ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ねことダメなまほうつかい-6

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 ルイズたちがワルド子爵と戦っているころ、ギトーたちは傭兵たちと大乱闘を繰り広げていました。
 傭兵たちはたくさんの貴族が相手だと雇い主から聞いていなかったので、ギトーたちを見て最初は
 おどろきましたが、彼らがまだまだ子どもだとわかるとヤル気がわいてきました。
 自分たちは実戦経験が豊富で、相手は魔法が使えるといっても子どもなのです。
 そして、ギトーたちが魔法をうまくつかえない接近戦を挑んできたので傭兵たちはこころの中で
 勝利宣言をしてしまいました。
 ですが、それは大きな間違いだったのです。

「オッパアァーッ!」
「ホンゲェエーッ!」

 悲鳴をあげて倒れていく仲間たちを見ながら、傭兵たちは自分たちがいる国のことをようやく思いだしました。
 この国もむかしは魔法ばかりを練習してからだを鍛えようとしない、ひよわな貴族たちであふれていましたが、
 アンリエッタ姫のお父上であられる、今は亡き先王陛下は貧弱な貴族などに生きる価値なしと考えていました。
 この先王陛下の考えは、魔法を最高とするルイズたちの国ではとても受け入れられるものではありません。
 まわりの家臣や貴族から、魔法をもって貴族とするもので、からだを鍛える必要はないと反対を受けました。
 先王陛下は、からだから管をだして煮えたぎる血液で岩を蒸発させるのを見せて、家臣たちにからだを
 鍛えることの素晴らしさを説きましたが、逆に気味悪がられます。
 先王陛下は怒りのあまりトチ狂いそうになりましたが、泣きわめいて気持ちを落ちつかせました。
 そして、先王陛下はあたまの固い貴族たちを言葉で説得することをあきらめて、別の方法を考えつきました。
 それは、彼らの目の前でからだを鍛えた者がどれだけ強いかを見せればいいのです。
 はじめは自分でそれを示そうと先王陛下は考えましたが、王さまである自分に本気で向かって者は
 この国にはだれもいません。
 そこで自分の代理でだれかを戦わせようと考え、ちょうどロマリア連合皇国という始祖をあがめる宗教国から
 派遣されていたマザリーニ枢機卿に目をつけました。
 彼はこのときはとても痩せていて、まわりの貴族たちから鳥の骨とからかわれていました。
 そして、マザリーニ枢機卿もそれをとても悔しく思っていたので先王陛下のおはなしに喜んで賛成したのです。
 その夜、先王陛下のお部屋から雄叫びがあがりました。

 次の日、家臣たちと王宮を訪れていた貴族たち、そして魔法衛士隊が先王陛下に呼ばれて中庭に来てみると、
 そこにはロマリア彫刻のように美しく鍛えあげた肉体を誇らしげに見せている、奇妙な仮面をつけた男性と
 先王陛下のお姿がありました。
 家臣たちは先王陛下になにごとかと聞きましたが、先王陛下はなにも言わずに家臣たちを閲覧席に
 座らせると、魔法衛士隊に仮面をつけた男性と戦うように命じました。
 衛士たちはあまり乗り気ではありませんでしたが、王さまの命令には逆らえませんので軽くひねってやろうと
 男性に杖を向けました。

「WRRYYYYーッ!」
「う、ウオオッ?!」

 雄叫びをあげながら向かってきた男性に、魔法衛士隊はあまりにもあっけなくやられてしまいました。
 魔法衛士隊が手も足も出ずにやられてしまったのを見た家臣たちはとてもおどろきます。
 そして先王陛下に男性はだれなのだと問いかけ、先王陛下は仮面をとるように男性に命じました。
 男性の仮面の下からあらわれた顔に、家臣たちはまたもやおどろきました。
 目の前のロマリア彫刻のように美しく鍛えあげた肉体を持つ男性は、彼らが鳥の骨とからかっていた
 マザリーニ枢機卿だったからです。
 多くの貴族がおどろくのを見て先王陛下は今度こそわかってくれると思いましたが、家臣たちはこわがりました。
 マザリーニ枢機卿が先王陛下になにかをされて、一晩で変わり果ててしまったのを見ておそろしくなったのです。
 そして、やはり魔法が貴族の誇りだと思っていましたので、先王陛下を捕まえてどこかに閉じ込めてしまおうと
 みんなで話し合いました。
 家臣たちは自分たちが貴族の誇りを守るんだと考えたのです。
 そして家臣たちは謀反を起こしました。
 この家臣たちが起こした謀反は、メイジ威信と呼ばれて語り継がれることになります。

 家臣たちの反乱は先王陛下とマザリーニ枢機卿のふたりによって鎮められました。
 謀反に失敗した家臣たちは処刑されると覚悟していましたが、先王陛下は家臣たちのあたまを優しく撫でました。
 この先王陛下のお優しさにふれた家臣たちはあらためて忠誠を誓いました。
 そうして先王陛下の考えどおりに貴族たちは魔法だけでなく、からだも鍛えるようになったのです。
 それから、肉体をただ鍛えるだけでなく、どうすれば美しく見せられるかを貴族たちは競い合い、
 試行錯誤の末にポージングの文化が生まれました。
 そして今では、このポージングができるかできないかで貴族の格が決まるとも言われています。

「と、言うわけなんだ…オレたちが勝てるわけがねぇ…ズラかれーッ!!」
「逃がすかコラァーーッ!!」

 慌てて逃げていく傭兵をギトーたちは追いかけて、あっという間にやっつけてしまいました。
 そして、ギトーがだれに雇われたかを聞きだそうとまとめ役の傭兵を尋問ているとイキナリだれかがキレました。

「付き合ってる女を紹介するとき…『ぼくの彼女さ』の…『彼女』……ってよぉ~~~~
 『女』ってのはわかる…スゲーよくわかる。男と男が付き合ってたらキモチワリーからな……
 だが『彼』って部分はどういうことだあぁ~~~~っ?!彼の女って他人の女ってことじゃねぇかーーーーーッ!
 ナメやがってこの言葉ァー!超!イラつくぜぇ~~~~ッ!!
 女が二股かけてるってことじゃねぇかー!人のこころを裏切りやがってチクショーッ!!
 どういうことだ!どういうことだよッ!クソッ!彼の女ってどういうことだッ!クソッ!クソッ!」

 どうやら傭兵が恋人のことを彼女と言ってしまったので、その生徒はキレてしまったようです。
 やれやれと思いながら、ギトーはその生徒を止めに入りました。

「やめたまえミスタ・レイナール、貴族らしくないぞ。それから、やはり彼女ではなく、オレの女と言うべきだと
 私は思うのだが、きみはどう思うかね?」
「そう!それですっ!交際しているのならそう言うべきですよね!」

 ギトーの言葉にレイナールは喜びながらうなずきました。
 彼はとてもまじめで優秀なのですが、ちょっとした言葉ちがいにとてもうるさくすぐに怒ってしまうのです。
 それから、傭兵たちを尋問してキレイな女性に雇われたことを聞きだしたギトーたちはルイズたちと
 合流するために桟橋まで走りました。
 そして桟橋の前で、からだをピッタリと合わせながらひざを少し曲げて整列しました。
 これは、この国の伝統的な旅立ちの儀式なのです。

「行くぜッ!」

 そうして、ギトーたちは桟橋に向かいましたが船はすべて出港していたのでスゴスゴと宿に帰っていきました。
 それから宿の修理をみんなで手伝ってから、ギトーはフカフカのベッドで少しだけ眠り、目を覚ましてから
 しばらくして、船に乗り遅れたことを思いだし、少しだけ泣きました。


 アンリエッタ姫は王宮のご自分のお部屋で月を眺めていました。
 その後ろにはマザリーニ枢機卿が心配そうな顔でアンリエッタ姫を見ています。
 アンリエッタ姫がルイズたちと、ウェールズ皇太子の無事を始祖に祈っているとお部屋の扉がノックされました。
 マザリーニ枢機卿が扉を開けると、お付きの従者がなにやら手紙を差しだします。
 その手紙を読んだマザリーニ枢機卿は雄叫びをあげながら新レベル7のポージングで喜びをあらわしました。
 そして、アンリエッタ姫に手紙をお渡しします。
 その手紙には、ロマリア連合皇国の聖エイジス三十二世、ヴィットーリオ・セレヴァレ教皇聖下がだれかに
 暗殺されたと書かれていました。

「なんて…こと…」
「姫様、どうか落ち着いてください」

 マザリーニ枢機卿はアンリエッタ姫を慰めながら、ザマミロ&スカッとサワヤカな笑いが込みあげてきました。
 ヴィットーリオ・セレヴァレ教皇聖下は、男性ですら見とれてしまうほど美しいお方でとてもお優しくもあります。
 ですが、マザリーニ枢機卿は彼をとてもおそれていました。
 教皇ヴィットーリオは人のこころの隙間に入り込むのがとてもうまく、アンリエッタ姫が、もし拝謁していたなら
 たちまち彼のとりこになってしまうのは間違いありません。 
 そうなってはこの国は教皇ヴィットーリオの思うままになってしまいます。
 マザリーニ枢機卿は暗殺を行なっただれかに、こころで感謝を述べました。
 後になって知られることになりますが、教皇ヴィットーリオを暗殺した人物は貴族の使う魔法より強い、
 先住魔法を使うエルフの中でも最強と言われている、星のプラチナとその仲間たちでした。
 彼らは後に星屑十字軍と呼ばれ、種族を超えてみんなから尊敬を集めます。

「枢機卿、わたくしはどうすれば良いのでしょう?」
「まずは勅使を送りましょう。あとは各国の動きを見て判断された方が賢明かと」

 アンリエッタ姫はうなずいて、マザリーニ枢機卿に後のことを任せるとお部屋の窓から月を見上げました。
 そして、ルイズたちとウェールズ皇太子の無事を祈ってから眠りにつきました。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー