ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-41

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匿名ユーザー

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「ほほう、東方産の品々をコレクションしとる貴族か。
 君にそんな知り合いがおったとはのう」
「昔請け負った生徒が、そんな話をしていたのを思い出して。
 彼の祖父がずいぶんと熱を上げていたとか。
 なんでも本当に東方産なのか、よくわからない品も多いそうです」
コルベールの言葉にうなずくオスマン氏。
「そりゃ好都合じゃな。少年の求める掘り出し物がその中にあるかもしれん」
「では早速準備を…明後日にもイクロー君を連れて出発する事にします」
「あー、ちょっと待ちたまえ」
急いで学園長室を出て行こうとするコルベールを、オスマン氏が呼び止める。
「なんでしょう?」
育郎から聞かされた異世界の優れた技術の品を見てみたいのだろう、いますぐに
でも出発したそうな様子の、コルベールに告げる。
「一緒にミス・ロングビルも連れて行ってもらえんかの」
「それはかまいませんが…何故ミス・ロングビルも?」
確かにミス・ロングビルは事情を知る数少ない人間の一人であるが、今回
わざわざ一緒に出かける必要があるとは思えない。
「ふむ…今のわしの格好を見て、君はどうおもったかね?」
そう言われ、ロープで縛りあげられ、天井から吊り下げられているオスマン氏を
改めて眺める。
「今度は何をしたんですか?」
「実はのう…今日転んだふりをして、ついにミス・ロングビルの胸を触って
 みたんじゃよ!」
そのときの感触を思い出してか、至福の笑みを浮かべるオスマン氏。
「…いいかげんにしないと、本当に訴えられますよ?」
「どいつもこいつも、たかが秘書とのスキンシップではないか。
 そんな大げさに騒ぎ立てる程の事では」
「それはスキンシップではなくセクハラと言うんです!まったく…」
そこでコルベールがある事に気づく。
「それだけのことをして、よくその程度ですみましたね…」
縛りあげられたオスマンに、他にダメージは見当たらない。
「そうじゃ、いつもならちっとモートソグニルで下着を覗こうとするだけで、
 容赦のない虐待を加えるてくるんじゃが」
「虐待…それは自業自得なんじゃ」
コルベールの言葉を無視してオスマン氏が続ける。
「なにか悩み事でもあるのか、今日は朝から沈み込んでいての。
 胸をさわったのも元気づけるつもりだったんじゃが。
 それでかるく少年と旅行でもして気分転換を…と思っての」
「なるほど、そう言う事なら急いで準備を」
珍しく気の利いた事をするオスマン氏に感心しながら、コルベールが部屋を出る。
「ああ、そうじゃ。来週にはフリッグの舞踏会があるから、それまでには
 帰ってくるようにするんじゃぞ」




「フリッグの舞踏会?」
育郎が料理を切り分ける手を止め、キュルケに問い返す。
「そ、来週のユルの曜日に開かれる舞踏会。ルイズから聞いてない?」
首を振ってルイズを見る。
「そういえばそんなのもあったわね…」
使い魔召喚からいろいろありすぎて、すっかりそんなイベントの事等忘れていた。
「あらあら、せっかくの舞踏会を忘れるなんて…
 でも貴女にとって、今回のは特にどうでもいい事かもね」
「ど、どういう意味よ…」
わざとらしいため息をついた後、意味深な笑顔を浮かべるキュルケに、
嫌な予感がしながらも、ルイズが聞き返す。
「あら、フリッグの舞踏会の伝説も忘れたの?舞踏会で」
「フリッグの舞踏会で一緒に踊ったカップルは、必ず結ばれるんだ!!」
「…ギーシュどっから生えてきたの?」
キュルケが振り向くと、いつの間に近寄ってきたのか、ギーシュがポーズを
つけて立っていた。
「ま、そういう事、ロマンチ」
「ロマンチックだろ?もちろん僕と一緒に踊るのはモンモランシーさ!」
「ちょギーシュ!大きな声で言わないでよ。恥ずかしいじゃない…」
「………」
ギーシュの背後から、やはりいつものようにモンモランシーが現れる。
「ああ、モンモランシー…僕と踊るのはそんなに恥ずかしいのかい?」
「そ、そんなわけないじゃない。だからその…もう…ばか」
いつものようにいちゃいちゃするギーシュ達に、やはりいつものように彼女の
いない生徒達からの敵意の視線が突き刺さるが、当然いつものように二人は
そのような事に気づかず、幸せ空間を作り出している。
「まぁ…そういう事なの。ルイズには縁のない話でしょ?」
「そ、そんな事ないわよ…」
否定はしてみるものの、その声は小さい。
ルイズはこれまでの学生生活の中で、これといった浮いた話ができるような
体験がさっぱりなかったのだ。
ちなみに去年のフリッグの舞踏会では、ルイズは失敗魔法で壊れた教室の
後片付けを命じられて、参加できなかった。
「そんな事あるんでしょ?まぁ…そのぺったんこの胸じゃしょうがないわね」
「な、なんですってぇ!」
机に手を叩きつけ、勢いよくルイズが立ちあがる。
「ちょっとむむむむむむ胸が大きいからっていい気にならないでよ!
 だ、だいたいあんたこそ、最近男が寄り付いてないみたいじゃない」
確かにそれまで食事中であろうとも、常に周りに群がっていた男子生徒の姿が、
今はさっぱり見当たらない。
キュルケが食事のたびにタバサをつれて、育郎の周りの開いている席に
座るようになったからだ。
「あら、そういえばそうね」
指摘されたキュルがすんなりと認める。
「ほらみなさい!」
だがキュルケは意に介した様子も泣く、立ち上がり、遠巻きに眺める生徒達に
むかって振り返り、芝居じみた口調でこう言った。
「私をフリッグの舞踏会でお誘いくださる殿方はおりませんこと?
 最近さびしい夜が続いてて…誰か慰めてくださる方はいないかしら」


「こんな女のどこがいいのよ…」
「豊かな胸は女の器量の証明なのよ」
舞踏会の相手を2桁ほど集めたキュルケを、ルイズは苦々しげに見つめる。
「…そ、そうよ!タバサはどうなのよ!私より小さいじゃない!」
先ほどまでの騒ぎも我関せずと、黙々と食事をつづけるタバサを指差す。
「あら、タバサは可愛いからいいのよ。それにこれから大きくなるかも
 しれないじゃない。ね、育郎?」
「え?あ、いや…」
いきなり話を振られて戸惑う育郎に、ルイズが自信なさげに問いかける。
「や、やっぱり男の人って胸が大きいほうがいいの?」
「い、いやそんな事ないよ」
育郎の答えに自信を持ったルイズが、キュルケに向き直りふんぞり返る。
「ほらみなさいよ!大事なのは胸じゃないのよ」
「…ちょっとギーシュ。ほらいつまでいちゃいちゃしてるの。
 ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「なんだいキュルケ?」
「あなた胸は大きい娘と小さい娘、どっちが良い?」
「もちろん大きいほうさ!」
親指をたてながら、とてもいい笑顔で答えるギーシュ。
ちなみにモンモランシーはあまり大きいほうではない。
というかちょっと小さめである。
「ちょっとギーシュ…話があるんだけど」
「なんだいモンモランシー?」
「こっちに来て」
ギーシュが物陰に連れ込まれ、ほどなくして彼の悲鳴が食堂にこだました。


「ま、胸のことはもう良いわ。それよりイクロー、あなた誰と踊る気なの?」
「え、僕が?」
ごく普通の家庭に生まれ育った育郎にとって、舞踏会等と言われても、いまいち
現実味を感じられるものではない。ましてやそれに自分が参加するなんて事を、
彼はさっぱり考えていなかった。
「僕はいいよ」
「「えーなんで!?」」
しかしルイズとキュルケにとっては、それは意外な答えである。
「いや、だって僕が参加したら迷惑だろうし…」
周りを見回すと、あいもかわらずこみ合った食堂において、見事に異質な
空白地帯を作り出している。
「そんなの気にしなくても良いじゃない」
「ルイズの言うとおりよ。ほら、タバサも貴方と踊りたいって」
タバサを見ると、あいもかわらず無表情で食事を取り続けている。
「いや、でも踊りとか、僕にはよくわからないし」
「え、それは本当かい!?」
モンモランシーの折檻から開放されたギーシュが、ボロボロになりながら
驚きの声を上げる。
「ああ、そういうのはちょっと縁がなかったというか…」
「そうなのかい?平民達が、君の事を貴族とか言ってたからてっきり」
「いや、僕は貴族なんかじゃ…」
「うーん、貴族じゃなくて上級だったかな?」
「………」
何が上級で、何の貴族なのか非常に気にはなったが、あえてそれを確かめる
気にはなれない育郎であった。
「なんなら後で僕が簡単なレッスンでもしようか?」
「いいよ、なんだか恥ずかしいし」
「そうかい?まあ確かに男同士でダンスってのもちょっと…」
「それじゃタバサ、貴方がレッスンしてあげたらどう?」
「タバサじゃ背が合わなくてやりにくいんじゃないの?」
至極もっともな意見を言うモンモランシー。
「しょうがないわね…それじゃ主人の私が」
「貴方も大して変わんないじゃない」
「………じゃあ、イクローに聞きましょう。誰に教わりたい?」
「え?」
舞踏会に出ると一言も言ってないのに、いつのまにか参加するのは決定した
事になっている流れに戸惑う育郎に声がかかる。
「おお、イクロー君!」
呼ばれた方を向くと、ミスタ・コルベールが手を振っているのが見えた。
走ってきたのか、汗のてかりで通常の3倍光り輝いている。
「どうかしたんですか、コルベール先生?」
「ああ、食事中かね。なら後で私の部屋に来てくれないかね?話があるんだが」
「いえ、もう僕は食べ終わりましたから。ルイズ、ちょっと行って来るね」
「ええ、それじゃあとで」
二人が食堂から出て行くのを見送った後、ギーシュ達がミスタ・コルベールが
育郎になんの話だろうと、他愛ない会話をする中、タバサだけがそれまで
一人黙っていたキュルケの呟きを聞いた。
「ごめん…やっぱりこれはないわ」
「何が?」


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