ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのスネイク 改訂版-05

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匿名ユーザー

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5話

「食ベナイノカ?」
「うん……」
「何ヲ気ニ病ンデルカハ知ランガ、ルイズガ空腹ダト私モ困ル」
「何でよ?」
「今朝言ッタガ、私ハルイズカラスタンドパワーヲ貰ッテ生キテイル。
 コノスタンドパワーハルイズノ体調ガ万全デナイト供給ガ不全ニナルノダ」
「何よ……結局あんたの都合じゃない」
「ソウデナケレバ何モ言ワナイ」
「……さっきの話も、そうだったわね。『自分に関わる』とか、言ってたし」

後ろに立つホワイトスネイクに背中越しに言葉を放ると、ルイズはまたもそもそと食事を続けた。
気が重かった。
ホワイトスネイクの話のせいだ。

今のルイズにはどちらも選べなかった。
でも、今すぐにどちらかに決めてしまいたい自分が存在することをルイズは分かっていた。
でも……結局決められない。
そうしたときに失うものが、あまりに大き過ぎて。

心中に渦巻いている思いにため息をついて、ルイズはワインを一口飲んだ。

一方、ホワイトスネイクはルイズの後ろに立ちながらも周囲をあちこち見まわしていた。
朝食のときは予想外の屈辱に怒った勢いで消えてしまい、結局見ないままになってしまったからだ。

(小僧ト小娘ノ集マリニシテハ、皆ソレナリニ『作法』ヲ理解シテイルヨーダナ)

ホワイトスネイクの第一印象は、それだった。
どの生徒も食事中に騒ぐようなことはせず、静かに、そして音を立てずに食事をしている。
たまにホワイトスネイクをちらちら見る者がいたが、それに関してホワイトスネイクは気にしなかった。

(マントノ色ガテーブルゴトニ違ッテイルナ)

次にホワイトスネイクは生徒たちのマントの色の違いに気づいた。
確かにテーブルごとに着ているマントの色が違う。
学年ごとで分かれているのだろう、とホワイトスネイクは推測した。

(シカシ使用人ドモハ私ニ目ヲ向ケナイナ。教育ガシッカリシテイルラシイナ)

ホワイトスネイクの言葉通り、食事の配膳をするメイドたちはホワイトスネイクには目もくれない。
仮にも某ハードゲイ顔負けのどぎつい服装のホワイトスネイクを見ようともしない。
いや……

(見エテイナイ、トデモイウノカ……?)

そう考えた方が自然なくらいの有様だった。
そして、ホワイトスネイクがメイドたちから別のものへ興味を移そうとしたとき――

(……何ダ、アイツハ……?)

顔を真っ赤にしてホワイトスネイクをガン見するメイドが、部屋の隅――ちょうど厨房とつながる場所にいた。
手を顔で覆ってはいるが、指の隙間から見る物(ホワイトスネイクのことである)は見ている。
メイドの髪の色は黒。
他のメイドは金髪、茶髪ばかり、生徒の中にも黒髪はいなかったことからも、ここでは珍しい色のようだ。

(ドウ見テモ……アイツハ私ガ見エテイル……)

注意深くそのメイドに目を向けるホワイトスネイク。
するとメイドは、見ていることがばれたとでも思ったのか、すぐに厨房に引っ込んでしまった。

(少シ……興味ガ湧イタナ)

そう思うと、ホワイトスネイクはルイズの傍を離れて、メイドが入った厨房へと足を向けた。
幸い距離は18、あるいは19メートル。
中を覗くぐらいなら可能だろう。
そして歩き出して数歩で、足に何かがぶつかった。

「ン……?」

拾い上げると、それは中に何か液体の入った小壜だった。
ふたを開けてみると、中から少しきつめの芳香が立ち上った。

「香水、カ。誰ガ落トシタンダローナ……?」

そう呟いてあたりを見回すホワイトスネイク。

前述したとおり、ホワイトスネイクは凄まじく目立つ。
その服装については既に述べた通りだが、なによりデカイのだ。
身長2メートルは伊達ではない。
そんな身長2メートルのハードゲイ(に見えなくもない大男)が小壜を片手にあたりを見回せばどうなるか。

「おい、あいつが持ってるのって……」
「ああ間違いない、モンモランシーの香水だ!」
「でも何であいつが持ってるんだ?」
「あいつ、なんか探してるみたいだぞ……うわ、こっち見た!」
「香水の持ち主を探してるのかもよ?」
「そうだとしても、何であいつが……」

ホワイトスネイクを見てひそひそと話す生徒たち。
あんなシーンを見てしまったからには、もはや作法のへったくれもないのだ。
そしてホワイトスネイクを見て、またそういったひそひそ話を聞いて、顔を青くしている男がいた。
香水の持ち主、ギーシュ・ド・グラモンである。

あの香水はモンモランシーからギーシュへのプレゼントのようなものだった。
本人は「余ったからあげるだけよ!」と言っていたが、
あんな可愛らしい小壜に入れて渡してくれるからにはプレゼントに相違あるまい。

なのに、なぜギーシュがさっさと名乗り出て、取りに行くことをしないのかというと……。

「ギーシュさま、どうしたんです? 顔色がよくないですわ」
「い、いや……なな、なんでもないよ、ケティ」

心配そうな顔でギーシュを見上げる少女――ケティがそばにいたからだ。
つまりこのギーシュ、二股をかけていたのだ。
モンモランシーに愛を語っておきながら、同じ口でケティを口説いていたってわけだ。
……実に罪深い話ではないか。万死に値する。

それはさておき、ギーシュは決断を迫られていた。
正直言ってあの亜人は凄まじく目立つ。
もうどうしようもないくらいに目立つ。
目立つってことは、仮にモンモランシーがここに来た場合、
「モンモランシーが自分に渡したはずの香水を何故かあの亜人が持っている」という状況にすぐ気付くってことなのだ。
そうなれば二股のことがバレるのはあっという間だ。
本来あの香水を持っているべき自分の姿を探し、そして自分を見つけると同時にそのすぐ傍にいるケティにも気付く。
つまりこの状況……

(『モンモランシーが来るより早く香水を取り戻さなければならない』
 『香水を取り戻したことをケティにバレてはならない』両方やらなくっちゃあいけないってのがつらいところだな……。
 だが覚悟は……) 

そこまで考えた瞬間だった。

「ちょ、ちょっと! なんであんたがそれを持ってるのよ!」

聞き覚えのあり過ぎる声。
まさか……と思い、声のした方向に目を向けるギーシュ。

「オ前ノ物ナノカ?」
(よし! いいぞ……そのまま渡すなよ! モンモランシーに絶対渡すなよ!)
「違うわよ。これは人にあげたものなの。
 あたしが渡してくるから、さっさと返しなさいよ!」
「ソウカ。デハ頼ム」
(何だってェーーーーーーーーッ!!)

そう言ってホワイトスネイクは小壜をモンモランシーに手渡した。
ギーシュの祈りは、全く通じなかった。
そしてモンモランシーはまわりをきょろきょろと見回して、すぐにギーシュを見つけた。
そしてつかつかと近寄ってくる。

「モンモランシー、えっと、これには、深い理由が」

全部言いきらないうちに、グラスに入ったワインを顔にをかけられた。

「二股かけてたのね! 最低! もう二度と顔を見せないで!」

そう言ってモンモランシーが去っていったのもつかの間、今度は瓶入りワインを頭からどぼどぼかけられた。

「ギーシュ様……信じていたのに!」

そう言ってケティも去っていった。
後にはギーシュだけが残った。
その様子をホワイトスネイクは平然と見ていた。

(クダラナイナ)

小壜の件もカタがついたし、はやくさっきのメイドでも見に行こうと思ってホワイトスネイクが歩き始めた矢先、

「待ちたまえ!」

声がかかった。
ホワイトスネイクが声の主に目をやる。
そこにはキザったらしい仕草で顔を拭うギーシュがいた。

「何ダ?」
「君が香水の小壜を持ってうろうろしてたせいで、二人のレディの名誉が傷ついた。
 どうしてくれるんだい?」
「知ルカ。二股カケテタオ前ノ責任ダ。
 ソレニ私ハ小壜ヲ拾ッテカラ一歩モ動イテイナイ」

周囲の生徒たちがくすくす笑った。

「だったら、何で不用意に小壜を拾ったんだい?
 君は床に落ちてるものだったら何でも拾うのか?」
「私デナクトモ他ノ誰カガ拾ウダロウ。
 オ前ハソンナコトニモ気ガ付カナイ程ノ馬鹿ナノカ?」

くすくす笑いが、爆笑に変わる。

「ふん。ああ、そう言えば君は……『ゼロ』のルイズの使い魔、しかも亜人だったな。
 亜人に人間の、しかも貴族の礼儀なんてものを期待した僕が馬鹿だったよ。
 もう行きたまえ」
「イヤイヤ、気ニスルナ。
 コッチモ人間ノ小僧如キニ正シイ口ノ聞キ方ナンカ期待シテイナカッタカラナ」

また周囲が大笑いした。
いつもキザでカッコつけてるギーシュが謎の亜人に散々にバカにされる有様が楽しくてしょうがないのだ。

一方、ギーシュの挑発は昨晩のルイズのヤケクソの大言壮語に比べれば屁でもないレベルだった。
よってギーシュの挑発でホワイトスネイクを怒らせることなど不可能なのだ。
そして挑発をことごとく挑発で返され、散々笑い物にされたギーシュが顔を真っ赤にして呟いた。

「どうやら、君は貴族に対する礼儀を知らないらしいな」
「ソレハサッキ言ッタロウ。
 オ前ハ自分ガ何秒カ前ニ言ッタコトモ覚エラレナイクライノ馬鹿ラシイナ」

再三再四湧き上がる笑いに包まれて、ギーシュは怒りで体を震わせた。

「いいだろう……君に礼儀を教えてやる! 決闘だ!」

決闘。
その単語に周囲がざわめいた。

「決闘カ。面白イナ。場所ハドコダ? マサカココジャアナイダロウ?」
「当然だ。貴族の食卓を亜人ごときの血で汚すわけにはいかないからね。
 ヴェストリの広場で待っているよ」

ギーシュはそれだけ言うと、マントを翻して去って行った。
他の生徒たちがわくわくした様子で立ち上がり、そのあとを追っていく。
退屈な寮生活では他人の決闘の観戦も大事な娯楽のひとつなのだ。

一方のホワイトスネイクはルイズのところへと戻っていた。
ヴェストリの広場の場所が分からないし、分かったところで自分ひとりでは行けそうにないからだ。

「ルイズ」
「……何よ?」

うつむいたままルイズが答える。
余程悩んでいたのか、さっきの一悶着には全く気付かなかったようだ。

「決闘スルコトニナッタ。今カラ『ヴェストリの広場』トカイウトコロニ行カナキャアナラナイ」
「ふーん、決闘するの……って、なんですってえええええええ!!!」
「ダカラ言ッタトオリダ」
「ちょちょ、ちょっとあんた何やってんのよ! っていうか相手は誰!?」
「金髪ノキザッタラシイ小僧ダ」
「金髪、キザったらしい……ギーシュじゃない!
 ギーシュはドットでそんなに強くないけど、でもメイジ何だからあんたよりはずっと強いわよ!」
「ドウカナ……アイツハチットモ強ソウニ見エナカッタガナ」
「そういう問題じゃないわよ!
 メイジに外見は関係ないの!」
「ドッチデモイイ。トモカク、決闘シナクチャアナランノダ」
「ダメよ。謝ってきなさい。今なら多分間に合うわ」
「フザケテルノカ? コノ状況デ」
「ふざけてるのはそっちじゃない!」

そこまで言ってルイズはため息をつくと、

「もういいわ。好きになさい。ヴェストリの広場までは連れてってあげるけど、そこからはどうなっても知らないから」

そう言ってむすっとして歩いて行ってしまった。
ホワイトスネイクはそのあとに続く。

(サテ……決闘カ。スゴク面白クナッテキタナ。
 メイジノ実力、ソシテ今ノ私ノ能力……実証スベキコトハイクラデモアル。
 ソレニ……ルイズハ『好きにしていい』ト言ッタカラナ。
 サセテモラウサ……私ノ好キナヨーニナ……)



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