ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ-21

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匿名ユーザー

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舞踏会から数日後、朝早くにルイズは一人広場へ向かっていた。
そろそろ身支度をする生徒や一足速くアルヴィースの食堂へと向かう生徒達とすれ違うルイズの表情は浮かないものだった。
一足速く食堂へと向かう生徒達の目的は友人との語らいや耐え切れない空腹だ。
朝食は出ないが、そこで生徒や教員全員の食事を用意するため忙しなく働くメイド達に命令すれば、紅茶やワインなどを要求できないこともないからだ…
そんな彼らと逆の方向へと、ルイズが今一人で広場に向かっているのは新しい使い魔を召喚するためだった。

使い魔は、原則的には一度契約したら死に別れるまでメイジのパートナーになる。
その儀式はとても神聖なものとして扱われているけれど…エルフとの戦争を始め、使い魔が死んでしまう事っていうのは前例が無いわけではなかった。
むしろ、戦争時代にはよくあることだったが…まだ使い魔がピンピンしているのに新たな使い魔を召喚する、というのは学院の歴史始まって以来のことであった。

それに挑むルイズの表情は曇っていた。
ポルナレフのせいだった。
ルイズは、ポルナレフとは舞踏会の後も余り話せていなかった。
それとなく探してみたのだが、ポルナレフの方がその状態になかった。

まだマチルダが亀の中にいるというのもあるし、再会するまでの間に起きた出来事についてポルナレフはジョルノと話し合わなければならなかった。
イザベラとの一件を見ていただけにギャングの話は、激昂するマチルダを抑えながらでも最優先で話し合わなければならなかったのだ。

そんなポルナレフにジョルノが話したのは、麻薬だけでは金がすっからかんになりそうだったんで表の事業を広げているだとか、人材のスカウトと育成に忙しいとか、そういう話だった。
本当はそれだけではないだろうなとはポルナレフも思っていたが、今はジョルノを信じて確かめない事にしていた。
その場には、仕事を覚えようと張り切っているテファもいたから話にくいだろうと、ポルナレフは年上の余裕でもって察してやったのだった。
実際、この時はそれは外れてはいなかった。
スカウトした人材にこの学院のコルベールや卒業する生徒も入っているとか昨夜は幹部を拷問しましたなんて言えるわけも無い。

だがそんなことはルイズの知る由も無い事で、主人をないがしろにするポルナレフに対して更に怒りが沸いた。
その怒りはルイズの気難しい気性と結びつき…あの馬鹿、優しいご主人様がどうしても使い魔になりたいっていうなら許してあげようかと思ったのにどこで油を売ってるのかしら?
そう思いながら、ルイズは最後には意地になってポルナレフから話しかけてくるのを待つようになってしまったのだった。

今も未だその鬱屈した感情を引き摺ったままのルイズを、なぜか目の下に隈を作ったマリコルヌが待ち構えていた。
マリコルヌは何故か冷めた目でルイズを見下していた。
気分が優れなかったルイズの神経を酷く逆撫でする目つきだった。今までにも嘲笑われた事はあった。

ルイズのコレまでの人生はそればかりだったが…でもそれとは違うように、その時ルイズは感じた。
ゼロ(魔法が使えない)だからとかじゃあない、汚らわしいものでも見るような目だった…!
目の下の隈だけじゃない、脂肪たっぷりで気付かなかったけど良く見ればほんのちょっぴりこけた頬。
細い目でルイズを見下ろしながら、そのでぶは言った。

「なんだい? 視界に入ったからただ見下していただけなんだけどな」
「あんたなんかに見下されるいわれはないわッ! 大体、どうしてアンタがここにいるのよッ!!」

そう聞いた瞬間、マリコルヌの目が鋭い輝きを放ったようにルイズは感じた。

「僕のクヴァーシルが殺されたからだ」

簡潔に言ったマリコルヌはルイズを相変わらず見下ろして言う。
その声は一年以上同じ学年で過ごし、つい先日までのマリコルヌの声を知るルイズには一気に十年以上も年を取ったような声に聞こえた。
本当にグヴァーシルは死んだのだと言う実感がルイズが言い返すのを一瞬遅らせた。

「一つ言わせて貰うなら…(これは僕が使い魔を召喚する時の為にお爺様から聞いた話なんだけど)
優秀なメイジの中には最初はまだ未熟で使い魔を制御できない人もいるんだ」
「…そ、そんなこと、アンタに言われなくっても知ってるわ」

そんな事はルイズもこの学院に来て魔法を覚える為に自分で学習する過程で知っていた。
才能のあるメイジの中には、稀にはその時は未熟であるにも関わらず幻獣、例えばタバサのようにドラゴンを呼んでしまった場合もある。

使い魔は主人のいいように記憶を、脳内の情報全てを変えられる。
その効果は時間が経つにつれ強くなり、最後は一心同体となる。
だが高い知能を有する使い魔を呼んでしまった場合、すぐには認められないことがある。
極端な例を出すなら、犬っころを召喚したトライアングルの横でドラゴンの自分がドットの使い魔であることに不満を覚え反抗したりする。
それもルイズ達の見えないところでシルフィードがタバサに不満を言ったりする程度からそれ以上までだったが。

だが…

「その人達は自分を磨いて使い魔に自分を認めさせようとするけど、ゼロのルイズは新しい使い魔を呼ぶんだな。僕のクヴァーシルを殺した水のメイジが同じレベルのメイジなら楽なんだけどな」

油の浮いた唇を歪ませてマリコルヌはルイズに背中を向け、新しい使い魔を召喚しに行く。
マリコルヌにはクヴァーシルは氷に、ウィンディ・アイシクルのような魔法で殺されたことだけは感覚としてわかっていた。

夜の森に散歩に出ていたクヴァーシルに何があったのかはわからない。
殺されるような理由があったかどうかも、なにもわからないがマリコルヌにはわかる必要も無かった。

ただクヴァーシルのものと思われる食い荒らされた遺体がマリコルヌの瞼に浮かんでいた。

普段どおり手元においておけばあんなことにはならなかった…
あの夜。夜の森には危険な動物もいるのにそんなことは考えずに今夜は舞踏会だしと、マリコルヌは羽目を外してしまった。
歯軋りをするマリコルヌの心は復讐へと傾いていた。
追悼する気持も無く悲しみを一人で整理する事も出来ず、マリコルヌはまだ見ぬ加害者を憎む事だけに専念していた。
そうしなければ、マリコルヌは精神のバランスを保つ事ができなかった。

ルイズへ吐いた言葉は、氷で殺されたから多分水のメイジと言う推理を正しいと信じ、学院にいる水のメイジ全てに懐疑の目を向けるだけに飽き足らず、
はけ口を求めわかったようなふりでその刺々しさをルイズに向けて撒き散らしているだけだった。
暴走が水のメイジとの仲を悪くすることには無頓着になり、ペットショップからは逆に離れていく事にはマリコルヌは気付けなかった。

そんなマリコルヌに見下されたルイズは、反感を覚えると共に酷くショックを受けていた。
一理ある。そう思ってしまったからだ。
魔法を使えることを証明し、皆に認められたい…だが、使い魔に認められず騙されたまま新しい使い魔を召喚して、はたしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは真に貴族と呼べるだろうか?
正しく…ルイズが今までに培ってきた正しいと考えるオーソドックスなメイジのイメージが、ルイズにそんな疑念を抱かせていた。

ルイズは疑念に囚われ使い魔召喚の儀式に向かう足を止めた。

新しく使い魔を召喚する羽目になったのはルイズの責任ではない。
元の飼い主が現れたし、亀の中の人に騙されていたし、そもそも契約も結んでいないのだ。
客観的にルイズは全く落ち度は無い。
他人が聞けばそういうだろうが、しかし…とルイズは思ってしまうのだった。


だが母ならこんなことには、と。
自分がゼロだから、こんな情けないことになっている…そうルイズは考えてしまっていた。

「あらルイズ。貴方まだこんな所にいたの?」

自慢のフレイムに乗り、隣室の(実家もお隣の)ツェルプストーに話しかけられ、振り向いたルイズの表情には迷いが浮かんでいた。
ポルナレフともう一度話し合うことを勧めに来たキュルケはそれを見て、笑顔で迷っているルイズの意地っ張りな性格を突付きにフレイムをルイズの所に進ませる。

まだ見込みはある。そう思えたからだった。

宿敵であるツェルプストーの人間から言われた言葉に、ルイズは反発してしまうかもしれないと思ったが、キュルケはルイズを説得せずにはいられなかった。


ところでそのルイズの使い魔だった男。
パッショーネ所有の亀ココ・ジャンボの中で眠っていたジャン=ピエール・ポルナレフ(享年36歳)は、金的に加えられた男性にしか理解できない強烈な衝撃で目を覚ましていた。
とてもいい夢を見ていたような気がする。

それは最愛の妹と暮らした日々だったかもしれない。
カイロへ向かうつらい旅の夢だったかもしれない。
だが、それが突然…言葉にできない痛みと共に現実へと連れ戻された。

「お…gッ」

痛みだの激痛だのというチャチなもんじゃない。
身もだえする事も出来ず、ポルナレフは床をのた打ち回る。
声にならない悲鳴を上げながらどうにか周囲を見回したポルナレフの視界に、グンパツな足が入った。

「何でアンタがあたしの横で寝てるんだいッ!!」
「………あ、姉さんが昨日俺に愚痴とか苦労話とかテファとの話とかをしてそのまま酔いつぶれたからだ」
「…え?」

丸くなりながら、ポルナレフはそれだけ言った。
妹を不本意な形で取られたマチルダは、学院にいる間は亀の中から出られないという事情もありストレスが溜まっていた。
ポルナレフは年上の男性として、それなりの人生経験からそれを察しストレス発散にと酒を飲みながら話を聞き、そのままマチルダは酔いつぶれたのだったが…

青い顔で蹲るポルナレフをマチルダはばつが悪そうに見下ろす。
なんでココにいるかとか、昨夜どうしていたかとか、冷静になり思い出したマチルダは痙攣するポルナレフの背中を摩りはじめた。

「わ、悪かったね」

何か返事をしたいが、先程の返事だけでポルナレフの体力は限界を迎えていた。
痛みなどという段階を超越した苦しみに悶えながら、ただ痛みが引くのを待つしかない。
なんで魂だけなのにこんなに痛いんだよッ!!とか色々と疑問も浮かんだが考える事なんてできるわけがないッ!!

それでも返事を返そうとしたポルナレフの口からうめき声があがる。
びっくりして思わず手を退いたマチルダは、更にもっとばつが悪くなりポルナレフの背中を笑顔で摩り続ける。

テファ達と朝食に向かう前に亀の中へと入ってきたジョルノは、そんな光景に出くわして…
絨毯に蹲ったまま空気の動きに気付き顔を上げたポルナレフと目を合わせた。

ポルナレフの体勢、マチルダの態度。
何より脂汗をたっぷり流し、笑顔を浮かべようとして失敗するポルナレフの切ない目が、何があったのかを雄弁にジョルノに伝えていた。

ジョルノは何も言わずに首を振ると、後で食事を亀の中に入れることを簡潔に次げて背を向けた。
ポルナレフはまた限界に達し、顔を伏せた。

「ああ、そうだ。ポルナレフさん」
「…?」

男の尊厳が砕けたかもしれないと本気で心配をし始めながらポルナレフは、背中を摩られながらジョルノを見る。
さっさといけよと八つ当たり気味に目を細めるポルナレフにジョルノは嫌味なほど爽やかに笑っていた。

「テファの事は、この際です。礼を言っておきます。ありがとう。お陰でテファの事は知られていないようです」
「き…きにす、すんな。俺が好きでやったことだから、な」

亀から出て行くジョルノを見送り、ポルナレフはまた蹲る。
状態は最悪だったが、先日テファを手伝った事が無駄ではなかったので気分は良かった。

「お待たせしました。じゃあいきましょうか」
「う、うん。姉さん、まだ怒ってた?」
「いいえ、ポルナレフさんと仲良くなったようですよ」

それは少し違うと言いたかったが、ポルナレフは歯を食い縛るので精一杯だった。


ジョルノが、いつか約束した通りテファとタバサと共に食事しながら、ヴァリエール家を始めとする懇意にしている貴族達や、商売相手からの手紙を読む頃。
「食事中は、止めた方がいい」などとタバサに窘められ、カトレアからの甘ったるい…しかし少なからずヴァリエール家の内部情報を含んだ手紙に目を通している時、二人が新しい使い魔を召喚することを聞きつけたのだろう。

ルイズとマリコルヌの新しい使い魔を見ようとしてか、暇そうなな学生達が何人か広場にはいた。
マリコルヌだけでなく、一旦は思い直しかけたルイズもいる。
キュルケの説得は、逆の効果をルイズに齎してしまい、ルイズは「別に新しい使い魔がいてもポルナレフに認めさせることはできるんじゃねーの?」と思い至ってしまった。

ルイズとマリコルヌは彼らと頭部からの照り返しがまるで太陽を雲で遮られたかのように和らいだコルベールに見守られながら、魔法を唱えはじ…

「あの、ミスタコルベール」

思わずルイズは尋ねようとした。
その頭部を見つめながら…コルベールは凄くイイ笑顔をしていた。

「なんですかな」
「頭「なんですかな?」い、いえ…」

笑顔のコルベールの凄味に負けた二人は同時に召喚を開始する。
魔法が失敗した時と同じようにルイズが唱え終わるとほぼ同時に爆発が起こった。
巻き上がる砂埃に紛れ、既にそんなことには慣れきっているこの場に居合わせた者達の目には二つの物体が吹き飛ばされ、広場に転がっているのが見えていた。

一匹は愛らしい子鳥。爆発に巻き込まれ羽は汚れ、気絶してしまっている。
もう一人は華奢な、変わった衣服を身につけ四角い箱を後生大事に抱えた人間の男。
こちらは気絶してはいないようだが、まだ状況がつかめないのが動けないでいた。

…ルイズは目を見開き、そして迷うことなく小鳥の前で膝を突き、口付けて契約を終えた。
そして誰かが口を挟む前に、鋭い声を発してコルベールに報告する。

「ミスタコルベール!確認を「ちょっと待て!?どう考えたってそれ僕の使い魔だよ!」

一歩遅れたマリコルヌの叫びをルイズは鼻で笑った。
手の中に納めた自分の使い魔を撫でながら、ルイズは言う。

「何バカなこと言ってるの?既に…ここにある確かなルーンが見えないのかしら?そうですよね。ミスタコルベール」
「ヴ、まあ…そ、それはそうだけどね?」
「で、でも…」

さっき嫌味なんか言わなきゃよかったと考えないでもないマリコルヌに目もくれず、ルイズは爆風で乱れた桃色がかった髪を手で梳きながら立ち上がる。
誰も、何も言えない。
もう契約は為されてしまいルイズに他の使い魔を与えるには小鳥を殺すしかない。
だがそれは流石にはばかられたし、この後マリコルヌがどうするのか皆着になっていた。
そんな中をルイズは堂々と小鳥を連れて広場を後にし、まだ気絶している人間とマリコルヌが…その場に残された。

マリコルヌは救いを求めコルベールを見る。
コルベールは何も言わず、首を振った。
使い魔が死んだら仕方が無いし、契約が済んでいない使い魔に持ち主が現れたら…まぁある意味仕方ないだろう。
神聖な儀式とはいえ、いや神聖だからこそ他人のペットを強奪して使役するなどという前例は残したくない。

それらのケースと召喚された使い魔が気に入らないからもう一度召喚させてくださいというのを同列に扱うわけにはいかないのだ。
そんなことを許可してしまえば、極端な事を言えば自分の気に入った使い魔が出るまで召喚を行う生徒だって出るかもしれない。
可能性の問題だが、それで毎年二回、三回と召喚をやり直す生徒が出てしまうような前例を残すわけにはいかない。

コルベールは、せめて速く終るようにとまだ状況がつかめていない見慣れぬ服装をした少年を拘束する。
余りの哀れさに、コルベールは溢れてくる涙を止める事が出来なかった。
だがしかし…それでも、心を鬼にして混乱する少年を拘束しなければならなかった。

ズッキューンッ!!

「や、やった! 流石風上のマリコルヌッ、俺達に出来ない事を平然とやってのけるゥッ!! そこに痺れる憧れるゥッ!!」

かなり奇妙な何かが重なり合った音と、おぞましい身も毛もよだつ絶叫。そして全くしゃれになってないが、茶化すような言葉が広場に響いた。


あ、ありのままいまおこったことをせつめいするぜ。
あきばからのーとぱそこんをかかえてかえろうとしたんだ。
そしたらとつぜんめのまえにかがみがあらわれてどこかにいどうしていた。
いつのまにか、からだはこうそくされていてまんとをつけたがいじんのでぶにきすされた。

…な、なにをいってるかわからねぇとおもうがおれにもなにがおこったのかわからなかった。

はじめてのきすはすきなおんなのこととかれもんのあじとかそんなあまずっぱいもんじゃだんじてなかった。
もっとおそろしいもののへんりんをあじわったぜ?


To Be Bontinued...

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