ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

1 タルブ村の初夏 後編

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匿名ユーザー

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「なんか、表が騒がしいな」
「この時期はこんなもんだよ。たまに誰かが喧嘩でも始めれば、すぐに祭り騒ぎさ」

 突然あちこちで悲鳴や怒声が上がり始めたことに気がついたホル・ホースが呟くと、店主がなんでもないことのように返した。
「それでアンタは、新しい服を買う金も無いから、仕方なく自分のシャツを着せてるわけか」
 不憫だねえ。と呟いた店主に同意するように、ジェシカとカステルモールが頷いた。
「甲斐性なしだね、アンタ」
「うるせえ!こう見えても、一週間前は大金持ちだったんだぞ!クソッ!!あのときケチッとけば良かったぜ……」
 “女神の杵”亭や船賃で出した大金を思い起こし、後悔に頭を抱える。
 そんなホル・ホースを見て、店主は思い出したように手を叩いた。
「時間があるなら、畑の手伝いでもしてきたらどうだい?早いところはもう麦の収穫を始めてるはずだから、手伝えば幾らかの金になると思うよ。まあ、メシ代でほとんど消えちまうだろうけど、この時期は麦の取引で行商人もたくさん村に立ち寄るから、安い古着くらいならなんとかなるだろ」
 村を縦断する大きな通りには、麦の取引の前に一稼ぎしようと行商人達が露天を並べている姿がある。今頃はどこかの王子様を追い掛け回している最中だろうが、中には子供向けの衣服を扱っている店もあるはずだった。
 質の保証はまったく無いが、安価で買うこと自体は難しくないだろう。
 ここに来るまでの道中にそんなものも見たなあと思い出したホル・ホースは、畑仕事か、と呟いた後、唐突に帽子をテーブルに叩き付けた。
「地道に畑仕事なんてやってられるか!!」
 夢に生き、面倒を嫌い、一攫千金を求めてきたホル・ホースとしては、畑仕事だけは手を出したくなかった。これまでの自分の人生を、全て否定してしまうような気がするのだ。
 だが、理由はそれだけではない。
「ティファニアちゃん、だっけ。あんたが連れてきた、金髪の大人しそうな子が居るだろ?あの子も畑に出て働いてるらしいじゃないか。ここに連れて来たんだから、手伝ってやっても良いと思うけどねえ」
 店主の言葉に、叩き付けた帽子を拾って頭に乗せたホル・ホースは、眉根を寄せて鼻から息を吐き出した。
「……何でか知らねえけど、あの嬢ちゃん、オレの顔を見ると泣き出すんだよ。アルビオンに居た頃はなんとも無かったんだが、こっちに来てからずっとあの調子でよ。どうにも顔を会わせ辛くて仕方ねえ」

 エルザの着替えの件で、子供の服を一着貸して貰おうとティファニアに会ったのだが、目が合うなり不安そうな表情を浮かべて泣き出してしまい、どうしようもなくなっていた。
 嫌われている。という雰囲気ではないから、自分が泣かせるようなことをしたわけでもないのだろう。
 となると、理由がさっぱり思いつかなかった。
「アンタのことだから、無意識にセクハラでもしたんじゃないの?」
「否定しきれねえところが泣けるが、こっちに来てからは一度もしてねえよ。初対面の頃に胸揉んだくらいだ」
「やっぱり、やってんじゃないか」
 確かに胸は揉んだ。だが、その償いはその場で受けたはずで、ティファニアも気にした様子は無かったのだ。ならば、別の原因だろう。
 他に何かしただろうかと、記憶の中を探ってみる。
 だが、そうと思えるものには、ついに行き当たらなかった。
「ただいまぁ」
「ん、お帰りなさい」
 頬を桜色に染めて暖かそうな湯気を体から浮かべたエルザが、力の入らない挨拶と共に店に戻ってきた。ブカブカのシャツを床に引き摺って、ペタペタと足音を立ててホル・ホースの方へ行こうとするエルザをジェシカが捕まえる。
 まだ水気の強い髪を拭くためだ。
 あらかじめ用意していたらしい白い布で、梳くように優しく水気を取っていく。
 されるがままのエルザの表情がふにゃふにゃと崩れた。
「こう見てると、ホントにガキだな」
「うにゃっ!?」
 様子を見ていたホル・ホースの呟きに、エルザの肩がびくりと震える。
 自分でも無意識にジェシカの世話を受け入れていたことに気付いたのだろう。慌ててジェシカの手から布を取り上げると、真っ赤な顔を隠しながら自分で髪を拭き始めた。
「ああ、ああ、そんなに乱暴にして……」
「い、いいから!自分でやるから!」
「子供が遠慮しないの。ほら、背中もまだ濡れてるじゃないか」
 自分でやるからとジェシカを突っ撥ねるものの、純粋な好意を向けられることが苦手なのか、抵抗も儘ならず、結局布を奪い取られて大人しく体を吹かれるエルザであった。

「平和だねえ」
 目の前の光景を目を細めて眺める店主に並んで、カステルモールも心なしか穏やかな表情を浮かべていた。とはいえ、それに全員が全員同意するわけでもないらしい。
 ギラリ、と鋭く目を光らせたホル・ホースが、全身のバネを使って手を伸ばした。
「オレの財布以外は、な!」
 店主の手元に伸びた手が、握られていたものを強引に奪い取る。
「4ドニエは小銭だが、くれてやるつもりはねえぞ」
「チッ!気付いてたか。ツケが溜まってんだから、雀の涙でも払おうとは思わないのかい」
「思わねえな」
 バチバチ、と交わった視線の中央で火花が散る。
 ツケだと言い切って無銭飲食を繰り返す客と飲食店の経営者として色々ダメな店主。どっちもどっちな戦いである。
 そんな無意味な戦いが行われている一方で、ジェシカは丹念にエルザの体を拭き続け、やがて満足そうに息を吐いた。
「ん、良し。もういいよ」
 水気を拭き終わったジェシカが、エルザの頭を軽く撫でて終了の言葉を告げた。
「……なんか大切なものを失った気がするけど、ありがとうお姉ちゃん」
「はい、どういたしまして」
 エルザの言葉の前半部分は小声であったために聞こえなかったのか、ジェシカは礼をそのまま受け取りニコリと笑った。
 何時の間に準備したのか、果実を絞ったジュースをいっぱいに入れた木杯をエルザに渡して飲ませると、大きく伸びをして笑い始める。
「あははははっ、なんか楽しいわ。あたし一人っ子だから、兄弟が欲しかったのよね。妹がいたらこんな感じだったのかしら?」
「まだ間に合わなくはねえだろ」
 ジリジリと視線を睨み合っている相手に向けて、ホル・ホースは引きつった笑みを浮かべて皮肉気に声を発する。
 店主の米神に青筋が浮かんだ。
「ハッ、勘弁して欲しいね!誰が、あんなオカマと二度も子供を作ったりするもんか!それともなにかい、あんたがジェシカの父親にでもなってくれるのかい?」

「それこそ冗談じゃねえ。オレはまだ父親になんて成る気はねえんだよ!1人で寝るのが寂しいなら、亡国の王子様を提供してやるぜ!」
 本人の知らないところで勝手に売りに出される元皇太子。しかし、買い手の店主は邪魔臭そうに手を払って、そんなものはいらないと言い放った。痴漢に間違われて逃げ惑うような王子など、買う価値も無いらしい。
「もう、なんでそんなに喧嘩っ早いのよ、二人とも」
 未だ睨み合う母とホル・ホースを呆れた様子で眺めているジェシカが、困ったような表情で両手を腰に当てる。
 あまり大きくないその声が聞こえたのか、二人して顔をジェシカに向けて口を開いた。
「こいつがメシを出さないからだ!」
「こいつが金を払わないからだよ!」
 お互いに指を突きつけ、ジェシカに訴える。
 その迫力に驚きつつも、冷静にそれぞれの訴えを聞いたジェシカは、うん、と頷いて結論を導き出した。
 考えるほどのことでもない。飲食店に金も持たずに来るホル・ホースの方が、圧倒的に悪いのだから。
 店内に居るエルザを含めた全員から注がれる冷たい視線に気がついたのか、ホル・ホースは冷や汗をじっとりと肌に浮かべると、気まずそうに視線を逸らして立ち上がった。
「ん、んん、まあ、用事も済んだことだし、そろそろお暇させてもらうぜ」
 手招きでエルザを呼び寄せ、近づいて来たところを抱き上げる。日光を遮るシーツを洗い場に置いて来てしまっているようだが、今から取りに行くのも間抜けな気がして、ホル・ホースは自分の帽子をエルザの頭に被せた。
「あ、そうそう。もう一個、忘れてたぜ」
 追い払うように手を振る店主を横目に、振り向いたホル・ホースは腰の後ろに手を回してカステルモールに近づいた。
「テメエに渡すもんがあったんだ。手を出せ、手を」
「なんだ、今頃」
 先ほどから顔を突き合わせていたというのに別れ際に思い出すとは、自分はそんなにも存在感が無いのかと、若干の悩みを抱えつつカステルモールは言われるままに手を出す。
 その手の上に、ホル・ホースが光るものを置いた。

 金ではない。インテリジェンス・ナイフ。つまり、地下水だ。
「肉体ゲットオオォォォ!!」
 陽気な声が、無機物であるはずのナイフから飛び出した。
「き、貴様、謀ったな!!」
 それが何であるかを認識したカステルモールは、かつて体を奪われた経験を思い出し、慌ててそれを放り出そうとする。
 だが、全ては遅かった。
 先ほどの台詞さえ、既に自身の口から出てはいなかったのだ。
「この体は、二回目だなあ。いやあ、今まで黙ってた甲斐があったってもんだ。あの王子様の体も悪くないが、こっちの方が絶対にイイからよお」
 地下水がカステルモールの口を介してご機嫌な声を出す。
 ホル・ホースが普段から腰の後ろに下げているナイフのフリをして、じっとしていたことがストレスになっていたらしい。やっと訪れた自由に、全身をぐっと伸ばして体を手に入れた充足感に身を委ねていた。
『なんと卑劣な……!出せ!私を解放しろ!』
「まあ、新しい体を見つけたら開放してやるからよ。それまで大人しく待ってろ。な?」
 意識化に落とされたカステルモールは必死に抵抗を試みるが、地下水にはそれを聞き入れる気は無いようだ。
「良ーし、ちゃんと乗っ取れたみたいだな!」
「おう、完璧だぜ!」
 何が起きているのかまったく分からない様子のジェシカたちを余所に、ホル・ホースと地下水は申し合わせたように拳を突き合わせて、作戦が成功したことを確認する。
 ウェールズを雑用のために開放する代わりに別の体を手にするという地下水の目的は、これで達した。そして、ホル・ホースの狙いも、最後の詰めを迎えようとしている。
 準備は整った。もはや、止めるものは一人も居ない。
 心なしか緊張した面持ちのエルザの頭を撫でつつ、ホル・ホースは地下水に視線を送って時が来たことを知らせた。
 地下水の刀身がカタカタと鳴って、了承の意が伝えられる。
 カステルモールの声が、ゆっくりと“緑の苔”亭に浸透した。
「彼のツケは私が支払おう」

「いらっしゃいませえええええええぇぇぇぇっ!!」
 力強くありながらも笑顔と温もりを忘れない、最高の挨拶が店主の口から飛び出した。
「ちょ、ちょっと、ママ!それでいいの!?」
「金さえ払えば誰だってお客だよ!注文はいつものでいいね?嬢ちゃんの方は、肉をレアにすれば特になんでもいいんだったか。ああ、そうそう、去年の収穫で醸造したワインが入ったんだ。熟成はまだまだだけど、これが中々飲みやすくてね。ワイン倉の手前参列目に、一本だけ蓋が赤いのがあるから、ジェシカ、取ってきてもらえるかい?」
 腕まくりした店主は捲くし立てる様に言葉を発し、娘に指示を加え、自身は厨房へと駆け込んでいく。相手が金を払うと分かれば、それまでの行動は気にしないらしい。先ほどまで睨み合っていたのが嘘のようである。
「腹減ってるから、早めに頼むぜー」
「任せときな!腰抜かすほど早く用意してやるよ!!」
 改めて席に座り直したホル・ホースの言葉に、厨房からひょいと顔を出してぐっと握った拳を見せて意気込みを示す。
 この様子に呆れたジェシカは、こんな母親だっただろうかと、記憶にある人物と同一人物であることに疑問を抱いた。抱いたけど、答えは出そうに無かったから忘れることにした。
「まあ、いいや。もう、なんか、こう、アンタに関わる話は真面目に考えてると馬鹿を見る気がするし」
「そうしろ。若いうちに細かいことを気にすると、将来禿げるらしいからな」
「余計なお世話だよ。ってか、あんたの性格も突然変わってるし……、どうなってんだかね」
 地下水のアドバイスとも言えない言葉に苦笑いをしながら返したジェシカは、母に言われた物を取りに店の裏手にあるワイン倉へと歩き始める。だが、その途中で唐突に立ち止まったかと思うと、その場で振り向き、ホル・ホースに声をかけた。
「食事が終わった後で、少し付き合ってくれない?久しぶりに、行きたいところがあるんだ」
 嫉妬の篭ったエルザの視線を受け流し、どこへとも聞かずにホル・ホースは了承する。
「いい女の頼みなら、四六時中受け付けてるぜ」
「ありがと」
 ひらひらと手を振ってワインを取りに行くジェシカの姿を見送り、ホル・ホースはヒヒと笑い声を上げる。
 ホル・ホースの首筋に、エルザが噛み付いた。

 地平線の見える青い草原の上に点々と広がる花畑には、数多の色を称える花々が咲き乱れて
いる。タルブの村の周囲を囲う田畑を越えた先にある、このまっさらな草原は、タルブ村に住む人々にとって癒しの場となっていた。
 朝は朝焼けの色を讃え、昼は太陽の光に輝き、夕方には燃えるように赤く染まり、夜には青白い絨毯に姿を変える。
 一種幻想的な雰囲気さえ持つ草原は、朽ち果てた寺院の正面に広がっているため、昔の人々はこの草原の様子に神秘性を見出していたのかもしれないと、現在では語られている。
「んー、相変わらず良い眺めね。久しぶりに来たけど、やっぱりいい場所だわ、ここ」
 優しく流れる風に長い黒髪を靡かせ、気持ちを晴らすように背伸びをしたジェシカは、振り返りながら問いかける。
「あんたも、そう思わない?」
 寺院の正面に立ったホル・ホースは、同意を求めるようなそんな言葉に、炭火で焼かれたもも肉を食い千切りながら首を捻った。
 冷凍保存されてアルビオンから輸入されたグリフォンの肉は、意外なほど脂が乗っていて美味い。ホル・ホースにとっては、目の前の草原よりも、こちらの方がずっと価値があるように思えた。
「気障ったらしい台詞を吐けないことはねえが、正直、ただの草原にしか見えん」
「……ま、期待はしてなかったよ」
 そう言いつつも、少し寂しそうにジェシカは草原を眺める。
 暫くの沈黙の後、ジェシカが口を開いた。
「こんなこと、突然言うのもなんだけど……。今日、あんたが来てくれて良かったよ。朝一番の馬車でこっちに来て、ママに会ったまでは良かったんだけど、その後がどうにも上手くいかなくてさ。怒鳴ってばかりになってたんだ」
 つい先ほどのことを思い出しながら、ジェシカの言葉は続く。
「死んだと思ってた相手が実は生きていた、なんて知らされて……、でも、一度つけちゃった心の整理は前のようには戻せなくて……、会ってみたらあの店の状態だろ?感動みたいなものが訪れるより先に、なんか、変な怒りが湧いて来ちゃってさ。それで、怒ってばかりで……」
 そこで言葉を止めて、ふう、と息を深く吐く。
 商売の付き合いで見てきた人間の中には、自分の感情を制御できない人も居た。そういった人物は何かと周囲に迷惑をかけるから、自分はそうならないようにと、常日頃気をつけていたつもりだった。

 だが、そう物事は上手くいかないらしい。
 心の歯車が噛み合わない状態に晒されると、感情というものは普段ほど簡単には扱えなくなる。
 気をつけていても、どうしようもないのだ。
「なんかこう、ギクシャクしてたんだ。もっと別に言いたいことはいっぱいあるのに、言いたいことが上手く言えなくて……。だから、アンタが来てくれて助かったよ。なにもかもどうでも良くなるくらい騒いでくれたから、肩の力が抜けた気がするんだ」
 母も同じ気持ちだったのかもしれない。
 久しぶりに会った娘の前で張り切っていたような、そんな気がしていた。
 ジェシカは、なんとなく正面から言うのが照れ臭くなるような台詞を思い浮かべると、ここまで語っておいてそれを言わないわけにもいかないだろうと、おもむろに振り返って頬を赤らめながら伝える。
「あんたは特に何もしてないつもりなんだろうけど、でも、あたしは感謝してるからさ。ありがとうって、言わせて……」
「お兄ちゃん、ここになんかあるよー?」
「なんだこりゃ?随分でかいな」
「ちょっと待て、すぐそっちに行く!」
 言っている途中でエルザの声が割り込み、それに続いて地下水が驚く様子を伝えてくる。既に気をそちらに向けられていたホル・ホースは、残った肉を食い終えると、軽い足取りで何を見つけたのかと歩き出していた。
 どうやら、何一つ聞いていなかったようだ。
「なんか言ったか?」
「……思いっきり罵りたい気分だけど、もう、いいよ。どうでも」
 真面目に語ってしまった自分が馬鹿みたいだと、ジェシカは情けなさで泣きたくなるのを堪えて、エルザたちが見つけたものを見るために歩き始めた。
 草原の片隅ともいえる位置に建てられた寺院は、不思議なことにハルケギニアではおよそ見ることの出来ない奇妙な造りをしている。
 丸太を組み合わせた門。石の変わりに、板と漆喰で作られた壁。それを支える木の柱。
 典型的な木造建築、というには、ハルケギニアの様式とは違い過ぎていた。
 門には菱型の白い紙を重ねたような飾りを括られた、太い縄がかけられている。どこと無く宗教色を匂わせるそれは、どう見ても、ハルケギニアに浸透している宗教とは合致しない。

 なんとなく、それらに見覚えがあるようなないような、そんな奇妙な感覚に囚われていたホル・ホースは、寺院の中で呆けた様子を見せるエルザと地下水の二人を怪訝そうな顔で見つめて中を覗き込んだ。
 そして、息を呑む。
「……やっぱり、どっかにあると思ったぜ」
 何の話だろうか、とジェシカも顔を覗かせて寺院の中を見ると、ホル・ホースたちの視線の先にあるものを視界に入れて、ああ、と声を漏らした。
「これ、家の曾お爺さんが残したやつだよ」
 その言葉に、ホル・ホースの目がジェシカに向けられた。
 なにか言いたそうに口をパクパクと動かすが、途中で思い直した様に首を振ると、改めて寺院の中に聳える巨大な人工物を見上げる。
「レシプロ機か……」
 ホル・ホースの視線の先に、第二次世界大戦時に活躍した日本の”零式艦上戦闘機”が当時の姿のまま、そこに存在していた。

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