ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-40

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匿名ユーザー

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燃え盛る廊下を走りながら、今自分が夢を見ている事を認める。
そもそもこの館、自分が生まれ育った館は4年前に燃え尽きているのだ。
さらに言うなら、ところどころに転がっている見知った人間達…物言わぬ
骸となって転がっている者達も、その時一緒に灰となっている。
だがそれでも、父と母の部屋に向かう足は止まることはない。
たとえ夢の中であろうとも、あの瞬間を回避できるなら、彼女にそれ以外の
行動をとることなどできようもない。
「父さん!母さん!!」
力任せにドアを開けた彼女の目に飛び込んできたのは、血まみれの…


「………ッ!!!」
飛び起き、ここが自分の学院内であてがわれた部屋である事に気づき
ミスロングビルは安堵した。
「馬鹿だね…夢だってわかってたじゃないか…」
そう言って苦笑すると幾分か気持ちが落ち着いてきた。
乱れた寝間着を調え、机の下に仕掛けておいた罠を見る。
「ちゅう」
そのままモートソグニルごと罠を窓の外に放り投げ、ベッドに腰掛ける。
「なんだってまたあんな夢を…」
いや、理由はわかっている。
昼間育郎から聞かされた…というより、エルフの魔法についての話を
聞きたがる育郎を妙に思い、いろいろと(半ば強引に)聞き出したのが、
あの学生の少女、タバサの話だった。
幸せな暮らしが、巨大な権力によって踏み潰される…
それはまさしく、自分の身に降りかかった、あの忌まわしい出来事と同じだ。
育郎の話を聞いた後、たまたま廊下でタバサとすれった時、思わず呼び止めて
しまったが、結局何も言えなかった。
実際何を言おうと思ったのか…

慰め?
そんなものは無意味だ。
誰も憎むなとでも?
それこそ無駄だろう。

自分も幾度か復讐を考え、そして何度も諦めてきた。だが憎しみは消えない。
可能ならば、今からでもあの男を八つ裂きにしたいぐらいだ。

「…あの子に感謝しなくちゃね」
父達が命を懸けて唯一守ることのできた少女を思い出す。
それは自分にとっても妹のような存在だった。
自分の命を含む全てを投げ出せば、復讐の可能性はゼロではなかっただろう。
だがそれでは残されたあの娘は、誰にも頼ることが出来ず、いずれ狩り出され、
殺される。そう考えたからこそ、自分は復讐を諦めたのだ。
或いはタバサもいつか選択するときがくるのかもしれない。
病に冒された母か、それとも復讐か…
「…やめやめ。辛気臭くていけないよ」
立ち上がり、窓から自分の故郷がある方角を見る。
「ひと段落したら。休みをもらって帰るのも良いかもね」
言ってから苦笑する。
「やれやれ…今の仕事が板についちまったのかね?」
とっととおさらばするつもりが、すっかり長居してしまった。
或いはこのままここに腰を落ち着けるのもいいかもしれない。
「ま、とりあえずあの坊やの事が一段落したら、考えてみても良いかもね」


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