ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ACTの使い魔-1

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匿名ユーザー

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この世に『魔法』や『マジック』なるものが存在すると思います?
手品とかそういうのじゃあなくて、手を振りかざしたら炎が出るとか、そんな不思議な力のことです。
ファンタジーやメルヘンじゃあ あるまいし、そんなもの存在するわけがないと答える人が殆どだと思います。

あ、申し遅れました。
僕の名前は広瀬康一。今年4月に入ってから18歳になったばかりの高校3年生です。
まー、僕のプロフィールなんて覚えてくれなくても結構ですけどね。
肝心なのは、僕の名前でも歳でもなく、僕が持っている不思議な能力なんです。

『スタンド』という、超能力に似た能力で、僕が住んでいる杜王町には『スタンド』を持った人間が沢山住んでます。
この能力は、一般の人には見ることも感じることもできません。
だから、一般人相手には知らぬ間に傷をつけたり、物を盗んだりと、色々と好きほーだいできちゃったりします。
もっとも、僕は『スタンド』を悪用することはしませんけどね。

ところで、先ほど話したことですが、『魔法』の存在を信じますか?
僕は信じます。なぜなら、僕はそんな不思議な力が普通に使われてる世界に来てしまったからです。
いわゆる、『魔法の国』という所に。今考えれば、それほど在りえない話でもなかったんです。
なぜなら、僕も『魔法』に似た、『スタンド』という能力を持ってるのだから――。


――ACTの使い魔――


桜の花びらがシャワーのように降り注ぐ並木道。
桜だけでなく、タンポポやつくし、動物までもが浮かれるような春真っ只中の道を康一は歩んでいた。
いつも自分の周りに取り巻いてくる露伴や由花子の姿はなく、一人孤独に高校から自宅へと続く道を進んでいる。
家に戻ったらボケ犬の散歩や、山のように出された宿題を片付けなければならないため、その足取りはやや速い。

しかしこの後、康一が自宅に戻り、犬の散歩や宿題を片付けることはなかった。

自宅まで、後1km程という地点で、康一は『不思議な物体』を発見した。
体言するならば、キラキラと光る鏡のようなものと言ったところである。
幅1メートルぐらいの楕円形をしており、ほんの少しであるが宙に浮いている。
一般人ならば、これは一体なんだろうと思い、戸惑うところであるが康一は違った。
この鏡を発見した時に、康一が最初にとった行動は、自分のスタンドであるエコーズACT3を構えることだった。

道端に突如現れた、不自然な鏡のような物体。
こんな自然現象は見たことがないし、宙に浮いた物体なんて聞いたこともない。
ただ一つ、可能性があるとすれば、これがなんらかのスタンド能力であることだ。
スタンド能力であるならば、充分に注意して調べなくてはならない。
ましてや康一は、今まで新たなスタンド能力やスタンド使いには、嫌というほど危険な目に会わされている。

変な髪をしたキッチリ屋に矢をぶっ刺されたり、
姉を手篭めにしようとした変態バカ男に心の錠前を掛けられたり、
思い込みプッツン変人女に髪の毛で拉致されたり、
蜘蛛を平気で舐める変態漫画家に本にされたり、
手フェチの変態殺人鬼に殺されかけたり、
人のパンティーを勝手に取り出す変態少年に紙にされたり……。

大抵ロクな目に会っていないため、嫌でも警戒心は高まるものだ。

康一は、地面に落っこちていた石コロを拾って、鏡のような物体に投げてみた。
石ころは鏡の中に消えた。鏡の裏を見ても、何も落っこちていない。
次にエコーズACT2の尻尾の部分を恐る恐る鏡の中に入れてみた。
そのまま自分の元へエコーズACT2を戻しても、尻尾には何の変化もなかった。
この結果、この鏡のような物体は、どこか他の場所へ続いている『異次元への扉』のような物であると推測できた。
ここで康一は悩んだ。これからどうするべきか?
仗助や億泰などを呼んで、これが何なのか詳しく調べた方が安全であるが、目を離したスキに消えてしまったら元も子もない。
エコーズの尻尾を入れても何の変化もなかったことから、ちょっとくらいなら中に入って調べても大丈夫そうだった。
康一は、恐る恐る鏡の中に入り、中を調べようとする。
その瞬間、康一の体中に稲妻が走るような激しいショックが流れた。
ヤバイと思った時にはもう遅かった。後悔先に立たずとはまさにこのことである。


康一は、全身に痛みが走る感覚を覚え――そのまま気絶した。


「――で平民を呼び……する…」
「ちょ……間違った……」

大人数の人間の笑い声、女の人の話し声が康一の頭の中で響く。
浴びる程酒を飲んで、翌日、二日酔いで頭がズキズキするあの感覚の中で、康一は目を覚ました。

「ううっ……」

康一は頭を抑えながら、顔を上げて辺りを見回した。
黒いマントをつけた人間が、物珍しそうに康一のことを見ていた。
自分の目の前には、桃色がかったブロンドヘアーの女の子がいる。
透き通るような白い肌をしており、まるで人形のように美しかった。

「さすがはゼロのルイズだ!」

そう言って、爆笑の荒らしが沸き起こる。
そんな爆笑の渦の中、康一は何が起こってるのかわからず、ポカーンとしていた。

(ここはどこ? 外国? 異次元? スタンド攻撃? スタンドが作り出した幻? まさか夢ってことはないと思うけど……)

康一は、自分の頬っぺたを抓る。当然だが痛い。
夢ではないようだ。ということは、やはり何かのスタンド攻撃なのだろうか?

「ミスタ・コルベール!」

目の前に居た、ルイズという女の子が怒鳴った。
人垣の中から、変な中年男性が現れて、なにやら言い争っている。
その中年男性は、真っ黒なローブに大きな杖を持っており、まるでファンタジーに出てくる『魔法使い』のようだった。
中年とルイズの会話の内容は、康一には訳のわからない単語ばかりが飛び交っている。
『召喚』だとか、『使い魔』だとか、傍から見れば、頭がイカれてるんじゃあないかって会話である。

「平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」

再び、康一の周りで爆笑の渦が巻き起こる。
そんな爆笑を無視して、康一は一体何のスタンド攻撃なのかずっと考えていた。

しかし、スタンド攻撃だったとしても、こんな訳の分からないスタンド攻撃なんて聞いたことがない。
幻を見せるにしても、康一を攻撃する目的なら、もっと凄まじい幻を作るはずだし、
何かの空間を作るスタンドだったとしても、こんなに大人数の人間が、スタンド空間の中に存在するのは不自然だ。
ありえそうなのは、『相手をどこかに瞬間移動させる』スタンドだ。
それならば変な格好をしている、大勢の人間に囲まれているのも辻褄が合いそうだ。

「ねえ」
「……」

ルイズが康一に話しかけるが、反応はない。

「ちょっと、聞いてんの!?」

ビクっと体を反応させ、組んでいた腕を解き、康一はルイズの方へと向いた。

「あ……は、はい!」
「あんた、感謝しなさいよね。 貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」

貴族?
貴族ということは、どこかの外国の国だろうか?
しかし、さっきからこの人たちは日本語を喋っているみたいだし……。
そんな風に康一が思っていると、ルイズが康一の目の前で杖を振り、

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

と呪文らしき言葉を唱えた。
そして、ゆっくりと唇を近づけてくる。

「え!? あ、あのー、何をす……」
「いいからじっとしてなさい」

そう言って、ルイズは康一の頭を左手で掴む。

「ちょ、あの、僕には、いちおう恋人がいて――」
「ん……」

ズキューンという効果音が康一の頭の中に響く。

「な、なんて……ことを……」

ファーストキスではないが、康一は見知らぬ女性とキスをしてしまった。
もしこの光景を髪の毛を自在に操る彼女が見ていたら、どうなっていただろうか。
康一は、この場に由花子がいなかったことに、心のそこからホッとした。
しかし、ホッとしている場合ではないことにすぐに気が付く。

「い、いきなり何をするんだ! ぼ、僕には恋人がいて、もしこの光景を見られてたら――」

ルイズはそんな康一の言葉を無視するかのようにそっぽを向いた。
その態度は無いんじゃない? と思いながら、左手の甲をさする康一。

(……? 何で僕、『左手の甲』なんてさすってるんだ? それに妙に体が熱くなってきたような――)

そう思った瞬間、康一の体が炎で燃やされたように厚くなった。

「う、うわあああああッ! 体が熱い!」

(何で急に体が!? スタンド攻撃? まさか目の前にいる、僕より歳が低そうなこんな少女が本体?)

そんな康一を気にする様子も無く、ルイズは苛立った声で言った。

「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
「使い魔のルーン? それがキミのスタンドの名前か? いくら女の子だからって、この攻撃をやめないと、こっちも攻撃するぞ!」
「は? スタンド? 何言ってるの?」
「くっ、エコーズACT3ッ!!」

康一は、エコーズACT3を呼び出して、ルイズにFREEZEの攻撃をしようとした。
しかし攻撃する前に、体中の熱が嘘のように消え、平静を取り戻せるようになっていた。
スタンド攻撃をやめたと思い、康一もFREEZEで攻撃するのをやめる。

「ハァハァ……。キミは一体何者なんだ! なぜ僕をここに呼び出した! 僕の体に何をしたんだ! ここは一体どこなんだッ!」
「ったく、色々とうるさい使い魔ね。 ここはトリスティンよ! ここはかの高名なトリスティン魔法学院!」

トリスティン? そんな地名、外国にあったかな?
いや、その前に魔法学院? そんな学院なんてあるの? 手品の練習でもするのかな?
そんな風に康一が思っていると、中年男性が人垣に向かって言った。

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」

中年男性はきびすを返すと、宙に浮いた。
他の生徒も、一斉に宙に浮き、城のようない石造りの建物へ飛んでいった。
康一は、その光景をポカーンとした表情で見ていた。
そして、すぐに我に返り、

「と、飛んだ……! ねえ、ちょっと! あの人たち宙に浮いたよ!」

と、宙に浮いている人々を指差して言った。

「ルイズ、『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともに出来ないんだから、歩いて来いよ!」

そう言って宙に浮いてる間も、ルイズをバカにし笑いながら飛び去って行く。
ルイズはその光景を、歯軋りしながら睨み付けていた。

そして、最後に残された面々は、ルイズと康一だけになる。
ルイズは、ため息をつき、康一の方に振り向いて怒鳴った。

「あんた、なんなのよ!」
「こっちが聞きたいよ! キミは一体何者なんだ! さっきの人たち宙に浮いたけど、全員スタンド使いなの!?」

しかし、ルイズは全く何のことか分かっていない様子であった。

「そりゃ飛ぶわよ。メイジが飛ばなくてどうすんの。 それより、さっきからスタンドスタンドって、一体何のことよ?」

しらばっくれてるのか?
いや、もしかしたら単にスタンドという言葉で呼んでないだけかもしれない。
そう思い、康一はエコーズACT2を出す。

「こういう能力のことだよ。 僕はスタンドって呼んでるんだけど」

しかし、ルイズは?マークを浮かべるだけで、首を傾げている。
目の前でACT2の拳を振り上げても、驚く様子も、構える様子もない。
演技をしてるようにも見えない。本当に見えてない様子だった。

「キミ……見えてないの?」
「はぁ? 召喚した時に頭でも打ったの?」
「……」

じゃあ、何故こんな所にいるのだろう?
彼女じゃないとしたら、一体誰が?
そう思った康一だが、ルイズが言った『召喚』という言葉が引っかかった。

「あの、今『召喚』って言ったけど、それって何のこと?」
「私が呼び出したのよ。 さっき儀式をしたでしょ? あんたは私の使い魔になったっていうこと」

康一はさっきの鏡のことを思い出した。
あの鏡は、この子が行った『儀式』で現われた亜空間のようなもので、その中に入ったからこうして召喚されたのだろうか。
しかし、康一はこの現実をあまり認めたくはなかった。
いきなり道端に現われた変な鏡を通ったら、そこはファンタジーの世界でした。なんて話は聞いたことがない。

「ハ……ハハ……まさか……大体、使い魔って言ったけど、僕は人間だよ? 冗談きついなぁ~、もう……」

「私だってこんな冴えない生き物は嫌よ……。もっとカッコいいのがよかったのに。
 ドラゴンとか。グリフォンとか。マンティコアとか。せめてワシとかフクロウとか、この際、犬でも」

犬以下と認定された康一は、少しだけ悲しくなった。
そして康一は察した。この子はおそらく召喚ってやつに失敗して、僕を呼び出してしまったんだと。
さっき周りの人間たちに大笑いされていたのは、人間である自分を呼び出したからだろうと。

「はぁ……そうですか……」

全てを察した康一は、深くため息をつき、ガックリと肩を落とした。

「ため息つきたいのはこっちよ! とにかく、私は今日からあんたのご主人様よ!」

そう言われて、康一は再び深いため息をついた。
大和撫子のような、大らかでやさしい女性に召喚されたならともかく、
由花子と同じくらい扱いにくそうな女性に召喚されたとなったら、これからどんな気苦労があるか分かったものではない。

「ちょっと、聞いてるの!? 私は二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。覚えておきなさい!」
「はぁ……えーと、ルイズさんですね……。 僕は広瀬康一って言います」
「変な名前。呼びにくいから 犬 って呼ぶことにするわ」

(犬は酷いよなぁ……。 はぁ~、何で僕、自分より年下っぽい女の子に敬語使ってるんだろ?)

こうして康一は、ファンタジー世界へと呼び出された。
なお、これからもっと酷い苦悩に悩まされることになるが、この時の康一は全く気づいてなかった。

To Be Continued →

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