ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-40

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匿名ユーザー

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深夜から早朝にかけて静まり返っている塔の中。
その為、小さな足音も階段から聞こえてくる。

カツーン   カツーン   カツーン

足音が近づくにつれ杖を構えたキュルケの呼吸が激しくなる。
「深呼吸したら。動悸が激しくなると体温が上がるわよ、その分老化も早まるから気をつけて」
「何なのよ、その地獄のコンビネーションは!もっと明るい話題は無いの?」
「・・・プロシュートの偏在は厄介だけど、プロシュート自身は普通の人間よ。 だからプロシュート本人に魔法を当てることができれば勝機があるわ。 そして、魔法と違ってプロシュートを倒せば全て元に戻るわ!」
「まだ、何とかなるって訳ね」
「ええ、諦めないで。来るわよ!」
全員身構えながら出入り口に注目する。
プロシュートが姿を現した。当然その側にグレイトフル・デッドの姿があった。
「君たち下がりたまえ」
ギーシュが前に出て杖を振るとワルキューレが一体姿を現した。
「行けッ、ワルキューレ」
ワルキューレがプロシュートの足元を槍で突く。
特訓をしたと言ってた通り、その動きは今までと全く違っていた。
無駄が無くなったというか、洗練されたというか、執拗に足元を突きまくる。
プロシュートは眉一つ動かさずに槍を躱していく。
グレイトフル・デッドがワルキューレの槍を掴まえ手前に引き寄せる。
「グレイトフル・デッド」
そのまま反対の手でワルキューレの胴体に穴を開けた。
「今よ!偏在の両手が塞がったわ!」
見えないギーシュに代わって、わたしが声をあげる。
「じゃあ『レビテーション』を解除するわね」
キュルケが構えを解くと天井に張り付かせたワルキューレがプロシュートを
襲う。ギーシュはプロシュートの目前でワルキューレを出す前に、あらかじめ 一体出しておきキュルケがレビテーションで天井に張り付かせていた。
プロシュートの足元を狙ったのも注意を逸らす為の行動。
考えてるじゃないギーシュ。
「グレイトフル・デッド」
グレイトフル・デッドは目の前のワルキューレから拳を引き抜き、そのまま拳を突き上げた。

バガァッ

二体目のワルキューレも胴体から真っ二つにされる。
「すごい・・・」
滅多に感情を表さないタバサが感嘆の声を出す。
「まだだ、まだ終わらない」
ギーシュが杖を振るう。これから、どうしようってのよギーシュ?
「ワルキューレを油に錬金する!」
真っ二つになったワルキューレが油に変っていきプロシュートに降り注ぐ。
「キュルケ、今だッ!」
ギーシュが声を張りあげるがキュルケは動かない。
「ちょ、ちょっと待って。油がドーム状に浮いている?」
キュルケにはそう見えるのか。わたしにはプロシュートから覆い被さる様に
立っているグレイトフル・デッドが油まみれになっている光景が見れた。
「なんだか解らないけどやるわッ。ファイアーボー・・・」
「グレイトフル・デッド!」
グレイトフル・デッドが腕を勢い良く振ると油がもの凄いスピードでこちらに飛散りキュルケのファイアーボールに引火した。
わたしたちとプロシュートの間に火の海が出来上がり、火の勢いから生まれた熱風がわたしたちを襲う。
体がダルイ。体が重い。・・・『氷』が効かなくなってる!
なんて事なの作戦通り進んでいると思ったら・・・
気がつけば絶体絶命の状況に追い込まれていた!
      • つ、強い!
このままだと老化で死んでしまう、何とかしないと!
それに、プロシュートを倒さないと!
その前に、この火を消さないと!
どうしよう・・・どうすればいいの?・・・ううう・・・
ギーシュ、キュルケ、タバサ、モンモランシーの顔を見る・・・
思いついた!たった一つの魔法で全て解決できる逆転の一手を!
その前にギーシュが邪魔ね。
「ギーシュ。何してるの後ろに下がって、氷が効かなくなってきてるわ!」
ギーシュは足をガクガク震わしながら一歩も動かなかった。
「ビビッてる場合じゃないわ、早く!」
「違うんだよルイズ、膝が痛くて動けないのだよ」
上半身だけ振り向いたギーシュが顔を歪ませ訴える。
ヤバイ。見た目からかなり老化が進行している・・・

ドドドドドドドドドドドドドドドド

「ひいいいいい!」「ギーシュッ!」
キュルケとモンモランシーが悲鳴をあげる。あーもーウルサイ。
「なら、レビテーションよ。それで退くのよ!」
ギーシュは杖を振り上げたまま動きを止めてしまった。
「何をしてるのよ!」
「すまない・・・どうやら呪文を忘れてしまったようだ」
「ギーシュッ!?」
き・・・記憶までも・・・しわくちゃになるとか、お婆ちゃんになるとか・・・ そんな甘いものじゃなかった・・・
老化の能力がこれ程まで恐ろしいものだったなんて。

「レビテーション」

キュルケの呪文によりギーシュが後ろに下げられる。
「キュルケ、ナイス!」
これで逆転の一手、ウィンディ・アイシクルが使える。
老化の回復、プロシュートへの攻撃、火の鎮火。
その全てをたった一つの魔法で!
「タバサッ!ウィンディ・アイシクルをお願い」
後ろにいるタバサに声を掛ける。しかし、タバサは首を横に振る。
「何でよ、呪文を忘れたの?」
「違う。この火の海で、ここにある水蒸気が枯渇してしまっている。水が無いと 氷が作れない・・・私のウィンディ・アイシクルは湿度が必要・・・」
「何ですって!?」
せっかく良い手を思いついたというのに水が無いと使えないなんて。
水・・・水・・・モンモランシー!
「モンモランシー、水を出せる?」
初級の呪文も確か水蒸気が必要だったと思うけどモンモランシーなら・・・
「ごめんなさいルイズ・・・さっき治癒を使いすぎて精神力がもう無いのよ・・・」
「おう、しっと」
二つ名を『香水』じゃなく『無駄使い』にしたら・・・香水!
「モンモランシー!今、香水持ってる?」
「?ええ、持ってるわよ」
「貸して!早く!」
「何をするの?」
わたしは質問に答えず黙って香水を受け取った。
香水にしては大きめのビン・・・これだけあれば・・・
「どうタバサ、これだけあればいける?」
香水の量を確認したタバサが頷く。
「ベネ!(良し)じゃあ、お願い」
タバサに渡そうとした香水をモンモランシーが遮った。
「ちょっとルイズ。今ここで全部使うの?これ作るのに幾らしたと思ってんのよ」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ、命が掛かっているのよ!」
「でも・・・」
モンモランシーの葛藤を余所に、わたしの手からキュルケが香水を取り上げた。
「トリステインの貴族は本当にお金と縁が無いのね。
これ言い値でいただくわ。文句ある?」
「文句無いわ」
ムスッとした顔でモンモランシーが答える。
キュルケがタバサに香水を手渡すと、タバサは香水を辺りにぶちまけた。
あまりの臭いに鼻を押える。
「何コレ、失敗作?」
「失礼な事言わないで。全部ぶちまけたら臭いに決まってるじゃないの!」
わたし達が文句を言い合ってる間にタバサの詠唱が終わる。
「ウィンディ・アイシクル」
いくつもの氷がプロシュートを襲う。
「グレイトフル・デッド」
ドカ  ドカ  ドカ  ドカ
狙いの外れた氷も火を消したり、温度を下げたりと役に立っていた。
一本の矢がプロシュートの腹部を突き抜けるとグレイトフル・デッドの動きが 一瞬止まった。
その隙に氷の矢が次々とプロシュートに突き刺さり後ろにぶっ飛ばした。
「やったわね、タバサ!」
キュルケが喜びの声をあげるが、タバサは構えを解かない。
「傷が塞がっていく」
タバサの言うとおり氷の矢が貫いたはずのプロシュートの傷が治っていく。
「どうなってるのよルイズ!彼自身は普通の人と変らないんじゃ無かったの?」
キュルケが、わたしに向かって非難の声を浴びせる。
「わたしにも分からない。ワルドと戦った時は、こんな事なかったもの・・・」
「偽りの命よッ!それしか考えられない!」
両手で顔を押えながらモンモランシーが叫んだ。
「つ、強すぎる!・・・どうしようもない」
ある程度回復したギーシュが呻いた。
どうしようもない・・・その言葉が全員の心を蝕んでいく。
「諦めないで!」
「じゃあ、一体これから如何するのよ!」
わたしの激励にモンモランシーがヒステリックに叫ぶ。
わたしには答えることが出来なかった・・・
「ああ、やっと思い出した」
手に持ったデルフリンガーが呑気な声をあげた。
「何よ、こんな時に」
「相棒の姿を見てたら思い出した。ブリミルもあれにぁ苦労してたんだぜ」
「何が言いたいの?」
「いやはやブリミルは大した奴だぜ。しっかりと『対策』を立ててある」
「『対策』ってなによ?」
「俺が知ってる訳じゃねえ。始祖の祈祷書に記されてる」
「真っ白で何も書かれて無かったわよ」
「話は最後まで聞け、読むためには幾つかの条件があるんだよ。
祈祷書と姫さんから貰った指輪をもってるか?」
「わたしの部屋にあるわ」
「じゃあ取りに行け。話しはそれからだ」
「デルフリンガー、信じていいのね?」
「ああ、俺はこれでも伝説なんだぜ」
デルフリンガーは、そう言残すと一言も喋らなくなった。
ここで闇雲に魔法で攻撃しても勝ち目が無い・・・
始祖ブリミルが記した『対策』・・・
わたしの部屋に戻るのなら階段を上るしかルートが無い。
だから行くしかない・・・目の前のプロシュートを何とかして・・・
起き上がったプロシュートが、ゆっくりとこちらに向かって来る・・・

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