよ!」

ルイズに逆ギレされ、ショボボーンと肩を落とす康一。

「いい加減諦めなさいよ。 私だって、あんたみたいなのが使い魔なんて嫌だけど、取り消すことはできないし……」

はぁ、とため息をついてベッドに座るルイズ。
康一も同じようにため息をつき、左手の甲に描かれた謎の文字を見つめた。
ルイズの使い魔となった時に印されたものである。

「ああそれは、私の使い魔ですって印みたいなものよ」

それを聞いて再びため息をつく康一。もう何度目のため息なのか覚えていない。
結局のところ、『運命』というものらしく、どうあがいても帰れないのだと悟った。

「……わかりました。帰る方法が見つかるまで、ルイズさんの使い魔ってやつになります」
「ちょっと、そこは『なんなりとお申し付け下さい、ご主人様』でしょ」

反論する余力などないので、康一はルイズの言う事をスルーして話を続ける。

「ところで、使い魔というのは、具体的には何をすればいいんです?」
「まず、主人の目となり耳となること」
「以心伝心ってやつですか?」

どういう意味かわかっていない様子のルイズは、首を傾げながら聞く。

「……何それ?」
「言葉とか使わないで、考えてることがお互いに理解できるって意味です」
「そうね、そんなところかも。でもあんたじゃ無理みたいね。私、何も見えないし感じないもん!」
「そうですか……」

そりゃあ、そんな簡単にお互いが分かれば苦労しないよ。と康一は思った。

「でも、一番大事なのは主人を守ることよ! 使い魔の能力で主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃ無理ね……」
「ははは……」

もっとも、康一はエコーズというスタンドがあるため、ルイズを敵から守るのは難しいことじゃない。
しかし、スタンドは魔法使いにも見えないらしく、ルイズから見れば康一はただの平民である。
康一はスタンドの事を話そうかとも思ったが、色々とややこしいことになりそうなので、やめておいた。
ようは、ルイズがピンチになった時にエコーズを使えばいいだけなのだ。説明は、その後いくらでもできる。

「ま、あんたが出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「はぁ……」

それじゃ家政婦じゃないか、と思いながらも、康一は素直に従うことにする。
いちいちモメたところで、気が弱い康一が言い負かされるのは目に見えているからだ。

「わかったら、明日から早速やりなさいよ」

そう言って、ルイズは眠たげにブラウスのボタンを外す。
下着があらわになったルイズの姿を見て、康一は慌てて視線を逸らす。

「う、うわぁあああ! ちょ、ちょ、ちょ、何してるの!?」

ルイズは頭に?マークを浮かべた表情をしている。

「何って、寝るから着替えてるのよ」
「そ、それならそう言ってよ! 僕に着替えてるところを見られても平気なの!?」
「あんた使い魔でしょ。別になんとも思わないわ」

つまり、僕は男として見られてないのか……。そういえば、犬とか言ってたし……。
康一は、男として見られてない自分がちょっぴり悲しくなった。

「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」

ルイズの下着姿を見ないように視線を逸らしていた康一の後頭部に何かが飛んできた。
なんだろうと思って、頭に乗っかっていたソレをマジマジと見つめる。
手には、レースのキャミソールと白いパンティが握り締められていた。

「……わぁぁぁあああッ!」

慌てて握り締められていたソレを手から離す。

「し、下着まで洗濯するのォ~!?」
「当然でしょ。誰があんたを養うと思ってるの?犬のあんたは私の言うことに従ってればいいの」

もう少し恥じらいを持ってほしいよなぁ~……。などと思いながら、ルイズの下着を慎重に拾う。
ネグリジェに着替えたルイズは、寝支度が整ったのか、薄暗いランプ付けて布団に包まっていた。

「あの~、ところで僕はどこで寝れば……」

ベッドは一つしかない。布団もベッドの上にあるのしかない。
ルイズは毛布を康一に投げ、床を指差して再び布団に包まった。

「はぁ~あ……」

康一は、一日を締めくくる大きなため息をついて布団に包まった。
そして、話は冒頭に戻る。



康一は、とりあえず自分の主人を起こそうと思い、スヤスヤと寝ているルイズの体を揺すった。
ルイズは、「う~ん……」と唸った後、うっすらと目を開ける。

「うー、なによ……なにごと?」
「あの~、朝ですけど……」
「はえ? そう……。って、誰よあんた!」

ルイズはまだ寝ぼけているのか、康一を見るなり怒鳴った。

「僕だよ、康一だよ! 酷いなぁ、もう。忘れるなんてさぁ~……」
「ああ、使い魔ね……。昨日、召喚したんだっけ」

ルイズは、大きなあくびをしながら起き上がる。
そして椅子に掛かっていた制服を指差しながら、康一に向かって命じる。

「服」

康一は素直に制服を取って、ルイズに渡す。
だるそうにネグリジェを脱ぎ始めるルイズ見て、慌てて視線を逸らす。

「下着」
「もお~、下着くらい自分で……」
「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」

康一は、何を言っても無駄だと思って引き出しをあけた。
中には、沢山の下着が入っており、康一は思わず顔を赤くする。
適当に選んで、ルイズの姿を見ないようにしながら下着を渡した。

「服着せて」

康一は頭を抱えた。そして思った。
彼女は異常ではないが、常識がまるっきりない! と。

「早くしなさいよ!」
「あ、あのねぇ! 服ぐらい自分で着なよッ! いくら僕より年下だからって、服くらい自分で……」
「あっそ。言うこと聞かない使い魔は、朝ごはんヌキ」

ルイズは康一の言葉を遮って、勝ち誇るように言った。
いくら温厚な康一でも、これはさすがにカチンときた。

「冗談じゃないぞー――ッ! もう付き合っていられるかッ! もう我慢できないッ!
 1から10までキミの言うことを聞いていたら僕の身が持たないよッ! 朝ごはんなんているものかッ!」

そう言って、康一はルイズの部屋から出て行った。

「コラーッ! ご主人様を置いてどこ行くのよ!」

ルイズは康一の後を追おうと廊下に飛び出すが、
下着姿であることを思い出してすぐに部屋の中へと引っ込んだ。


衝動的に部屋から飛び出した康一であったが、部屋を出て行った事をすぐに後悔した。
何せ、右も左も分からないような場所に、一人飛び出して来てしまったからだ。
しかも、さっきから腹がぐーぐー鳴っている。
朝ごはんはいらないと言ったが、昨日から何も食べていないため、腹が減って仕方がなかった。

「おなか減ったな……。やっぱり素直に従った方がよかったかなぁ……」

必死に腹の虫を抑えようと、腹を支えるが、さっきからずっと鳴りっぱなしだった。
鳴らすまいと思えば思うほど虫は鳴く。満腹なんだと思えば思うほど空腹になっていく。

「どうなさいました?」

その言葉に反応して振り向くと、銀のトレイを持った少女が心配そうに康一を見ていた。
カチューシャで纏めた黒髪とメイド服が特徴的な女の子だ。

「いえ……おかまいなく」

康一は、自分を心配する女の子に感謝しながらも、
名前も知らないような子に迷惑をかけるわけにはいかないと思って、その場を立ち去ろうとする。

「あなた、もしかして、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
「あれ? 僕のこと知ってるんですか?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ」

女の子はかわいらしい笑みを浮かべた。

ルイズと違って、随分と大人しそうな子だなぁ。と思いながら康一は尋ねる。

「キミも魔法使いなの?」
「いえ、私は違います。あなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいてるんです」

自分と同じ平民と聞き、康一は妙に親近感を覚えた。

「そっかぁ~、何だか安心するなぁ~。あ、僕は広瀬康一って言います」
「変わったお名前ですね……。私はシエスタっていいます」

お互いに自己紹介を終えたところで、再び康一の腹の虫が鳴いた。

「おなかが空いてるんですね」
「あ、はい……」

康一は、顔を赤くしながら腹を抑える。

「こちらにいらして下さい」

シエスタは、康一を誘導するように歩き出した。


康一が連れていかれたのは、食堂の裏にある厨房だった。
大きな鍋やオーブンが沢山並んでいる。周りには、コックやシエスタと同じ格好をしたメイドたちが大勢いた。

「ちょっと待ってて下さいね」

康一を厨房の片隅にあった椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥に消えた。
そして、お皿を二つ抱えて戻ってきた。大きな皿にはスープが、小さな皿にはロールパンのようなものが二つ乗っかっている。

「朝ごはんを用意したときに出たあまりで申し訳ありませんが、よければ食べて下さい」
「え? でも僕、お金とか持ってないし……」
「あまり物ですから、気にしないで食べてください」

康一はシエスタの行為に感謝しながら、パンをかじり、スープを飲んだ。

「おいしいッ!おいしいですよ、コレ!」

康一は、涙を流しながら夢中になって朝飯を頬張る。
シエスタは、ニコニコしながらその様子を見つめている。

「そういえば、ルイズさんはどうしたんですか?」
「ワガママばかり言うから、ついカッとなって出てきちゃったんだ……」
「まあ! なら、早く戻らないと……」
「どうせ朝ごはんはヌキだろうし……。それに、あっちが謝ってくるまで戻ってやるもんかッ!」
「何があったか知りませんが、大変そうですわね……」

シエスタは、哀れむような顔で、康一を見つめている。
康一は、あっという間に朝飯を食べ終わり、空になった皿をシエスタに返した。

「とてもおいしかったですよ、ありがとうございます」
「よかった。もしおなかが空いたら、いつでも来てくださいな」

康一は、シエスタの優しさに感動して再び涙を流した。
この世界に来てから、こんなに嬉しいことはなかった。

「うう……ありがとうございます。シエスタさん、もし困ったことがあったら何でも言って下さい。お手伝いしますよ」

ルイズに召喚されるより、この子に召喚されたほうが、何倍も幸せだっただろうな……。と思いながら、
康一はシエスタの手伝いをしようとした。

「なら、次にここにきた時に、食事を運ぶのを手伝ってくださいな。朝の分は全て終わってしまったので……」

シエスタは微笑んで言った。
その言葉を聞いて、康一は大きく頷いて返事をする。

「よろこんでやりますよ!」

「あ、それともう一つお願いが……」

席を立とうとする康一に、シエスタが一言付け加える。

「ルイズさんの所に戻ってあげてください。 きっと、困ってると思います……」
「……わかりました。実は、僕もちょっと大人気なかったかなって思ってて……」

康一は、シエスタに向かって深々とお辞儀をすると、礼を言って厨房から出て行った。


厨房からルイズの元へ戻ろうと、キョロキョロと辺りを見回していると、偶然にも食堂から出てきたルイズと出会った。
ルイズは康一を見るなり、不機嫌そうな顔をしながら言った。

「ご主人様の命令を無視して、どこに行ってたのよ!」
「勝手に飛び出したことは謝るよ。でも、キミも、もうちょっと……」
「言い訳は聞きたくないわ! 昼食もヌキだからね! フンッ!」

そう言って、昼食ヌキを言い渡したルイズは踵を返す。
ついて来いと言わんばかりの背中を見つめながら、康一はルイズの後に続いた。

(はぁ……この性格は露伴先生のスタンドでも直りそうないや……)

そう思いながら、康一は深いため息をついた。

To Be Continued →

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