ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロと使い魔の書-05

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匿名ユーザー

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ゼロと使い魔の書
第五話
今向かっているのは「アルヴィーズの食堂」というところらしい。平民かつ使用人でもないところの自分は今までの経験から入れない、
と考えたが、昨日申し渡された職務内容には主人の身を守るという項目も含まれていた。だから何か言われるまで傍に付き添っている事にした。
食堂には長いテーブルが3つ置かれ、それぞれ異なる色のマントの生徒が食事をしている。果物かごも花瓶も刺激の強い配色で、正直趣味を疑う。
それらは大体想像通りの光景だった。
だが肝心の内容は自分の思っていたようなものではなかった。
「腹壊さないのか」
「ん?なんで?」
「いや、なんでもない」
どうやらディナーで通るような食卓が、貴族にとっては普通の朝食らしい。
主人が空いている席の前に立つ。イスを引いたら満足そうな顔で座った。これも想像がついていた。
ルイズが目の前の食事に気を取られている一瞬、テーブル上の果物ナイフを一本袖の下に入れておいた。
「あんたは床ね。そこにある貧相な……ってあれ、タクマ?」
後ろで何か主人がのたまっていたのが聞こえたが、あれを食べる気にはならなかった。味は記憶でどうにでもなるが栄養素が絶対的に足りない。
食べる時間を食料調達に費やすべきだろう。そして周りの生徒が自分の使い魔を待機させてない以上、自分がルイズの傍にいる必要もない。
食堂から出る間際、振り返った。ルイズはまだ自分のことを探しているようだった。あの貧相な食事をどうするのか気になったが、戻る気にもなれず自分が召還された草原への道を歩いた。


目的地に到着すると、まず野兎がのんびりと歩いているのが目に入った。
保存食に加工すればあれで数食分のたんぱく質が確保できる。
左手でナイフを持ち、投げようとした、が途中で動作を中断した。
この世界に来たと同時に刻印された左手甲の文字が光りだしたのだ。それと同時に体が羽のように軽くなり、筋力が増強されたのを感じた。
素直には喜べない。ナイフスローイングというのは力が強ければナイフのミートポイントがずれてしまうのだ。柄が当たったって何の意味もない。
完成された投擲術を持つ自分に、この特典はありがためいわくだった。
予定を変更した。数回投げる練習をした後食料を確保することにする。
辺りを見回し、森へと通じる道の途中で刺さりやすそうな大木を見つける。初めは5メートルでいいだろう。
呼吸を整え、投げた。
空気を切り裂く鋭く高い音が鳴り、重量のある刃を中心に一回転した後、やや前傾に大木に刺さった。金属製の刃が振動する音がここまで聞こえてきた。
しかし、ここで予想外の出来事が起こった。勢いが死ななかったらしく、本来投げる用途で作られていない果物ナイフの柄が刃からすっぽ抜けてしまったのだ。どうやら自分は恐ろしい力で投擲していたらしい。
内心舌打ちした。流石に刃だけではどうしようもない。
見ると、もう野兎はどこかへ消えてしまっていた。


これからどうするか。
貴族のものに囲まれ明らかに浮いている食事とも呼べないような食事はとっくに片付けられてしまっているだろう。となると、朝食は抜きでほぼ確定。
食堂から出て行ったことの言い訳を考えながら、刺さったナイフの刃と飛んでいった柄を回収し、城への道を歩き出した。
食堂の入り口に着くと、中に入ろうとして、思いとどまった。
「頼ってみるか」
他人に頼るなんて数えるほどしかなかった自分であるが、あのメイドの少女に名前を伝えなければならないこともあり、どちらにせよ厨房には顔を出さなければならない。
ならついでにまかない食を恵んでもらうのがこの際一番だろう。
The Bookを呼び出し、どのように頼めばいいか検索しようとしたが、止めた。そんな簡単な文句一つ思いつかない自分にため息が出た。

「もう……あの馬鹿!」
床の上の固いパンと薄いスープを見つめながら、ルイズは一人愚痴っていた。
正直なところ、自分の使い魔、タクマは口調さえ変えればどこの屋敷の執事でもやれそうなくらい有能だった。よくやってくれている。
だからルイズも床の上の茶色いものだけで済ませるつもりではなかった。
自分の分の横の小皿に取り分けられた鶏肉のソテーとサラダを見る。貴族と平民の格差を見せ付けた後、労をねぎらって渡すつもりだった。
しかしあいつは自分が言う前に床の上の色のない食事に気づいてしまったらしい。イスを引くや否や、どっかに消えてしまった。
「……そりゃ、私もちょこっとは悪いかもしれないけど!でも!勝手に蒸発する使い魔も使い魔よね!」
自分に言い聞かせるように呟くと、粗末な食事を下げるように給仕に言いつけた。

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