ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

誘惑! 微熱があるなら濡れタオルで頭を冷やせ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
誘惑! 微熱があるなら濡れタオルで頭を冷やせ

右手の痛みでルイズは目を覚ました。
「うっ、うーん……」
何で痛いのかその理由したを思い出して、ルイズは右手を見た。包帯でグルグル巻きだ。
「…………」
昨晩、承太郎が帰ってきて、喧嘩して、承太郎に枕をぶつけてやろうと持ち上げたら、
右手の怪我がすごく痛んで、承太郎が愚痴を言いながらも薬を塗り包帯を巻いてくれた。
その後、承太郎の持ってきてくれた夜食を左手で食べてから、眠った。
ルイズは視線を横に向けた。
ギーシュの部屋から持ってきたソファーに承太郎が寝そべっている。
眠っているのか起きているのか、学帽が目を隠していて解らない。
「……本当は優しい奴、なのかな」
誰にも聞こえないよう小声で言ってみる。
でも外見は怖い。身長は2メイル近くあって、ルイズより40~50サントも背が高い。
肩幅も広く、筋肉もしっかりついていて、首も太い。声も低くて怒鳴るとすごく迫力がある。
自称、異世界から来た男。黒い帽子と黒いコートと黒いズボンの変な奴。
それを信じさせるような『凄まじいパワーの腕』を出す、魔法ではない不思議な能力。
無愛想で、厳しくて、でも、ちょっとだけ優しいところもある。
「むぅ~……」
今まで周りにいなかったタイプの人間。
平民で使い魔だけど、貴族でご主人様の自分と立場が逆転するほどの力強さを見せる男性。
(だから何だっていうのよ)
とも思う。思うけれど……。
「じょ、ジョータロー……。もう起きてる?」
呼びかけてみるのに、少しだけ勇気が必要だった。

「……ああ、起きてるぜ」
「そ、そう」
「目を覚ましたんなら……右手の包帯を新しいのに交換するんだな、薬を塗って……」
「片手じゃやりにくいわ。手伝って」
「……やれやれだぜ」
使い魔になる気は無いとか言っておきながら、賭けに勝利しておきながら、
こうして部屋に戻ってきて、包帯の交換だってしてくれる。
いい奴なのか、ヤな奴なのか、よく解んない。

でも悪い奴じゃない。

「ねえ、ジョータロー」
「今度は何だ」
「顔を洗うの手伝って。それから着替えも」
「ガキじゃねーんだ、それくらいてめーでやりやがれ」
承太郎はルイズに背を向けて、部屋から出て行こうとした。
「手が痛いのに……」
しかしルイズが呟くと、承太郎がドアノブを握って立ち止まる。
「……洗濯はやっといてやる。洗濯物はその辺にまとめときな」
「え?」
なんで洗濯だけ、という質問をする前に承太郎は部屋から出て行ってしまった。
使い魔になる気が無いのは間違いなさそう、だから身の回りの世話なんてしてくれない。
でもなんで洗濯だけ……。
ルイズは自分の右手を見た。
顔は、左手だけでも洗える。着替えは、両手を使うけどちょっと右手が痛いだけだ。
洗濯は、魔法が使えないから両手で洗わなきゃならない。

「あっ、そうか……」
さすがにこの右手で水洗いは沁みるだろう、痛いだろう、つらいだろう。
だから承太郎は洗濯だけやってくれるって言ったんだ。
「やっぱりいい奴……かな」
承太郎への評価をいい方向へ改めて、ルイズは朝の支度を整えた。

部屋を出た承太郎は、視界の端に赤い色を見つけて振り向いた。
キュルケのサラマンダーがじーっと承太郎を見つめている。
「よう、俺に何か用か?」
「きゅるきゅる」
フレイムは挨拶するように鳴くと、どこかへ行ってしまった。
いったい何をしたかったのかよく解らなかったが、
承太郎はとりあえず朝食に向かうのだった。

「ねえ、ジョータローは来てない?」
食堂でルイズに声をかけられたのは、
今のところルイズの次に承太郎に深く関わったギーシュであった。
「や、やあルイズ。おはよう」
「質問に答えなさいよ、ジョータローを見なかった?」
ルイズの口調は冷たく、まだ先日の錬金の件を怒っていると伺えた。
「いや、今日はまだ見てないけど……」
「そう」
それなら用は無いとばかりにルイズは背を向ける。
やっぱり相当怒っているようだ。
「でも、居場所には心当たりがあるよ」
ルイズが振り向く。表情は承太郎の真似でもしているのかひたすら無表情だ。

「どこ?」
「それを教える前に聞いて欲しいんだ。先日の件なんだが……君に謝りたくて」
「私はジョータローの居場所を聞いてるの。それ以外の事は壁にでも話してなさい」
「君が怒るのはもっともだ、貴族の名誉を傷つけてしまった……。
 だから、君に謝罪したいんだ。僕にして欲しい事があったら言ってくれ」
「なら質問に答えて。ジョータローはどこ?」
「……ジョータローなら多分厨房にいる。
 どうやら食事は厨房の連中から直接もらっているらしくてね」
「そう」
ルイズは今度こそ用無しとばかりにプイッと背を向け、食堂を出た。
その背中を見送って、ギーシュは溜め息をつく。
――と、ギーシュの友人達が話しかけてきた。
「ギーシュ! お前、モンモランシーに振られたからってゼロに手を出してるのか?」
「おいおい、いつからそんな趣味になったんだよ。ゼロのルイズなんかやめとけって」
うんざりとした口調でギーシュは前髪を掻き上げた。
「誤解しないでくれたまえ、僕は別にルイズとは……」
ドボドボドボ。と、ギーシュの頭にワインがかけられる。
相手が誰なのか何となく予想がついて、ギーシュは後ろを向いた。
香水のモンモランシーが眉を釣り上げてワインのビンを逆さにしていた。
「も、モンモランシー。君まで誤解しなくても……」
「この女ったらし!」
そう怒鳴るとモンモランシーはプイッとそっぽを向いて自分の席へ戻っていった。
ギーシュはハンカチでワインを拭きながら、呟く。
「やれやれだね……」
誰かさんの口調が微妙にうつっていた。


「……てな訳で、昨日撤回したばかりだってのにすまねえが……。
 ルイズの服の洗濯をしばらくの間頼まれてくれると助かる」
「ジョータローさんの頼みじゃ仕方ありませんね」
「それはそうと今日の料理は一段とうまいな。本当に残り物か?」
「あ、いえ、実はそれ私が作ったんです」
「ほう、やるじゃねーか。丁寧に料理したってのがよーく解るぜ」
厨房の隅でなごんでいる承太郎とシエスタ。
それを窓から見ているルイズとフレイム。
「あの使い魔……ギーシュだけじゃなくメイドまで味方につけてたなんて」
「きゅるきゅる」
「それにしても何なのよあのくつろいだ表情は!
 私の前じゃあんな顔全然、ちっとも、微塵も見せないくせに!」
「きゅるきゅる」
「生意気だわ使い魔のくせにメイドのくせに。
 ちょっと強いからっていい気になって……」
「きゅるきゅる」
「ギーシュなんて所詮ドットクラスのメイジじゃない。
 それにギーシュは馬鹿だしマヌケだしキザだし二股だし勝負の邪魔したし……」
「きゅるきゅる」
「って、ひゃあっ!? 何でキュルケの使い魔が隣にいるのよ!」
ルイズは隣で一緒に承太郎の様子を見ていたフレイムにようやく気づき、
仰天してひっくり返って後ずさった。
一方厨房の中では。
「あの、ジョータローさん。ミス・ヴァリエールが外で騒いでますが?」
「知らんぷりしてりゃあいいんだよ、ほっときな。
 しかしキュルケの使い魔……フレイムがいる理由がよく解らん」


承太郎の様子を見に行っていたせいで朝食を半分しか食べられなかったルイズだが、
それでも真面目に授業を受けて、なぜかがやけに絡んでくるモンモランシーに辟易とし、
結構疲れた状態で授業を終えて自室に戻った。
承太郎の姿は無い。どこにいるんだろう、と思い窓の外を見てみる。
学院で一番高い塔の天辺で何かが動いた気がしたけど、
鳥か何かだろうと思ってルイズは気にも留めなかった。

学院で一番高い塔の天辺に承太郎は立っていた。
目的は学院周囲の地理を知る事。手にはギーシュに用意させた地図を持っている。
「さすがに月がふたつあると……夜でもなかなか明るいぜ」
スタープラチナの『目』で360度見渡し、街や道や山や森や湖などの位置が、
地図と完璧に一致している事を確認する。といっても地名までは読めなかったが。
「街までは歩いていく距離じゃねーな……交通手段は馬の類か?
 明日シエスタあたりに聞いてみるか……」
地図を折って学ランのポケットにしまった承太郎は、
無断で登った塔の外壁を軽やかに飛び降り、スタープラチナの足で着地する。
DIOとの壮絶な戦いのおかげで、地面を蹴ったり壁を殴ったりと、
スタンドパワーを生かした移動方法を承太郎は習得していた。
地面に着いたら後は徒歩で寮に戻り、ルイズの部屋の階に到着すると、
なぜかサラマンダーのフレイムが承太郎を待っていた。
「……こんな時間に何してんだ?」
「きゅるきゅる」
フレイムは承太郎の服の袖を咥えて、ついてこいとばかりに首を振る。
「…………」
とりあえず引っ張られるまま無言でついていく承太郎。
行き先はキュルケの部屋らしかった、部屋の戸が開きっぱなしだ。
入ると中は真っ暗で、フレイムの尻尾の炎の周囲だけぼんやり照らされている。

「扉を閉めて」
暗闇からキュルケの声がしたが、承太郎は声のした方を睨んで言った。
「用があるならそこからいいな。こんな真っ暗闇、普通用心するぜ」
「つれない人ね」
その言葉とほぼ同時に、承太郎の背後でドアが勝手に閉まる。
ギーシュも同じ事をやって見せていたから、キュルケの仕業だとすぐ解った。
さらに部屋の中に立てられたロウソクがひとつずつ灯っていく。
ロウソクは街灯のように承太郎とキュルケの間に道を作った。
薄明かりの中のキュルケはベッドに腰掛け、
セクシーなベビードールという下着姿で悩ましい視線を送っている。
「そんな所に突っ立っていないで、いらっしゃいな」
色っぽい声で誘われたが、承太郎は微動だにしない。
仕方ないからキュルケの方から立ち上がって、承太郎に歩み寄る。
メロンのような胸をゆっさゆっさと揺さぶりながら。
そのフェロモン爆発のバストを、承太郎は極普通に無視した。
自慢のバストで気を引こうとしていたキュルケは、ちょっと感心する。
「クールなのね。下心丸出しの男達とは……訳が違うって事ね」
「何の用だと聞いているんだ」
「……あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
「…………」
「思われても、仕方がないの。解る? 私の二つ名は『微熱』」
「それがどーした」
「恋してるのよ。あたし。あなたに、恋はまったく、突然ね」
「…………」
承太郎は呆れて退出しようとしたが、
逃がすまいとキュルケが承太郎の腕に抱きつく。
豊満な谷間が、承太郎の太い腕をしっかりと挟み込んだ。
その柔らかな感触を……承太郎は極自然に無視する。

「あなたが、ギーシュを倒した時の姿……。かっこよかったわ。
 まるで伝説のイヴァールディの勇者みたいだったわ!
 あんなにすごい魔法、見た事がない。そのすごいパワーに痺れたのよ!
 情熱! ああ、情熱だわ!」
「やれやれ……『微熱』が二つ名だってんなら、濡れタオルで頭でも冷やすんだな」
「いやん、あなたったらイジワルなのね。でもそこが素敵、今までにないタイプ!
 あなたが毎晩あたしの夢に出てくるわ。
 だからフレイムを使ってあなたの様子を探らせたり……。
 ほんとに、あたしってば、みっともない女だわ。そう思うでしょう?」
「解ってるならその手を離しやがれ」
「そうね……確かに私ははしたない、みっともない、惚れっぽい。
 でもね、恋は突然だし、すぐにあたしの身体を炎のように燃やしてしま――」
と、キュルケが愛の言葉をささやいている最中、窓がノックされた。
キュルケは恨めしげに部屋の外を覗く。一人のハンサムな男の姿があった。
「ノックしてもしもぉ~し。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば……」
「ベリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」
ここは三階、ベリッソンは魔法で浮いているらしい。
キュルケはうるさそうに、胸の谷間に差した派手な杖を取り出して振った。
ロウソクの火が大蛇のように伸び窓ごと男を吹っ飛ばした。
「まったく、無粋なフクロウね」
「おめー……女としての慎みってもんはねーのか」
「恋する乙女の情熱の前では慎みなんて些細なものよ!」
と、キュルケが再び口説き始めたら今度は窓枠が叩かれた。
見ると、悲しそうな顔でキュルケ達を見る精悍な顔立ちの男が。

「キュルケ! その男は誰だ! 今夜は僕とすごすんじゃなかったのか!」
「スティックス! ええと、四時間後に」
「そいつは誰だ! キュル――」
再び炎の蛇が窓に向かい、スティックスと呼ばれた男を吹っ飛ばす。
「ギーシュといい、てめーといい……貴族ってのは見境がねーのか」
「いいえ、あなたが特別なの! 本当に魅力的な人にこそ貴族は恋するのよ!」
と、キュルケがまたまた愛を紡ぎ始めると、窓枠から悲鳴。
三人の男が押し合いへしあいしている。そして三人同時に叫ぶ。
『キュルケ! そいつは誰なんだ! 恋人はいないって言ってたじゃないか!』
「マニカン!エイジャックス! ギムリ! ええと、六時間後に」
『朝だよ!』
「フレイム!」
キュルケはうんざりした口調でサラマンダーに命令。
きゅるきゅると鳴いてから、フレイムが窓枠の三人に炎を吐いて追っ払う。
「……あれだけの男を見せておいて、
 まだ俺を口説き落とせるつもりじゃねーだろうな?」
「ええと、とにかく! 愛してる!」
キュルケは承太郎の顔を両手で挟むと、真っ直ぐに唇を突き出し――。
「オラァッ!」
頭突きを食らってひっくり返った。
承太郎は――アヌビス神の攻撃を頭突きでしのいだ事を思い出した。
「……やれやれだぜ」
と、今度は部屋のドアがノック無しでバタンと開く。
またか、と思い承太郎は入ってきた男を適当にぶちのめして退散しようと思った。
が、振り向いた先にいたのは女の子、ルイズであった。
「ななな、何これ!?」

承太郎のすぐ隣で、キュルケが下着姿で倒れている。まるで襲われたかのように。
しかも、倒れた拍子に下着がズレて、乳房が片方プルンッと出ていた。
「こっ、こここっ……この、エロ犬ー!」
ルイズの足が承太郎の股間に向かって蹴り上げられる!
が、承太郎は片足立ちになったルイズに足払いをかける。
「あっ」
簡単にバランスを崩したルイズは廊下にズデンと尻餅をついた。金的蹴りも空振り。
「イタタタタ……何するのよ!」
「ルイズ、部屋に戻るぜ」
ルイズの横を通り抜け、承太郎はさっさとルイズの部屋に入っていった。
「あっ、ちょ、待ちなさい!」

こうしてこの晩、承太郎はルイズの誤解を解くのに睡眠時間を削り、
さらにヴァリエール家がツェルプストー家に恋人を寝取られまくった過去など、
憎らしげに語るルイズの愚痴に延々とつき合わされるハメになった。

そしてようやく話が終わり、承太郎はソファーに、ルイズはベッドに入る。
強力なスタンド使いと戦った後のように疲れ果てた承太郎はすぐ眠気に身を委ねたが、
完全に眠りに落ちる前にルイズが強がったような口調で質問してきた。
「ジョータロー。あんた、キュルケの胸、どう思った?」
「……くだらねー事を言ってねーで、とっとと寝やがれ」
「やっぱり大きい方がいい?」
「……俺は寝るぜ」
「……ムッツリスケベ」
ビシュッ! 承太郎のボールペンがルイズの枕に突き刺さった。
ルイズの耳との距離、およそ1サント。
「ひゃっ!? ななな、何するのよ! 危ないじゃない!」
「やかましい! 俺は疲れてるんだ、黙って寝ろ!」
こうして承太郎とルイズの睡眠時間はこの後もう少し削られる事となるのだった。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー