ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-10

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「あなたの口から説明はいらない、言い訳もいらない」
「何を言っているんだい、モンモランシー」
「感づいていないとでも思ったの? あなたの二股に」
「ギーシュ様? それってどういう…」
「あああ、これはだね、ケティ」

ヒュ!!  バギァ

「あがんッ…あがッ、あがッ」

メシッ ブシャア

ギーシュの頬にグーの手がめり込んだ 噴き出す鼻血ッ
ぶざまにひっくり返ったギーシュに、モンモランシーは冷たい目つきだけを向けた

「言い訳はいらないと言ったでしょう
 そして…さよなら
 あなたはつくづく最低の男だったわ」
「え? ああっ」

ケティを引っ張っていくモンモランシー
彼女の口から事情をキッチリ説明してやるつもりなのだろう…
とり残されたギーシュはざわつく観衆の中 注目の的になっていた

「なぁにが『ボクは薔薇だよ』、だよなあ」
「サイテーね」
「モンモランシー 最近、夜に出歩いてたのって もしかして…」
「自分で恋人の浮気調査とはなあ、フビンな」
「人を見る目ないんじゃないの アレとつきあう時点で」
「いやいや グラモンは武門の名家だぞ 一応」
「ウワサだと父親も色の道では剛の者だとか」
「なに? 五男とか五女とかまで作るの? …浮気で」
「それもフシギじゃないかもなあ アレを見てると」

笑われている…侮辱されているぞ ギーシュ・ド・グラモンッ
それも自分のことだけならいざ知らず 家のことまで
本来ならケティとモンモランシー 二人の間のことだけですんだはずだったのに…
それを、それを こんなッ
ゆるせん キサマはゆるせん
…キサマ、というのは……
ギーシュは周囲を見回し、やがて視線をひとつに固定させた
あれは確かルイズの使い魔 平民とはとてもいえない謎パワーを持ったやつ
そうだ、こいつが皆を連れてきたんだッ
キサマ…きみさえいなければッ!

「…きみィ」

やつはスットボけてまわりをキョロキョロ見渡す
そこまでぼくを愚弄するのか?

「あなたみたいよ」
「えぇ、オレ?」

キュルケに言われてやっと気がついた「フリ」か
まあいい、耳をカッポじって聞いてもらおう

「キミのせいで二人のレディの心が傷つけられたじゃないか
 どうしてくれるんだい…えぇ?」
「オ、オレのせい…?」
「この礼儀知らずの平民が…
 こんな深夜に走り回って衆目を集めるとはよほどの野蛮人だな
 あまつさえモンモランシーをこんなところへ連れてくるとは」
「なんだ、おいっ、一方的にッ」
「いいかい? 知られたくない秘密を暴こうとする無粋なヤツはな…
 この世の汚物だ、いてはならないッ!!」

ビシィッ

薔薇を取り出し、口にくわえる
青銅のギーシュ 戦闘体勢ッ!!

「払わせてやるッ
 彼女らの魂の尊厳、その代償を―――ッ」
「むっ、ムチャクチャ言ってんじゃねェーよ このスケコマシの坊ちゃんタレ!
 てめーのこと全部タナに上げやがってよぉぉ――」
「そうだそうだー」
「みっともないぞぉー ギーシューッ」

鼻血がタラリ…
うるさいッ ひっこみなんぞつくものか
こいつのせいって言ったらこいつのせいなんだからなッ

「決闘だッ」

さて仗助である
こんなアホな言いがかりにつきあってやるつもりはモチロンなかった
次のセリフはこうだった 「勝手にやってろよ、一人でッ」
だがそれよりも先に口を開いたのは隣のルイズ

「な、なに勝手なこと言ってんのよ」
「キミは黙っていたまえ、ゼロのルイズッ」
「ゼロは関係ないでしょ ゼロは―――ッ
 人の使い魔をキズものにされちゃ、黙ってられないわよッ」

この一言がテキメンに仗助の気を変えた
もはや逃げ場がないということもあったのかもしれない
ならばこれはせめてもの抵抗というわけだ

「決闘だな? …いいよ、受けてやる」
「おまえ、勝手にッ」
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「だれがテメーの召使いになったよ?」

立ちふさがったルイズを仗助は軽く突き飛ばした
明確な拒絶の意を込めて
また尻もちをついたルイズは少しぼんやりしたあと
涙をぽろぽろ流し始めた…心底、くやしそうな顔で
だが仗助に言わせてみれば、かまってられるかボケ、だった
その肥大しまくった自我とかなんとかをこの機会に叩き直しやがれ
本気でそう思った

「表に出たまえ」
「…ああ、どこでもいいぜ…」

ギーシュの後に続こうと歩き出し
泣くルイズの横を通り過ぎると
一緒にいた赤毛の女が呼び止めてきた

「ちょっと」
「なんスか…」
「あいつは『青銅』のギーシュ。
 見栄っ張りの小心者だわね」
「…それが?」
「すでにあなたは手の内をさらしてるでしょ。
 だから公平じゃないと思っただけ。
 ま、受けた以上は勝ちなさいな。 負けたら死ぬと思ってね…」

仗助は軽くうなずいて、小走りでギーシュを追いかけた
そのあとから聞こえてきた声は、よく聞き取れなかった…

「…あたしとしても、投資をムダにしたくないものねー
 さてと、タバサ、タバサ…あの子も呼びましょっと」


今は夜中である
トリステイン魔法学院の教師にしてトライアングルメイジであるコルベールは
いつもであれば自分の研究に没頭している時間帯であったが
三日前のあの事件から別な考え事に支配されていた…すなわち、ルイズの使い魔である

(先例のない危険な存在が召喚されたと思った
 生徒を守るためになら殺しもいとわぬつもりだった)

見た目は人間だが、あのおそるべき破壊力ッ
人間の頭と兜を融合させる奇っ怪な能力
そんなものがいきなり暴れ出したのだ
あの時点での判断が間違っていたとは思わない…だが

(その本質は万物を修復する『癒し』の力だったというのか…)

高レベルのメイジであれば、建物の修復程度はわけなくこなせる
しかし、それと同じノリで 死に瀕した人間を一瞬で元通りに修復するわざなど
水系統のスクウェアメイジでもできるかどうか…
ともあれ、その力でルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを救ったことに変わりはないのだ
そして彼女は『多額の賠償金』を支払い、彼にコントラクト・サーヴァントを行った
今も昏々と眠り続けているだろうあの使い魔が目覚めたとき
自分は一体、彼をどのように扱うべきなのだろうか?
古い文献をあたって必死で類似例を探してみるが、今日も努力はムダだった
仕方ない、寝るか そう思って、ふと窓の外を見てみると

「…なんだ、生徒達…どうした?」

コルベールは魔法の杖を持ち、外に飛び出すことにした


二十人以上の野次馬が見守る中
仗助とギーシュの決闘は始まろうとしていた

「…月が、ふたつ…」

ゴシゴシ ゴシ

「…消えねぇ~~~
 空から消えねぇ~ ありえねぇッ」
「何をやっているんだねッ!
 今さら怖じ気づいてもムダだからなッ」

空を見ながら必死で目をこすっていた仗助は
準備万端のギーシュに怒られた

「いや、よぉ~ 見ろよ空ッ
 月がふたつってオカシイだろ――」
「勝負をはぐらかそうというのかい、卑怯者がッ
 もういい、勝手に始めさせてもらうッ」
「え…」

仗助の身体がフワリと浮かび上がった
およそ6メートルくらいの高さだろうか?
下を見ると、ギーシュが薔薇を振っているのが目に入る

「こ、こいつは…」
「コモン・マジックのひとつ、レビテーションさ
 魔法入門、基礎中の基礎だな
 そしてキミにはこれで充分ッ」
「うおおッ?」

浮かび上がったところから加速をつけて
一気に地面に叩きつけられる仗助
背中から落ち、肺の空気が全て追い出される

「うぐ、げほぁッ…」

建物の三階付近から落下しているのと、ほぼ同等ッ
並の人間が無事でおれるわけがない

「…さて、先手はぼくがいただいたわけだが
 次はキミが来たまえ このままやられるのは無念だろう」
「だれ、が てめえに」
「ん…そういえばキミ、髪型はどうしたんだい?
 あの、なんというのか…『貧乏ったらしい鳥の巣』みたいな」

落下の衝撃のあまりうまく起きあがれない仗助に
あろうことか、禁句を持ち出すギーシュ・ド・グラモンッ
おそらくは、わかってやっているッ

プッ…プッ…

「どこの田舎か知らないが…あんな頭をしている時点でお里が知れるってわけだねぇー
 もっとも! 見世物小屋にでも持っていけば喜ばれるかも…だがね」

プッチ~~ン

落下の痛みを怒りが凌駕ッ
仰向けの姿勢のまま飛び上がり、仗助は殴りかかるッ

「てっめぇ~~ ドララァァ―――ッ」
「怒ったな、あの時と同じようにキレて本気を出したな
 だけどムダだなぁ―――ッ!!」

見えない拳が到達するよりはるか遠い距離から
ギーシュは再び薔薇…魔法の杖を振っていたッ
宙に浮き上がり 固定される仗助
届かない…何もできないッ

「そぉれ もう一回ッ」

ドゴォ

「ぐぇぇぇッ…!」

また落下 治ったばかりの身体がつぶれるように血を吹いた

(あいつは『青銅』のギーシュ
 見栄っ張りの…小心者
 なるほど、いかにもな戦法ッスねぇ~~
 だが、マジにどうする? 手も足も出ねぇよッ)

また身体の浮かび上がる最中、ギーシュをするどく睨み付けた仗助だったが
今のところ、できることはそれだけだった


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