ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ねことダメなまほうつかい-7

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匿名ユーザー

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 ルイズとギーシュそしてアニエスはアルビオンの貴族に案内されて、ルイズたちが乗ってきた船に
 横付けされた彼らの船であるファルコン号のウェールズ皇太子のお部屋の前に来ていました。
 キュルケとタバサ、猫草は別の部屋でのんびりと休んでいます。
 ルイズはお部屋の扉をノックしようと手を上げましたが、案内していた貴族がそれを止めて
 扉に向けて声をかけました。

「すまんがちょいとそこをどいてくれ」
「こりゃ悪かったズラ」

 扉が返事をしたのでルイズはびっくりして跳びはねますが、よく見てみると扉だと思っていたのは
 なんとアルビオンの貴族だったのです。
 おそらく、ウェールズ皇太子を守るために扉になりすましていたのだろうとルイズは考えて、
 スンナリとそんな考えが浮かんだ自分がちょっとだけ嫌いになりました。

「やあ!よく来たね大使殿。さ、何もないところだが入りたまえ」
「は、はい失礼します」

 ウェールズ皇太子に呼ばれて、ルイズはお部屋の中に入りました。
 ギーシュはルイズのうしろからお部屋の中を見ましたが、本当に何もないお部屋でした。
 机もイスもベッドすらありません。
 そんな何にもないお部屋の中でウェールズ皇太子は腕を組んで堂々と立っています。
 その威圧感にゴクリとのどを鳴らして、ギーシュとアニエスも中に入っていきました。

「おお…アンが…結婚するのか……」
「はい…」

 アンリエッタ姫が結婚すると聞いたウェールズ皇太子は、うつろな目でなにやらブツブツと
 うわ言を呟きました。
 先ほどまでの自信に満ちたお姿はどこにもありません。
 それを見てルイズたちはとても悲しくなりました。
 ですが、ルイズにはアンリエッタ姫から賜った大切な任務があるのです。
 いつまでも悲しんでいるわけにはいきません。 
 ルイズが任務のことを話そうと顔を上げ、悲鳴を上げました。
 なんとウェールズ皇太子がご自分の目に指を入れていたのです。

「こ、皇太子様お気を確かに!!」
「違います!皇太子殿下はご乱心したのではない……これは…スイッチング・ウィンバック!」
「ぼ、僕も父上から聞いたことがあるぞ…」

 ルイズはウェールズ皇太子がご乱心したと思ったのですが、ギーシュとアニエスの説明を
 聞いて立ち止まりました。
 スイッチング・ウィンバックとは失敗や恐怖をこころのスミに追いやって闘志を引き出す
 アルビオン貴族独特の精神回復法です。
 これはこころに負ったダメージが強いほど、気持ちを切りかえるために特別な儀式が必要になります。
 そして、ウェールズ皇太子にとっての特別な儀式が目を潰すことだったのです。

「なまじ…目が見えるから……アンに思いを寄せてしまう…目が見えねば何者にも惑わされることはない」
「こ…皇太子さま…」

 ルイズは、ここまで思いを寄せているのに添い遂げることができないウェールズ皇太子のお姿を
 悲しくて見ることができませんでした。
 ギーシュとアニエス、そして扉になりすましているアルビオン貴族も涙をこらえることができません。
 ウェールズ皇太子は、そんなルイズたちの様子を感じてうれしそうに笑いました。

 ルイズは猫草を抱えながら甲板に立っていました。
 ギーシュにアニエス、キュルケとタバサもいっしょです。
 あの後、ウェールズ皇太子からアンリエッタ姫からの手紙は手元に無いので、
 取りにいくのにいっしょに来てほしいと言われたのです。

「ミス・ヴァリエール、そろそろアルビオン大陸が見えてくるよ」
「え、ええ」

 ルイズは先ほどのことが気になって俯いていたのですが、ギーシュに話しかけられて
 顔を上げました。
 そして、ギーシュから静かに差し出されたハンカチを手に取ると涙を拭います。
 いつまでも泣いているわけにはいかないのです。

「ニャニャニャ!ニャウニャウ!!」
「ん?どうしたの…ってなによこれ!?」
「アルビオンが…真っ赤だ」

 鼻を押さえて暴れる猫草をなだめながら、ルイズは空を見上げました。
 アルビオン大陸は河から流れた水が大陸の下に落ちて、そのしぶきで大陸が白く見えることから
 白の国とも呼ばれているのですが、いまは血のように赤いもやに覆われています。
 そして、鼻にツンとくる臭いが漂ってきました。

「廃水を浄化せずに河に流しているんだ。自然に敬意を払わぬ愚かな連中よ」

 いつの間にかウェールズ皇太子がそばに来て悲しそうに大陸を見上げながら呟きました。
 森や川を汚してしまえば最後には自分たちにツケが回ってくるのです。
 ルイズにはこの光景がまるでアルビオン大陸が血を流して傷ついているように
 思えて仕方がありませんでした。

「殿下、そろそろ到着します」

 黒いよろいを着た騎士がウェールズ皇太子にそう告げ、すぐに持ち場に戻っていきます。
 ファルコン号の向かう先にはポッカリとトンネルのような穴が開いていました。
 ファルコン号は迷わずその中を進んでいきます。
 そのトンネルは鍾乳洞になっていて中は真っ暗で何も見えませんが、どこにもぶつからずに無事に
 ファルコン号とルイズ達が乗っていた輸送船は鍾乳洞の中にある隠し港に到着しました。

「こんなところに港を造るとは…」
「なるほど、これならばレコン・キスタにも見つからない」

 ギーシュとアニエスが船から下りながら鍾乳洞の中を見まわしました。
 船員や港にいた兵士が船に荷物を積み込んでいるのが見えます。
 港までの道は真っ暗だったのですが、ここには天上や壁に光りゴケが生えているので明かりにも困りません。
 そして、ウェールズ皇太子の案内でルイズたちが港の奥の通路からお城の中に入ろうとすると、 
 通路から誰かが飛びだしてきました。
 それはキレイなドレスを着たひとりの美しい女性でしたが、ルイズたちは悲鳴を上げながら杖を向けました。
 どうしてかというと、その女性の耳は長く尖っていたからです。
 この女性はあの恐ろしいエルフなのでした。 

「な、な、な、なんでエルフがこんなところに?!」
「殿下!お下がりを!!」

 ルイズたちがウェールズ皇太子を守るように女性の前に立ちふさがり、それを見た女性がびっくりして
 立ち止まります。
 そのエルフの女性のスキついてタバサは一番得意な魔法のアイシクル・ウインドを唱えました。
 ウェールズ皇太子が止めようとしますが、それよりも早く氷の矢が女性に襲いかかります。
 そして、氷の矢が当たる寸前にそれはおこりました。 

「ドラララァーッ!!!」

 男性のような雄叫びが上がったと思うと、氷の矢がすべて砕け散り、破片が床や壁にブチ当たります。
 目の前のエルフの仕業なのでしょうが、彼女は魔法におどろいたのか、あたまを抱えて震えながら
 床にしゃがみこんでいました。

「待ちたまえ大使殿!彼女は味方だ!!」
「ふぇぇぇ~ん、ウェールズにいさぁ~ん」

 そのエルフの女性は泣きながらウェールズ皇太子に抱きつき、優しく慰められます。
 ルイズたちはワケがわからずにそれを眺めているとエルフの女性は泣き止み、ウェールズ皇太子の
 後ろに隠れながらルイズたちを見ました。

「まずは紹介しよう。わが従姉妹であるティファ二アだ」
「は、はじめましてティファニアと申します」

 まだ怖がっている様子でオドオドしながらエルフの女性はティファニアと名乗ります。
 そして、とりあえずルイズたちも挨拶をした後、ウェールズ皇太子は事情を説明すると言い、
 ルイズたちをお城の中に案内しました。
 こんなことがあったので、猫草の姿がもっとねこらしく変わったことにだれも気づきませんでした。


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